外国人介護人材を受け入れるには?【日本の現状から受け入れの仕組みまで】

記事更新日:2021年03月05日 初回公開日:2021年03月05日

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慢性的な人手不足に陥っている、日本の介護業界。2020年時点で、人口の約3人に1人が65歳以上の老人に。総務省の調べによると、2040年には約2.8人に1人が65歳以上と、年々人口に対する老人の割合が大きくなっていくことがわかっています。介護を必要とする老人の増加に伴い、介護士も必要となるものの、介護士の労働者が追い付いていない現状があります。介護士だけでなく、日本の労働人口が少なくなっていくことから、介護士を日本人だけでは賄いきれなくなってきています。そこで、今注目されているのが外国人介護士です。2017年に外国人技能実習制度が改正されたことにより、外国人でも一定期間のビザを取得し、介護士として働けるようになりました。しかし、外国人ならだれでも介護士として働けるということではなく、一定の条件を満たす必要があります。そこで今回は、外国人介護士の現状と、メリットやデメリット、働く条件など細かくご紹介していきます。今後、外国人介護士の雇用を検討している事業主様や人事担当の方は是非参考にしてみてください。


この記事の専門家・監修

株式会社アスカ 取締役 浅見慶敬

全国17店舗を持つ人材紹介会社、アスカグループの取締役。グローバル人材の職業紹介と「グローバル採用ナビ」の責任者を歴任。人材紹介業界一筋19年。これまでに外国人採用で関わった企業は約1万社、企業と外国人の採用マッチングは累計1000件以上。

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介護業界はなぜ人材が不足しているのか

賃金が低い

日本では少子高齢化が進むばかりで、今後どの業界においても人手不足が懸念されます。特に、介護人材の不足は深刻で、団塊の世代が75歳になる2025年には、およそ38万人もの人材が不足すると言われています。介護士不足の原因として、まず他業種に比べ平均賃金が低いことが挙げられるでしょう。介護福祉士の平均給与は330万円ほどと言われ、これは全産業の平均より100万程度下回っています。介護職員の労働組合「日本介護クラフトユニオン」の調査では、現在の給与に「大いに不満」、「少し不満」と回答した組合員は69.1%と、大半が不満を感じていると言えます。

離職率が高い

また、介護人材は離職率が高く、介護労働安定センターによると、平成29年度「介護労働実態調査」では、1年で16.2%となっています。これは全産業の平均離職率およそ15%と比較して、やや高い数字となっています。利用者やチームでの仕事など、人と接触する時間が多く、人間関係に問題が生じやすいのが大きな理由となっているようです。また、女性が多いため、ライフステージの変化により、一時的に仕事を離れるケースも考えられるでしょう。

体力がないと続かない

入浴介助、排泄介助など、介助の仕事が多い介護業界では、利用者の体を支えるため、相応の体力が必要とされます。腰痛などの原因となるケースもあり、離職の原因にもなっているようです。また、慢性的に人手不足のため、在職中の職員の負担は大きいでしょう。有給休暇の調整が難しかったり、長時間労働になりがちなのが、さらに「きつい」労働イメージの増加につながると考えられています。施設などの常勤では、シフト制で夜勤があったりするので、慣れていないと負担に感じることも多いでしょう。

日本の外国人介護士雇用の現状

日本の外国人介護士受け入れ条件は厳しすぎる

では、日本は受け入れ先として人気があるのでしょうか。例えば、フィリピンでは国民の10人に1人が海外に居住し、多くの労働力を提供しています。日本も、治安の良さなどで就労先の国として選ばれてきましたが、課題となっているのが言語の習得です。英語が公用語のフィリピン人にとって、日本語での介護士試験に合格することは、生易しいことではありません。また、日本はハードルが高いわりに、長時間労働や待遇などの労働条件が厳しく、社会的評価も欧米諸国より低めだといわれています。

日本の外国人介護士受け入れの4つの仕組み

1:在留資格「介護」

実際に外国人介護士を受け入れる方法には、どんなものがあるのでしょう。まずは、在留資格「介護」を持つ人材に働きかけて採用する方法です。留学生として日本で介護福祉士養成施設に入学し、介護福祉士の試験に合格すると、在留資格「介護」を取得することができます。ベースに日本語の取得があるため、言語の問題がクリアされているほか、国家資格を持つ即戦力として活躍する人材を雇用できます。この制度は、2017年以降入管法改正時に創設されており、定年まで働き続けることが可能です。

2:EPA(経済連携協定)

次にEPA(Economic Partnership Agreement)と呼ばれる、経済連携協定が挙げられるでしょう。EPAではインドネシア、フィリピン、ベトナムの3か国から受け入れを行い、4年以内に日本で介護福祉士の国家試験に合格すれば、日本で働くことが可能です。公益社団法人国際厚生事業団(JICWELS)を通してビザの申請が可能。候補者を募り日本国内の医療施設にあっせんしています。候補者は数年の就学または就労ののち国家試験を受け、「特定活動(EPA)」の在留資格として登録されます。

3:技能実習

外国人技能実習制度は、日本の現場で身に着けた技術を自国に持ち帰って、本国へ技能移転を行い、経済発展に貢献することを目的にされた制度です。実習実施者(介護施設等)の下で、最大5年間学ぶことが可能。施設との調整は事業協同組合や商工会の団体が行い、入国後1年目、3年目に試験を受け、合格すると実習が継続できます。また、介護福祉士の国家試験に合格した場合は、在留資格「介護」に変更ができるので、永続的に日本で働くことが可能となるでしょう。

4:特定技能1号

最後に、特定技能1号という新しい制度を紹介しましょう。こちらは2019年に開始したばかりの制度で、すでにある一定の専門性や、日本語力を含む技能を持つ外国人を受け入れ、人手不足の解消を目的としています。対象者は、介護施設等で通算5年間の就労が可能となり、介護福祉士の国家資格を取得すれば、在留資格「介護」に変更が可能です。これにより永続的に働くことが可能ですが、家族の帯同はできません。今後5年で6万人の受け入れを見込んでいます。

外国人介護人材のメリット

高レベルな人材が確保できる

では、外国籍の介護士を雇用するメリットとは何でしょうか。今まで述べたように、日本の受け入れ制度は、なかなかハードルが高いといえます。また、介護という仕事そのものが利用者の生命にかかわるため、安全や安心に万全を期す必要があるでしょう。よって、必然的に技能やホスピタリティ等含め、高レベルな人材を雇用する必要があります。外国籍介護士の出身が多い東南アジア諸国は、気質としてケア能力や明るさを持っており、そういった面でも介護士としての素質が高いと言えるでしょう。

介護業界の負担が低減できる

また、もちろん外国籍の人材受け入れが、介護士の不足解消に貢献することも事実です。生産年齢人口の減少による人材不足の中、加えて介護の仕事は労働条件が厳しく、若者が選びやすい仕事とは言えません。現場に必要な、若さと体力のある人材の確保は、今後ますます厳しくなることが予想されるでしょう。また、介護は生命にかかわる仕事であるので本来高いモチベーションが必要な職業なのですが、そのような人材ばかりが集まるとは限らない、という懸念を防ぐことができます。

外国人介護人材のデメリット

文化や習慣の違いがある

海外の文化に馴染む機会が少なかった高齢者層は、自国の文化や習慣で接してくれることを当然のように求めるでしょう。訪問介護で思うような味付けの食事が出てこなかったりすることは、利用者にとってストレスになると考えられます。日本では大半の人々が、共通の文化的価値観や判断基準をもって生活しています。よって異なる文化を持った人が、生活に存在することに対応しづらい部分があると言えます。また高齢者層の中には、歴史的な先入観で外国人を見てしまう方もいるかもしれません。

日本語能力の問題

また、一定の日本語力を持つ外国人を受け入れているとはいえ、言語の問題はなかなか一筋縄ではいきません。人間関係やコミュニケーションの問題により、日本人でも離職率の高い中、外国人介護士が現場で負担になってしまう例は、少なくありません。職員同士の連絡ノートへの記録、申し送り事項などの業務上の意思の疎通など、細かいコミュニケーションが求められるからです。利用者に対しても、覚えたての日本語で微妙な気持ちのニュアンスが伝わらず、きつい語調になってしまうなど、誤解を生むこともあるのではないでしょうか。

外国人介護士雇用の際にやっておくとよいこと

住まいなどの生活を支援する

外国人介護士の受け入れ決定後、できる限り定着して働いてもらうには、生活の基本的な環境を整えるため、支援を行うことが大事です。多くの受け入れ先事業所では、入居などの行政関連の手続き、不動産契約等のサポートを行っています。実際の生活支援としては電気や水道、ネット環境などのインフラ設備から、職場への交通手段、宗教上欠かせない習慣や服装についての対応まで。いざ異国の地で生活を開始すると、現地に住んでいてはわからない不便があるものです。日本人のサポートなしでは難しい手続き等もあるので、必要な支援を行いましょう。

職場でのルール共有

先に述べたように日本語力の問題も含め、外国人介護士の受け入れに当たって、コミュニケーションは最大の難関です。採用を行う前に、外国人職員向けに介護記録のつけ方をシステム化しておいたり、マニュアルを作るなどして、教育体制を整えておくことが必要になるでしょう。また、同じ現場で働く日本人職員に周知を行うことも大切です。事業所としてどのように教育を行っていくか、あらかじめ理解を得て、職場全体での受け入れ体制を作っておくと、スムーズに進むでしょう。

インターンシップの活用

もし初めての外国人介護士の受け入れだったり、あまり接したことのない地域からの受け入れなら、インターンシップが効果的と言えるでしょう。インターンシップであれば、外国人の学生を一定期間受け入れ、一緒に働く体験ができます。この場合日本での労働体験を通して視野を広め、実践的な知識を身に着けることが目的ですので、医療介護や福祉などの専攻学生を選ぶことが必要となります。また、滞在期間などでビザの種類が変わってくるため、最初に条件設定を行うことが必要です。

外国人介護士採用でおすすめの人材紹介サービス

介護業界向け外国人採用サポート「ガイアサイン」

外国籍の介護士を雇用するに当たりマッチングの不安を解消するため、人材紹介サービスを利用する事業者も増えてきています。介護業界向け外国人採用サポート「ガイアサイン」では、特定技能<介護>の技能試験に合格した、優秀な人材を中心に人材紹介を行っています。直接面談により人材が決定した後は、在留資格申請やビザ申請など、煩雑な行政手続きのサポートを受けることも可能。また、勤務開始後も定期面談などでフォローを行うほか、生活に関する母国語でのサポート窓口の運営も行っています。

フィリピン人介護士紹介「IPS」

国際通信事業を行う株式会社アイ・ピー・エスは、高いホスピタリティーで定評のある、在日フィリピン人介護士を中心に、人材紹介・派遣サービスを行ってきました。2014年までに約5000名が介護職員初任者研修を取得し、約2000の介護・医療施設へ紹介を行った実績があります。また、在日外国人向けのジョブフェアなど、企業と外国人人材向けのマッチングイベントも手掛け、直接雇用の場を提供。自社で発行しているタガログ語の新聞に求人広告を掲載することも可能で、多彩なアプローチにより、外国人人材の能力の活用を向上させています。

まとめ

外国人介護士の雇用を定着させることが人材不足を救う

外国籍の介護士の受け入れにあたっては、制度的にも、現場での定着についても、未だ多くの課題があります。しかし、少子高齢化を背景に、今後も一層外国人介護人材が求められるのは明白でしょう。実際に外国人介護士採用を行った多くの事業所では、利用者からも好意的な声が多かったり、現場の活性化にもつながっているようです。30年後には、外国人から介護を受けることは、私たちの日常となっているのではないでしょうか。今後は、いかに受け入れ側が工夫して、労働者とともに働きやすい環境を整えていけるかが定着のキーとなることでしょう。

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