記事更新日:2022年03月22日 | 初回公開日:2022年03月18日
採用・求人のトレンド 人事・労務お役立ち情報 グローバル用語解説 用語集「二重派遣」とは、派遣社員を受け入れた企業が、さらに別の企業に派遣を行う行為です。これは、指示命令系統や企業の負うべき責任の所在があいまいになることで、社員の雇用を守るという企業責任が脅かされる危険性があるため、法律で禁止されています。二重派遣は、複数の法律に抵触する危険性もあり、再派遣をした企業・再派遣を受け入れた企業に罰則があるため、決して軽視できない問題です。特に、IT業界や製造業などで二重派遣・多重派遣が起こりやすく、問題視されています。
「偽装請負」とは、書面上で請負契約としているものの、実際は労働者派遣になっている状態です。通常、労働者派遣に関しては派遣許可番号が必要になりますが、請負はこのような認可は必要ありません。派遣許可を得るためには、さまざまな制約をクリアする必要があり、それらをかいくぐる目的として偽装派遣が横行しているのです。派遣と請負は客先の業務を行うという点で非常によく似ており、一見見分けがつきません。派遣の場合は派遣先に指揮命令権がありますが、請負の場合は受注した企業に指揮命令権があります。そのため、請負契約にも関わらず派遣先が指示を出している場合は偽装請負となり、二重派遣にあたります。
二重派遣や多重派遣の場合、雇用責任の所在があいまいになってしまうため、禁止されています。雇用責任とは、給料の支払いや社会保険の支払いなどを指しますが、派遣先が複数に渡る場合、どこに雇用責任があるのか曖昧になります。雇用責任が曖昧になると、関係企業同士で責任の押しつけ合いが発生したり、従業員の給与が適正に支払われなくなるといったリスクがあるのです。社員の雇用を守るという観点から、雇用責任が曖昧になる二重派遣は禁止されています。
派遣先が複数に渡る場合、雇用責任が曖昧になるだけでなく、労働条件が守られない可能性があります。派遣契約では、派遣元(雇用元)企業と同じ条件で社員が働けるように、労働条件の取り決めを行います。二重派遣の場合、本来の雇用元企業と実際の派遣先企業が直接取り決めができない状態になってしまうため、労働条件が守られない可能性があるのです。労働管理は派遣先企業が行いますが、中間企業を介することで責任の押しつけ合いや正しい労働管理が行われない可能性が高まります。特に残業や休日出勤は問題が起こりやすいポイントとなっています。
派遣先が複数に渡る場合、契約金額から中間企業に契約マージンが発生します。たとえば、派遣先A社からB社へ派遣を行う場合、A社は派遣時のマージンを受け取る「中間搾取」にあたります。すると、派遣元企業が実際得られるはずだった契約金額よりも少なくなるため、派遣元企業の給与形態によっては、社員の収入が減少することが考えられるのです。このように、二重派遣が禁止されている3つの理由は、すべて「社員の雇用を守る」という観点でつながっています。
もし二重派遣が発覚した場合、派遣社員を受け入れさらに派遣させた企業と、再派遣であると知りながら派遣社員を受け入れた企業には罰則が科せられます。これらは、後述の二つの法律に違反することになるので、違法行為として罰則があります。「故意」であることに対し罰則が科せられますので、再派遣を知らずに受け入れてしまった企業は罰則の対象外となります。とはいえ、派遣社員の所属企業を確認するなどの対策を取り、二重派遣を未然に防ぐことが重要です。
二重派遣する、もしくは受け入れてしまうと、2つの法律に抵触する可能性があります。一つは、労働基準法です。第6条「中間搾取の排除」で、「業として他人の就業に介入して利益を得てはならない」と定められています。これは、前述した中間搾取のことで、派遣先A社がB社へ再派遣を行い、契約マージンを受け取ってしまうことが違反とされています。派遣社員の適正な給料が支払われなくなるといったリスクがあるため、労働基準法において禁止とされているのです。これに違反した場合、再派遣した企業には1年以下の懲役、もしくは50万円以下の罰金が科せられます。
もう一つは職業安定法です。「労働者供給事業は厚生労働大臣に認められた派遣・紹介事業者、あるいは労働組合などが無料で行うという許可をもらっている場合以外は禁止」と定められています。労働者派遣を行う企業は、労働局に申請し、「派遣許可番号」を取得することが義務付けられています。派遣許可番号を取得するには、さまざまな条件をクリアしたり、派遣社員の教育訓練や管理を適正に行う必要があります。派遣許可番号を持たずに人材派遣を行った企業には、1年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金が科せられます。
前述の通り、二重派遣をして法律違反をすると、罰則が科せられます。そのため、派遣する企業も派遣を受け入れる企業も、二重派遣を未然に防ぐために下記の項目については事前確認を行いましょう。まずは、派遣元企業と派遣社員との雇用関係を確認します。雇用関係は、派遣元企との雇用証明書や保険証画像の提出によって確認できます。派遣元の契約社員である場合も、派遣は可能です。その場合は雇用期間の定めを必ず確認しましょう。もし、雇用証明書などの提出を拒まれたり、極端に提出が遅れる場合には、注意が必要です。
次に、指揮命令系統です。派遣社員が実際に働いたときに、どこの誰から指示を受けるのかを確認します。派遣契約をする際には、派遣元企業と派遣先企業で「労働者派遣個別契約書」を契約期間ごとに締結します。指揮命令者の欄に書かれている人が、直接契約をしている派遣先企業の社員であることを確認してください。もし、別の企業名が書かれていたり、指揮命令者の所属企業が明らかでない場合には、さらに派遣先がある可能性を疑いましょう。また、派遣元企業は、社員に対し、こまめに勤務先の状況を伺うようにすることで、契約書通りの実態であるのかを確認することができます。
契約内容については、契約書通りの内容で実際の業務が行われているかを確認します。たとえば、請負契約や準委任契約である場合には、社員が業務指示を受けるのは受注企業及び自社になります。これらの企業以外から指示を受けている場合には、偽装請負の可能性が高いと言えるでしょう。また、対価の発生の仕方も契約内容によって違うため、こちらも確認しておきましょう。請負契約では、成果物の完成によって対価が発生します。準委任や派遣契約では、月間の作業時間に対し対価が発生します。派遣や準委任契約であるにも関わらず、成果物の進捗が悪いことを理由に対価が支払われないといった場合も、注意が必要です。
実際に働いている社員からこまめにヒアリングを行うことで勤務実態を把握しておきましょう。勤務実態を把握することで、指揮命令系統や契約内容が契約書通りであるかも同時に確認することが可能です。契約内容には、勤務時間や休日、業務内容の取り決めも含まれています。二重派遣になっている場合、労働条件や業務内容において、契約当初と大きく変わっているケースがあります。勤務時間や業務内容などに変更が発生する場合には、派遣先企業は派遣元企業に通知を行ったり、新しい契約として契約書を取り交わす必要があります。無断で変更が発生していないか、契約書通りの業務を行っているかを確認するために、勤務実態の把握をこまめに行いましょう。
二重派遣に該当しないケースとして、出向契約があります。出向には「在籍出向」と「転籍出向」があり、在籍出向は自社との雇用関係を維持しながら出向先とも雇用契約を結びます。転籍出向は、自社との雇用関係を解除し、出向先と雇用契約を結ぶ契約です。どちらも他社で働くこと、出向先から指揮命令を受けることが派遣と共通しているため、一見するととてもよく似ています。出向の場合は、出向先とも雇用契約を結ぶため、そこからさらに出向先があっても問題はなく、二重派遣には該当しません。
請負や準委任契約に関しても、二重派遣には該当しません。企業Aの社員が企業Bを介して企業Cに実際の就業先を置く場合、これを「再委託」と言います。この場合、企業Bは、企業Cから受けた業務を企業Aに再委託することを、企業Cに通知する必要があります。企業Bは契約マージンを得る立場になるため、A社とC社の間に立ち連絡をつないだり、有事の際には企業Aと共に問題解決に動く必要があります。準委任契約では派遣許可番号を取得する必要はなく、再委託を多数行うこともできます。ただし、再委託先が多すぎる場合、実際の就業先企業から従業員の所属会社までの情報伝達に時間がかかり、管理が難しくなることからあまり好ましくありません。
二重派遣が起こりやすい業界に、製造業が挙げられます。製造業では、派遣先企業で契約期間内の業務量が少なくなった際に、そのまま別の企業に派遣してしまうというケースがあります。そこからさらに別の企業に派遣されるというケースもあり、多重に派遣先が存在する可能性も出てくるのです。従業員を複数社の就業先へたらい回ししてしまうと、指揮命令権が移り、従業員は再派遣先の企業から業務指示を受けてしまうと、二重派遣となります。
IT業界も、二重派遣が起こりやすい業界です。IT業界では、元請け企業では多くのプロジェクトが並行しており、慢性的な人材不足に悩まされています。さまざまな分野において必要な技術が多岐に渡り、必要なタイミングで必要な技術を持った自社技術者をアサインさせることが非常に困難です。そこで、欲しいタイミングで対応可能な他社の技術者に支援を依頼します。状況に適した契約形態で他社の技術者を迎え入れることになりますが、その技術者が多数の企業を介して紹介されているケースが多くあります。派遣契約の場合には、多数の企業を介して技術者を迎え入れたり、派遣先企業以外が指揮命令権を持つことは違法になります。
今回は、二重派遣についてまとめました。派遣契約は、社員管理や教育指導の徹底が義務付けられていたり、書類が増えるなど事務処理が多くなります。ほとんどは一般的に行われている内容ですので、やり方をしっかりと押さえておけば、そこまで難しいことはないでしょう。しかし、実際に社員が派遣された後に、二重派遣が発覚することが多く、発覚が遅れるほど、事態の収束が難航します。さらに、二重派遣は複数の法律に違反することもあるため、決して軽視できない問題です。事前の確認をしっかりと行うことや、派遣開始後も定期的なヒアリングで現状把握をするなど、二重派遣の未然防止と早期発見に努めることが重要です。
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