記事更新日:2022年03月02日 | 初回公開日:2022年03月01日
用語集 外国人採用・雇用 グローバル用語解説 人事・労務お役立ち情報非正規雇用とは正社員以外の雇用形態のことで、労働基準法において認められている雇用形態の中で社員が最も手厚く守られている雇用形態です。一方で正社員とは違い、非正規雇用の社員は自由な働き方と引き換えに低収入や雇用が不安定であるといったデメリットも知られています。また非正規雇用にもさまざまな種類があり、学生や主婦を中心としたアルバイトやパートにくわえて、契約社員や派遣社員は性別や年齢問わず幅広い層で構成される傾向があります。
非正規雇用の社員は、年々増加しています。景気の停滞が続いている日本では、解雇が難しく固定給を支払う必要のある正社員を雇用するメリットは少なくなっています。また非正規雇用の社員を採用したい企業が増えている理由として、必要な職種で求人をするジョブ型雇用の普及もあげられます。これまで一般的であったメンバーシップ型の雇用が減り、ジョブ型雇用が急増していることで、転職も活発となり正社員を雇用するメリットはいっそう少なくなっています。
契約社員とは、企業と契約期間のある有期雇用契約を結んだ社員のことです。最長で3年間の契約を結び、契約期間の満了前に契約を終了するか継続するかを決定する必要があります。たとえ契約社員であっても正社員と同じく雇用する企業との直雇用契約をするため、待遇などについては原則正社員と同じです。雇用期間が限定できるため派遣社員と同様に、繁忙期などに人員を確保するための手段として採用されることも多いのが、契約社員の特徴です。
派遣社員とは、派遣会社との契約に基づいて就業先となる企業に派遣されて働く雇用形態のことです。企業との直雇用ではないという点が特徴ですが、仕事上の指揮命令に関しては派遣された就業先の社員から指示を受けます。そのため派遣社員の就労状況に問題がある場合は、就業先の企業が派遣会社へクレームを出すこともあります。離職率の高い雇用形態ですが、派遣社員の中でも優秀な社員は就業先の企業からの要望で正社員となるケースも増えています。
パート・アルバイトは、正社員よりも短時間の勤務形態で働く従業員です。正社員との違いは、勤務時間や日数を就業者自身が比較的自由に選ぶことができるという点です。勤務できる時間に制限のある主婦や学生などに人気の雇用形態で、比較的責任が重くない業務に従事する場合が多いのも特徴です。時給制であることが多く、パート・アルバイトの雇用形態では高収入を得ることが困難とされています。そのためパート・アルバイト勤務では、仕事を複数掛け持ちしながら就労している人も珍しくありません。
企業が非正規雇用で社員を採用する理由のひとつが、人件費を抑えられるということです。非正規雇用の社員は必要な時だけ採用することも可能なため、無駄な人件費を削減することができます。正社員であれば、仕事の少ない期間でも一定の賃金を払い続ける必要があります。一方で非正規雇用の社員の場合は繁閑に応じて契約期間を定めることで、仕事の少ない期間の人件費を抑えることが可能です。なお派遣社員の場合は、派遣会社への手数料も発生するため人件費が高くなることが多いです。そのため、長期間の雇用には向かないということを抑えておきましょう。
企業は非正規雇用の社員を採用することで、必要に応じた人員調節がしやすくなります。日本の法律上、正社員はさまざまなルールで手厚く守られています。一方で非正規雇用の場合は正社員と同様に労働基準法などが適応されますが、雇用期間や解雇の際のルールなどが異なります。具体的には非正規雇用の場合は企業が社員を雇用し続ける義務は生じないため、業績が悪化した場合は解雇などによる人員調節をし易いことが挙げられます。そのため、将来の業績が不透明な企業では、非正規雇用の社員数を増やす傾向にあります。
即戦力の採用という点においても、非正規雇用の社員を採用するメリットは大きいです。女性の非正規雇用の社員が多い理由からも分かるように、一定の能力や経験はあっても出産などの理由で就業可能時間に制限のある人材を積極的に採用する場合が多いです。また人材不足が深刻なエンジニアなどの職種では自由な働き方を求めて非正規雇用を希望する人材も多いため、非正規雇用の方が優秀な人材を集めやすい場合もあります。このように社員側にあえて非正規雇用を希望する人材もいるため、優秀な即戦力人材を採用できる可能性も広がります。
非正規雇用で社員を採用する際の、企業側のデメリットとして、人材育成が難しいという点があげられます。非正規雇用の種類にもよりますが、正社員と比べると非正規雇用の社員が企業に長期間留まる可能性は低いです。離職率も高いため、人材育成に力を入れるメリットが少ないと考える企業が多いのが特徴です。また非正規雇用の社員の立場からしても、キャリアアップが望めないなどの理由で、積極的に成長しようとする意欲が少ない傾向もあります。
人材流出の恐れがあるということも、非正規雇用におけるデメリットです。労働基準法で雇用が手厚く守られている正社員と違い、同じ業種や職種でより待遇のよい求人があれば、簡単に転職をされてしまう可能性が高いです。企業と社員の双方で柔軟な雇用を実現できますが、入社当初から期待されることの多い正社員との待遇差などは明白です。そのため、非正規雇用の社員はモチベーションを保ち続けるのが難しいということも高い離職率の原因となっています。
正社員と比べると、任せられる仕事が限られていることも非正規雇用のデメリットです。雇用形態上、責任の重い業務を任せることが難しく、教育にかける労力も正社員と比べて少なくなってしまうのが一般的です。また非正規雇用の社員には、社内でのキャリアアップよりも時間的な制限なく働くことを目的としている人材が多いということも、任せられる仕事が限られる理由となっています。非正規雇用が増える中、ある程度の仕事を任せてキャリアアップの道を残すことも今後の企業の発展には不可欠といえるでしょう。
非正規雇用の社員は、正社員に比べて収入が低い場合が多いです。非正規雇用の社員は時給制で働く場合が多いため、正社員のように毎月一定の収入を得ることができません。また、派遣社員として働く場合はアルバイトやパートよりも待遇が高い傾向がありますが、企業の業務量が収入に大きく影響します。加えて正社員であれば享受できる福利厚生などが、非正規雇用の社員には認められないという点も低い収入に繋がる要因のひとつです。ある程度自由な働き方を実現できる一方で、収入は低い傾向があるという点については知った上で、非正規雇用での働き方を選択して下さい。
非正規雇用の社員は、正社員と比べて雇用が不安定です。解雇が困難な正社員と比べて、非正規雇用の社員は解雇が容易なこともあり、企業の業績悪化の際には正社員よりも解雇されてしまうリスクが高いです。例えばリーマンショックなどの大不況の際には、非正規雇用の社員が正社員よりも先に解雇などの影響を受けました。非正規雇用の社員は専門性の低い業務に従事していることが多く、人件費の削減を検討している企業においては解雇の対象になってしまうことも珍しくありません。
非正規雇用の社員は、一般的にキャリアアップが難しいと考えられています。アルバイトやパートの従業員がキャリアアップをするためには、まずは正社員になる必要があることからも分かるように、キャリアアップの難易度は高いです。派遣社員である場合はそもそも就労している会社の社員ではないこともあるため、キャリアアップはいっそう難しいといえます。非正規雇用の社員は教育の機会にも恵まれず、責任の大きい業務に携われる機会も少ないため、企業内でのキャリアアップを狙う場合はまずは正社員となることが必須です。
社員の教育制度を見直すことは、非正規雇用によるデメリット軽減のために効果的な施策のひとつです。非正規雇用の社員であるデメリットのひとつが、手厚い教育を受けられないことですが、社員の教育制度見直しをすることでデメリットを改善することができます。また、社員教育に力を入れることは、社員のモチベーションアップにも大きな効果があるため、多少の労力はかかっても教育をすることは企業側のメリットにもなります。教育をした上で、優秀な非正規雇用の社員については正社員に昇格できる道を残すことで、社員全員の企業への帰属意識も高まるでしょう。
非正規雇用の社員の増加を受けて、近年ではさまざまな待遇改善の政策が実施されています。国が実施している働き方改革を中心として、正社員と非正規雇用の社員の待遇差を無くすための施策が実施されており、雇用形態による賃金差は改善されていく見通しです。具体的には、同一労働同一賃金が適応され、待遇が雇用形態に影響されず、従事する業務内容によって判断されるという施策があげられます。今後は法改正を起因せずとも待遇改善を積極的に行い、非正規雇用のデメリット軽減に努めることが非正規雇用の社員の帰属意識向上にも繋がるでしょう。
本記事では非正規雇用のデメリットを中心に、その種類や理由についても紹介しました。正社員と比べて待遇面などで大きな不平等があるとして、非正規雇用の社員の窮状が社会問題にもなっていました。そんな状況を改善すべく、政府も働き方改革を中心とした施策を実施することで、非正規雇用の待遇改善が進んでいます。これから非正規雇用の社員を採用する場合は、随時法改正の情報を確かめながら本記事で紹介したデメリットも踏まえて、採用を進めることをおすすめします。
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