記事更新日:2025年12月19日 | 初回公開日:2025年12月19日
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ミドルアップダウンとは、中間管理職が中心となるマネジメント手法のことです。一橋大学名誉教授の野中郁次郎氏が提唱したもので、トップダウンとボトムアップの利点を融合させ、中間管理職が結節点となり組織を動かすマネジメント手法です。企業がイノベーションを生み出すためには、個人の経験則である暗黙知を、万人が共有できる形式知に変換するプロセスが欠かせません。プロセスを主導するのがミドルマネージャーです。ミドルマネージャーは経営層が描く理想と、現場が直面する現実を行き来して双方の隔たりを埋めて、最適解を導き出します。
ミドルアップダウンとトップダウンの違いは、主体となるのが中間層か上位層かという点にあります。トップダウン型では、経営層が意思決定を行い、現場はその指示に従って業務を行います。意思決定のスピードが速く、組織を強力に統率できる反面、現場社員は受動的になりがちです。指示待ち人間が増え、現場ならではの気づきやアイデアが経営に反映されにくい経営手法といえるでしょう。ミドルアップダウンは、中間層が現場の状況を踏まえた施策を、経営層へ働きかけます。
ミドルアップダウンとボトムアップの違いは、主体となるのが中間層か現場担当者かという点にあります。ボトムアップ型は、現場担当者の意見や提案を吸い上げ、経営層が承認するスタイルです。実務に即した施策の実行が進みやすい反面、個別の意見調整に時間がかかります。また、全社的な視点が欠け、部分最適に陥るリスクもあるでしょう。ミドルアップダウンでは中間管理職が現場の意見を集約し、経営ビジョンと照らし合わせます。経営戦略との整合性を図る役割を中間層が担うので、スピード感と方向性を両立できます。
ミドルアップダウンが注目される背景には、トップダウンとボトムアップのデメリットを弱められる点があります。トップダウンだけでは現場の変化に対応できず、ボトムアップだけでは抜本的な改革が遅れます。双方の欠点を補い、組織の対応力を高める手段としてミドルアップダウンが注目されています。ミドルマネジャーが現場の意見を吸い上げ、経営層へ届けることで、組織の停滞を打破するキッカケになるでしょう。組織の硬直化に悩む企業にとって、現場の実情と経営の視点を繋ぐこの手法は、有効な解決策となります。

中間管理職に求められる役割は、トップの考えを現場に浸透させて、現場の意見も汲み取ることです。経営層の指示を機械的に現場へ下ろすだけではなく、その意図を正しく汲み取り、現場社員が理解できる具体的な行動目標や数値へ変換して伝えることが求められます。反対に、現場で発生している問題や顧客の声は単なる不満としてそのまま伝えるのではなく、経営判断の材料として整理してフィードバックする必要があります。中間管理職は双方の情報を適切に扱い、組織を活性化させる責務を担っているといえるでしょう。
ミドルアップダウンのメリットとして、円滑に仕事を回せることがあげられます。意思決定プロセスに現場の事情を把握する中間管理職が加わるため、無理な指示が現場に降りるのを防げます。決定された施策は、あらかじめ現場の実態に合わせて調整されているため、導入もスムーズです。現場社員も自分たちの意見が反映されたと感じやすく、業務に対する納得感やモチベーションが高まるでしょう。指示に対する反発が減少し、業務遂行のスピードと質が向上します。
ミドルアップダウンのメリットとして、上位層と現場担当者間の意識のずれを解消できることがあります。経営層は長期的な未来を見ていますが、現場は目の前の仕事に追われています。こうした視点の違いは、組織内の不信感を生む原因になります。ミドルマネジャーが双方の事情を理解し、橋渡し役となることで、溝を埋めることが可能になるでしょう。経営層には現場の大変さを正しく伝え、現場には今の努力が将来どう役立つかを説明します。情報の格差がなくなれば、お互いの理解が深まり、全員で同じ目標に向かえるようになります。

ミドルアップダウンマネジメントを取り入れる際のポイントとに、中間管理職の育成があげられます。これまでの研修は、勤怠管理や法律の知識を学ぶことが中心でした。しかし、ミドルダウンマネジメントで成果を出すには、経営戦略を理解する力や現場の意見をまとめる力が欠かせません。経営と現場、両方の視点を持つための教育を行わなければ、負担が増えて疲弊して終わるだけです。座学だけでなく、実際の経営課題に取り組むプロジェクトに参加させるなど、会社全体でバックアップする体制が求められます。

ミドルアップダウンマネジメントを取り入れる際のポイントに、上位層が現状を把握することがあります。導入にあたって、経営陣はまず社内の風土や中間管理職の忙しさを見極めなくてはなりません。現場が日々の業務だけで手一杯なところに、新しい役割を押し付けても機能しないからです。中間管理職が抱えている仕事の量や、どこまで権限を持っているかを洗い出し、業務課題の原因を探りましょう。時間に余裕がないのなら、新しいことをさせる前に、今の仕事を減らして時間をつくるのが先決です。

ミドルアップダウンマネジメントを取り入れる際のポイントに、評価軸の見直しがあります。売上などの数字だけを追う評価制度のままでは、ミドルアップダウンマネジメントは機能しません。現場の意見を吸い上げや他部署との調整といった仕事は、すぐには成果として表れないからです。つなぎ役としての貢献を正当に評価しなければ、中間管理職の意欲は維持できません。たとえば、部下の育成やノウハウのマニュアル化といった成果を、評価項目に組み込みましょう。変革のための行動を評価しなければ、責任あるミドルマネージャーは生まれません。

ミドルアップダウンマネジメントを取り入れる際のポイントに、経営目標を社内に周知することがあげられます。中間管理職が適切な判断を下すには、判断基準となる経営ビジョンや目標が浸透していなければなりません。スローガンを掲げるだけでなく、目標が設定された背景や達成した先にある未来像を共有する必要があります。方向性が曖昧なままでは中間層が独自解釈で動き、組織がバラバラになる恐れがあります。ミーティングや社内報などを活用し、トップ自らが繰り返しメッセージを発信しましょう。

ミドルアップダウンマネジメントを取り入れる際のポイントに、現場の見える化を行うことがあります。正確な情報がなければ、ミドルマネジャーは正しい戦略を立案できません。業務プロセス、個人のスキル、稼働状況、顧客からのクレーム内容など、現場の事実をデータとして可視化する環境整備が求められます。属人的な業務運営から脱却し、誰もが状況を把握できる状態にして問題の早期発見や改善提案につなげましょう。感情論ではない、事実に基づくコミュニケーションが、現場と経営層をつなぐミドルマネージャーには求められます。

ミドルアップダウンマネジメントを取り入れる際のポイントとして、それぞれが担う役割を明確にすることがあげられます。どこまで責任を持ち、どのような権限を持つのか曖昧なままにしてはいけません。中間管理職は「何を自分で決めてよいか」「どこからが上司の承認が必要か」の線引きをはっきりさせなければ、失敗を恐れて萎縮するか、勝手な判断で暴走してしまいます。役割や権限を文書として残し、認識のズレをなくしておきましょう。役割や権限が曖昧なままでは、トラブルが起きた際に責任のなすりつけ合いが発生するリスクがあります。

ミドルアップダウンマネジメントを取り入れる際のポイントとして、情報共有ツールの導入があげられます。ミドルアップダウンマネジメントを導入すると、中間管理職のもとに経営層と現場から大量の情報が集まります。口頭やメールだけで処理しようとすれば、連絡業務が膨大になり、戦略立案や部下育成に手が回りません。デジタルツールを活用し、情報を即座に共有できる仕組みが不可欠です。チーム全員が確認できる共有スペースで議論すれば、決定に至る経緯が記録として残るため、認識の食い違いを防げます。中間管理職の事務負担を減らす環境整備が、制度を機能させるために重要です。
中間管理職を育成するために、研修と実践を組み合わせましょう。座学で知識をインプットするだけでは、現場で使えるスキルは身につきません。研修で学ぶだけでは不十分で、得た知識を実際の仕事で使い、試行錯誤して初めてスキルとして定着します。たとえば、「中期計画を策定し、経営陣にプレゼンする」「他部署と連携した改善案をリードする」といった実践の場を与えます。この際、人事や上司がメンターとして寄り添い、定期的なフィードバックを行うことで成長を加速させられます。
ミドルアップダウンに関する書籍に、「学校組織におけるミドル・アップダウン・マネジメント」があります。畑中大路氏による本書は、教員という専門職集団におけるミドルリーダーの機能に焦点を当てています。企業人事にとってもエンジニアや研究職など、専門性が高くトップダウンが効きにくい組織への示唆に富んでいます。ビジネスパーソンが基本概念を学ぶには、野中郁次郎氏の「知識創造企業」も適しているでしょう。これらの書籍では、日本企業の強みである暗黙知の共有プロセスが体系化されており、中間層がどのようにイノベーションの起点となるべきかが書かれています。
ミドルアップダウンの事例に、東洋電装株式会社があります。注目すべきは、最初からミドルアップダウンを導入したわけではない点です。当初は現場主導のボトムアップ改善を試みましたが、改革は停滞し、一時は残業時間が増加する事態に直面しました。そこで社長自らが意思決定に加わり、退社目標時間を導入して、長時間労働の是正に着手しました。トップ主導で改革の土台を整えた後、徐々に権限を中間管理職へ移し、現場が自律的に動く体制へと移行させました。この事例から学べるのは、疲弊した組織にいきなりミドルアップダウンを求めても機能しないということです。
ミドルアップダウンマネジメントで円滑に業務を進めましょう。ミドルアップダウンマネジメントは、現場と経営の分断を解消し、組織の持続的な成長を促すための処方箋です。しかし、単に導入を宣言するだけでは機能せず、中間管理職への権限委譲、評価制度の見直し、トップによる環境整備がセットになって初めて成果を生みます。まずは自社の中間層が置かれている現状を把握し、彼らが動きやすい環境を整えるところから始めてください。組織の結節点である中間管理職が生き生きと機能すれば、企業の競争力は高まります。
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