記事更新日:2021年05月07日 | 初回公開日:2021年05月06日
用語集 グローバル用語解説 外国人採用・雇用 人事・労務お役立ち情報組織開発は、組織内の当事者の手で組織を良くすることを意味します。主に組織内の人間関係を良い方向に変化させ、組織パフォーマンスの向上を図ることを指しています。また個人の能力を発揮するためのアプローチを行い、健全に機能する組織を目指すことも、組織開発にあたるでしょう。近年は「働き方改革」という言葉を耳にするシーンが多くなりましたが、組織開発は、働き方改革の土台としても課題に挙げられています。組織開発では、組織内の当事者が企業の現状を理解し、自ら改革を行うことが求められます。
組織内の「関係性」と「相互作用」をどう良くするかが、組織開発における大事な点です。企業を成長させるためには、経営戦略を立てて実行していくのが基本でしょう。しかし経営戦略に対応できる組織作りが行われていない場合には、上手く機能しない組織となってしまいます。組織開発は、経営戦略などのハードな面ではなく、組織内の関係性や相互作用のソフトな面にスポットを当てた取り組みになるでしょう。人と人との関係性を改善し、良い相互作用を生み出すことが、組織開発の本質となります。
組織開発と人材開発は似た意味で使用されますが、正確には異なる取り組みを指しています。組織開発は組織パフォーマンスを高める取り組みであることに対し、人材開発は個の能力を高めることを意味しています。主に研修や教育などによって仕事に対する意識を高め、業務推進力の強化を図ることを指すでしょう。企業内の社員全員が対象という点は、組織開発と同じです。しかし最終的な目標が、個人が持つ課題であるのか、企業全体の課題であるのかが大きく異なる点でしょう。
人材開発が持つ意味とは異なり、組織開発は人との関わりを向上させることを意味します。例えば組織の中で築かれている信頼関係を見直し、目標達成力の高い組織を目指すことなどが挙げられるでしょう。一部の企業においては、高いスキルを持つ人材が集結していても、チームとしては力を発揮できないケースもあるのではないでしょうか。また職場の風通しが悪く、社員のモラル低下を課題に挙げる企業もあるでしょう。このように、人間関係に関わる課題への対策とされているのが、人との関係性の向上を図り、組織力を強化する組織開発です。
組織開発ができた背景にあたるのが、終身雇用や年功序列の崩壊です。これまで日本企業における働き方として広く採用されてきたのが、終身雇用や年功序列の制度です。これらは日本の高度経済成長を支えた取り組みとして、長年に渡り定着してきました。企業風土が浸透している上記のケースでは、特に違和感を持たずに定年を迎えられた方も多いでしょう。しかし近年は働き方が急速に変化し、終身雇用や年功序列の制度は崩壊状態にあると言われています。人材の流動化により、価値観も多様化されているでしょう。よって様々な価値観で形成された組織を上手く機能させるために、企業に合わせた組織開発が必要とされています。
対面からオンラインへの変化が起きていることも、組織開発が必要とされる理由です。「リモート時代」とも呼ばれる現代は、対面ではなく、オンラインで業務をこなす人材も増えているでしょう。これによりコミュニケーションのとり方や、働き方そのものを見直す企業も増加したのではないでしょうか。対面の機会が減ったことにより、組織の一体感が薄れたと感じる企業や、マネジメントの質が落ちたと感じる企業もあるでしょう。そこで取り組まれているのが、組織力を高める組織開発です。組織開発には、社員に目指すべき目標を共通認識させることで、組織の活性化を図る狙いがあります。
組織開発の手法に、コーチングというものがあります。コーチングは個人との対話を通して、個人の内面育成を促す方法です。例えば目標達成の為に必要なステップへ導くことや、視点を広げて新たな選択肢を作ることなどが挙げられるでしょう。コーチングを行う際には、ポジティブな言葉を使用し、自主的に問題解決へ導いてあげることが大切です。組織開発においてコーチングを取り入れることは、個人の目標達成へのサポートはもちろん、組織内の繋がりを創ることにも役立つでしょう。上司や同僚、関係性を広げたい部署同士でコーチングを行うことで、新たなコミュニケーションが生まれることも予測できます。
アメリカ発祥のAI(アプリシエイティブ・インクワイアリー)と呼ばれる手法を使うことで、組織開発が成功した企業も多く存在するでしょう。AIとは英語で「Appreciative Inquiry」と表記し、直訳すると「価値が分かる質問」を意味します。具体的には個人への質問を通して、個人の長所や魅力、将来の夢などを引き出し、目標に向けて行うべき取り組みを決める方法です。AIを行うことで、従業員の可能性を引き出すことや、業務意欲の向上に繋げることができるでしょう。
組織の全体像を把握し、目指すべきあり方を浸透させる手法として、フューチャーサーチが挙げられます。フューチャーサーチとは、ミーティングを用いて課題の創出や解決策の提供を行うことを意味します。基本的には大人数で行われるケースが多く、従業員や取引先など、課題に関わる全ての関係者を集めて行われます。フューチャーサーチは主に1つの課題に対して行い、グループ間や全体での議論を通し、参加者の共通の価値を見出す方法です。
個人対して、7つの習慣を意識させるという組織開発の手法もあります。この方法は、経営コンサルタントのスティーブン・R・コヴィー氏により考案されました。現在は様々な企業で用いられており、組織開発において効果的な手法とされています。7つの習慣は、個人の自立を促す要素と、個人間の相互作用を高める要素に分けられます。前者は具体的に、個人が主体的であることや、自身の役割を明確にすることなどが挙げられるでしょう。後者は人間関係を用いて組織力を強化する方法を意味し、具体的には相手への理解や、多様性を活かす習慣をつけることを指します。
社内で温度差ができないようにすることが、組織開発を行う際の注意点です。組織開発は、組織内の当事者が主体性を持って行う取り組みを指します。そのため社内で温度差があると、上手くいかないケースもあるでしょう。特に、その組織や部署のトップにあたる人材においては、組織開発への深い理解が必要です。部署ごとや個人ごとに組織開発に対する温度差が生じている場合には、新たな改革の必要性を意識付け、現状を受け入れてもらうことが大切でしょう。また細かいプロセスを共有することや、目標達成後のメリットを伝えることも効果的です。
組織開発を行う際には、目的や意味を周知しておくことが大切です。唐突に組織開発を始めても、組織開発の必要性を感じない従業員や、これまでのやり方を変えたくないと感じる従業員も存在することでしょう。目的の周知を行わずに組織開発を行うことは、ビジョンが見えにくく、社員の意識低下に繋がります。また周知しないことで、組織開発が上手くいかない要因となるケースもあるでしょう。そこで必要なのが、組織の価値観を変えることの目的や、成功例、目的達成までのプロセスを周知することです。目的の周知を徹底することにより、組織開発の成功へと繋がるでしょう。
転職サービスやアルバイト情報誌を手がけるパーソナルキャリア株式会社では、「最も活躍する自分らしさあふれる組織風土」を目標にした組織開発が進められています。この組織開発は、自社の退職率の高さや雇用満足度の低さに疑問を感じたことから、2016年から開始している取り組みです。主に組織文化に対しての対話を中心に進められており、社員個人に組織について考えるきっかけを提供しています。自らが企業のあり方を主体的に考えることで、社員の働きやすさを確立している事例でしょう。
ヤフー株式会社では、「1on1ミーティング」を用いた組織開発が行われています。1on1ミーティングとは、上司と部下による1対1の対話を指します。一般的な1on1ミーティングでは、部下に寄り添うことが求められますが、当初は上手くいかないケースもあったようです。そこでヤフー株式会社では、上司には1on1ミーティングの研修を行い、部下にはミーティングの内容についてのアンケート調査を行う機会を設けました。これにより、表面上のコミュニケーションではなく、本音で話せる信頼関係が身に付いたと言われています。
組織開発を行う際におすすめしたいのが、『組織開発の研究 理論に学び、実践に活かす』という本です。こちらの書籍は、初級編やプロフェッショナル編に分けた組織開発の方法を説明しているため、初めて組織開発を行う企業はもちろん、組織開発に長年取り組んできた企業にとっても参考になる一冊でしょう。著者の中原 淳さんは、人材開発や組織開発、チームワークについて研究している大阪大学博士です。様々な研究を重ねた結果を元に、組織開発の本質について紹介しています。
『入門 組織開発〜生き生きと働ける会社をつくる〜』も、組織開発を行う企業におすすめしたい一冊となっています。この本は南山大学人文学部心理人間学科教授の中村和彦さんによって書かれており、組織開発が必要である理由や、組織開発の手法について学ぶことができる本です。また組織開発の歴史についても書かれており、人間関係のマネジメントが重要な理由について、詳しく記載されています。著者の実体験に基づいたマネジメントの課題についても記載されているため、これから組織開発を目指す企業や、現在組織開発に取り組む企業にとって参考になる一冊でしょう。
『組織型組織開発』は、対話型組織開発において初の専門書と言われる一冊です。2009年にジャルヴァース・R・ブッシュ 氏と、ロバート・J・マーシャク 氏により執筆された専門書となっています。「診断型から対話型へ」というコンセプトの元、従来の組織開発とは異なる発想を提案しているのが特徴でしょう。対話の重要性を説き、対話型組織開発の先駆者たちにより見出された手法についても、詳しく解説されています。OSTやワールドカフェの創始者たちも絶賛した著書となっており、非常に注目を集めている一冊です。『組織型組織開発』は、対話を用いて組織の活性化を図りたいと考えている企業にとって、重要な参考書になることでしょう。
現在組織開発は、大手企業を始めとする様々な企業で取り組みが行われています。組織開発を行うことで、組織全体の人との関わりを向上させ、組織力を高めることが期待できるでしょう。企業によって目指す目標は異なりますが、人間関係を良い方向へ変化させることは、企業の成長を期待する上で、重要なポイントとなるのではないでしょうか。最近は組織開発を専攻できる大学院や、組織開発セミナーの開催も増えています。また2020年の9月より「組織キャリア開発士」という資格も立ち上げられました。様々な観点から組織開発の重要性や手法を学び、組織開発で社内を強くしていきましょう。
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