大学入試「英語」問題が変わる?【新制度や民間試験の導入は?】

記事更新日:2020年09月04日 初回公開日:2020年08月17日

日本の英語教育 グローバル経済
大学入試試験の改革が始まろうとしています。現在特に話題になっているのは英語です。学生やその親たちにとって一生を左右する大学入試。学生たちが進む日本のビジネス社会全体への影響も大きいと考えられます。本記事では、大学入試英語試験の改革に関して、外部試験導入にまつわる議論の内容をまとめました。2020年度の改革が延期となり、改めて問題点が山積み状態となっている現在。日本の英語教育そしてグローバル社会を左右しうる問題として、ぜひ把握しておきたい内容です。

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大学入試の英語は変わるのか?

民間試験の導入は見送りになった

2019年11月1日、⽂部科学⼤⾂は「⼤学⼊試英語成績提供システムの導⼊を⾒送る」との発表をしました。これはもともと2021年度⼤学⼊学者選抜から導⼊予定であったもので、大学入学者選抜に外部の英語資格・検定試験結果を活⽤するためのシステムです。さらに12月17日には、2021年1月実施予定の「大学入学共通テスト」における記述式問題の導入についても見送りとすると発表がありました。受験生の不安を払拭し、安心して受験できる体制を整えることが現時点では困難だとの判断によります。

しかし独自に民間試験を活用する動きがある

文部科学省としては延期を打ち出しましたが、現状、 2021年度一般選抜で英語資格・検定試験結果を活用する国公立大学は21大学、私立大学は225大学にも上ります。一般入試で外部の英語資格・検定試験結果を活用する大学数はこの5年間で約5倍に増加。この動きは今後もかなり加速されるものとみられます。文部科学省の「大学入試英語成績提供システム」導入が見送りになっても、各大学は受験生に試験結果を直接申告させる方式を取り活用に繋げているのです。

なぜ大学入試の英語に変革が求められているのか?

国際化が進む中で英語コミュニケーション力求められている

ではそもそもなぜ大学入試英語試験の改革が始まったのかというと、やはり社会の国際化・グローバル化への対応のためです。海外で働くこと、外国人と一緒に働くことが当たり前になりつつある現代において、英語を使ったコミュニケーションの需要はさらに高まっています。リスニング・リーディングなどの限られた能力だけでなく、コミュニケーションを前提にした能力の育成が必要なのは明らかでしょう。このコミュニケーション能力を育成するため、「読む」「聞く」「書く」「話す」の4技能評価方式が導入されます。

「話す」「書く」の能力が足りていない

つまり、「読む」「聞く」しか問われていなかった従来の試験では、現在求められるべき「話す」「書く」の能力を測ることができないというわけです。この4技能をバランスよく使うことで初めて英語コミュニケーション能力として成立するといわれており、この2つの能力の育成・測定が急務となりました。しかし、この「話す」「書く」能力をこれまでのセンター試験と同様50万人規模での同日一斉実施は、環境整備などの観点からかなり困難。民間業者の資格・検定試験の活用を前提とした改革が議論されています。

大学試験が変われば必然的に高校の授業も変化する

また、大学入試を改革するのは高校の授業を変革させる必要があるから、という見方もあります。中央教育審議会における今後の日本教育の狙いは、学生の思考力や表現力を高めていくこと。その点では、知識・技能を問う問題が中心の従来の大学入試センター試験は評価基準が不十分だというのです。同様の理由から、英語に限らず他の科目でも記述式問題の追加設定が予定されています。指導要領を変更し大学入試を改革することで高校の英語授業のレベルを引き上げる狙いがある、という点は押さえておきましょう。

予定されていた外部試験の種類

ケンブリッジ英語検定

活用が予定されている外部試験の種類をいくつかご紹介しましょう。一つ目のケンブリッジ英語検定は英国ケンブリッジ大学の一部門が管轄する検定で、世界トップレベルの研究者チームによって支えられる高品質の試験内容が特徴です。世界で最も信頼されている英語検定として名高く、英語を母国語としない受験者を対象とした試験としては、最も長い歴史があります。 KET(初級)からCPE(特上級)まで5段階レベルがあり、合否結果形式。大学入試では、FCE(上中級)が求められることが多いです。

英検(新型)

日本英語検定は従来、リスニング・リーディング試験に合格した場合に二次試験としてスピーキング・ライティングを問う形式ですが、新型試験では全ての受験生が一律で4技能の試験を受ける形式となりました。特に2020年4月から「英検2020 1 day S-CBT」が始まり、コンピューター画面上での解答、スピーキングテストはヘッドセットを装着し録音する吹込み式となっています。原則毎週土日に受験できる点、日本全国のテストセンターで受験できる点、受験料が比較的安価である点から、高利用率が予想されています。

GTEC

GTECとは Global Test of English Communication の略で、ベネッセコーポレーションにより実施する英語4技能試験です。『使える英語力を測る』というのを標語に掲げており、1997年の開始以降、述べ100万人以上が受検しています。難易度別にCore・Basic・Advanced・CBTの4種類があり、大学入試に利用できるのは主に「CBT」テストです。これも新型英検同様コンピューター試験で比較的受験料が安く、47都道府県で受験ができる点が注目されています。試験時間は休憩なし、約175分で1400満点の試験となっています。ライティングは打ち込み形式なのである程度のタイピング能力も必要かもしれません。

IELTS

IELTS(アイエルツ)は英語圏への留学・移住を志す人の英語能力を評価するために作られたテストで、全世界で年間300万人以上が受験するものです、学業目的の「アカデミック・モジュール」と、英語圏での学業以外の研修・移住を目的とする「ジェネラル・トレーニング・モジュール」の2種類があり、大学入試には前者のタイプが有効。スピーキングレベルをネイティブとの1対1での面談で評価する点が特徴的で、それ以外の能力は紙ベースの筆記テストで測られます。現状では主要15都市のみでの試験開催となっています。

TOEIC

日本人に一番馴染みの深いTOEICは、990満点のTOEIC® Listening & Reading Testに加え近年評価が高まっている400点満点でのTOEIC® Speaking & Writing Testsの導入が検討されていました。しかし、2019年7月、運営元であるIIBC は大学入試英語成績提供システムへの参加申込を取り下げる表明を発表しています。システムが要請する運営、提供処理事項が当初の予定より複雑なものであったためとのこと。システムへは参加せずとなりましたが、全国で300を超える大学で出願資格免除、判定優遇、得点参考など活用がされています。

大学入試英語成績提供システムの導入は見送られた

平等ではないという意見があり見送りに

外部試験の導入は主に費用面、受験エリアなどの公平性が問題となり見送りになりました。どの試験が自分に合うか可能性を広げようと全種類を受ける動きも広がると予想されますが、IELTSなど受験料が1回2万円を超えるものもあります。何度も練習受験をできる受験生ばかりではないでしょう。また47都道府県で試験会場が設定されているのはGTEC、新型英検のみであり、地方在住の受験生にはこれ以外の試験を選択した場合に移動に伴う時間・費用増の負担が発生します。

そもそも大学入試英語成績提供システムとは

成績を大学入試センターで集約・監理し成績提供する

そもそもこの「大学入試英語成績提供システム」とは、受験生1人1人に共通IDを発行し、試験運営元より入試センターが集約を引き受け、出願先の大学へ成績情報を自動提供させるシステムのことです。前述のような複数の外部英語試験を管理でき、受験生がそれぞれ合格証などを提出する必要もありません。教員側も生徒がどの試験を受けたのか分かるというメリットもあります。共通IDが複数発行されないよう、発行には在学証明書や住民票が必要とされています。

登録する成績は大学を受験する年度で最大2回

ルールとして、外部試験の成績登録は受験前年の4月から12月までの間に2回まで受けられます。試験の種類に関わらず、期間内に受けた最初の2回分を成績として残せるため、例えば英検、IELTS、GTECの順番に受けた場合は最後のGTECの成績は放棄となります。なお、共通IDを記入せず受験した場合はただの自主受験として回数にはカウントされません。選択肢・チャンスが増える分、各試験の実施スケジュールを把握した上でいつ、どの試験を受けるのかより長期的な計画が必要になるといえるでしょう。

新たな英語の入試は2024年に導入予定

具体的な試験が明確でない

見送られた外部試験への本格導入は2024年を予定しています。2020年より学習指導要領が順次改革されていますが、2023年度まではセンター試験から共通テストへの移行期間。各大学で共通テスト・民間検定試験を選択すると思われます。2024年度受験となるのは現在の中1生で、すでに新指導要領のもと学習を完了できているという想定です。旧要領に比べ習う単語数なども格段に多く、暗記事項が増えるといわれていますが、実際に対応可能な試験は見通しがついていません。

2024年度から変わるのは英語ではない

なお、2024年度からの大学入試共通テストでは、英語以外の教科も大幅な改革が予定されています。思考力・表現力の向上を目的として、理科社会にも記述問題が導入されるといわれています。また新学習指導要領の施行に伴い社会科系では「歴史総合」「地理総合」「公共」の新設、国語もP「現代国語」と「言語文化」に再編され必修となる予定。プログラミングや情報セキュリティの基礎などを学ぶ「情報Ⅰ」が必修となったことから、「情報」も科目として導入される可能性もあります。

学生も保護者も見当がつかず不安な状況が続く

このように色々な教科が一気に改革されるということで、そもそもうまく実施がされるのか、どう対策すべきか、見当がついていません。まだ大学側、高校側ともに、民間試験ではなく入試センターが4技能を測る試験を新たに作成すべきという声も根強くあります。この試験方法如何によって志望校選びも変化するでしょうし、部活引退の時期等との調整も難しいですね。試験情報の最終開示は1年前の2023年になるかと思われますが、学生も保護者も、教員は高校側も大学側も不安が募っている中、早急な確定・公表が求められます。

今後求められる英語の入試のあり方

「話す」「書く」の能力を身に付ける事が出来る試験の実施

導入は延期となりましたが、今の日本英語社会に求められている試験に変更はありません。「話す」「書く」の能力をさらに身につけ、「読む」「聞く」を含めた4技能を総合的に評価する試験です。文部科学省は大臣のもとに設置される検討会議で、導入に至った経緯を検証するほか、試験の仕組みを含めて抜本的な見直しを行うとのこと。今後1年を目処に結論を出す方針のようなので、どのような入試制度が作り上げられるのか、今後も最新情報に注目が集まるでしょう。

平等に試験が受けられる環境が求められています

経済状況や居住地域に関わらず、平等に機会を得られる試験というのはどのように実現されるのでしょうか。この入試改革が、今後の日本の英語教育そしてグローバル社会を更に推進させる原動力になるのでしょう。本記事では、2024年に延期となった大学入試英語試験の改革に関して、検討の背景を解説しました。小学校の英語教育必修化も始まり、日本の学校教育における英語コミュニケーションは重要性が増す一方です。今後の最新情報に注目しつつ、学生も社会人も改めて英語学習を意識していきましょう。

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