送り出し機関とは【技能実習制度における役割と選定のポイントを解説】

記事更新日:2021年08月03日 初回公開日:2021年08月03日

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貴社では慢性的な人手不足に悩まされてはいませんか。良い人材を確保したいけど人材が見つからない、そのような悩みを抱えている企業や人事担当者の方に、考えて頂きたいのが「送り出し機関」の存在です。送り出し機関とは、日本で働きたい技能実習生を派遣する、海外にある機関のことをいいます。送り出し機関を利用することで、若くて意欲のある人材を確保することができ、人手不足の解消につなげることができるでしょう。今回は送り出し機関の役割と利用する場合の注意点について、お伝えします。人手不足に悩む企業や人事担当者の方に必見の内容となっていますので、ぜひご覧ください。

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送り出し機関とは

技能実習生を日本に送り出す海外企業や団体

送り出し機関とは、日本で働くという希望を持ち、技術や知識を身に付けたい技能実習生を日本に送り出す企業や団体のことを指します。送り出し機関になれるのは、国や地域にある公的機関から推薦を受けている、技能実習生の母国に設立された企業や団体です。送り出し機関は、監理団体と契約を結びます。契約を結ぶことで、技能実習生候補として集められた人材の中から、技能実習生を受け入れる企業と、条件面で合致した人材を確保することが可能となります。

送り出し機関の定義

旧制度と新制度

送り出し機関の定義は旧制度と、2017年11月から施行された新制度で違いがあります。旧制度では、技能実習の準備に携わった外国の機関をすべて、「送り出し機関」と定義していました。新制度では、技能実習生の母国に存在し、技能実習生の就業を日本の監理団体に引き継ぐ機関を「送り出し機関」としています。監理団体に対し、技能実習生の求職申し込みを取り次ぐか、取り次がないかで「送り出し機関」と「準備機関」の2つに分類されます。

日本で技能実習生が増える背景

急速な労働人口の減少

日本では急速に労働人口が減少しています。建設業や製造業など数々の分野で、外国人労働者を受けいれ、労働力を維持しているのが、慢性的な人手不足に悩む日本企業の現状です。人手不足が深刻化する中で、2017年に「外国人技能実習生制度」が改正され、取り扱う職種の追加と、優良な監理団体や実習実施者に対しての制度拡充などが行われました。制度改正により、技能実習生が日本で長く働く機会が与えられたのです。そして、企業も人手不足を補う目的で、技能実習生の受け入れをするようになったのが、技能実習生が増加している一因といえるでしょう。

正規雇用が少ない

技能実習生が増えている背景に、農業や、製造業などの一部の業種で日本人の正規雇用が少ないことで、人手不足を招いていることがあげられます。現状の日本では、事務職や営業職を希望する人材が多く、そのほとんどが都市部の勤務地を希望しています。そのため、地方の現業では人材が集まりにくく、慢性的な人手不足に陥っているのです。外国人技能実習制度は本来、「発展途上国に技能又は知識の移転を図り、経済発展を担う」ものであり、人手不足を補う制度ではありません。しかし、結果的に技能実習生が派遣されることで、人手不足の解消を図っているのが現状なのです。

送り出し機関の役割

技能実習生候補者の選抜

送り出し機関の役割に、技能実習生候補者の選抜があります。実習を実施する日本の受入企業による条件(性別や年齢または学歴など)に合わせて、技能実習生候補者の選抜を行います。また、技能実習生が技能実習法等に定められた要件を満たしているか確認することも重要です。技能実習法等の要件に合致していて、なおかつ日本の受け入れ企業による条件もクリアしている良い人材を選抜することが、送り出し機関の大きな役割となります。

出国支援や手続き

技能実習生候補者の募集と選抜を終えたら、日本の受け入れ企業に派遣する前に必要な出国支援を行うのも送り出し機関の役割です。技能実習生を日本に派遣するために、必要な手続き等を進めていきます。派遣する技能実習生の健康状態を確認し、監理団体に報告するなど一通りの手続きを終えると、監理団体より在留認定証明書が送付されます。在留認定証明書の送付を受けて、技能実習生のパスポートの申請手続きを行うことも、送り出し機関の仕事です。

出国先の語学や文化の教育

選抜された技能実習生候補者に対し、日本の受け入れ企業の技能実習へ向けた教育を行うのも送り出し機関の大切な役割でしょう。主な教育の内容は、日本で生活しながら働いていく上で、必要となる日本語や日本特有の文化、またはマナーを習得することです。そして技能実習生が働く現場で必要な実技のトレーニングなども合わせて学びます。おおよそ6ヶ月ほどの教育を受けた後、最終的な面接や実技試験を経て、合格者を日本へ派遣します。

日本滞在中の支援

技能実習生を日本に派遣することだけが、送り出し機関の仕事ではありません。技能実習生が日本にいる間は、滞在中の状況を把握することに努めるのも、送り出し機関の大切な役割です。技能実習生が何らかのトラブルに巻き込まれた場合の対応や、環境が違う日本で働くにあたってのメンタルケアも、送り出し機関の重要な仕事となります。技能実習生を派遣するだけではなく、送り出した後のことをフォローするのも、送り出し機関の重要な役割と言えます。

帰国受け入れとその後のフォロー

技能実習生の帰国受け入れと、その後のフォローも送り出し機関の大切な役割です。技能実習が修了した後は、技能実習生の帰国が円滑に進むよう、母国にいる家族への連絡や帰国に必要な手続きを、送り出し機関がフォローしていきます。日本で実習を受けた技能実習生が母国で再就職するための支援や、日本の厚生年金返還などの難しい手続きも、送り出し機関が引き受けます。技能実習生が最初から最後まで安心して就業できるように、サポートするのも送り出し機関の役割と言えるでしょう。

送り出し機関の認定要件

厚生労働省による12の要件

送り出し機関の認定は厚生労働省による12の要件を満たす必要があります。(公益財団法人 国際人材協力機構)送り出し機関は認定要件を満たして、国の公的機関からの推薦を受ければ運営することが可能です。厚生労働省による12の要件に共通しているのは、日本で就労する技能実習生が安心して働けるように要件が取り決めされているということです。技能実習生が日本で様々な技能を学び、母国に帰っても学んだことを活かせるように、12の要件があると言えるでしょう。

送り出し機関のある国

現在送り出し機関のある国は15カ国

現在政府に認定された送り出し機関のある国は15か国であり、対象国は東アジアや東南アジアまたは南アジアの新興国です。いずれの国も日本より低所得であり、平均年齢が、20代や30代前後の比較的若い国であることが特徴です。日本の労働力人口が減少していく中、技能実習生の需要は高まる一方であり、15か国にある送り出し機関から送り出された技能実習生は平成25年から5年間で1.8倍に急増しました。労働人口が集まりにくい、食品製造や農業などの業種を技能実習生の存在が支えています。

送り出し機関の多い国

ベトナム

送り出し機関が多い国の一つがベトナムです。ベトナムには300か所以上の送り出し機関が存在し、その送り出し機関の数の多さに比例して、技能実習生の数も右肩上がりに増えてきている状況です。ベトナムからの技能実習生は2014年から急激に増加し、2017年には送り出す技能実習生の数が、中国を抜き最大となりました。ベトナムはアジア有数の親日国です。バイクや家電製品などの日本製の信頼は厚く、日本企業のベトナム進出も活発であるため、ベトナム人の日本に対する評価は高いと言えます。日本に対する信頼性の厚さが、多くの技能実習生が日本に来る理由となっているのでしょう。

インドネシア

インドネシアも送り出し機関が多い国の一つにあげられます。なぜ、インドネシアには日本に来て働きたいと思う技能実習生が多いのでしょうか。その理由はインドネシアの経済事情があげられます。インドネシアの経済水準は世界第14位と、決して貧しい国ではありません。しかし、国民一人当たりの豊かさの指数は40%未満と低い水準です。そのため実際は、国民の半分以上が貧しい生活を強いられています。日本で働きに出ることができれば、家族に仕送りをすることも可能です。家族を養うために、技能実習生に立候補する若者が増えてきているのです。

送り出し機関を選ぶ時の注意点

日本の法律が適応されない

送り出し機関は基本的に海外にある機関なので、日本の法律は適応されません。送り出し機関がある国の法律や習慣が適用されるので注意が必要です。送り出し機関との間でトラブルが発生した場合、適用されるのは日本の法律ではなく、送り出し機関のある国の法律です。技能実習生の受け入れを検討している場合は、技能実習生を送り出す国の文化やビジネスマナーを理解することが重要となります。技能実習生の背景や風習をよく理解し、送り出し機関と契約をすることをおすすめします。

必ずしも政府認定ではない

送り出し機関を選ぶときは「送り出し機関のすべてが必ずしも政府認定ではない」ということに注意しましょう。過去にあったケースですが、現地政府認定ではない送り出し機関を利用した際、企業や技能実習生から多額の紹介料を請求をされた、などのトラブルに発展したという報告があります。そのため、現地政府認定ではない送り出し機関を利用するときは、注意が必要です。現地政府認定の送り出し機関を利用していれば、異常な要求をしてくるようなトラブルも少なく、安心して技能実習生を受け入れることができます。技能実習生の派遣を考えている場合は現地政府認定の送り出し機関を利用するようにしましょう。

事前教育や日本滞在中のフォローが手厚いか確認する

送り出し機関を選ぶ時は、事前教育や日本滞在中のフォローが手厚いかをよく確認することも大事です。技能実習生を派遣してもらうまでは良かったが、送り出し機関で事前教育が全くされていない場合は、その後の業務に支障が出る可能性もあります。技能実習生を派遣後、何もフォローが無い状態では、技能実習生も受け入れる企業側も安心して業務はできないでしょう。双方が安心して業務をする為に、送り出し機関での事前教育や、技能実習生を派遣してもらった後のフォローについて、契約前にしっかりと確認するようにしましょう。

管理費は送り出し機関によって様々である

送り出し機関が監理団体に支払いをする費用のことを管理費といいます。管理費は、専門的な分野を取り扱っている送り出し機関や、送り出し機関による規模の大きさなど、それぞれの機関によって金額は様々です。近年は送り出し機関の数が増えるに従い、管理費の価格競争が起きています。過度の価格競争の為に、必要以上に人件費を削り、管理費を安くしている送り出し機関が増えてきているのです。そのため、管理費の安すぎる送り出し機関は、人件費を削るが故に技能実習生に目が行き届かない可能性があるため、注意が必要です。

まとめ

円滑な雇用をするために、信頼できる送り出し機関を選択しましょう

今回は、送り出し機関の役割と、送り出し機関を利用する場合の注意点について紹介しましたが、いかがでしたでしょうか。送り出し機関とは、人手不足の深刻化に歯止めがかからない日本企業にとって、労働力の提供を受けることができる貴重な機関です。だからこそ、送り出し機関を利用するためには、事前にしっかりと下調べをして、ニーズに合った人材の提供を受けられるように努める必要があります。技能実習生の円滑な雇用を進めるために、信頼のできる送り出し機関を選択するようにしましょう。

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