平均賃金とは?【総支給額・賞与は含めるのか・試用期間はどうするのか?わかりやすく解説!】

記事更新日:2020年05月15日 初回公開日:2020年04月30日

用語集 人事・労務お役立ち情報
平均賃金とは、労働基準法で定められている「減給および保障の制限額」を算定するときの基準となる賃金のことです。平均賃金は、基本的には、算式「3ヶ月に支払われた賃金総額 ÷ 3ヶ月の暦日数」で求められますが、詳しくはここで解説。その他、解雇予告手当や休業手当、有給休暇中の賃金、労働災害の補償額、減給の制裁の制限額を求める際などに、平均賃金の算定が必要になります。

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平均賃金とは

休業手当や解雇予告手当の基礎になる賃金の事である

平均賃金は、休業手当や解雇予告手当の基礎になる賃金の事であり、各手当の支払いなどが必要になったときに適用されます。人間らしい生活ができる賃金の支払いが目的なので、従業員の生活を保障するため、計算方法は労働基準法で定められています。平均賃金の計算では、毎月、給与日に支払われている賃金すべて(交通費、歩合給、残業代、皆勤手当など含む)が対象。

平均賃金の計算が必要なケース

休業手当の計算

休業手当は、従業員の生活を保護するための制度。会社の都合で休ませたとき、最低限の生活ができる水準として、平均賃金の60%が手当となります。会社が最大限の努力をして、回避できる場合は全て会社都合。たとえばメーカーの調達の遅れや、来客のキャンセルは、会社の努力で回避できること。ただし地震とか自然災害が要因の時は不可抗力のため、会社都合ではありません。

解雇予告手当の計算

会社は解雇するときは30日以上前に解雇を予告するか、30日分以上の平均賃金を支払わないといけません。また平均賃金を支払った日数分だけ、その日数を短縮することが可能。地震などの天災が原因で事業を継続できなくなった場合、社員の言動が原因で解雇せざるを得ない状態になった場合は、解雇予告の手続きは不要も、その際は労働基準監督署の認定を受けなければなりません。

減給処分手当の計算

労働基準法第91条によれば、1事案に対する減給の制裁については、平均賃金の半分以下でなければなりません。また多数回の違反行為理由で減給する場合、その減給総額は、当該賃金支払期の平均賃金の1/10を超えてはいけません。具定例を挙げると、月給が30万円の場合、1事案の減給は5000円まで。複数の事案で言及する場合でも3万円が最高額となります。

年次有給休暇の金額

年次有給休暇は文字通り受給される休暇ですが、給与の算出基準によっては、変動もあり得ます。法律的にみると、実は、必ずしもいつもと同じ額の賃金にする必要はなく、会社が選択する賃金の計算方法によっては、有給休暇を取得したことによって、受け取る給料が減ることもあるのです。有給休暇時、平均賃金や健康保険法の標準報酬日額を支払う方法も認められているからです。

労災(業務上)の休業補償

業務上または通勤時が原因となった負傷または疾病により、休業せざるを得ない状況になってしまった場合、労災保険(業務上)の休業補償を受けられます。休業補償給付といい、休業中の所得を保障するための給付です。労働者が業務上の事由により療養していること。その療養のために労働ができない。労働することができないために、賃金を受けていない、などが給付条件。

平均賃金の計算方法

平均賃金の計算は2つあり、金額の高い方を採用する

①3か月間の賃金の総額÷3か月間の暦日数

平均賃金の計算では、毎月、給与日に支払われている賃金すべて(交通費、歩合給、残業代、皆勤手当など含む)が対象。3か月を超える期間ごとに支払われる賞与などは含みません。計算日の前日からさかのぼり、直近の賃金の締切日から3か月間の給与で計算。平均賃金の計算は2つあり、金額の高い方を採用します。一つ目の方法は、「3か月間の賃金の総額÷3か月間の暦日数」。

②3か月間の賃金総額÷3か月間の労働日数×60%

二つ目は、「3か月間の賃金総額÷3か月間の労働日数×60%」となります。ただし、例外的な算出方法が必要となる場合があります。試用期間中は、その期間の日数および賃金で算定。3か月間に法令による休業がある場合、その間の休業日数および賃金を、算定期間および賃金総額から控除。雇用3ヶ月未満の場合、雇用の日から算定事由が発生した日までの期間に基づいて算定。

平均賃金の例外な計算方法

試用期間中の場合、試用期間中の日数と賃金で計算する

ただし、例外的な算出方法が必要となる場合がいくつかあります。まず試用期間中は、その期間の日数および賃金で算定します。試用期間を除いて計算できる場合は問題はありません。試用期間中に平均賃金を計算することになった場合は、試用期間を除くと何も残らず、日数も賃金もゼロになるから計算が不可能。試用期間中の場合は、試用期間中の日数と賃金で計算することになります。

3か月以上の法令による休業がある場合は賃金総額から控除する必要がある

3ヶ月間に法令による休業がある場合も平均賃金は例外的な算定になります。法令による休業期間とは、業務上のケガや病気で休んだ期間、産前産後休業した期間、会社の都合で休んだ期間、育児休業、介護休業をした期間、従業員に産休や育休などの期間など。無給期間が平均値を引き下げてしまうため、その間の休業日数および賃金を、算定期間および賃金総額から控除します

雇入れから3か月未満の場合は、雇用日からの計算になる

過去3ヶ月間の賃金の総額を、その間の日数で割って計算するのが平均賃金なので、採用して3ヶ月に足りないと計算できないため、例外処理となります。採用して3ヶ月未満の場合の平均賃金は、採用後からの期間で計算。つまり直近の締切日から入社日までの期間で計算しますが、平均賃金を計算することになった日は除外。さらに入社当日の平均賃金は、都道府県労働局長が決めます。

賃金の総額の注意点

基本給だけでなく、家族手当、通勤手当、残業代も含まれる

労働者に支払われる基本給が給料です。労働基準法では、賃金、給料、手当、賞与といった名称に関係なく、労働の対価として支払われているものが賃金。基本給だけでなく、家族手当、通勤手当、残業代も賃金に含まれます。手当とは、労働時間管理上よく知られる時間外、休日、深夜労働手当がありますが、諸手当には、役職、通勤、住宅、家族、皆勤、資格などがあります。

総額に含まれない賃金がある

平均賃金の計算ですが、割増賃金や成果給のように毎月変動する手当も計算に含めますが、総額に含まれない賃金があります。その賃金総額に含まれない賃金を除外して算出が必要。それは臨時に支払われた賃金、賃金の計算期間が3か月を超える期間ごとに支払われる賃金、通貨以外のもので支払われた賃金で一定の範囲に属さないものなど。これらについて、以下に、詳述します。

①臨時に支払われた賃金

平均賃金の計算上、総額に含まれない臨時に支払われた賃金とは、支給事由の発生が不確定であり、かつ非常に稀に発生する手当などのこと。怪我や病気は不測の事態です。怪我、疾病に支払われる傷病手当は、賃金として支払われます。支給原因が不確定的かつ稀な場合の典型的なものに、結婚手当があります。定年以外で退職した労働者等に対して支払われる給付も稀な例です。

②3か月を超えるごとに支払われる賃金

次に3か月を超えるごとに支払われる賃金も除外例になります。まず一般的には、半年や1年に一度支払われる賞与ですね。賞与は、基本的にあくまで予め支給金額が確定されていないと考えられます。その他、1か月を超える期間の出勤成績に基づき評価され支給される精勤手当、継続勤務に対して支給される勤続手当、その他事由による奨励加給または能率手当などが該当。

③通貨以外のもで支払われる賃金

賃金は通貨払いの原則に従い支給されるので、小切手や有価証券での支払いはできません。外国人に対する外貨払いなども許されません。また現物支給も原則、違反です。しかし、労働組合との労働協約による取り決めがある場合には、例外的に現物支給が許される場合があります。この労働協約によって例外的に現物で支給された賃金は、平均賃金の算出からは除外されます。

総日数は、休日や欠勤日も含まれる

平均賃金を算出する場合の総日数は、労働日数とは無関係で単純に総歴日数、つまりカレンダー日数であり、休日や欠勤日も含まれます。平均賃金を算定すべき事由の発生した日以前3か月間について、一般的な算式、「平均賃金=賃金総額÷総日数」があるのは前述の通り。この算式の分母である総日数は、算出月によって異なる3か月のなので、90日から若干前後します。

計算上銭未満は切り捨てることが可能

平均賃金の算出では、計算上銭未満は切り捨てることが可能です。前述の最低保証額の算出式ですが、一つ目の「賃金の総額÷総日数」についても、二つ目の式「賃金の総額÷労働日数x100分の60」についても、計算上銭未満は切り捨てて計算。尚、3カ月間に給与形態が変わり、一つ目の式と二つ目の式を合算すべき場合も、各式の計算結果は銭未満は切り捨てて合算します。

平均賃金の具体例

解雇予告手当の計算

解雇をする場合には、少なくとも30日前に予告するか、または30日分以上の解雇予告手当を支払う必要があります。この場合の「解雇予告手当1日分」とは、「平均賃金1日分」です。例えば、9月30日付解雇の場合、8月31日に予告すれば手当の支払いはゼロ。9月20日の予告では、10日前なので20日分、9月30日の即日解雇であれば、30日分の手当が必要です。

休業手当の計算

休業手当は労働基準法に定められており、勤務日でありながら業績不振などの会社側の責任や都合で働けず休んだ場合に、会社から手当が支払われる制度。休業手当は「平均賃金x所定労働日数x60%以上」の支払いが義務付けられています。所定労働日数は、休業手当の支払い対象となる日数のみであり、公休日や就業規則上の休日、および代休日などは休業手当の対象から除外。

最低保証の計算

平均賃金の最低保証額は、前述の通り実賃金の60%でした。例外として、雇入後3か月未満、試用期間中などの例も示しましたが、もっと稀な例外もあります。算定期間が2週間未満の場合、賃金額が他の労働者と比較して著しく違う場合、日々雇い入れられる者、一昼夜交替勤務者、定年後もも引き続き再雇用される者、転籍者の場合なども労働基準法に定められています。

通常の方法で算定できない場合

都道府県労働局長が決定する

さらに通常の方法で算定できないときのケースとして、控除期間が3か月以上にわたる場合、雇入当日の平均賃金、使用者の責に帰すべからざる事由(私傷病等)により休業が3か月以上にわたる場合。このように、算定対象となる算定期間と賃金がなくなってしまうなどで算定不能となってしまうケースもあります。このような場合、都道府県労働局長がこれを定めるとされています。

平均賃金を理解しトラブルを防止しよう

休暇、退職などの雇用契約上の変化点に際して、会社と労働者に間にトラブルが起こらないように取り決められた基準が平均賃金。過去のトラブル調整事例などが労働基準法に反映され、最低金額の計算法ばかりでなく、例外事項への対処法等、細かく規定されています。雇用側ばかりでなく、雇用される側も基本事項を学び、互いに誤解なく不利益にならないよう努めるべきです。

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