労働者名簿とは?【作成時の注意点や保管期間・方法なども解説します】

記事更新日:2025年06月24日 初回公開日:2025年06月24日

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労働者名簿の作成・管理について、正確に理解できていますか?知識が曖昧なままでは労働基準監督署の調査や罰則、予期せぬ労務トラブルを招く恐れがあります。法改正により延長された保存期間や記載すべき必須項目に漏れがあると、企業の信頼を損なう事態にもなりかねません。また、パートタイマーの扱いや事業場ごとの管理義務など、実務上の判断に迷いやすいポイントも多くあります。本記事では法定三帳簿の一つである労働者名簿について、作成義務や保存方法、臨検で提示を求められた際の注意点まで網羅的に解説します。ぜひ本記事を通じて知識をアップデートし、自社の法令遵守の体制を見直すきっかけとしてください。

労働者名簿とは

従業員の個人情報を記した名簿

労働者名簿とは、従業員の個人情報を記した名簿です。労働基準法により、企業には労働者名簿を作成・保管する義務があります。労働者名簿は人事管理や緊急連絡、社会保険の手続き、労働条件の証明など、さまざまな実務に活用されます。退職後も一定期間の保存が必要とされており、企業にとって重要な管理書類の一つといえるでしょう。労働者名簿は単なる従業員リストではなく、企業の適正な労務管理に不可欠な書類です。記載事項の更新や保存方法にも注意を払い、法令に則った運用が求められます。

法定三帳簿のうちの1つ

労働者名簿は法定三帳簿のうちの1つです。労働基準法によって作成と保存が定められた「法定三帳簿」は、労働者名簿のほかに「賃金台帳」と「出勤簿」があります。法定三帳簿はそれぞれの役割を持ちながらも相互に関連しており、企業の適正な労務管理に欠かせません。特に、労働基準監督署による調査(臨検)の際には三帳簿すべての提出が求められることが多く、法令遵守の状況を確認する重要な資料とされています。労働者名簿も他の帳簿とあわせて、正確に整備・保管しておくことが求められます。

対象者は原則従業員全員である

労働者名簿の対象者は、原則として従業員全員です。正社員はもちろん、パートタイマーやアルバイトなど、雇用形態に関係なく常時使用する労働者は全員、名簿への記載が義務付けられています。一方で、代表取締役などの役員や日雇い労働者は対象外とされるのが一般的です。従業員のうち誰が名簿への記載対象となるのか、雇用関係の実態に即して判断しましょう。一部を除き、雇用契約を締結している労働者は原則として全員、名簿に記載しなければならないと理解しておくべきです。

労働者名簿の記載項目

8つの必須項目がある

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労働者名簿の記載項目として、8つの必須項目があります。労働者の氏名、生年月日、性別、住所に加えて、従事する業務の種類、履歴、雇入れの年月日、そして退職または死亡の年月日とその事由が該当します。労働者の状況を正確に把握するための基礎的な情報であり、企業が適切な人事労務管理を行う上で欠かせません。記載内容に漏れや誤りがあると、法令違反とみなされる恐れがあり、労働基準監督署の調査でも厳しくチェックされます。

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労働者名簿について記載されている法律

労働基準法107条

労働者名簿について記載されている法律として、労働基準法107条があげられるでしょう。条文では事業場ごとに労働者名簿を調製し、適切に管理するよう使用者に義務づけています。企業の規模や業種を問わず、労働者を一人でも雇用していれば、この規定は適用されます。違反した場合は、同法に基づき罰則が科される可能性も否定できません。労働者名簿の作成は労働基準法107条に定められた企業の法的責任であり、必ず対応すべき事項です。

労働基準法施行規則53条

労働者名簿について記載されている法律として、労働基準法施行規則第53条があげられます。労働基準法107条でいう「厚生労働省令で定める事項」が、施行規則として定められています。氏名や生年月日、履歴など8つの必須項目が挙げられており、これらを記載しなければなりません。名簿の形式自体は企業の自由とされていますが、これらの法定項目を欠いた名簿は、法律に違反する恐れがあります。名簿を作成する際は施行規則53条に目を通し、必要事項を記載することが必要です。

労働者名簿の作成時における注意点

各事業場ごとに作成する

労働者名簿の作成時における注意点として、各事業場ごとに作成することがあげられるでしょう。労働基準法上の「事業場」とは、本社、支社、工場、店舗といった場所的に独立した単位を指します。本社で人事情報を一元管理していても、法的には事業場単位で名簿を備えておくことが原則です。労働基準監督署の調査時には、各事業場で速やかに提出できる体制が求められるため、この点を踏まえて整備することが重要です。自社の名簿の作成状況を再確認して、現場担当者がすぐに対応できるようにしておきましょう。

データの出力環境を整える

労働者名簿の作成時における注意点として、データの出力環境を整えることがあげられます。労務管理システムやExcelなどで名簿を保管することに問題はありません。しかし、労働基準監督署の調査時にはその場で画面上で内容を確認でき、必要に応じて速やかに印刷・提出できる体制が必要です。出力ができない状態では、法令に定められた名簿管理義務を果たしていないと判断される可能性があります。法令遵守の観点からも、常に紙で出力可能な運用体制が不可欠です。

学歴や職歴の範囲に気をつける

労働者名簿の作成時における注意点として、「履歴」を記入する際は学歴や職歴の範囲に気をつけましょう。法令上、履歴の範囲に明確な規定はありません。採用時に提出された書類を基に、本人に確認しながら経歴を記入しましょう。一般的には最終学歴と直近の職歴を中心に記載すれば、労務管理上の要件は満たすと考えられています。全ての経歴を網羅する必要はなく、企業の判断で記載範囲を決めることができると理解しておきましょう。

名簿に記載する必要のない従業員もいることに注意する

労働者名簿の作成時における注意点として、名簿に記載する必要のない従業員もいることに注意しましょう。原則として、日々雇用される日雇い労働者については、名簿を作成する義務はありません。また、代表取締役などの会社役員は労働基準法上の「労働者」に該当しないため、通常は記載の必要がありません。派遣社員の場合、雇用契約を結んでいるのは派遣元の企業なので、名簿の作成義務は派遣元が負うことになります。このように、自社との雇用関係の有無を把握し、誰が記載対象となるか正しく把握しましょう。

業務の種類はわかりやすく記入する

労働者名簿の作成時における注意点として、業務の種類をわかりやすく記入することがあげられます。例えば、単に「事務」と記載するのではなく「人事労務事務」や「経理業務」のように、担当する業務内容が明確に伝わる表現を用いることが望ましいでしょう。これは労災保険の給付手続きや、人事異動を検討する際の判断材料ともなるためです。組織変更などにより業務内容が変わった場合には、その都度更新することが求められます。あいまいな記載は、業務の実態証明の妨げになる可能性があるため、職務を具体的な言葉で記載しましょう。

個人情報は戸籍と一致しているか確認する

労働者名簿の作成時における注意点として、個人情報が戸籍と一致しているかの確認があげられます。社会保険や雇用保険などの手続きは、戸籍に登録された情報に基づいて行われます。そのため、普段使っている通称ではなく、戸籍上の氏名を記載しなければなりません。結婚などで氏名が変更になった場合は、本人からの申告を受けて速やかに訂正する必要があります。各種手続きで手戻りが発生しないよう、入社時に提出される資料などで、戸籍情報と相違がないかを確認することが不可欠です。

労働基準監督署の調査が入る場合がある

労働者名簿の作成時における注意点として、労働基準監督署の調査があげられるでしょう。労働基準監督官は労働基準法などの法令が適切に守られているかを確認するため、定期的に、または労働者からの申告を受けて事業場を訪れることがあります。その際、法定三帳簿である労働者名簿・賃金台帳・出勤簿の提出が求められるのが一般的です。帳簿の整備に不備があると、是正勧告の対象となる可能性もあるため、日頃から法令に沿って名簿を正確に整備・管理しておく必要があります。日頃から名簿を適切に整備して、リスク管理を万全にしておきましょう。

更新は遅延なく行う

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労働者名簿の作成時における注意点として、更新は遅延なく行うことがあげられます。労働者名簿は記載内容に変更が発生した場合、遅滞なく更新することが法律で義務付けられています。例えば、従業員の住所変更や結婚による氏名の変更、人事異動に伴う業務内容の変更などが挙げられます。従業員からの変更申告を徹底する、社内ルールの整備が有効でしょう。情報を古いまま放置しておくと、法令違反とみなされる可能性もあるため注意が必要です。特に緊急時の連絡先などは、常に最新の情報であることが求められます。

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労働者名簿の保存期限

従業員の死亡日か退職日から5年間

労働者名簿の保存期間は、従業員の死亡日か退職日から起算して5年間と定められています。法改正によって、以前の3年間から保存期間が延長された点に注意が必要です。これは2020年4月の法改正によるもので、賃金請求権の時効延長に伴う変更点です。保存期間は在籍期間ではなく、雇用関係が終了した日を基準にカウントが始まる点も押さえておきましょう。保存義務は労働者名簿だけでなく、賃金台帳や出勤簿といった他の法定帳簿にも共通するものです。退職者の書類をすぐに廃棄せずに、法令で定められた期間内は保管する必要があります。

労働者名簿の保管方法

いくつか要件がある

労働者名簿の保管方法には、満たすべきいくつかの要件があります。労働者名簿は紙媒体でも電子データでも保管が可能ですが、いずれの方法を選ぶ場合もいくつかの要件を満たさなければなりません。紙で保管する場合は各事業場に備え付け、必要なときにすぐ取り出せる状態にしておくことが原則です。電子データで保管する場合には労働基準監督署の調査(臨検)の場で即時に画面表示できること、速やかに印刷して提出できることが求められます。また、電子データの場合には記録の改ざん防止措置や、長期保存に耐えうる信頼性の確保も不可欠です。

労働者名簿がない場合の罰則

30万円以下の罰金

労働者名簿がない場合には、30万円以下の罰金が科される可能性があります。この罰則は、名簿の作成義務・保存義務・更新義務に違反したケースに適用されます。特に、労働基準監督署の調査で不備を指摘され、是正勧告にも従わなかった悪質なケースでは、労働基準法第120条に基づく刑事罰(30万円以下の罰金)が科されます。意図的でなくても管理不備は法令違反と見なされるため、注意しましょう。日頃から法令遵守の体制を整え、適切に管理することが企業の法的なリスク管理につながります。

まとめ

労働者名簿に関する知識を深めよう

労働者名簿に関する知識を深めましょう。作成義務や必須項目、保存期間、罰則に至るまで、労働者名簿には数多くのルールが存在します。法改正などの最新情報にも常に注意を払い、適切な対応ができる体制を整えておくことが求められます。正しい知識は、いざという時の労務トラブルから会社と従業員双方を守る盾にもなります。法改正などの最新情報にも常に注意を払い、適切な対応ができる体制を整えましょう。ぜひ本記事を参考に、自社の労働者名簿の整備状況を見直してみてください。

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