法定雇用率とは【雇用義務や助成金などを詳しくご説明します】

記事更新日:2021年06月11日 初回公開日:2021年02月16日

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「法定雇用率」が障害者雇用を表す重要な数字だということをご存知でしょうか。もちろん、ほぼ全ての企業にとって守る義務が発生している重要な数字です。法定雇用率は知っている方でも、来たる2021年3月、この法定雇用率が改正・引き上げになることはあまり知られていないかもしれません。本記事では労働者を雇用する企業として必須の知識である「法定雇用率」について、その制度の詳細や割合の変遷、実際の運用方法などを解説します。複雑な制度ではありますが、適切に理解し、運用方法を考えていくために本記事が参考になりましたら幸いです。

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法定雇用率とは

障害者雇用促進法で定められた障害者と常用労働者の割合

法定雇用率とは、常用労働者のうち「障害者」をどのくらいの割合で雇う必要があるかを定めた基準のこと。「障害者雇用促進法」により、一定数以上の労働者を雇用する企業や行政機関には法定雇用率の達成が義務付けられています。企業には「採用の自由」が認められていますが、こればかりが追求されると障害者の希望が受け入れられなくなる可能性もありますよね。法定雇用率は、そのような事態を防ぎ、障害者の安定した雇用を守るために1960年に導入されました。

2021年1月引き上げ予定だったがコロナの影響で延期

法廷雇用率に関して、次回引き上げのタイミングが2021年1月から同年3月へ延期されることになりました。2020年初旬から新型コロナウイルスのビジネスへの影響が大きく、障害者雇用の採用活動にも少なからず影響が出ているという理由からです。雇用側は引き上げ延長または見送りを要請していますが、障害者側ではテレワークが障害者の働き方へ新しい可能性をもたらすのではという意見もあったようです。この引き上げはもともと2018年より決定していたという背景もあり、結果として2ヶ月の後ろ倒しとなりました。

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法定雇用率の現状

雇用者数は15年連続で過去最高を更新

法定雇用率について現在の状況を確認していきましょう。厚生労働省の発表によると、2018年時点で民間企業での障害者雇用数は53万4769.5人、15年連続で過去最高となりました。これは前年と比べて7.9%の増加であり、50万人を超えたのは史上初となります。精神障害者の採用が進んだことなどを背景に、全従業員に占める障害者割合も2.05%と初めて2%を超えて過去最高となりました。一方、法定雇用率を達成している企業の割合は前の45.9%という結果にとどまっています。

一方で中小企業における障害者雇用が進んでいない

法廷雇用率の達成が進んでいない実態として、企業規模や産業別でのばらつきがあり、特に中小企業では障害者雇用が進んでいない実態にあります。障害者を雇用する際、作業施設や設備の改善や職場環境の整備、従来とは違う雇用管理など、健常者を雇用する場合に比べると企業の経済的負担が大きくなります。また、障害者を雇用する際には、支援者や指導者を配置するなど人的な支援体制も調える必要もあるでしょう。資金や人員の余裕が少ない中小企業にとっては、新たに障害者を雇用することは、義務とはいえ簡単ではありません。

2021年3月1日からの法定雇用率

民間企業における法定雇用率は、2021年3月1日から2.3%に引き上げられます。これは2018年4月の法改正で決定したもので、18年時点での2.2%への引き上げは「経過措置」とされています。2021年2月現在、障害者を1人以上雇用する必要があるのは、常用雇用で働いている労働者が「45.5人」以上いる企業。しかし、3月以降の引き上げにより、これが「43.5人」以上いる企業が対象となります。現状44人を雇用している企業などは新たに対象に入るということですね。

法定雇用率の推移

民間企業

前述の通り、法定雇用率は1960年に企業への努力義務として導入され、1976年に義務化されました。これまでの推移の変遷をおさらいしていきましょう。民間企業に対しては、1976年の義務化時は1.57%。その後、1988年に1.6%、1998年に1.8%、2013年に2.0%、そして2018年に2.2%と段階的に引き上げられてきました。なお、民間企業における障害者雇用率設定の基準は次の通りです。障害者雇用率=(身体障害者、知的障害者及び精神障害者である常用労働者の数+ 失業している身体障害者、知的障害者及び精神障害者の数)÷(常用労働者数 + 失業者数)

公的機関

国、地方公共団体における法定雇用率は、2021年2月現在、民間企業より0.3ポイント高い2.5%、3月からは2.6%となります。都道府県等の教育委員会は0.1ポイント低く、現在2.4%、3月から2.5%の引き上げです。2018年、中央省庁による「障害者雇用水増し問題」が明らかになりましたが、2018年6月時点の実雇用率は国で1.22%、都道府県では2.44%、市町村では2.38%と、法定雇用率の半分以下という状況でした。

独立行政法人

独立行政法人では国、地方公共団体と同様、2021年2月現在の法定雇用率が2.5%、3月より2.6%に引き上げになります。なお、民間企業、公的機関と比較すると比較的障害者雇用が促進されており、2018年6月時点での実雇用率はすでに2.54%と雇用率を達成していました。ちなみに、実雇用率の算出においては、短時間労働者を0.5人として「ハーフカウント」、 重度身体障害者、重度知的障害者は2人分として「ダブルカウント」をするルールがあります。

法的雇用率の雇用義務範囲

精神障害者と発達障害者が雇用義務範囲に加えられた

2018年そして2021年3月の法定雇用率引き上げは、雇用義務対象者の範囲が広がったことによるものです。対象障害者は従来、身体障害者と知的障害者のみでしたがここに精神障害者(発達障害者を含む)が加わりました。なお、精神障害者である短時間労働者の算定方法も変更となり、短時間労働者であっても精神障害者の場合には、通常の0.5人ではなく1人とカウントすることができるようになりました。これは精神障害者の平均勤続年数が、身体障害者や知的障害者に比べて短いという調査結果に基づき配慮されたものです。

法定雇用率の納付金について

法定雇用率を満たさない企業は不足1人につき5万円徴収

では、実際に法定雇用率を満たすことができなかった場合のデメリットを確認していきましょう。該当の企業または公的機関は、「納付金」という名目で「規定数に対し不足する雇用障害者数1人につき、毎月5万円」を国に納付する必要があります。ただし、対象となるのは常用労働者が100人以上の企業のみであり、これは障害者雇用の義務が発生する45.5人以上(2020年2月現在)の基準とは異なります。例えば、常用労働者100名の企業では雇用障害者規定は2名ですから、雇用していない場合は毎月10万円の納付金が必要ですね。

納付金は罰則ではない

法定雇用率は法律によって定められたものですが、この納付金は罰金・罰則ではありません。これは障害者を多く雇用している事業主の負担を減らし、事業主間の負担を平等にすることを目的とした「障害者雇用納付金制度」に基づいたもの。あくまでも「罰金」ではなく、障害者がより働きやすくなるための「原資」として徴収され、この納付金はより良い障害者雇用のための取組や調整金・報奨金の財源として活用されています。助成金の内容については後述しますのであわせてご確認ください。

法定雇用率の助成金

法定雇用率を達成している企業は調整金が支給される

逆に、法定雇用率を上回って障害者を雇用している場合、「障害者雇用調整金」として超過分1人月月額2.7万円が支給されます。これは納付金同様、常時雇用労働者数が100人を以上の企業を対象にしたものです。ただし、常用労働者数100人以下の企業においても、一定の割合を超えて障害者を雇用している場合は「報奨金」が支給されますので、該当の場合は確認ください。その他、自社で雇用しない場合でも、「在宅就業障害者」や「在宅就業支援団体」に仕事を発注し、業務の対価を支払った場合にも助成金が用意されています。

法定雇用率に違反した際の罰則

厚生労働省から改善指導が入る

上記の納付金とは別の罰則として、実雇用率が法定雇用率を下回ってしまった企業には、行政(ハローワーク)による改善指導が行われます。具体的には、まず2年間での雇入れ計画の作成命令を受けます。その実施状況が思わしくない場合、「雇入れ計画の適正実施勧告」「特別指導」という順で進んでいきます。大前提として、そもそも企業は毎年6月1日時点の障害者雇用状況をハローワークに報告する義務がありますが、これを怠ると30万円の罰金が課されるため注意しましょう。

勧告や指導を受けても改善されない場合は企業名が公開

上述のステップでハローワークの「特別指導」を受けてもなお、障害者の雇用状況が改善されない場合、社会的制裁措置として社名が公表されます。この特別指導は社名公表を前提に、雇入れ計画期間終了後9ヶ月間実施されます。また、不足数が特に多い企業については幹部への直接指導も実施しているといいます。社名の公表は「障害者雇用促進法」で明記されている要項ですが、社名が公表されると、企業へのイメージ悪化、業績に影響が出る可能性も否定できません。社名の公表に至る前に、障害者の雇用を増やすことが望ましいでしょう。

障害者雇用の求人サイト

リコモス

上記を確認した上で、実雇用率が法定雇用率に達していない場合は、採用活動を開始しましょう。ここでは障害者雇用専門のサービスを3社ご紹介します。まず、リコモスは、東京・首都圏に特化した障害者雇用マッチングサービスです。「プライベートオファー」や「適正検査・スキルチェック」のコンテンツにより、雇用側、障害者双方の条件を精度高くマッチングしアンマッチを極小化させるのが特徴。また入社後にも適性検査・スキルチェックを再度実施し、能力の向上と心理的状況を把握し長期就業をサポートするサービスも魅力です。

dodaチャレンジ

「dodaチャレンジ」は、国内最大級の登録者数を持つパーソルグループ内の障害者転職支援サービスです。紹介先の業種が多岐に渡ることから、登録者の経験職種の幅広さが強みとされています。東京・名古屋・大阪にカウンセリング拠点を持ち、全国ベースの登録者があるため地方での採用にも対応可能な点は有難いですね。労働者側には身体・精神・知的と障害種別に応じたサポート内容を提供しています。候補者の選出だけでなく初期選考代行・入社の意向醸成などもフォローしてくれるので安心です。

atGP

障害者雇用支援サービスのパイオニアであり、その15年の歴史から障害者サポート実績No1を誇るのがatGPです。エージェントサービス・求人掲載・スカウト・職業トレーニングまで幅広い事業を一貫して行っており、労働者にとっても企業にとってもそれぞれの課題に合った最適なサポートが見つけられるでしょう。セカンドキャリア以上の転職だけでなく、新卒採用・ハイクラス採用・アスリート採用などと目的に応じた登録者を保有しているのが強みで、全国約6万人の障害者が利用しているサービスです。

まとめ

自社の法定雇用率を把握する事が大切です

ダイバーシティや働き方改革が叫ばれている昨今ですが、法定雇用率に関してはまだ達成できていない企業も多いのが現状です。まずは自社の実雇用率の計算方法や障害者のカウント方法を正しく理解し、現状とのギャップを把握するところから初めてみてはいかがでしょうか。実際に金銭的不利益が発生していることを考えると、うまく活用していきたいものですよね。法律や制度を適切に理解し、障害者を貴重な労働力として捉えることで、自社にとっても障害者にとってもwin-winな関係が築けるはずです。

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