有給休暇の買取は違法か?買取可能な3つの事例【計算方法や注意点も紹介します】

記事更新日:2021年12月20日 初回公開日:2021年12月14日

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2019年から有給休暇取得の義務化が開始され、多くの企業で有給休暇取得促進の動きが活発になっています。その結果、各企業の有給休暇の取得率も注目されるようになりました。そこで今回のテーマは「有給休暇の買取」です。この記事では有給休暇の買取や買取価格の計算方法、注意点などについて詳細に説明していきます。社員の有給休暇の管理をしている人事担当者の方は是非ご一読ください。

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有給休暇とは

賃金が支払われる休暇のこと

有給休暇とは、雇用主から賃金が支払われる労働者の休暇日のことです。正式には「年次有給休暇」と呼びますが、一般的には有給と略して呼ばれることがほとんどです。有給休暇は全労働日数の8割以上出勤した労働者に対して、労働年数や労働時間に基づき、1年に最低10日間与えられる仕組みになっています。雇用形態は定められておらず、正社員だけでなく契約社員やパート、アルバイトも条件を満たすことで有給休暇の権利が与えられます。

有給休暇がない企業は労働基準法違反となる

有給休暇は労働基準法で定められているため、どの企業でも基準を満たした従業員に対して有給休暇を与えなければなりません。有給休暇については労働基準法第39条に詳しい記載があります。そして有給休暇は労働者の権利であるため、正しく取得させなかった場合は企業側が処罰されることになります。具体的には就業規則に記載せず時期指定による有給取得をさせた場合は、30万円以下の罰金、労働者が請求する時期に有給取得を指せなかった場合は、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金に処されます。また企業の社会的信用も失うことになるので、絶対に労働基準法に違反しないようにしましょう。

年に5日は取得させなければならない

日本の有給休暇取得率はとても低く、これまで問題視されていました。その結果2019年に労働基準法が改正され、有給休暇に関する規定も変更されました。具体的には年に10日以上の有給休暇が付与されている労働者全員に対し、有給休暇が付与される日から1年以内に「5日以上」の有給休暇を取得させなければならないというものです。ですので、企業側も従業員に積極的に有給休暇の取得を推進する必要があります。こうした事実について知らない社員がいる可能性もあるので、全従業員に周知し、有給休暇の取得を徹底させましょう。

退職時に消滅する

有給休暇は基本的に従業員の退職時に消滅します。なぜなら、有給休暇の制度は企業との雇用関係があることを前提としているからです。ですので、有給休暇の日数が多くある場合は雇用期間が終了するまでに有給休暇を消化しなければなりません。そのため、従業員側は退職を決意した際に、あらかじめ有給休暇の残りの日数をあらかじめ計算しておく必要があります。そして会社側も、先程の労働基準法の決まりによって、退職時の有給休暇の消化を拒否することは出来ないので、注意しましょう。

有給休暇の買取について

原則禁止とされている

続いて今回の本題である有給休暇の買取の可否について解説していきます。結論から言うと、有給休暇の買取は「原則禁止」とされています。会社が社員を休ませずに、代わりに現金を支給することは有給休暇の本来の目的に反しているからです。そもそも有給休暇は労働者がしっかりと休んで心身の健康を保つための制度です。ですので、有給休暇が消化できないからといって、企業側が買取をすることは基本的には出来ません。

有給買取した場合の税務処理は退職所得となる

法律では、原則的には有給休暇の買収は禁止されていますが下記の3つの場合のように例外もあります。例外として買取が認められた場合は、税務上の扱いとしては退職所得として処理します。理由としては所得税法第30条では「退職所得とは、退職手当、一時恩給その他の退職により一時に受ける給与及びこれらの性質を有する給与に係る所得という」と定められています。また、所得税法基本通達30-1でも、「退職所得等は、本来退職しなかったとしたならば支払われなかったもので、退職したことに起因して一時に支払われる給与をいう」と定められているからです。これらを踏まえると、退職によって支払いが発生するものであることから退職所得となるだろうと判断しています。しかし、退職せずに買取を行うと給与所得として扱いますので気を付けて下さい。

例外的に認められるケース

法定以上の有給を付与した場合

社員に、法定以上の有給休暇を付与している企業の場合は、その超過日数分の有給休暇を買い取ることは可能です。労働基準法39条には、2つの要件を満たせば、労働者には必然的に有給休暇を取得する権利が与えられると定められています。これは、企業に有給休暇を与える義務があるという以前の前提となります。要件を満たせば労働者に有給取得の権利が自然発生するのです。また、正社員だけでなく、パートやアルバイトにも発生する権利です。労働者に有給休暇を取得する権利が発生する2つの要件は以下の通りです。①6か月以上、継続的に勤務している②全労働時間の8割以上出勤している。たとえば、週30時間以上の労働者が上記の要件を満たせば、6か月経過した日から1年ごとに10日以上の有給休暇が付与されます。週30時間以下のパートなどの場合、たとえ週1日の勤務であっても、6か月経過すれば1日、1年半後には2日の有給休暇が与えられます。労働日数や時間に合わせて最低日数が定められています。これが法律に定められている有給休暇の最低基準です。この基準以上の有給休暇を付与している企業の場合、法律に定められた日数を超える分については、買取をしても違法とはなりません。

2年間の有効期限が切れた場合

2年間の有効期限が切れた有給休暇についても買取は可能です。有給休暇は、その一年に付与された日数は、翌一年まで繰り越されます。最大で40日の繰り越しが認められます。これは、企業の就業規則というより、法律で定められている内容です。つまり、有給休暇は発生してから2年間の有効期限があることになります。この期間が過ぎ、時効となった分の有給休暇については、買取は可能となっています。これは、有給取得の機会がなくなっているものだからです。ただ、企業側に買取しなければならないという法律上の義務はなく、あくまで企業の意向での対処となります。

退職時に有給が残っている場合

従業員が退職する際に残っている有給休暇についても、買収が可能です。こちらのケースも、退職することにより、その有給を取得する機会がなくなるために認められるものです。退職時に消化されていない有給は、残っている有給休暇の日数分、退職日を延ばすという処理も見受けられます。しかし、退職日を延ばすことで業務上に支障がでたり、退職する社員が希望したりする場合には、買収も可能です。このとき、買収しなかったとしても、法律違反となるわけではありません。退職時の有給処理についても、企業の意向次第となります。事前にはっきりと決めておき、就業規則などに提示されることをおすすめします。

買取価格の計算方法

通常賃金

続いて有給休暇が買取になる場合の計算方法について説明していきます。有給休暇の買取価格は企業によって違いますが、ここでは代表的な3つの計算例を紹介します。どの方法で計算しているかは、企業によってあらかじめ決められているため、自社がどれを採用しているのかを就業規則などで確認してみるといいでしょう。1つ目は通常賃金による計算です。この場合、計算方法は時給制や月給制などによって異なります。例えば時給制であれば時給額に所定労働時間数をかけます。また、月給制の場合は月給額を月の所定労働日数で割った額を買取価格とします。

平均賃金

2つ目は平均賃金による計算方法です。平均賃金で計算をするときは、まず過去3か月分の給料の平均額を割り出します。そしてその3か月の給料の平均額を1ヶ月の所定労働日数で割ります。その結果、表れた金額が有給休暇の買取額となります。例えば給料の平均額が20万円で月当たりの労働日数が20日だった場合は、1万円が買取価格になるでしょう。

標準報酬月額の日割額

3つ目は標準報酬月額の日割額による計算方法です。標準報酬月額は健康保険や厚生年金の保険料額を決める際に用いる数字です。報酬月額には、基本給の他に役付手当、通勤手当などといった手当も含まれています。基本給だけではなく、各種手当も含めるように注意して下さい。そしてこの数字は原則として1年間変わりません。ですので、退職するタイミングによって有給休暇の買取価格が変化することもありません。最終的には標準報酬月額を日割して、買取価格が決定します。

有給休暇の買取時の企業側の注意点

有給休暇取得日の賃金は普段と同等にする

有給休暇の買取の際は、企業側にも注意が必要になります。先程も説明したように有給休暇は賃金が支払われる休暇です。しかし労働をしていないからといって有給休暇中の給料を不利な条件で扱うことは禁止されています。そのため、従業員が有給休暇を取得した日の給料は普段と同等の扱いをしなければなりません。不当に有給休暇の支給額を減らした場合は、処罰されることもあるので注意しましょう。

書面を作成する

有給休暇の買取のときは、従業員とのトラブルを未然に防ぐために買取に関する内容を書面に残すようにしましょう。この際に作成する書面は誓約書や契約書などは企業によって異なります。しかし一般的には有給休暇の買取金額や支払日、支払方法などの記載が必要です。有給休暇の買取時には必ず事前に書面上で確認をして、支払われる金額が間違っていないかを対象となる従業員と共にチェックするようにしましょう。

まとめ

基本的に有給休暇の買取は出来ないので注意しましょう

今回は、有給休暇の買取について詳しく解説をしてきました。先程説明をしたように、有給休暇の買取は基本的には違法となります。ですので、日ごろから自社の社員が有給休暇を取りやすい環境を整えることが大切です。とはいえ、社員の都合によって未消化分の有給休暇が大量に残っているというケースもあるかもしれません。その場合は先程説明した例外のケースに当てはまるかどうかを確認してみましょう。また、この機会に未消化分の有給休暇の扱いなどについて話し合い、その上で就業規則を見直してみると良いかもしれません。

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