記事更新日:2021年08月25日 | 初回公開日:2021年08月03日
用語集 外国人採用・雇用 グローバル経済 グローバル用語解説まず初めに、外国人経営者とは企業を経営する役割を担う外国人のことです。グローバル化が進んだ現代では日本にある企業の経営者が日本人以外ということも珍しくありません。企業には規模の大きさに関わらず、組織の舵取りを行う経営者が必要です。自らの意思決定によって会社の業績が大きく変わるため、その責任は非常に重大です。経営者は役割によって社長、代表取締役、CEO、使用者などと呼ばれることがあります。
日本で働く外国人経営者は大きく分けて二種類に分かれます。まず1つ目は来日した外国人が自ら起業し、経営者となるケースです。ただし誰でも起業出来るわけではありません。日本で起業し、経営者となるためには特定の在留資格が必要です。具体的には永住者、定住者、日本人の配偶者等、経営管理などの在留資格が挙げられます。日本で起業するハードルは低くはありませんが、近年は大都市圏を中心に起業をする外国人が増えています。
2つ目は日本の企業に所属をしながら経営者となることです。その中でも2つのパターンがあります。1つは元々日本の企業で働いていて、社内で出世をしながら経営者になるケースです。もう一つは初めから外国人は経営人材として起用するケースです。特に近年は後者のケースが増えており、有名な日本の大企業も外国人経営者を雇うことも多くなってきました。この場合、外国人経営者は日本人よりも報酬が高い傾向がありますが、これまでの経歴や実績も重視されるため実際に経営者になれる外国人人材は限られています。
次に日本における外国人経営者の現状を順番にお伝えします。まず全体的な傾向として日本で経営者となる外国人の数は新型コロナウイルスが流行する2019年までは増加をしています。日本で経営者として働くことが出来る経営管理ビザを新たに取得した外国人は2013年は632名でしたが、2019年には3倍以上となる2237名にまで増えました。留学生の数などと比較すると少数ではありますが、年々増加傾向は新型コロナウイルスの感染が終息後も続くことが予想されるでしょう。
外国人経営者の出身地に注目をしてみると、8割以上がアジア出身であるというデータがあります。その中でも特に中国出身の方が多く、2019年にはおよそ13000名の中国人が経営管理ビザを保有しています。その次に韓国、ネパールと続きアメリカやフランスといったアジア以外の地域の経営者は少ない結果となりました。アジア出身と比較して、ヨーロッパや北米出身の経営者は日本企業の経営層として派遣されるケースが多い傾向があります。
3つ目は外国人経営者も日本人と同様に融資を受けることが出来る点です。日本で起業する外国人経営者の中には金銭面から融資を必要としている方も多いでしょう。そのような方に対して日本政策金融公庫を始めとする金融機関では日本人と同様に融資を行っています。ただし一般の金融機関では永住者や定住者といったカテゴリーに当てはまる人に融資を限定するなど、外国人が融資を受けることが難しいのが現状です。また基本的には在留期間中に融資をすべて返済する必要もあるため注意が必要です。
外国人が経営者として働くにはどのようにすれば良いのでしょうか。ここでは外国人経営者として働くための主な条件を解説します。まず外国人経営者は日本の法務省によって定められた在留資格の基準を満たすことが必要となります。例えば条件として、総務省の日本標準産業分類一般原則第二項に記載されている定義に基づいた事業所の確保を行わなければなりません。また事業活動については事業の継続性が見込まれることを示す必要があります。さらに租税関係法令や労働関係法令なども正しく遵守しなければなりません。
2点目にご紹介する条件は経営管理ビザの取得です。外国人が日本で働くために必要なビザはいくつか種類がありますが、そのうち自らが経営者として会社を経営するためには例外を除き「経営管理ビザ」を取得しなければなりません。そして外国人が日本で起業をする場合、大きく分けて3つのステップがあります。日本で起業をすると決めたら最初に行うのは事業計画の作成です。経営管理ビザを取得するためには事業計画書を作る必要があります。事業計画書には事業の目的やビジネスモデル、資金計画、事業のリスク対策などを記載します。事業の安定性や継続性が認められない場合はビザが発行されないこともあるので注意しましょう。
事業計画の作成が終わったら提出書類をすべて揃えましょう。経営管理ビザを取得して会社を設立するためには多くの提出書類の準備が不可欠です。具体的には在留資格認定証明書交付申請書、事業計画書の写し、直近の年度の決算文書の写しなどを用意しなければなりません。他にも事業内容、事業規模、活動内容を示す資料などもそれぞれ提出する必要があります。提出種類自体は種類が多く、複雑なので行政書士などの専門家に事前に相談すると良いでしょう。
最後のステップが会社の設立です。提出書類が揃い、経営管理ビザを取得したらいよいよ会社設立の準備となります。会社を設立するために定款の作成、そして資本金の振込をします。その後に法務局で会社設立の登記を行い、税務署に給与支払事務所などの開設届を提出することで手続きが終了します。経営管理ビザを取得していれば、会社の設立は可能ですが、日本人の配偶者や永住者の方と比べるとやや条件が厳しいのが現状です。具体的には、資本金500万円以上または常勤の従業員が2人以上などの条件が存在するので、注意しなければなりません。
世界に多くの国がある中で、なぜ外国人は日本で経営者になる道を選ぶのでしょうか。ここでは日本で経営者になるメリットは主に3点ご紹介します。1点目は少ない資金から経営が出来ることです。東京や大阪、名古屋といった大都市圏は事業運営のコストがある程度必要ですが、それでも世界の大都市と比較すると低い傾向にあります。また先程もお話したように、外国人でも融資を受けられる金融機関もあるので資金面のハードルはそれほど高くはありません。
2点目のメリットは優秀な人材は集めやすいことです。東京などの大都市は膨大な数の企業が存在し、それによって日本人のみならず海外からも優秀な人材がたくさん集まっています。そのためその企業の雇用環境などの条件によっては優秀な人材を集めやすい地域であると言えるでしょう。また近年は採用の手段も多様化しているので、自社に合った人材も見つけやすくなっています。さらに近年は日本でも起業を目指す若者が増加してきているので、そういった高いモチベーションを持った人材を雇うことも難しくありません。
3点目のメリットは市場の規模が大きいことです。近年は人口減少やアジア、アフリカにある国々の経済発展によってグローバル市場での存在感は薄まりつつあります。しかし日本の国内総生産(GDP)はアメリカ、中国に次ぐ第3位であり、巨大なマーケットであると言えるでしょう。また国民一人あたりの平均所得も高いため、モノやサービスを提供する際に得る利益も高い傾向があります。市場の規模が大きいということはそれだけビジネスチャンスも多く、外国人が日本で経営者になる大きな要因になっています。
新型コロナウイルスの影響によって事業に大きな打撃を受けた経営者は少なくありません。日本政府はそうした企業の経営者に向けて持続化給付金を配布しています。持続化給付金とは売売上が前年同月比で50%以上減少している事業者を対象に中小法人などの企業は200万円、個人事業者には100万円を支給する制度です。この持続化給付金は日本人だけでなく外国人の経営者も支給対象となっています。そのため飲食業や観光業などを始めとする多くの事業経営者が利用している状況です。
最後に外国人が経営者となっている日本の企業を3社紹介します。1社目はソフトバンク株式会社です。ソフトバンクと言えば代表取締役の孫正義氏が有名ですが、今まで数多くの外国人が経営層として働いていました。その中でも特に有名なのが、インド出身のニケシュアローラ氏です。彼は2015年にソフトバンクの代表取締役副社長に就任しました。その年のアローラ氏の報酬は165億円にのぼったと言われています。2021年8月現在も複数の外国人がソフトバンクグループの社外取締役として活躍しています。
2社目として紹介するのは株式会社日立製作所です。こちらの企業は日本を代表する電機メーカーとして有名ですが、経営層に外国人を積極的に登用しています。2030年度までには役員層の外国人比率を30%まで引き上げることを目標としています。これは同社のダイバーシティ&インクルージョン推進を進めるための取り組みの1つです。また役員層だけでなく、日立グループの従業員に占める海外従業員の比率は既に50%を超えており、組織のさらなるグローバル化が期待されています。
続いて3社目にご紹介するのが自動車メーカーとして有名なマツダ株式会社です。マツダ株式会社は今まで多くの外国人が代表取締役社長となり、9代目から12代目までは社長は全員外国人でした。その中でも特に大きな功績を残した人物が、1996年にマツダ株式会社の社長に就任したヘンリーウォレス氏です。当時のマツダ株式会社は経営危機に陥っていましたが、アメリカのフォード社出身のウォレス氏が社長に就任してからは業績が大きく回復しました。
今回の記事では外国人経営者について種類や条件など、様々な角度から解説をしてきました。もしかしたら現在働いている会社の経営者が外国人という方もいるかもしれません。今回の記事を読んで、外国人経営者に関する理解を深めることが出来ましたでしょうか。日本でも外国人経営者は今現在たくさん活躍しており、その存在も珍しくなくなってきました。アメリカなどの国と比較すると外国人経営者の人数はまだまだ少ないですが、将来的にもその数は増加することが予想されるため今後も注目される存在となるでしょう。
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