技能実習制度とは?【業務に従事するまでの流れや注意点をご説明します】

記事更新日:2021年09月16日 初回公開日:2021年03月02日

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技能実習制度という制度をご存じでしょうか。国内外でのグローバル化が加速する昨今、ニュースなどで耳にされたことがあるかもしれません。本制度は開発途上国の経済発展のために日本の技術を活用してもらうための制度です。創立以来約30年近くにわたり実施されてきた本制度ですが、時代の変化に伴い良い点も悪い点も浮き彫りになってきています。本記事では技能実習生を受け入れるにあたり、押さえておきたい仕組みや課題について詳しくお伝えします。

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技能実習制度とは

開発途上国の人材を育成する制度

技能実習制度とは、開発途上国の若い人材を日本の企業で一定期間受け入れ、日本の高い技能を習得してもらうことによる「人づくりの協力」に主眼が置かれた制度です。またそれらの人材が帰国後にその技能を自国の経済発展に活用することによる「国際貢献」や「技能移転」を目的としています。つまり、日本の人手不足を補うための単純な労働力を確保するために制定されたものではありません。本制度は1993年に制定され、2019年末時点で技能実習生の数は約41万人にものぼっており、国際貢献に役立てられていることがわかりますね。

「技能実習」と「特定技能」の違い

技能実習は実習生が技能を習得するための制度

「技能実習」と似たような制度として「特定技能」がありますが、両制度では目的が大きく異なります。まず「技能実習」とは、前述のとおり開発途上国の若い人材に日本の技術を習得してもらい、帰国後にその技術を広めてもらう「国際貢献」を目的として作られています。あくまでも技能実習の目的は技能や知識習得であるため、受け入れの際は適切な指導が行えるように職種や作業内容、人数や期間等さまざまな制限が設けられています。

特定技能は日本の人出不足を解消するための制度

一方「特定技能」とは、日本の人手不足を補うことを目的に作られた制度です。日本の中小企業の慢性的な人材不足問題を解決するため、2019年4月に新設されました。そのため単純労働の産業分野でも人材を受け入れることが可能で、受け入れ人数や在留期間の制限はありません。労働力が最大の目的とは言え、特定技能として受け入れ可能な人材には即戦力となるそれ相当の知識または経験を必要とします。そのため、要件を満たした元技能実習生が再び日本で働くことも想定されており、労働力をもとめる企業からは期待の声があがっています。

技能実習制度の注意点

対象職種が限られている

次に技能実習制度の注意点ですが、目的は「人づくり」とはいえどんな職種でも良いわけではなく技術実習可能な対象職種は限られています。厚生労働省発表の「技能実習制度移行対象職種・作業一覧」によると、2020年1月時点で技能実習の対象は83職種151作業。主な業界は農業、漁業、建築、食品製造、繊維・衣服、機械・金属関係など。またこれらの分野以外に主務大臣が告示で決める職種・作業があり、今後もその数は増加する見込みです。

受入可能人数が実施者の職員数で決まる

技能実習制度は技能実習生の受け入れ人数枠にも制限があり、それは実習実施者(受け入れ企業)の常勤職員数で決定されます。これは適切に指導できる環境を保つために設けられた制限ですね。具体的な基本人数枠は、常勤職員が301人以上の受け入れ機関で常勤職員総数の20分の1。常勤職員30人以下であれば3人といったように受け入れ企業の規模に応じて設定されています。ただし外国人技能実習機構から優良認定されれば受け入れ人数を増やすことも可能です。

入国するための在留資格は「技能実習」

入国するための在留資格は技能実習であるため滞在可能期間は通常で3年、最長で5年と定められている点にも注意した方が良いでしょう。1年目は技能実習1号、2年目と3年目は技能実習2号という在留資格に分けられ、技能実習生は在留資格の変更または取得毎に実技と学科両試験の合格が必須となります。さらに技能実習3号である4年目と5年目を迎えるためには試験の合格のみならず、実習実施者も一定の明確な条件を充たし、優良認定されている必要があります。

監理団体とは

実施者に対する監査を行う法人

企業が技能実習生を受け入れる際、監理団体を通じて実施する場合が多いでしょう。監理団体とは、技能実習生の受け入れや受け入れる企業へのサポートを行う非営利団体です。技能実習計画の作成指導に始まり、実習実施者は制度に合った適正な技能実習を行っているかなど監査および指導する役割を担っています。監理事業を行うのは商工会議所や商工会、中小企業団体や農業協同組合など、認められた法人形態に限定されており、事前に主務大臣からの許可が必要です。

自社で受入体制が整っていない場合は監理団体へ委託できる

そもそも海外支社や支店など、既に海外との繋がりを持つ企業は前述の監理団体を介す必要はありません。技能実習生を受け入れるためには、企業自身が直接的に技能実習生の受け入れを行う「企業単独型」と監理団体を通して受け入れを行う「団体監理型」の二つの方式があります。つまり、自社で受け入れ体制が整っていない企業は監理団体へ委託・加盟することができるため、中小企業であっても海外からの人材を受け入れることが可能です。

技能実習生が業務に従事するまでの流れ

日本の受け入れ企業と契約

多くの受け入れ企業は団体監理型を採用していることもあり、ここでは団体監理型のフローに沿って技能実習生が実際に業務に従事するまでの流れを解説します。まずは技能実習生を受け入れる日本の企業と監理団体が契約を結ぶ必要があります。その上で監理団体と予め提携された送り出し国側の送り出し機関が、現地の人材を募集・応募・選考。そして最終的に採用された現地の人材が日本の受け入れ企業と雇用契約を結ぶことになります。

外国人技能実習機構へ実習計画の認定申請

次に、実習実施者は技能実習計画を作成します。そしてその計画が適当であると外国人技能実習機構から認定を受けなければなりません。また認定を受けたとしても認定計画のとおりに技能実習が行われていない場合や法令違反等が発覚した場合は、改善命令や認定取り消しの対象になります。適正に実習を行えるよう、常に整備することが求められます。この技能実習計画は技能実習生全員分を作成することになるため、監理団体の力も借りながら確実に取り組みましょう。

出入国在留管理局へ在留資格の申請

無事に技能実習計画が認定されれば、次は出入国在留管理庁に在留資格認定証明書の交付申請を行います。通常は面接から日本入国まで6ヶ月ほどかかると言われています。これらの許可が下りるのを待っている間、現地の技能実習生は送り出し機関の専用施設にて日本語での渡航前教育を受けることになるでしょう。具体的には、日本での生活をスムーズに始められるよう日本語をはじめとした日本の習慣やマナーなどを授業や寮生活で学びます。

査証を取得して入国、1ヶ月の研修

次に現地日本大使館等へ査証(ビザ)を申請・取得できたら、いよいよ技能実習生の日本入国です。しかし入国後すぐに技能実習を始められるわけではありません。入国後は法定講習という講習を約1カ月の間受講する必要があります。その内容は、語学にはじまり日本の生活習慣や職種別の専門知識、入管法や労働法といった法的保護講習等です。その他にも実習先特有の方言やその会社独自の専門用語などさまざまな研修を経て、ようやく技能実習がスタートするのです。

技能実習制度の課題

低賃金や未払い

これまで技能実習制度は開発途上国と日本の受け入れ企業の双方に大きく貢献してきました。しかし残念ながら、本制度の問題点や課題が指摘されているのも事実であり、良い面ばかりではありません。ある調査では、一部の技能実習生は日本人従業員がやりたがらない作業を日本人従業員よりもかなり低い賃金で働かされていることが分かりました。中には残業代を支払わずに労働を強いる実習実施者の存在も明らかとなり、雇用側の大きな問題として波紋を広げています。

劣悪な労働環境

雇用側における課題は賃金だけでなく、その労働環境が大きく関わっています。劣悪な労働環境、例えば過酷な長時間労働や実習実施者が従来のやり方に固執するあまり技能実習生に適正合った教育・研修を実施しない。技能実習生の日本語のレベルを考えず一方的に説明してしまう。そうかと思えば、「言葉ではなく見て覚えろ」と言わんばかりに一切の説明を怠るなど、目に余る厳しい環境が存在しているのです。雇う側も雇われる側双方が気持ちよく、尊重しあえる環境作りが求められています。

不正行為の現状

現地の送り出し機関においても多くの不正行為の現状があります。ほとんどの機関は良心的であり、優秀な人材を紹介してくれます。しかし中には、日本で働きたいという純粋な人材の心を利用し法外な手数料を徴収していたり、取るに足らない低レベルな事前教育の実施や偽の求人募集など、問題が山積しています。しかもこれらは送出機関単独ではなく監理団体とグルになって行われてたり、監理団体がフォローを怠るあまり生じる場合も。実習実施者はまず信頼できる監理団体を見つけることが大事だと言えますね。

外国人実習生の失踪

外国人技能実習生の失踪も、本制度の大きな課題です。失踪後に犯罪に手を染めてしまい、新聞やニュースなどで取りざたされることも少なくはありません。そういった人材はそもそも失踪目的での来日であることが多く、現地の送出機関や監理団体、実習実施者がいくら懇切丁寧にフォローをしても響かないのが実情です。中には、共同生活によるトラブルの果てや自国での借金返済が間に合わないのでより良い仕事を求めて失踪するケースもあります。こういった技能実習生を減らすためにも、人材の選抜や教育に向き合い続ける必要があります。

監理団体の課題

技能実習制度によって生じる諸問題は、監理団体の質に左右されることも往々にしてあります。2020年7月の時点で監理団体は約3,000。中には現地に面接に行った際に送り出し機関に接待を強要し、キックバックを要求するなど不正を働く団体も存在します。実習実施者はまず、外国人技能実習機構のHPを通じてその監理団体が一定の要件を満たした優良団体であるか確認することをお勧めします。技能実習生の現地での借金状況や入国後のフォローアップなど作業の範囲は団体によって異なるため、監理団体選びはとても重要になります。

まとめ

採用企業と外国人労働者にもメリットがある制度

のように技能実習制度における課題はまだ多く存在します。しかし採用企業にとっても外国人労働者にとっても大きなメリットのある制度であることは間違いありません。受け入れ企業は採用リスクを最小限にとどめながら安定した雇用計画が行え、技能実習生は日本の優れた技術を学ぶ機会を得ることができるのです。企業の従業員においても、国際貢献といった社会的使命を果たしているという大きな誇りを持つことができるでしょう。技能実習制度を正しく活用することは、開発途上国の未来そして日本の未来を明るくすることができるのではないでしょうか。

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