記事更新日:2020年09月29日 | 初回公開日:2020年09月18日
用語集 グローバル用語解説 人事・労務お役立ち情報 人事・労務お役立ち情報フレキシブルタイム制とは、労働基準法第32条に基づいた労働時間の管理方法であり、近年多くの企業で導入が始まっている働き方です。一般的には、「午前9時から午後6時まで」というように従業員が勤務する時間を定め、従業員はそれに従い働きます。これに対してフレキシブルタイム制では1日単位での労働時間を固定しません。一定期間の総労働時間だけを決めておき、従業員はその労働時間の範囲内で働く時間を自分の裁量で決めることができます。これによって労働時間を固定する働き方に比べ、従業員の各事情に応じた働き方がしやすくなります。
フレキシブルタイムと類似した言葉に「フレックスタイム制」というものがあります。フレキシブルタイムとは、フレックスタイム制の中で出てくる用語のひとつ。フレックスタイム制=コアタイム+休憩+フレキシブルタイムのように、フレキシブルタイムとは、フレックスタイム制という働き方の中で設けられた自由に勤務時間を決められる時間帯です。つまり、フレキシブルタイムは「フレックスタイム制」の構成要素だと考えると良いでしょう。
フレックスタイム制度とは、1ヶ月の総労働時間を定めることで、始業・終業の時刻を従業員が決定できるものです。また、1ヶ月の総労働時間さえ超えなければ、法律によって定められている1日8時間、週40時間の労働時間を超えて業務すること可能。もともとは欧米諸国で始まった制度ですが、日本でもかなり浸透してきた働き方です。満員電車の緩和にも繋がるフレックスタイム制度は、政府としても推奨しており、ますます進んでいく働き方になるでしょう。
コアタイムとは、企業に務める従業員が必ず労働していなければならない時間帯を指します。そのため、就業規則にコアタイムを定める場合は、開始・終了の時刻を明確に明記しておかなければなりません。一般的には午前9時前後~午後9時前後で設定されることが多く、かつて日本のほとんどの企業がコアタイム制でした。しかし、多様化する社会環境の変化によってその割合は変わりつつあります。とはいえ、地方の中小企業などにおいてはまだまだコアタイム制の企業も多く、規模や地域によっても差があるのが現状です。
フレキシブルタイムとは従業員が自分の裁量で働く時間を決められることであり、勤務時間が固定されたコアタイム制度とは異なります。そのため、従業員は定められたフレキシブルタイムの時間枠の中から、自分が働きたい(あるいは働くべきを含む)時間を決定して業務を行うことが可能です。ただし、自由に出勤・退勤ができるからといってチームに迷惑をかけるような勤務があってはなりません。カレンダーに出社時刻を記入して周りに周知する、会議の時刻はフレキシブルに対応するなど柔軟性は必要になってくるでしょう。
コアタイムとは従業員が1日のうちで必ず働かなければならない時間帯のことを指します。そのため、フレキシブル制においても特別な理由がない限り、このコアタイムの時間は必ず勤務していなければなりません。コアタイムのメリットとしては、定例会議など毎週固定で実施している会議の日程調整が容易になることです。ただし、コアタイムを設定する場合は、正確な開始・終了時間を定める必要があります。その時間内においては、遅刻・早退の制度を取ることも可能です。
子育て世帯や親の介護をしながら仕事をしている従業員など、高度成長期の日本とは違い生活環境が多様化してきました。また、不妊治療などのために現状の働き方では続けられず、退職せざるを得ない人も少なくありません。これからさらに加速する高齢化社会において、ますます柔軟な働き方が必要になってくるでしょう。フレックスタイム制では、働き方に自由性があるため、優秀な人材の採用・定着、今まで働きたくても働けなかった人の採用にもつながります。
フレキシブルタイム制が注目されている背景には、厚生労働省の「働き方改革関連法令」の改正があります。2019年4月より導入された新制度では、今までの1ヵ月清算から3か月で時間外労働時間を生産する方法に変更しました。この改正により、時間外労働時間を3か月で精算することができ、柔軟な働き方が可能になりました。ただし、手続き面において上長への届け出が必要になるほか、労働時間の計算が複雑になるなど管理部門の負担が増えたと言えるでしょう。
日本でも1日の労働時間の長さを固定せず働くフレキシブルタイム制が浸透してきましたが、必ず設けなければいけないものではありません。スーパーや百貨店などの接客業や、ナースや保育士などシフト管理で業務を行っている職種の場合、自分の好きな時間に業務をするというのは現実的に難しいでしょう。子育て世代、介護世代にとってフレキシブルタイムはメリットも多いため、導入が難しい場合は職種異動や時短勤務などで対応しているようです。
フレキシブルタイムが適用される従業員の始業・終業の時刻は従業員の自主決定に委ねられますが、事前に勤務しなければならない固定の勤務時間を設ける必要があります。例えば、午前6時から午後20時までの間を終業時刻とし、従業員の自主的決定に委ねるとしましょう。その場合、午前10時から午後4時までの間を必ず勤務しなければならない就業時刻とし、労働規約にも記載します。上長の承認がない限りは、所定の業務に従事することが必要になり、会議や打ち合わせなども合わせやすくなります。
コアタイムとフレキシブルタイムの両方を設ける際は、フレキシブルタイムの時間を十分に取ることが必要不可欠です。フレキシブルタイムが極端に短いとフレックスタイム制度そのものの意味がなくなってしまいます。コアタイムよりもフレキシブルタイムを短く設定している企業もありますが、フレックスタイム制度の本来の意味を考えると長所を活かしきれていないかもしれません。フレキシブルタイムを十分に取り目的を生かすためには、コアタイムは休憩時間を除いて4時間くらいにすることが理想的と言えるでしょう。
フレキシブルタイムを定める際には、労使協定で制度の基本的枠組みを定める必要があります。その際には、対象となる従業員の範囲(正社員のみなど)や清算期間といった具体的な内容を明記しなければいけません。コアタイムとフレキシブルタイムにおいては任意設定であるため、運用過程で時間を変更するなど柔軟な対応を求められます。また、フレックスタイム制において従業員が労働すべき時間を定める清算期間は、上限1か月から3か月となりました。このあたりも見落としのないよう規約を作るときは気をつけましょう。
フレックスタイム制において、残業時間を日単位で考えることはできません。そのため、フレキシブルタイムを適用した場合の残業時間は、従業員が従事すべき労働時間の清算期間において、総労働時間に対する実労働時間の超過時間で考えます。また清算期間が1ヶ月以内の場合と、1ヶ月超3ヶ月以内の場合によっても異なります。繁忙期などは従業員の健康面を考え、長時間労働を避けるためにも1ヶ月超3ヶ月以内の場合でも、月ごとに残業時間を通知するなどの施策を取ることが推奨されます。
残業時間をカウントする際、法令改正前の1ヶ月以内においては、月単位で清算期間の法定労働時間を超過して労働した時間が残業時間でした。しかし、改正後の1ヶ月超3ヶ月以内になってからは複雑になり、清算期間が3ヶ月の場合は法定労働時間を超えた分の労働時間を翌月に繰り越すことが可能になりました。ただし、繁忙月などに従業員を極端に長く働かせることを防ぐために、週平均50時間(1月あたり)を超える分は、時間外労働として法定外残業時間にカウントされます。この労働時間を各月で計算して、各月の残業時間となります。
アフラックでは、「アフラック Work SMART」という名の働き方の基本方針を定め、フレキシブルタイム制を実施しています。全従業員が時間と場所に捉われない働き方ができる環境を整え、シフト勤務やフレキシブル制度などの柔軟な勤務制度を活用。フレキシブル制度では、組織(部署)単位でコアタイムの有無を選択できるなど、かなり柔軟な労使規定になっています。また、全従業員に在宅勤務を認めており、テレビ・オンライン会議を併用しながら通常業務と同じようにミーティングなどもを行うことが可能です。
健康経営優良法人認定制度ホワイト500にも認定された野村不動産は、ワークライフバランスはとても重要な要素と捉え、早い段階からフレキシブルタイム制度を採用。子供が小学3年生までの従業員については、男女関係なく時短でのフレキシブルタイム (10:00~17:00/9:30~16:30)を実施し、子育て世代をサポート。また、介護休業を最長通算3年間とし、休業と合わせて最長3年間をフレックスタイム制勤を可能にするなど、介護世帯の状況により取得できる支援制度を選択できます。
バックアップソフトウェアの開発・販売などを手がける株式会社アール・アイ は、テレワークをはじめとした働き方改革の一環としてフレキシブルタイムを導入。ソフトウェアなどのIT関連の事業を主軸としていることからプログラマーなど納期優先の職種においては、柔軟に働く時間を定めることが可能です。フレキシブルタイム制を活用することで残業時間の削減、効率の良い働き方に成功。全従業員のの月平均残業時間が20時間を切るなど、IT=ブラックというイメージを払拭するべく事業改革に乗り出しています。
ワークライフバランスという考えが一般化され、働き方にも多様性が求められる現代において、フレキシブルタイム制はますます必要とされるでしょう。もちろん、働く側にとってのメリットだけでなく、企業としても個人が効率的に時間配分を行なうことで、残業時間の軽減や人材不足の解消など良い面もあります。導入にあたっては、コアタイムやフレキシブルタイムの時間配分などをバランスよく活用すれば、多くの人にとって利点を感じられる制度。効率良く生産性の高い組織になるためにも、まずはフレキシブルタイムの仕組みを理解することから始めてみませんか?
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