記事更新日:2021年11月04日 | 初回公開日:2021年11月02日
採用・求人のトレンド 人事・労務お役立ち情報 グローバル経済 外国人採用・雇用初めに特定技能の二国間協定とは特定技能外国人を送り出す国と日本の間で締結している協定のことです。協定覚書(MOC)とも呼ばれています。具体的には日本と労働者を送り出す国との取り決めのことを指しています。二国間協定を結ぶことで、協定国からの人材を受け入れやすくなります。二国間協定は、特にアジアの新興国との協定が多いのが特徴です。また、二国間協定はそれぞれの国の事情や日本との関係性によって締結される協定の内容は異なっています。
二国間協定には特定技能の外国人を雇用する際のルールが示されています。外国人労働者に対する需要が高まる中、二国間協定は各国とのルールや約束事項を定め、受け入れ、そして送り出しの連携の円滑にしています。そして、協定国から特定技能の外国人を採用するときは、この二国間協定の取り決めに従わなければなりません。ですので、特定技能の外国人を受け入れる際は必ず協定内容を確認する必要があります。ただし協定の内容は、協定国によって異なるので注意が必要です。
特定技能とは日本で働く外国人の在留資格の1つです。2019年4月から導入が始まり、人手不足が深刻化している14の業種で、外国人労働者が働けるようになりました。具体的には建設業や宿泊業、漁業、自動車整備業などが含まれています。これらの業種は単純労働が多いことから今までは外国人の雇用が難しい状況でした。しかし国内の人材不足が深刻化していることから新たな在留資格として「特定技能」が加わりました。また、特定技能と技能実習は似ているように見えますが、技能実習は国際貢献を主な目的としているため実際は大きく異なります。
そして外国人労働者は特定技能の在留資格を取得後に日本の企業と雇用契約を結ぶことになります。特定技能の在留資格には特定技能1号と特定技能2号の2種類があります。特定技能1号は特定の産業分野で一定程度の知識や経験を持つ外国人に向けた在留資格です。特定技能1号の資格を保有するためには日本語のスキルに加えて、仕事に関する試験に合格しなければなりません。また、日本に在留できる期間は5年に限定されています。一方で特定技能2号は、特定技能1号の修了者が望んだ場合に次のステップとして用意されている在留資格です。
2021年10月現在はアジア圏を中心に13ヶ国と二国間協定を結んでいます。具体的にはフィリピン、ネパール、インドネシア、モンゴル、タイ、ベトナム、ウズベキスタン、カンボジア、スリランカ、ミャンマー、パキスタン、バングラデシュ、インドの13ヶ国です。その中で多くの国は日本よりも国民の平均年齢が若く、労働力が豊富にあります。今後も日本の労働不足が続くことが予測されているので、新たな協定国が誕生するかもしれません。
二国間協定の協定国について説明をしましたが、人材の受け入れは協定を結んでいない国からも可能です。ただしいくつか留意点があります。例えば二国間協定を結んでいない国の人材を雇用する場合には、事前に領事館または在日本大使館への確認が必要です。さらに協定を結んでいない国では技能試験を実施することも出来ません。そのため、実際は協定国と比べると手続きのハードルが高く、人材があつまりにくいのが現状です。
二国間協定では特定技能の在留資格を持つ外国人の円滑且つ適性な送り出しを実現するために、定期に協議を行なっています。協議では、特定技能に関する課題について話し合い、情報交換や課題解決をしています。具体的には人権侵害、費用の不当な徴収、偽変造文書の行使といった問題に対して議論を行なっています。以前と比べると労働環境は改善しつつありますが、外国人の労働に関する問題はゼロではないため、定期的に協議を行なうことは非常に重要と言えるでしょう。
次に二国間協定を結ぶメリットや目的について解説します。1つ目の理由は特定技能外国人の送り出しや受け入れが円滑になるからです。外国人材が日本で働く際に求められる手続きは国によって大きく異なります。また、日本も外国人材の受け入れにあたって複雑な手続きや書類の提出が求められます。そこでお互いの国が必要事項を満たせる手続きに変更することで、そのプロセスをよりスムーズにする効果が期待できるでしょう。
2つ目の理由は特定技能外国人の労働環境を保護するためです。技能実習制度などによって昔から外国人が日本で働く機会は多くありました。しかし、過剰労働や低賃金で働かせるなどの劣悪な労働環境が蔓延しており、大きな社会問題にもなっていました。二国間協定はこうした環境の撲滅するための規制を強化するという役割を担っています。これが最終的には、外国人が安心して働ける環境を整備することにもつながっています。
3つ目の理由は二国間の利益を強化することが出来るからです。日本には少子高齢化によって人手不足の企業が多くあります。そのような企業は人材不足を補うために海外人材の受け入れを希望しています。一方で協定国には、日本で働きたいという人材がたくさんいます。つまりお互いの国のニーズが合っているということになります。そこで協定を結ぶことでより手続きがスムーズになり、多くの外国人材が日本で働くことが出来るようになります。
二国間協定を結んでいる国の中には、特別な手続きが必要なケースがあります。ここでは特別な手続きが必要な国を順に紹介していきます。1ヶ国目はベトナムです。特定技能の在留資格を持つ外国人の中で、ベトナム人の数は最も多く、現在は全体の半数以上を占めています。ベトナムの人材を雇う場合は現地の送り出し機関を経由しなければなりません。さらに企業はベトナムの大使館、あるいはDOLABという管理局に推薦者表交付の申請をする必要があります。そして申請後に政府の承認一覧に自社の名前を記載されることがベトナムからの人材を受け入れる必須条件となります。
2ヶ国目は東南アジアにあるフィリピンです。フィリピンから人材を受け入れる際は、現地の海外労働事務所が公開している認定送出機関一覧に記載がある送り出し機関を経由しなければなりません。さらにフィリピン国籍の人材を雇用する場合はPOLOと呼ばれる労働事務所に申請をして、審査を受ける必要があります。人材の受け入れ企業に対してPOLO担当官の英語面接が行われ、場合によっては実地調査が行われることもあります。そして海外雇用庁(POEA)に特定技能所属機関として登録がされた時点で採用活動をすることが可能です。
3ヶ国目はミャンマーです。ミャンマー国籍の人材を雇用するためには、政府から認定を受けた送り出し機関を通さなければいけません。さらに送り出し機関と人材との間で雇用契約を結ぶ必要があります。また、ミャンマー労働・入国管理・人口省(MOLIP)で海外労働身分証明カード(OWIC)を申請することが必須となっています。新たに雇用する特定技能外国人の場合は、在留資格認定証明書を日本国大使館に提示して査証の発給を申請します。
4ヶ国目はインドネシアです。インドネシアは特定技能の在留資格で働く人の数がベトナムに次いで2位となっています。インドネシア人を雇用するときは、まず政府が管理している労働市場情報システム(IPKOL)に登録が必要です。IPKOLを通じて企業側と求職者側の意向が一致した時点で雇用契約を結びます。そして受け入れ企業が在留資格認定証明書を申請して、交付された原本は労働者本人に送付します。労働者は政府の海外労働者管理システム(SISKOTKLN)に登録し、移住労働者証(E-KTKLN)を受け取ります。このE-KTKLNと在留資格認定証明書を日本国大使館に提出することでビザの発給を受けることが出来ます。
5ヶ国目はネパールです。ネパールにいる人材を雇用したいときは、人材への直接アプローチのほか、在日大使館に求人を出してもらうことも出来ます。日本に在住のネパール人の場合は地方出入国在留管理官署に在留資格変更許可申請をしなければなりません。労働者はネパールを出国するときにネパール労働雇用・社会保障省海外雇用局が発行する海外労働許可証の提示が求められるので注意が必要です。
最後に6ヶ国目はタイです。タイ国籍の人材を採用する場合は、直接雇用のほか、タイ労働省認定の送り出し機関を経由して採用活動を行います。ただし現地で直接採用活動をすることは出来ません。直接雇用をするときは雇用契約を先に結び、その後雇用契約書と在留資格認定証明書を在日タイ王国大使館労働担当官事務所に提出します。反対に送りだし機関を利用する場合は、先に在日タイ王国大使館労働担当官事務所に雇用契約書のひな形認証手続申請をして、認証を受けます。その後に送り出し機関から人材の紹介を受けることが可能です。
今回は特定技能の二国間協定について詳しく説明をしてきました。この記事を読んで二国間協定に関する理解を深めることが出来ましたでしょうか。現在の締結国は13ヶ国ですが、外国人労働者の需要の高まりによって今後もその数が増える可能性があるでしょう。ただし二国間協定は国によってルールや規則が異なるので、注意が必要です。特定技能の外国人を雇用する際は、自社が採用したい人材の出身国の協定内容に沿った採用活動をするようにしましょう。
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