不法就労助長罪とは【対象となるケースや具体的な事例について解説します】

記事更新日:2022年10月24日 初回公開日:2022年10月24日

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慢性的な人材不足により日本人の労働者だけでは賄いきれないため、外国人労働者は貴重な労働力です。特に介護業界や農業において外国人技能実習生は欠かせません。しかし外国人を雇用する際には、在留資格や就労可否の確認を怠ると不法就労助長罪という罪に問われる可能性があります。不法就労助長罪は外国人が就労資格を持っていないことを知らなかったでは済まされません。今回は不法就労助長罪に陥ってしまうケースや罰則について解説していきます。これから外国人を雇用しようと考えている担当者の方は是非参考にしてみてください。

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不法就労とは

日本で就労する資格を持っていない外国人が日本で就労すること

不法就労とは、日本で就労する資格を持っていない外国人が日本で就労することです。一般的な不法就労は、不法滞在者や強制退去が決まっている人(被退去強制者)が許可なく働いているというイメージが強いのではないでしょうか。それだけではなく観光や親族を訪問する為の短期ビザを取得し日本への入国を許可されている場合は、就労することが出来ませんがルールを破り就労を行った際にも不法就労に該当します。更に入国管理局から許可された範囲を超えて就労する場合にも不法就労になってしまいます。

不法就労助長罪とは

外国人に不法就労させたり不法就労を斡旋した者を処罰する法

不法就労助長罪とは、外国人に不法就労させたり不法就労を斡旋した者を処罰する方法です。適切な在留資格と就労資格を所持していない外国人が、日本で働くことは許可されていません。しかしオーバーステイ等で不法残留している外国人は、日本で生活したり母国に仕送りするために働きたいと思っている人が殆どです。そういった人達は通常よりも安価な値段で雇うことが可能なため、安い労働力として活用したいという雇用者が一定数存在します。そういった不法就労そのものを防ぐために不法就労助長罪が制定されました。

働いた本人も働かせた企業も罰せられる

不法就労助長罪は、就労資格を持たずに働いた外国人だけでなくその外国人を働かせた企業も罰せられる犯罪です。処罰の対象は受け入れを許可した経営者だけでなく、実際に雇用を行った現場の責任者や人事担当も含まれます。雇用予定の外国人が不法就労であると知っていた場合は勿論ですが、不法就労であると知らなかった場合においても受入れ先の企業は確認を怠ったとして不法就労助長罪に問われることとなるため、注意が必要です。

不法就労助長罪となってしまうケース

不法滞在の人を働かせてしまうケース

不法就労助長罪の対象となってしまうのが、不法滞在の人を働かせてしまう場合です。日本国籍を所持していない外国人が、日本に滞在するためには「在留資格」が必要です。密入国や在留期間を過ぎて日本に留まっている場合が不法滞在にあたります。本来であれば期限が過ぎている場合、母国に帰る必要があり日本に滞在してはならない人となるため働くことは勿論許可されていません。その為彼らを雇用してしまうと不法就労助長罪にあたります。

就労不可の人を働かせてしまうケース

就労不可の人を働かせてしまう場合にも、不法就労助長罪に当てはまります。在留資格を持っていれば、日本で就労できる訳ではありません。在留資格にも短期滞在・留学・家族滞在など様々な種類があり、本来就労を目的とせず中長期ビザを所有している外国人は働くことが出来ません。就労目的ではない在留資格を持っている人達は、入国管理局に申請し「資格外活動許可」を貰う必要があります。しかし資格外活動許可を貰っていても制限があるため、その制限を超えての就労も不法就労となります。

就労制限以外の仕事をさせてしまうケース

不法就労助長罪は就労制限以外の仕事をさせてしまう場合にも対象となります。就労許可がされている人でも、全ての仕事に就けるわけではありません。「特定技能」や「特定活動」を持っていれば就労することは可能ですが、入国管理局から指定された会社でのみ働くことが可能です。指定されている企業であっても、在留資格の内容に応じた就労のみが対象となっており資格の範囲を超えて仕事を任せている場合は不法就労にあたります。就労時間に制限がある外国人もいるため、制限されている時間以上に働かせることも違法となります。

業務発注も不法就労助長罪となる恐れがある

業務発注を行っただけでも、不法就労助長罪の対象となる恐れがあります。不法就労は直接雇用だけに限ったことではありません。最近では、フリーランス業やパラレルワーカーなどの外部人材を活用するという雇用も増えています。しかし業務発注においても、知らないうちにサイト等から仕事を任せた相手が不法滞在者などであった場合は、不法就労助長罪の対象である「仕事を斡旋した」に該当する可能性があります。そう言った事態を防ぐためにも業務発注で外国人に依頼する際には、在留カードを確認するなどしましょう。

不法就労助長罪の罰則

不法就労を行った外国人

不法入国の罪

不法就労助長罪の罰則として、不法就労を行った外国人は不法入国の罪に問われます。オーバーステイを行うと国外強制退去処分となるだけでなく、3年以下の懲役または禁錮刑もしくは300万以下の罰金が科せられる重い罰則です。懲役1年以上の有罪判決となった場合、自動的に強制送還手続きがとられます。基本的に悪質性があるものは懲役刑となっており、軽微なものに関しては罰金が科せられていますが、併用されることもありその場合は重大な罪を犯している場合に適用されます。

無許可資格外活動の罪

無許可資格外活動を行った場合にも、不法就労助長罪の罰則が不法就労を行った外国人に課せられます。日本で働く外国人は、就労予定の職務内容によってビザを取得します。決められた資格外で働くことは禁止されており、資格外活動に該当します。在留資格の活動範囲内でしか収入を得ることが出来ません。しかし収入を伴わない活動に対しては資格外活動になることはありません。無許可資格外活動を行った際にも、不法入国と同様に3年以下の懲役または禁錮刑もしくは300万円以下の罰金が科せられることがあります。

在留資格の取り消しや退去強制処分

不法就労助長罪の罰則には、不法就労を行った外国人に在留資格の取り消しや退去強制処分などが下されます。在留資格の取り消しは、一度は日本に滞在することを認められた場合でも事情によって資格が取り消されることです。在留資格の取り消しは「日本にいる資格自体を失う」事を指し、退去強制は日本の在留資格に関わらず「法律的事情があった場合に強制的に出国させられる」事を意味します。在留資格の取り消しや退去強制になった場合に再度入国しようとしても、5年間入国を拒否されることがあります。

受け入れを行った企業

受け入れを行った企業が不法就労助長罪に問われます。罰則は3年以下の懲役または300万円以下の罰金、もしくはその両方が科されます。雇用主は外国人を雇う際に在留カードやパスポートの確認し、在留資格や在留期限を把握することが義務付けられており「知らなかった」で済まされず処罰を受けなければなりません。雇用契約の際に在留カードの確認を怠った場合においても雇用主に過失があるとみなされます。但し流暢な日本語で日本名を名乗るなど外国人かどうかを判断する事が難しい場合には、罪に問われないこともあります。

不法就労助長罪にならないための施策

在留カードの有効性を確認する

不法就労助長罪にならない為には、在留カードの有効性を確認しましょう。旅行者などの短期滞在者を除くすべての外国人が「在留カード」を所持しています。在留カードにはその人の在留資格などが記載されており、外国人を雇用する際には在留カードの確認が欠かせません。在留カードには資格が様々ありますが、「永住者」「日本人配偶者」「永住者の配偶者」「定住者」に関しては就労制限はないため、日本人と同様色々な仕事を行えます。在留カードには偽物も出回っており、企業側として真偽を判断できないほど精巧だった場合は手段を尽くしていると判断され不法就労助長罪には当たらない場合もあります。

在留資格と資格外活動許可を確認

在留資格と資格外活動許可を確認し、不法就労助長罪にならないよう気を付けましょう。在留カードの表面には「在留資格」が記載されています。就労制限の有無なども記載されているため、記載されている資格と募集している職種が異なる場合には定められた範囲外になり雇用してはいけません。また裏面には「資格外活動許可」の項目があり、就労制限で就労が不可になっていても資格外活動が許可されていれば雇うことは可能です。許可の欄には雇用時の時間制限や条件などが書かれていますので、必ず確認するようにしましょう。

在留期限を管理する

在留期限を管理し、不法就労助長罪を防ぎましょう。在留期間を過ぎてオーバーステイしている外国人を雇っている場合も不法就労となります。在留カードの表面には在留期間が記載されているため、雇用の際は必ずチェックするようにしましょう。雇用前だけではなく、雇用期間中にいつのまにか期限が切れていたという事例もあるため在留期限は定期的に確認し期間が過ぎていたとならない様注意しましょう。在留カードが有効なものかどうかかは入国管理局のHPから確認出来ます。カードを確認する際も、コピーなどではなく現物を提示してもらいしっかりと確認を行いましょう。

不法就労助長罪の事例

人材派遣会社社員による入管法違反

不法就労助長罪に当たった事例として、人材派遣会社社員による入管法違反があります。人材派遣会社の男たちは、「技能実習」で入国していたベトナム人を水産加工会社に派遣し働かせていました。このベトナム人たちは在留期限が切れており不法残留に値します。この事件では雇用していた日本人が入管法違反で逮捕され、逮捕されたベトナム人が作業者として就労することを知りながら日本人に斡旋を行ったベトナム人の男も逮捕されました。作業員として就労していたベトナム人も不法残留で逮捕されています。

飲食店経営者による入管法違反

飲食店経営者による入管法違反も不法就労助長罪になった事例です。「興業」の在留資格を持ったフィリピン人の女性たちをホステスとして働かせていました。在留資格の「興業」とは、芸能活動や演劇・演奏でのみ就労することが可能です。ホステスの仕事内容は「興業」には当たらないため、就労の範囲外となり入管法違反になります。そのため、許可された範囲ではない職種で働かせていた日本人が入管法違反で逮捕され、ホステスとして働いていたフィリピン人が資格外活動違反で逮捕されました。

食品メーカー会社による入管難民法違反

不法就労助長罪は、食品メーカー会社による入管難民法違反でも発生しました。雇用予定の外国人の在留資格外の業務を行わせることが分かっていましたが、人材不足の為雇用・就労させ採用担当者が罪に問われた事件です。この時に雇用した外国人の在留資格は「技術・人文知識・国際業務」の「国際業務」で、通訳などとして働くことが許可されている資格です。行っていた業務が加工食品を生産する工場での勤務であり、資格外活動の対象となります。また人材紹介会社を経由での就労斡旋だったため、紹介会社の担当者も逮捕・検挙されました。

まとめ

不法就労助長罪に気をつけながら雇用しよう

不法就労助長罪にならないための対策や実際の事例について解説しました。日本人には普通に行っている人事異動や残業などでも不法就労に当たる場合があり、知らない間に不法就労助長罪に該当してしまう恐れもあります。不法就労助長罪に問われると企業として社会的責任を負う必要があり、社会的信用も失ってしまいます。そうならない為には雇用予定の外国人の在留資格や資格外活動許可の欄をしっかりと確認しましょう。自社を守るためにもしっかりと確認を行い、不法就労助長罪に注意しながら外国人を雇用していきましょう。

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