諭旨解雇の意味とは【懲戒解雇との違いや退職金などについて解説します】

記事更新日:2023年03月22日 初回公開日:2023年03月20日

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従業員の不祥事は、会社の印象や業績に悪影響を与えます。他の従業員や外部に示しをつけるためにも、厳正な懲戒処分を下す必要があるでしょう。最悪の場合、懲戒処分ですぐに解雇できるような事象も存在します。しかし、長年会社に貢献してきた功績や本人の反省の態度などからなんとか処分を軽くしたいと考えることもあるのではないでしょうか。諭旨解雇は、懲戒処分に相当する違反を犯した場合でも、会社からの温情をかけて解雇できる懲戒処分です。この記事では諭旨解雇の概要や正しく手続きするためのポイントを解説します。

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諭旨解雇とは

従業員に退職届を提出させた上で解雇する懲戒処分

諭旨解雇とは、解雇に相当する違反を犯した従業員に対して企業が行う懲戒処分です。企業は従業員に退職を勧告し、双方が納得した上で従業員に退職届を提出させるという流れで解雇します。対象の従業員が退職を拒否した場合は、懲戒解雇に移行するため、事実上の強制退職になります。退職金は全額または一部支給されますが、懲戒解雇の次に重い懲戒処分です。法律上の規定はなく就業規則で定められるため、会社によって内容が異なります。

諭旨解雇と懲戒解雇の違い

情状酌量が適用されるかどうか

諭旨解雇と懲戒解雇では、情状酌量が適用されるかどうかに違いがあります。諭旨解雇の場合は、従業員が会社から自発的な退職を促されて納得した上で行われる解雇です。そのため、本人の尊厳を守ることができるという情状的措置が取られた上での解雇になります。違反や不祥事の悪質性が極めて高く、他の社員や社会に示しがつかない状態で下されるのが懲戒解雇です。懲戒解雇は懲戒処分の中でも最も重く、下される社員の負担が大きい特徴があります。

退職金などの退職条件が異なる

諭旨解雇と懲戒解雇では、退職金を含めた退職条件に違いがあります。諭旨解雇の場合は、自己都合と同様の退職金が支給されるのに対し、懲戒解雇は全額不支給や減額の措置が取られることが多いです。しかし法的な支給義務は定められておらず、会社の就業規則に則った方法で支給されるため、会社によって様々なパターンが考えられるでしょう。退職金以外の退職条件についても、就業規則にある諭旨解雇と懲戒解雇の記述をもとに適用されます。

諭旨解雇となる事例

ハラスメントなどの行為があった

諭旨解雇になった過去の事例では、パワハラやセクハラなどのハラスメント行為によるものがありました。例えば、従業員に対して人格否定や尊厳を傷つける発言をすることは、パワハラに該当します。ハラスメント行為は社員の就業環境を悪化させ、モチベーションの低下を招きます。それにより離職や作業効率の低下を招き、職場全体の生産性に影響するでしょう。そのため、社員を働きづらい環境に追い込むハラスメント行為は諭旨解雇の対象となります。

就業規則違反の繰り返しがあった

就業規則違反の繰り返しは、諭旨解雇の対象となることがあります。規律違反で初回は「戒告」のような軽い処分を受けていても、繰り返されるうちに処分が重くなり、最終的に諭旨解雇となることがあります。繰り返すことで会社が被る不利益や問題行動の反復性が与える影響を考えると、妥当な判断になるでしょう。就業規則違反で複数回注意しても改善されず諭旨解雇になった場合は、それに相当するほどの違反が繰り返されていると証明できるものが必要になります。

諭旨解雇が認められるための3つの要件

予め就業規則上の定めがあること

諭旨解雇が認められるためには、就業規則上で懲戒の種別および事由が定められている必要があります。諭旨解雇は法的な規定が定められていないため、就業規則に則って手続きを進めます。そのためには、種別として諭旨解雇が存在する旨と、事由としてどのような場合が諭旨解雇に値するかの具体的な記述がされた規定が必要です。特に諭旨解雇は懲戒解雇に次ぐ重い懲戒処分のため、従業員が理解できる分かりやすい書き方が必要です。他の懲戒処分とは事由を分けてを定める必要があるでしょう。

就業規則が従業員に対して周知されていること

諭旨解雇をするためには、諭旨解雇に関係する事項を含めた就業規則が従業員に周知されている必要があります。労働基準法では、会社が従業員側に就業規則を周知することが義務付けられています。就業規則は従業員にわかりやすく周知され、浸透して初めて効力を持つでしょう。従業員に就業規則が周知されていない状態での規則違反は労働基準法で認められないため、諭旨解雇は無効となります。内容を変更した場合でも、都度周知が必要です。

「懲戒権の濫用」と「解雇権の濫用」に該当していないこと

「懲戒権の濫用」と「解雇権の濫用」に該当している場合、諭旨解雇は認められません。諭旨解雇は就業規則のもとで行われるため、法的な規定はありません。しかし、諭旨解雇の理由が主観的で合理性に欠け、社会通念上相当であると認められない場合は、労働基準法により懲戒権の濫用で諭旨解雇は無効となります。労働基準法は会社で立場の弱い労働者を保護するためにある法で、労働者が不利にならないような規定が定められています。そのため、就業規則に基づいて解雇理由が認められても、裁判では通用しないことがあります。

諭旨解雇の手続きの流れ

就業規則の規定を確認する

諭旨解雇の手続を進めるためには、最初に就業規則の規定を確認しましょう。対象の従業員が諭旨解雇に値するか否かを就業規則に当てはめて調査する必要があります。確認を怠ることや読み間違いにより事実誤認のトラブルが発生するリスクがあります。「懲戒権の濫用」と「解雇権の濫用」の規定が定められていることにより、誤認された状態での諭旨解雇は違法に値します。諭旨解雇を正しく進めるためには、正確な調査と事実確認が重要です。

具体的な証拠を確保する

諭旨解雇を進めるためには、諭旨解雇に相当する行為があったことを示す具体的な証拠の確保が必要です。違反行為や問題行動の証拠が不十分な場合、客観的で合理的な理由がないとみなされ、諭旨解雇が無効になります。諭旨解雇の対象者や関係者への事情聴収を含め、証拠となるものの情報収集が必要です。違反行為への指導をしたにもかかわらず改善されなかったため諭旨解雇に至った場合は、メールや文書を証拠として保存しておきましょう。

弁明の機会を与える

諭旨解雇の際は、トラブルに発展した時のために当該社員に弁明の機会を与えることが必要です。従業員と話し合うプロセスを無視すると、不当解雇で訴えられた際に「弁明する機会を与えなかった」として会社側が不利になる可能性もあります。その場合、解雇の無効や損害賠償の要求が発生することもあるでしょう。弁明の際は、従業員が話しやすい状態にするため、人事担当者と一対一の面談形式などを用いた方法で行います。その際、面談記録を作成しておくことで証拠として残すことができます。

弁明の内容も踏まえた上で諭旨解雇処分の可否を決定する

諭旨解雇処分の可否は、当該社員の弁明の内容を踏まえた上で決定します。会社が調査した結果や弁明の内容をもとに、諭旨解雇に相当するかどうか改めて精査が必要です。この時点で最終的な決定がされるため、事実の誤認がないかなど再確認しましょう。諭旨解雇は重い懲戒処分であるため、事実と相違があると、不当解雇として会社が損害賠償を求められることにもつながります。後に起こりうるトラブㇽを想定して最終確認することで、漏れを防ぎやすくなりますし、対処がしやすくなります。

諭旨解雇処分とその通知を記載した通知書を交付する

諭旨解雇が決定したら、懲戒処分通知書を当該の従業員に交付します。労働基準法で、解雇の30日前までに従業員へ通知することが定められています。口頭の通告は後に意見の食い違いにつながるため、解雇通知として具体的にな解雇理由や日程を記した書類で通知しましょう。諭旨解雇は、従業員に退職届を提出させた上で解雇する懲戒処分です。スムーズに諭旨解雇処分を進めるために、従業員へも退職届の提出を促しましょう。書類の不備が発生することも考え、早めの提出が必要です。

諭旨解雇とする際の4つのポイント

情状酌量の余地があるかどうかを検討する

情状酌量の余地は、対象者の過去の貢献や反省の様子などから検討します。就業規則には、「情状によって処分を加重または軽減する」といった文言の記述がある会社が多いです。従業員が何かしらの違反を犯しても、情状的措置によって処分を軽くできると定められたものです。この場合、対象者の過去の功績や諸事情を鑑みて判断します。本来は懲戒解雇とされる事由を情状酌量の余地があると判断された場合、諭旨解雇となります。場合によっては懲戒解雇が適切なこともあるため、慎重に検討しましょう。

諭旨解雇を適用させる理由を明らかにする

諭旨解雇は、適用する理由を従業員に対して明らかにする必要があります。就業規則や労働契約書に明記されている事項に沿って従業員に伝えます。懲戒解雇に値するところを軽くした懲戒処分であるため、懲戒解雇に相当する理由が必要になります。諭旨解雇に関する就業規則は企業によって異なります。客観的に見て社会通念上解雇に相当する理由ではないと判断される場合、適用されないことがあります。懲戒処分に関する記述や諭旨解雇の適用条件は詳細に明記されていなければなりません。

退職金を支払う必要があるかどうか検討する

諭旨退職の退職金は、就業規則に則って支払いの必要性やいくら支払うかを検討する必要があります。就業規則に記載されている、諭旨解雇における退職金の規定に基づいて決定します。ただ、単に諭旨解雇であるだけでは、退職金を減額または不支給とすることはできません。過去の判例で認められているのは、それまでの勤続を覆すほどの著しい問題行動があった場合です。この点を踏まえて、従業員の退職金の取り扱いを考えましょう。会社での調査結果や従業員の弁明内容も判断材料の一つになるため、慎重な決定が必要です。

裁判に発展する可能性があることも考えておく

諭旨解雇を適用する際は、後に解雇処分した従業員が訴訟を起こして裁判に発展する可能性を考える必要があります。会社は温情を掛けて解雇したつもりでも、従業員は何かしらの不満を抱えていることもあります。その場合、裁判での復職の要求や不当解雇による損害賠償を要求されることもあるでしょう。過去の事例では、判断基準の曖昧さや解雇の手続きに不備があった場合、解雇が無効とされたこともあります。諭旨解雇をする場合には、事前に弁護士に相談して法的にも対処できる状態にしておくと安心です。

まとめ

諭旨解雇する際には処分が適切であるか十分検討しよう

諭旨解雇に必要な手続きやポイントを解説しました。諭旨解雇は会社の温情がかけられ、懲戒解雇より軽い処分ではありますが、一人の人生に大きく影響する決定事項です。そのため、調査から最終決定まで慎重に行う必要があります。一つでも不備があると、諭旨解雇は無効とされる可能性も高いです。それを防止するためには、一つひとつのプロセスが正確に行われなければなりません。会社が不利益を被らないためにも、確実な情報をもとに処分を決定し、トラブルを回避するための対策をとりましょう。

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