記事更新日:2020年05月15日 | 初回公開日:2020年03月04日
用語集 採用・求人のトレンド 人事・労務お役立ち情報 グローバル経済企業という組織で働く全ての社員が、仕事に参画および貢献する機会を持っている。そして一人一人のスキルや経験、考え方がアイディアが存分に活用されている理想的な状態。それこそがビジネスを行う上での「インクルージョン」です。旧知の「ダイバーシティ」をさらにレベルアップさせた、多様な人材が活躍できる社会の実現に繋がる、新たな人材開発の形として広く知られるようになってきています。
海外諸国と比べると、日本では女性の活躍推進が大きく出遅れているのが現状。女性の社会推進をサポートすることは、企業の持続的な発展を推し進める上で極めて大切な要素になります。単にジェンダーにこだわって活躍の機会を制限するのではなく、個々人の経験や能力を重視した採用活動・人事配置をすること。こうしたアクションが、優秀な人材の確保、ひいては事業の成功をもたらすと言えます。
多様なバックグラウンドを持つ外国人を採用するのも、市場での競争力を高め、他社との差別化を図る上で効果的と言えるでしょう。会社にとってプラスになるようなイノベーティブなアイディアは、是非積極的に取り入れていきたいものです。外国人社員が存分に能力を発揮できるようにするために、個人を尊重し、モチベーションを高めながら働けるような職場環境を整えていくことが大切です。
社会福祉の観点から見ても、障害者雇用はどの企業にとっても重要な課題なのではないでしょうか。「自己実現したいから」、「社会の役に立ちたいから」といった想いを持って、企業での就業を希望される方が非常に多くいらっしゃいます。仕事は単にお金を得るためだけの手段ではない、そういった考えを持つ多くの障害者に対し、どのような就業環境を提供するか。障害者雇用についての法制度の理解が早急に求められています。
インクルージョンという言葉は、もともとフランス語に語源を持ちます。直訳は「包括」、「内部に招き入れて扉を閉める」。それの反意語として、当時の社会的な経済的格差は「ソーシャル・エクスクルージョン」と呼ばれていました。英語においては、インクルージョンの動詞形は「include/インクルード」となり、やはり「含む」や「包括する」といったフランス語同様の意味を持ちます。
1980年代に入ると、アメリカにおいて特に障害児教育の分野でインクルージョンという概念が用いられるように。また現在の日本においても、障害のある子どもが通常学級の中で勉強することをインクルーシブ教育と呼びます。これまでインクルージョンという考え方は教育の分野で発展してきましたが、個性の尊重が叫ばれる近年、ビジネスシーンでも広く多用されるようになっていきました。
社内のインクルージョンを高めることは、早期離職率の改善にも繋がります。インクルージョンには、「自分は会社に大切にしてもらっている」、「自分は社会の役に立っている」という社員の自己肯定感を高める心理的メリットがあります。優秀な人材を逃がすことは、企業にとって何にも代えがたい損失。会社で働くあらゆる社員がやりがいを持って働けるよう、多様な個性を認める環境を整えることが重要ではないでしょうか。
「ダイバーシティ&インクルージョン」というセットの表現があるように、インクルージョンという概念ははダイバーシティと合わせて扱われることが多いです。よく似た概念ではありますが、インクルージョンが包括」を表すのに対して、ダイバーシティの直訳はズバリ「多様性」。ダイバーシティとは何か、ダイバーシティとインクルージョンの間には一体どんな関係性があるのか見ていきましょう。
インクルージョンは企業という組織で働く全ての社員が個性を発揮し、相互に能力を活かして「機能している状態」。その一方、ダイバーシティは、多様な人材が「集まっている状態」を表します。少子高齢化や労働力の確保など、様々な社会問題を抱えてきた日本で、インクルージョンに先んじて広まった概念がダイバーシティです。両者がバランスよく両立することが、会社の課題解決に圧倒的な効果を生み出すでしょう。
ダイバーシティの考え方にインクルージョンを掛け合わせることで、風通しの良い理想的な社風が生まれます。労働力の多様化の一例として、冒頭でお伝えしたもの以外では、定年の延長、主婦業や介護と両立させるための時短勤務などが挙げられます。このような多様な働き方を求める人材(ダイバーシティ)を存分に活かすには、個々の能力を認め、活用していくインクルージョンの考え方が必要不可欠と言えるでしょう。
インクルージョンを社内に浸透させるには、丁寧に社員教育を行っていく必要があります。インクルージョンは心理的に作用する側面を持つため、まずは社員の現状把握から始めてみてはいかがでしょうか。個別のアンケートやヒアリングを実施するのが効果的です。例えば、管理職向けのアンケート項目としては、「部下を男女差なく評価しているか」「男性社員が育児休暇を申請してきた場合、どのように対応するか」などが挙げられます。
社員を束ねる立場にある管理職だけでなく、その部下を巻き込むことも非常に大切と言えます。アンケート項目としては、「育児や介護などを理由に、フレキシブルに働かせてもらえているか」「日本人社員と外国籍の社員とでコミュニケーションに相違はないか」などが効果的。「自分以外の社員の多様性を尊重できているか」を意識させ、立場の異なる社員の率直な意見を引き出していくことで、社員の当事者意識の醸成に繋げていきましょう。
もうひとつ大事なポイントが、立場の違いや年齢、性別、国籍に関係なく意見の言いやすい環境を作ること。年次の若い社員は周りを気にして遠慮することが多いので、特にそうした社員に気を配ることが大切です。率直な意見を聞くために、アンケートを匿名にしても良いでしょう。また、外国人社員の意見にもしっかりと耳を傾けていくことが大切です。多様なバックグラウンドを持つ社員をも対象とすることで、会社の課題が見えてくるはずです。
社員全員の理解をスムーズに促すため、段階を追ってインクルージョンを導入していきましょう。多くの日本の会社の中で、「男性」「新卒」「年功序列」といった伝統的な同一性の重視が見られるのが現状です。そうした現状を顧みずに「多様性の尊重」などと叫んでも、かえって逆効果になってしまいます。「ダイバーシティ&インクルージョン」が、今日の組織にとってなぜ必要なのかというポイントを社員に理解してもらうこと。まずはここが大きなスタートとなるでしょう。
インクルージョンは目に見えにくい概念であるため、成果を逐一可視化していくことが、導入のモチベーションアップにも繋がっていきます。実際に、インクルージョンの導入によって離職率が低下したというケースも報告されています。社員の定着率の向上は、当然採用に関わるコストや研修時間の削減に効果的を生み出します。特に社内の上層部や投資家に納得してもらう上でも、具体的な成果を数値化していくことが大切と言えるのではないでしょうか。
ここからは社内で実際にインクルージョンを導入している企業を紹介していきます。ソニーは「ダイバーシティ&インクルージョン」を企業イメージとして大きく打ち出しています。具体的な導入事例としては、会社を休職して留学できる制度の創設や、障害者の活躍推進に取り組む国際イニシアティブ「The Valuable 500」への参画など。LGBTQへの理解を深めるイベントに積極的に参加するなど、画期的な事例が多いのが特徴です。
2015年の段階で、早くも「男性の育児休暇取得率100%」を目指して動き始めたのが、三井三友ファイナンシャルグループ。子どもが生まれた男性社員とその上司に対し、人事担当者から育休取得を推奨するメールが入るシステムがあるのだそうです。2017年には、約230名の男性社員が休暇を取得したのだとか。介護と仕事を両立させる仕組みづくりにも力を入れており、社員向けのサイトで介護にまつわるノウハウを学べるツールを取り入れています。
「個の尊重」を経営理念とするリクルートグループにとって、インクルージョンの実現は理念の実現そのもの。特に女性のエンパワーメント分野では、社内の保育園の開設、保険相談窓口の設置などが一例として挙げられます。2006年度の導入以後、現在グループの管理職のうち約4分の1が女性社員。比例してワーキングマザー比率も増加傾向にあり、現在社員の約5人に1人はワーキングマザーとして働いています。結果がしっかりと数字として出てきていますね。
主に金融・流通分野を中心としたIT事業を展開するエス・エー・エス。子育てに関する理解が深いのが特徴です。女性社員は出産前と出産後に「産前後休暇」を取得することができ、また出産後には会社から「出産祝金」として10万円が支給されます。介護に対してのサポートも手厚く、仕事と介護の両立を目指す社員を対象に、テレワークや時短勤務を推奨しています。リモートで働ける環境が整っているのは、さすがIT企業ならではですね。
インクルージョンを取り入れることは、社員だけでなく組織にとっても大きなメリットがあります。個人の多様性を機能させることは、社員自身が無意識的に持っている偏見に気づかせ、立場で人を判断しないフラットな社風を構築することにもつながるでしょう。企業の宝はやはり「人」です。多様な人材の個性を活用し、組織の成熟、また事業の永劫の発展を目指す上で、ダイバーシティ&インクルージョンは間違いなく大きな鍵となるでしょう。
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