コロナ禍で注目の退職勧奨とは? 【解雇との違い・会社都合で行う?】

記事更新日:2020年10月13日 初回公開日:2020年09月29日

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不況や経営不振のために人員を削減をしたい。何度注意しても無断欠勤を繰り返したり、著しい能力不足が改善されない従業員がいる。そのような事情があったとしても、無理やり従業員を辞めさせてしまうとトラブルになる可能性が非常に高いでしょう。できれば会社も従業員も双方が納得した上で、円満に退職の話を進めたいものです。そのために有効な手段、会社からの申し出で従業員に退職してもらう「退職勧奨」について手順や注意点を解説します。このような事態は起こらないのが一番ではありますが、いざという時のために会社の人事担当者はぜひ覚えておきましょう。

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退職勧奨 会社都合とは

会社が従業員に退職を勧めること

退職勧奨(たいしょくかんしょう)とは、会社都合による退職方法のひとつ。勧奨とは「そのことをするようすすめること」という意味です。つまり、退職勧奨とは、会社が従業員に対して「申し訳ないが辞めてもらえないか」などと言って退職を勧め、従業員が自らの意思で退職するように促すことをいいます。不況や経営不振の場合、素行不良・能力不足など従業員に問題がある場合など、やむをえず従業員に辞めてもらいたいと会社が考えた時に行います。

退職勧奨と解雇の違い

従業員が退職に同意しているかどうか

「退職勧奨」と「解雇」は混同されることがよくありますが、全く違うものなので注意しましょう。退職勧奨とは、会社が従業員に自主的な退職を求めるもので、従業員が退職に同意して初めて退職が成立する手続き方法です。それに対し解雇とは、会社が一方的に労働契約の解除(退職)を通告するもので、従業員の意思とは関係なく退職にする手続き方法になります。退職勧奨と解雇はどちらも会社から退職を働きかけますが、違いは退職するかどうかの決定権を従業員が持っているか会社が持っているかという点です。

解雇は法的制限あり・退職勧奨はなし

退職勧奨と解雇のもうひとつの違いは、法的な制限があるかどうかです。突然仕事を失うことは従業員の生活を不安定にするため、解雇を行うには労働基準法などの法律で厳しい制限が設けられています。解雇が認められるのは業務命令や職務規律違反・勤務態度に大きな問題があるなど、「客観的に合理的な理由」があり「社会通念上相当と認められる場合」に限られています。解雇は、会社が自由に行えるものではありません。一方、退職勧奨には法律上の決まりはなく、合理的な理由がなくても会社は自由に退職勧奨をすることができます。

退職勧奨を会社がする目的

解雇のリスクを避けるため

退職勧奨を会社が行う目的の多くは、解雇のリスクを避けるためでしょう。解雇の場合は、法律上の制限をクリアしていたとしても従業員は納得しておらず後に不当解雇だと主張され裁判沙汰になる恐れがあります。もし裁判になってしまうと会社のイメージダウンは避けられず、裁判のための費用や労力も計り知れません。退職勧奨であれば労使で話し合い従業員の同意を得てからの退職になるので、解雇のように後に争うリスクを避けて穏便に手続きを進めることができます。

退職勧奨を行うメリット

退職勧奨は会社の自由

退職勧奨は従業員に退職の同意をもらうことが前提ですので、解雇のように合理的な理由も社会通念上相当である必要もありません。ですから、会社は重大な規律違反など解雇事由にあたるほどの理由が従業員にない場合であっても、いつでもどの従業員に対してでも自由に退職勧奨を行うことができます。日本の法律では従業員を解雇するハードルは非常に高いので、法的な制限なく会社が自由に行えることが退職勧奨の最大のメリットです。

解雇予告・解雇予告手当は不要

解雇の場合は、少なくとも30日前までに解雇の予告をする必要があります。もし予告した日が30日に満たない場合は不足の日数分、予告を行わない場合には30日分以上の解雇予告手当(平均賃金)を支払わなければいけません。ですが、退職勧奨であれば、従業員が退職に合意しているので解雇のように保障は必要なく、解雇予告・解雇予告手当は不要です。退職勧奨のやり方に法律上の決まりはありませんので、いつどのように退職勧奨を行うのかは会社の自由です。

労使で話し合い円満に退職できる

会社が一方的に退職を通告する解雇と違い、従業員と話し合う機会を設けられることも退職勧奨のメリットのひとつでしょう。労使で話すことで次の職を探すための期間や労力を相談しながら退職日を決めることができます。また、従業員に退職するかどうか考える時間を与えることもできるので、従業員の気持ちや状況に寄り添いながら退職の話を進めることができるでしょう。このように、退職勧奨であれば解雇に比べると穏便に話を進めることができるため、円満に退職してもらうことが可能です。

退職勧奨を行うデメリット

強制力はなく従業員の同意が必要

退職勧奨により退職とするには、必ず、従業員の退職への同意が必要になります。会社からはあくまでも退職の「お願い」までになります。つまり、退職勧奨に応じるかどうかは完全に従業員の自由であり、もし応じない場合に会社が無理やり退職させることはできません。もし退職勧奨に応じなかった場合、従業員側に解雇に値する事情がある時は解雇に切り替えて退職させることができます。しかし、解雇するだけの事情がなく退職勧奨にも応じてもらえない場合は、引き続き従業員を雇い続けることになります。退職勧奨をする際は、応じてもらえなければ退職させることができないということも念頭に入れておきましょう。

トラブルや訴訟に発展する恐れがある

従業員の同意の上で進める退職勧奨ですが、トラブルや訴訟に発展することが絶対に無いとは言い切れません。例えば、退職勧奨を受けるかどうかは従業員の自由であるのに、退職するしか選択肢がないように従業員を誤解させて話を進める。退職に応じるように罵倒したり仕事を干したりして退職に追い込む。このように従業員が無理やり退職に同意させられたと感じてしまうようなやり方を取ってしまうと、後々に揉めることが容易に想像できるでしょう。退職勧奨は十分注意しながら正しい方法で進める必要があります。

助成金に影響が出る可能性がある

コロナの雇用調整助成金に注意

退職勧奨したい従業員がいる場合、助成金に影響が出ることがあるので注意が必要です。会社からの働きかけで行われる退職勧奨は、会社都合の退職です。ハローワークへ雇用保険の資格喪失を届け出した際、解雇と同様に「会社都合」として登録されます。助成金の種類によっては、会社都合の退職者がいないことが受給条件になっていることがあります。助成金を受給中もしくは申請予定の場合は、退職勧奨を行う前に受給要件を確認しておきましょう。

従業員のメリット

失業保険がすぐに長くもらえる

従業員にとっても、退職勧奨は応じるメリットがあります。退職勧奨は会社都合の退職なので、雇用保険の基本手当(いわゆる失業給付)を受給する際に解雇と同じ取り扱いになります。つまり、自己都合退職では2ヶ月の待機期間がありますが、退職勧奨の場合は失業給付の申請手続きから1週間の待機後にすぐ失業給付を受給することができます。また、雇用保険の加入期間にもよりますが、給付日数が自己都合退職よりも長くなります。ですから、自己都合退職に比べて、安心して転職活動を行うことができるでしょう。

従業員のデメリット

転職時に不利になることも

自己都合退職で交渉するのも手

退職勧奨は、従業員にとって不利になることもあります。それは、転職活動をする際に、会社都合退職である退職勧奨の経歴が先方の会社に悪印象を与えることが考えられるからです。退職勧奨の理由が経営不振による人員整理など従業員の責務でない場合は、理解を得やすくマイナスに捉えられることは少ないでしょう。しかし、能力不足など従業員側に理由があるケースでは「自社で本当に活躍してもらえるのだろうか」と懸念され、採否に影響が出てしまう可能性があります。

退職勧奨の手順

①社内で退職勧奨の理由を整理する

退職勧奨は、しっかり準備をした上で行わないと後々トラブルに発展してしまうことがあります。まずは、社内で退職勧奨の理由を整理しましょう。なぜ退職勧奨を行うのか。理由、対象者、公平性はあるか、いつ頃にどんな風に伝えるのか、退職の条件はどうするのか等、書面にまとめて担当部署で共有しておきましょう。従業員にあやふやな話をしないためにも、会社としての意見をまとめておくことが大切です。今回だけでなく今後の社内での退職勧奨の基準にもなりますので、時間をかけて検討しましょう。

②従業員と面談する

面談のポイント

次に、従業員と面談を行い退職勧奨を伝えます。デリケートな話ですので他の従業員に聞かれないように配慮し、個別に話す機会を設けましょう。勤務時間外に呼び出したり、自宅に訪問してはいけません。面談は就業時間中に行いましょう。また、話す内容をあらかじめ整理しておき、短時間で終わらせるのが大事です。口頭での話し合いは後々に記憶違いにより言った・言わないのトラブルになりかねませんので、面談内容はメモや録音などで記録しておきましょう。

③従業員の回答を待つ

退職勧奨の返事をすぐに求めることはできません。従業員にじっくり考える時間を与えて、自分の意思で決めてもらうことが大切です。とは言え、期限を決めずにいつまでも返事を待っていては困りますので、あらかじめ返答期限を決めておき、急かすことなく返事を待ちましょう。仮に、退職勧奨を断り仕事を続けると返答があった場合は、それ以上話を続けてはいけません。会社側が退職を勧める理由が不要なように、従業員側が退職を断る理由も不要なのが退職勧奨です。

④合意退職の手続きをする

従業員から退職すると返答をもらったら、合意退職の手続きを進めましょう。大事なポイントは、従業員が退職に同意したことを書面で残しておくことです。人の気持ちは時間が経つと変わることもありますし、口頭だけでは後に「退職に同意していない」「無理やり辞めさせられた」と言われて揉めてしまうかもしれません。お互いに聞き間違いや勘違いをしてしまう可能性もありますので、退職日や退職金などの条件面も書面で作成し、会社と従業員の双方で保管しておくと安心です。

退職勧奨に退職届は必要?

「合意書」や「確認書」が望ましい

従業員が退職に同意したとはいえ、退職勧奨は会社都合の退職です。そのため「退職届」を書かせることは望ましくありません。従業員ができれば在籍したかったと思っていれば「退職届」を書くことに抵抗があるでしょう。また、自己都合退職として不利に手続きを進められるのではないかと不安にさせてしまうことも考えられます。ですから、「退職届」ではなく、「合意書」や「確認書」という形で書いてもらうのが良いでしょう。もし、社内の事務処理の都合で「退職届」の形で必要な場合は、退職勧奨により退職する旨を記載するなど、自己都合の退職ではないと分かる形で書いてもらえば従業員の不安も解消されます。

退職勧奨の注意点

退職勧奨は会社都合の退職

離職票には退職勧奨と書く

繰り返し伝えていますが、退職勧奨は「会社都合」の退職方法になります。従業員が退職に同意していることから、退職勧奨は自己都合退職になると思い込んでいる会社もありますが、勘違いしないよう注意しましょう。会社側から退職を働きかけた以上、最終的に従業員が退職を決めたからといって自己都合退職として取り扱えるわけではありません。会社が退職を勧めて、従業員に退職してもらうのだということを忘れないようにしましょう。

従業員には退職を拒む権利がある

退職勧奨はあくまでも従業員に退職を求めるものであり、従業員が退職を拒否した場合はその時点で終了になります。退職勧奨に応じないと従業員が明確な意思表示をした後にも退職を勧め続けることは止めましょう。会社と従業員は労働契約を結んでいるので、解雇以外で会社が一方的に労働契約を解除して退職させることはできません。従業員には退職を拒む権利があることを理解しておきましょう。そのため、退職勧奨をする際は、退職に応じなかった場合にどうするのかまであらかじめ考えておくことが望ましいです。

過剰・執拗・脅迫的はNG

退職強要は違法行為

退職に応じない従業員に退職勧奨を繰り返した場合、不法行為とみなされます。長期間に渡って退職勧奨をしたり、短期間であっても多数回・長時間にわたって退職勧奨をしてはいけません。退職しないなら給料を減らす・異動させる、懲戒解雇事由がないのに退職に応じない時は解雇するなどと言うことも禁止です。また、退職させるための嫌がらせ行為、例えば大声で罵倒したり他の従業員の前で叱責する、仕事を減らしたり逆に無理な仕事を押し付けたり等も絶対にしてはいけません。

従業員の意思決定の自由がポイント

後々トラブルに発展しないためには、従業員の意思決定に自由があったかどうかがポイントになります。退職に応じる義務はないことを知らない従業員に退職するしかないと誤解させるような言い方をしたり、心理的な圧力をかけて退職に追い込んだりしてはいけません。会社からの一方的な押し付けではなく、従業員が自分の意思で退職を選んだと思ってもらうことが大切なので、そのために条件交渉に応じるのもひとつの方法です。具体的には、退職金の上乗せや、転職活動のための有給休暇を与えるなどが交渉しやすいでしょう。

まとめ

退職勧奨は注意して進めましょう

日本の法律では解雇するためには様々な制限がありますので、制限のない退職勧奨は会社にとって使いやすい手段です。しかし、解雇ではないからと安易に退職勧奨を行ってしまうと、進め方によっては後に訴訟などのトラブルになるリスクもはらんでいます。正しい方法で行えば退職勧奨は会社にとっても従業員にとっても円満に合意退職できる有効な手段です。やむを得ず退職してもらいたい従業員がいる場合は十分に社内で検討を重ね、しっかり準備をした上で退職勧奨を行いましょう。

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