記事更新日:2025年06月24日 | 初回公開日:2025年06月24日
人事・労務お役立ち情報 採用・求人のトレンド人事異動とは会社の命令で従業員が部署や地位を異動する命令を指します。人事権の根拠は通常、雇用契約書や就業規則に明記されており、辞令の交付といった形で従業員に通達され、従業員は原則として命令に従う義務を負います。しかし、権限も無制約というわけではなく、人事権の濫用とみなされるようなケースではその効力が否定されることもあります。企業は権限の行使にあたり、法的な制約や従業員への配慮を十分に理解することが求められるでしょう。
人事異動には主に4つの典型的なパターンがあります。まず昇進・昇格ですが、これは従業員が現在の職位や等級から、より責任の重い上位のポジションへとステップアップする異動です。次に降格、職務遂行能力の不足や組織改編などを理由に職位や等級が引き下げられるケースです。次に配置転換は従業員の所属部署や担当する職務内容が変わり、新たなスキル習得や異なる業務経験の機会となり得るでしょう。最後に転勤ですが勤務する事業所や地域が変更され、従業員の生活拠点にも影響を及ぼす大きな異動です。
従業員が人事異動を拒否できるケースとして、命令の根拠となる規定が就業規則や雇用契約書に存在しないケースがあげられます。企業が人事権を行使するには、これらの書面に「業務の都合により、従業員に配置転換や転勤を命じることがある」といった人事異動条項の記載が必要となります。規定が整備されていなければ、企業が一方的に人事異動を命じることは原則として難しく、従業員に同意を求めることになります。この点は労務管理の基本であり、人事担当者は自社の規定を再確認すべきでしょう。
人事異動を拒否できるケースとして、採用時に職種や勤務エリアが明確に限定されていたにも関わらず、合意の範囲を超える異動命令が出された場合があげられます。「勤務地は本社に限定する」「職務内容は専門職である〇〇に限定」といった労働条件が雇用契約書で具体的に定められていれば、企業はその契約内容に拘束されます。この場合、同意なき範囲外異動は契約違反で法的に無効とされ易く、企業は訴訟リスクを抱えることになるでしょう。
人事異動の命令を従業員が拒否できるケースとして、人事異動に業務上の必要性がない場合があげられるでしょう。企業の人事権行使はあくまで組織運営上の合理的な理由、例えば欠員補充や事業拡大に伴う人材配置など、業務上の目的達成に資するものでなければなりません。特定の従業員への嫌がらせや実質的な仕事がない閑職への異動など、業務上の必要性がない人事異動命令は、権利濫用として法的に無効になることがあるので注意が必要です。
人事異動を拒否できるケースとして人事異動の動機や目的が不当な場合があげられます。不当な動機の例としては労働組合活動に対する報復や、内部告発を行った従業員への見せしめ、あるいは特定の従業員を自主退職に追い込むための嫌がらせなどがあります。このようなケースでは企業の人事権の行使が権利の濫用とみなされ、当該異動命令は無効となるでしょう。企業は、人事の決定が常に公正な判断に基づくものであることを担保する必要があります。
人事異動を拒否できるケースとして、労働者が被る不利益が著しい場合があげられるでしょう。例えば、重度の要介護状態の家族(高齢の両親や障害を持つ子など)の介護を本人以外にできない状況での遠隔地への転勤や、本人の病気の治療が困難になるようなケースです。企業は、労働者の個別の事情、特に育児や介護といった家庭の負担に十分に配慮する義務があり、これを怠った一方的な異動命令は権利の濫用と判断されるリスクがあります。
人事異動を拒否できるケースとして、従業員の賃金が減額される場合もあげられるでしょう。労働契約法上、賃金など重要な労働条件を労働者にとって不利益に変更するには、原則として本人の合意を得なければならないとされています。これを事実上強制する異動は、人事権の濫用として無効となる可能性もあります。ただし、就業規則に根拠のある正当な降格等で賃金が結果変動する際は、直ちに違法とは言えません。しかし、賃金減額のみが目的の不当な異動は、人事権濫用と判断されやすい点に注意が必要です。
従業員がうつ病であるという理由だけで、人事異動命令を拒否できるわけではありません。企業には業務運営上の必要から人事権を行使する権利があり、それ自体はうつ病の診断があっても否定されるものではありません。しかし、企業には労働者の生命や健康を危険から保護するよう配慮すべき義務(安全配慮義務)があります。うつ病を抱える従業員の異動を検討する際は病状を悪化させないよう、主治医や産業医の意見を聴取して新しい職場環境が与える影響を慎重に判断する必要があるでしょう。
人事異動を拒否された場合の企業側の対応として、人事権について充分に説明することがあげられるでしょう。人事権とは企業が組織目的を達成するため、従業員の職務内容や勤務場所、地位などを広範に決定・変更する重要な権限です。権限の行使は雇用契約や就業規則に通常その根拠が明記されており、異動もこれに基づき、具体的な業務上の必要性や組織戦略から発令された旨を明確に伝えます。一方的な命令と捉えられぬよう、企業の正当な権利行使である点への理解を促し、対話を通じて従業員の不安解消に努める姿勢が不可欠といえるでしょう。
人事異動を拒否された場合の企業側の対応として、従業員の待遇面の見直しもあげられます。違法な命令を金銭で解決するという意味ではなく、あくまで正当な異動に伴う従業員の負担軽減や不安解消を目的とするものです。具体的には転居を伴う転勤であれば、引越し費用や赴任手当、住宅支援(社宅提供や家賃補助)の拡充がよいでしょう。単身赴任者への帰省旅費支援や子供の教育環境への配慮、異動先での業務負荷の一時的軽減や柔軟な勤務時間の設定なども考えられます。こうした配慮は従業員の納得感を高め、円滑な異動を促す効果が期待できます。
人事異動を拒否された場合の企業側の対応として、懲戒処分の検討があげられます。懲戒処分を実施するためには、根拠となる事由と処分の種類が就業規則に明確に記載されていることが大前提です。また、処分の重さは従業員の拒否の態様や業務への具体的な影響の度合い、過去の懲戒歴などを総合的に考慮し、社会通念上相当と認められる範囲でなければなりません。いきなり重い懲戒解雇といった処分は、人事権の濫用と判断されるリスクが非常に高いため、段階的な対応を検討する必要があります。
人事異動を拒否された場合の企業側の対応として、退職勧奨や懲戒解雇の検討があげられるでしょう。説得や段階的な懲戒処分を経てもなお、従業員が正当な理由なく異動命令を拒み続ける最終段階では、まず退職勧奨が視野に入ります。従業員の自発的な退職を促すもので、強要と見なされる言動は厳に慎む必要があります。懲戒解雇は最も重い処分であり、異動命令の正当性、業務上の必要性、拒否の悪質性など極めて厳格な条件充足が求められます。法的リスクも非常に高いため、実行前の弁護士など専門家への相談と慎重な手続きが不可欠です。
人事異動を拒否された場合の企業側の対応として、社員の個別の状況の確認が必要になります。従業員が拒む理由、家庭事情(育児や家族の介護の深刻度)、健康状態や通院が必要かを聴取しましょう。契約上の職種・勤務地限定の有無も、命令の有効性に関わるため確認が求められます。面談はプライバシーに配慮し、本音が話しやすい環境で共感を示す態度で対話することが大切でしょう。状況把握は、主張の正当性判断や解決策・代替案を模索するうえで、不可欠な手段といえます。
人事異動を会社が検討する際の注意点として、人事異動の根拠を明確にすることが重要となります。就業規則に「業務上の必要に応じ配置転換等を命じ得る」との条項を設け、人事権の範囲を規定します。雇用契約書にも、従業員が正当な理由なく異動を拒否できない異動応諾義務を明記しておくことが望ましいでしょう。適用条件を説明し周知徹底を図り、従業員がいつでも確認できる状態にすることが欠かせません。根拠規定の整備と周知が人事権行使の正当性を支え、労務紛争を未然に防ぐ基盤となるでしょう。
人事異動を会社が検討する際の注意点として、対象となる労働者を説得することがあげられます。なぜ異動対象となったのか、異動先で期待される役割や貢献を伝えます。加えて、人事が会社全体の事業戦略や組織活性化にどう資するか、展望も示しましょう。従業員が抱くであろう不安や疑問(新しい職場環境、業務スキル、キャリアへの影響等)にも、真摯に耳を傾ける姿勢が大切です。異動後の業務や新生活の適応に向け、会社として可能な支援策も説明します。誠実な回答と可能な範囲での配慮が、納得感の醸成と円滑な異動を実現させるでしょう。
人事異動を会社が検討する際の注意点として、弁護士に対応を相談することが有効な手段となります。従業員の異動拒否など労務紛争のおそれがある際には、弁護士への早期相談が望ましいでしょう。弁護士は就業規則等の法務確認、異動命令の妥当性判断、交渉方針への助言などを行います。加えて、訴訟リスク評価や紛争予防策の策定といった専門的支援も期待できます。特に判断に迷う事案や懲戒解雇等の重い決定には、法的リスク抑制と適正手続のため、弁護士への相談が賢明といえます。
人事異動の拒否には慎重に対応しリスクを抑える対策をしましょう。異動命令の根拠規定を明確にし、業務上の必要性も十分に検討しましょう。対象労働者本人へは、納得を得るための説明と説得を尽くす姿勢が基本です。拒否理由が家族介護、本人の病気、契約上の限定等で法的に正当な場合、企業はその命令を強行できません。個別状況への深い配慮と、不利益を抑える判断が欠かせません。安易な懲戒処分や解雇は大きな法的リスクを招くおそれもあります。対応に迷う場合は専門家へ相談し、トラブル防止と円滑な人事を実現させましょう。
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