記事更新日:2020年10月13日 | 初回公開日:2020年09月28日
外国人採用・雇用 人事・労務お役立ち情報 採用・求人のトレンド 採用成功事例まずグロースハックとは、サービスやプロダクトを成長させるために様々な改善施策を同時的に行い、その効果を測っていく方法です。サービス価値や市場ニーズをあらゆる面から精査し、アクセス数や売り上げなど様々な実験的アプローチを高速で検証、改善することで急成長に結びつけます。グロースハックは、英語でGrowth Hackと書き、直訳するとGrowth(成長)・Hack(コンピューターをハッキングする、たたき切る)。Hackという言葉にはネガティブな印象が含まれることもありますが、この場合はポジティブな意味で使われており「成長を推進・維持し続ける」といった意味合いも含まれています。
グロースハックという言葉は、2010年にアメリカの起業家ショーン・エリスが命名したと言われています。1990代後半、当時ゲーム会社に勤務していたショーンは、グロースハックの手法でその会社を業界TOPに押し上げ、その手腕から創業当初のドロップボックス社のマーケティングアドバイザーとして市場拡大にも貢献しました。ショーンによると、「グロースハッカーとは、成長を自身のコンパスにしている人のこと。彼らは実現可能な成長への可能性を徹底的に精査し、成功を実現させる」と説明しています。
グロースハックはマーケティング活動の一種とみなされることが多いですが、グロースハックは「エンジニアリング」と「マーケティング」を統合して実践します。従来のマーケティングでは広告宣伝やアクセス解析を行い、それを受けて改善を進めます。これらに加えて、サービスそのものに「成長・拡散の仕組み」を組み込んで設計するのがグロースハック。例えば、自社が分析をせずともユーザーのデータが収集され自動アップデートされるような機能や、ユーザーが自らサービスを展開・宣伝してくれるような機能をサービスそのものに実装している、ということです。
また、サービスそのものに成長機能が組み込まれていることで、改善のためのPDCAはより高速で回転させることができます。通常のマーケティング活動では完成したサービス価値をどう訴求していくか、という観点が主になりますが、グロースハックではサービスそのものに遡り、常に仮説と検証、改善を繰り返していくという特徴があるのです。実際にこれを行うには、マーケティングのノウハウだけでなくデザイナーやライター、プロデューサー、エンジニアなど複数の要素を兼ね備えた人材またはチームが必要。Facebookでは専門の「グロースチーム」発足により全世界で12億人を超えるユーザーを獲得できたと言われています。
グロースハックという考え方が注目されてきた背景は、IT・Web業界のサービスのライフサイクルが短くなってきたことにあります。Web業界にベンチャー企業が次々と誕生しているのはご存知の通りでしょうが、同業界では比較的短い期間でサービス開発ができ、参入障壁が低くなっています。新しいサービスが登場するスピードも早く、特にBtoC向けのサービスではユーザーは新しいものにどんどん乗り換えていきますよね。そのような状況において、一つのサービスをできるだけ短期間で拡大し、少しでも長く利用してもらうための考え方がグロースハックです。
また、AI技術の発達によりビッグデータ分析・活用が進んでいることも背景の一つにあります。例えば、SEO分析によるマーケティングは10年以上前からあった考え方で、すでに普及している手法です。今までマーケティング部門とエンジニア部門とが別々に考え行ってきた活動が、データ読取・活用の進展を受けてよりスムーズに繋がるようになりました。各部署での業務を有機的・包括的に連結させることで、サービスはより良く成長していくのです。
グロースハックにおいてその「グロース」を図るために用いられる分析フレームワーク「AAARR(アー)」です。サービスの成長における5段階のフェーズの頭文字を取ったもので、まずはAcquisition、ユーザー獲得のフェーズとなります。この段階ではサービス自体をいかに広く知らしめ、実際に訪問してもらえるかを分析します。
2段階目のフェーズがActivation、「利用」のフェーズ。Webサービスを展開するサイトを訪問してもらったら次は実際に利用してもらうことが大切です。ユーザーに「会員登録」をしてもらえるとActivateはさらに進みます。Acquisitionはユーザーの量を重視するものですが、Activationではユーザーの質に注目した成長指標ですね。
Retentionとは「継続」フェーズです。Activateしてもらったユーザーに継続して、できるだけ頻繁に、長く利用してもらうことを目指すフェーズをいいます。 このようなそれぞれのフェーズでKPIを設定し、ユーザーインターフェースの比較、ユーザビリティの改善をはじめ、さまざまな仮説検証を繰り返すのです。
Referralとは「紹介」フェーズです。ユーザーに対して、友人や知人にWebサービスを紹介してもらうことを目指します。先にも、ユーザーが自ら他者に利用を促す機能を実装しているのはグロースハックならではだと述べました。例えばSNSサービスでの「タグ付け」「メンション」機能はこれにあたりますよね。このフェーズはユーザーの「量」を測る指標でありながら、同時に紹介にたえうるかどうかの「質」も測っています。
最後に、Revenueとは「収益化」フェーズです。文字通り、ユーザーにできるだけ多くの収益につながる行動を取ってもらうことを目指します。ここまででユーザーの量と質に寄与する成長指標を測っていましたが、最終的に事業として収益性をあげていけるかどうか、というのは欠かせない観点ですよね。AAARRモデルではサービスごとにこのフェーズを分析し、重要な部分をKGIとして定め成長のボトルネックを解消させていきます。
では、次に具体的な企業事例をご紹介していきます。グロースハックの生みの親、ショーン・エリス率いるDropboxは、紹介インセンティブ制度を設けることでグロースハックに成功しました。サービスを他者に紹介すると250MBのストレージを追加するなどの特典を打ち出したのです。これは、ユーザー数の伸びが頭打ちになる中、新規ユーザーの1/3は既存ユーザーの紹介者だったという分析結果から生まれたアイデアです。登録の招待文の改良やサービスの最適化などあらゆる手法を試し、継続的に改善し続けた結果、当初10万人だったユーザー数を、わずか一年強で400万人まで伸ばす事に成功しました。
Airbnbでは、初期ユーザーを獲得するための方法として、類似サービスを実施していた大手の地域情報コミュニティサイトCraigslistと連携させました。Craigslistへ投稿すると自動的にAirbnbにも投稿されるように仕組み化し、多くの提供側ユーザーを獲得することができたのです。これは第一フェーズ「Acquisition」でのハックですね。さらに、購入側ユーザーを増やすために、ホスト物件にプロのカメラマンを出向かせ、高クオリティの写真を撮影。これがAirbnbのスタンダードとなり、購入側ユーザーの体験レベルもアップできたとされています。
次に、非アクティブユーザーをアクティブにさせた、Twitterのグロースハック事例をご紹介します。Twitterでは新規登録してもその後利用がなく非アクティブになっていくユーザーが多いという課題がありました。そこで分析を重ねていったところ、新規登録初日に5〜10人のアカウントをフォローしたユーザーは利用継続率が高いとい結果が判明。新規登録者向けチュートリアルの中で「5人フォローをしよう」という内容を入れたところ、アクティブユーザーの比率が高まった、という見事な事例です。
『グロースハック完全読本』は、グロースハックという言葉自体を生み出したショーン・エリス氏と、Facebookのプロダクトマネージャー(英語ではProduct lead)を務めるモーガン・ブラウン氏が共著した書籍です。グロースハックならまずはこれを読むのが間違いないでしょう。グロースチームの作り方からPDCAを高速で回す実践方法など、有名企業の実例を交えながら記しています。
まずは素早くグロースハックを理解したい!という方には金山裕樹著・「いちばんやさしいグロースハックの教本」がお勧めです。日本で初めて「グロースハック」を体系的に解説した良書で、業界の第一人者である著者が、自社製品を育てた経験をもとに、すぐに役立つ手法やフレームワークを解説します。正しいKPIの設定方法から有効な施策を導く「グロースサイクル」フレームワークなどまで、自社実践に基づく成長のノウハウが詰め込まれています。
グロースハックはアメリカ発の、IT業界の考え方だというイメージが強い方は、酒井崇男著・「トヨタの強さの秘密 日本人の知らない日本最大のグローバル企業」を読んでみてはいかがでしょうか。IT業界で注目の「リーン生産方式」は実はトヨタの生産方法をもとにしたものでした。売上高27兆円超、営業利益3兆円弱、トヨタが圧倒的に強いのは世界の人が「買いたくなる」クルマを設計しているからであり、その設計情報を生み出す仕組みこそがグロースハックの概念なのです。
以上、本記事ではサービスやプロダクトを成長し続けるグロースハックという概念について、その意味や方法論、実例などを解説しました。現代のビジネス社会でサービスやプロダクトが生き延びていくには、この考え方は不可欠です。「グロースハック」という言葉ではなくとも、すでにこの考え方が採用されているケースは意外と多いのではないでしょうか。サービスや企業を成長させるために、私たちビジネスマンもグロースハッカーとしての素質を身につけていきたいものです。
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