記事更新日:2021年06月11日 | 初回公開日:2021年01月22日
人事・労務お役立ち情報 採用・求人のトレンド 外国人採用・雇用採用活動において、求める人物像の設定は必須です。どのような企業でも、活動を発展させ存続していくためには、設立メンバーだけでは追いつかなくなり、新たな人材の採用が必要になることでしょう。では入社してほしい人物像とは、どのような人材でしょうか。例えば技術職であれば、データに基づき論理を立て解析ができる、既存の枠にとらわれず新たな手法を常に模索していくなど、複数の要素を策定することが必要となってきます。
求める人物像は、最終的に、その職務において必要な要素がすべて含まれています。採用基準は、入社の時点で応募者が持っていなくてはならず、様々な理由で、入社後に学び取ることが難しい要素をいいます。しかし、採用基準が増えすぎることは、それだけ応募者の数を減らすことにもなるでしょう。また、多くの要素を兼ね備えている人材は人気がある分、他社と競争しなくてはなりません。ですので、できる限りの要素で、入社後の育成を目指すようにしましょう。
そもそも、求める人物像は採用活動において、なぜ重要なのでしょうか。採用担当者のスキルが優れていると、欲しいと思った人材を、絶妙な技術で志望度を引き上げて、入社させることもできるかもしれません。しかし、どのような人材が、社風や会社の価値観に合った人材か、想定していなければ、入社後に合わなくて早期に離職してしまったり、活躍できなかったりするでしょう。そのような状況は採用側だけでなく、応募者本人にとっても不幸です。
求める人物像が決定すると、評定表などに特性を落とし込み、目に見える形で複数名が共有することができます。本来は立場や価値観により異なる評価基準を統一し、書類選考、面接の際などに使用できます。また、どの選考段階でどの部分を見極めるか、面接で実際にどのようなポイントをみて、応募者を評定したらよいのか、などを複数名が同じ基準で評価できるでしょう。さらに採用後に育成を行う際にも、求める人物像を共有しておけば、研修のテーマを考える際に役立ちます。
では、求める人物像は、具体的に、どのような手順で決めていけばよいのでしょうか。まずは、自社の方向性を整理することがカギとなります。今後の中長期的な事業展開に照らし合わせ、どのような人材が必要となるか、リストアップしましょう。また、会社の持っている行動指標や、社是などの価値観を、今後の方向性も合わせて見直してみることです。さらに、最終的に人材が配置される現場や部署に、どのような人材や人数が必要なのか、ヒアリングしてみましょう。
次に、さらに人物像を具体化するために、社内で高い成果をあげている人の特徴をまとめてみます。スキルは配置部署によってそれぞれ違いますので、業務をこなす中での定型的な特性にフォーカスします。チームとの連携の取り方、困難に当たった時の解決の仕方、将来へのビジョンなどの切り口、で考えるのもよいでしょう。ここまでを、現場でヒアリングした声、予算などと合わせて考えてみると、大体の人物像のイメージができてきていると思います。
求める人物像というと、一般的に良い、と言われる性格の要素を集めてしまいがちです。人格的に成熟している、性格的に良い要素が揃っている優れた人材は、大手企業を含むどこの会社でも人気があります。また、採用できたとしても定着するかはわかりません。特に中小企業なら、事業やサービスの内容を含め、自社らしい要素がどこかに眠っているはずです。例えば、アットホームな雰囲気で社内のイベントが多く、参加率が高いなど。そこに参加して楽しんでくれるような人材なのか、ということを想像してみましょう。
また、行おうとしている採用活動が新卒者向けなのか、キャリア採用なのか、によっても求める人物像が変わってきます。新卒採用においては、ポテンシャル採用、すなわち、採用してから人物像の理想に合うように育てること、も含めて人物像が定められます。キャリア採用の場合、それまでの経験で、すでに仕事のやりかたや、価値観が出来上がっていますので、より具体的な人物像の設定が必要となってくるでしょう。現場で即戦力として受け入れられるような、職務的な条件も明確に求められるはずです。
求める人物像が出来上がったところで、実際の求人票にどのように書けば、思うような人材が応募してくれるのでしょうか。まずは、採用基準にもとづき、スキルや経験、学歴など、これがないと採用には至らない必須条件を設定します。次に、これがあれば採用に有利になる、と思われる優遇条件を記載します。最後に、今までで練った人物像をもとに、仕事における行動特性をリストアップすると、わかりやすいでしょう。仕事においてこのような行動ができる、このような考え方ができる、という感じです。
書く際にどの項目でも大切なことは、とにかく具体的に書くことです。必須条件、歓迎条件では、資格であれば資格名、PCスキルではソフト名、特定の職種経験、経験年数、など明確に記載しましょう。人物像においては、現場でのヒアリングや、社風に合うかどうかの検討をもとにします。チームを巻き込む力がある、数字やデータを分析する業務に関心がある、主体性を発揮することができる、など。求人票を読んだ人が、まさに自分に当てはまる、と思うような書き方を目指しましょう。
求める人物像を設定するメリットとして、人物像が具体的になってくると、その人物の行動パターンを想定できます。そのあらすじに沿って、採用活動の設計を行うことができるでしょう。募集時期、どのような場所に求人を出すか、どのような方法で求人票を掲載するか、面接はどのような形がいいか、などです。また、実際に求人票を作る際にも、あらかじめ練ってあるのでスムーズでしょう。応募者側も、自分がその人物像に当てはまるのかどうか、を判断するため、ミスマッチが減り、採用が効率化します。
また、採用する側は多くの場合、いくつかの異なった職階や立場の、複数名から構成されていることでしょう。例えば、人事担当の他に現場、経営管理側などが一般的です。このような場合、前もって、お互いに採用したい人物像をすり合わせておかないと、面接が進んだ際に不採用が続出するなど、採用活動がスムーズにいかなくなります。経営側と人事はまずベースとなる人物像を決めてから、職務の観点から現場から意見を求めるようにすると、上手く行く確率が高くなるようです。
求める人物像は、職種によってどのように違うのでしょうか。事務関連職では、同じ作業を継続的に行う能力、部署内で連携を取って業務をスムーズに行う能力、正確に業務を推進する能力が必要とされます。加えて、配慮やサービス精神が求められるのも、他社のサポート的な役割を含む、事務系ならではといえるでしょう。技術関連職では、要求された精度まで開発を重ねる継続力、その都度発生する問題や課題を解決する問題解決能力、緻密な作業を遂行する能力、などが求められています。
営業関連職の場合は、顧客との交渉をスムーズに進める能力、相手の話を聞きつつ提案していく提案力、相手に関心を持ちオープンに交流できる社交性、などが挙げられます。また、変化の激しい時代の動向をつかみ、グローバルな視野で物事を考えられる情報収集能力、様々な手法で工夫して物事を達成できる能力、も重要と考えられるでしょう。このほか、専門職などでは、職種によりさらに細分化されます。アナリストなどの金融専門職では迅速さや的確さ、編集などのクリエイティブ系の専門職では、緻密さや正確性、継続力が求められるなど。
では、どの職種にも共通して、求められる能力はあるでしょうか。転職サイトDODAは、企業に必要とされるヒューマンスキルを、6つのカテゴリに分けて、求人別に集計を行いました。結果、最も多くの求人で使用されていたのは積極性で、全体の7割を占めていました。どのような職種においても、与えられた仕事や指示を遂行することに終始せず、自分にできることに頭を使って、主体的に考える姿勢、が求められていると考えられます。経団連が行った新卒採用向けの調査でも、同じように主体性がトップでした。
大手企業と中小企業では、求める人物像にどのような差異があるでしょう。大手企業では、採用活動にかけられるコストの面で、比較的余裕があります。また、知名度が高ければ応募者の数も多く、適正人数に絞るために、細かい採用基準を設定しなくてはなりません。対して中小企業では、人手を集めるというステップがまず必要になります。職種などによって一概に言えませんが、記載の仕方に幅をもたせ、多くの応募者が自分に当てはまる、と思うような人物像を設定したほうがよいでしょう。
また、大手企業は人数が多いため、部署ごとに業務が細分化されており、より専門的な人材が必要とされるでしょう。中小企業では、少ない人数で多岐にわたる業務を担当しなければならないため、複数の業務を同時にこなせる、幅広く興味が持てる人材が求められると思われます。また同じコミュニケーション力という要素でも、大手企業では、それは部署間の調整や部署内で連携して、成果を上げる力であるかもしれません。中小企業では、上司や経営側と上手に意思の疎通ができて、成果につなげられる力を指すなど、意味合いが違ってきます。
求める人物像について、イメージや理解が深まったでしょうか。求める人物像づくりに積極的に取り組む段階で、自社について研究を重ね、思っていなかった発見があるかもしれません。自社に合った人材を採用することで、企業にとって重大な投資である、採用コストを削減することにつながります。企業側だけではなく、応募者の満足にもつながります。現在の採用活動の成果が入社後も証明し続けられれば、長期的な企業としての幸せと、応募者個人の幸せ両方を実現することができるでしょう。
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