記事更新日:2020年12月15日 | 初回公開日:2020年11月18日
グローバル用語解説 採用・求人のトレンド 人事・労務お役立ち情報 グローバル経済 外国人採用・雇用初めにダイバーシティマネジメントという言葉の意味について確認していきましょう。まずダイバーシティは「多様性」、マネジメントは「管理・経営」という意味です。ダイバーシティマネジメントは出典によって微妙に異なりますが、一言でいうと「多様性を活かしながら組織力を強化すること」です。人材や働き方の多様化が進む中、企業側もダイバーシティマネジメントを通じて柔軟な対応を行うことが求められています。つまり現代社会に必要な経営手法だといえるでしょう。
ダイバーシティマネジメントという概念はいつ頃生まれたのでしょうか?ダイバーシティマネジメントは1960代にアメリカで始まりました。当時のアメリカでは人種差別や女性差別が広がっていました。これらの社会的差別を是正するために1964年に「新公民権法」が施行されます。これがダイバーシティマネジメントの始まりだと言われています。1980年代になると、社会的責任(CSR)の一環として企業が積極的に取り組むようになりました。つまりダイバーシティマネジメントの原点はアメリカにあるといえるでしょう。
ダイバーシティマネジメントをする目的はいくつかありますが、一番の目的はやはり「多様な人材が活躍できる環境を作ること」でしょう。ダイバーシティというと人種や性別、年齢などの違いを想像しがちです。しかしそれだけでなく考え方や性格、価値観といった内面の部分も多様性の一つです。多様性はメリットを生み出す一方で、企業のような組織では個人同士の衝突も起こりかねません。しかしダイバーシティマネジメントを行うことで従業員それぞれが活躍出来る体制や環境を整えることが出来ます。結果として企業が組織としてうまく機能することに繋がるでしょう。
なぜ日本企業でダイバーシティマネジメントを行うことが重要なのでしょうか?ここでは主に2つの理由を挙げます。まず1つ目は企業のグローバル化です。グローバル化やインターネット普及の影響によって、ビジネス上の国境は失われつつあります。その結果、多くの外資系企業が日本の市場に参入し、また一方で日系企業の海外進出もさかんに行われるようになりました。特にグローバル市場で日系企業が利益を出すためには、外国人人材の雇用とマネジメントは欠かせません。今まで多様性が生まれにくい環境で育ってきた日本人にとっては、とりわけダイバーシティマネジメントの必要性も高くなるでしょう。
続いて二つ目の理由は労働人口の減少です。日本では少子高齢化が急速に進んでいます。ある研究によると、2050年には日本の総人口が1億人を切るという予測もされています。そのためこのままだと日本では労働不足に陥るといえるでしょう。しかし一方で外国人労働者や非正規労働者などの数は増加しています。労働者の減少を防ぐためにもこのような多様な人材を受け入れる必要があるでしょう。多様な人材が働く職場では、今まで以上にダイバーシティマネジメントの重要性が増します。
企業がダイバーシティマネジメントを行うことで様々なメリットを得ることが出来るでしょう。メリットの1つ目は優秀な人材が確保出来ることです。ダイバーシティマネジメントを行うということは、多様な人材を雇用することを意味します。多様な価値観や働き方を認めることで、より多くの人材にとって働きやすい職場になるでしょう。それによって、今まで様々な条件により採用することが出来なかった優秀な人材を採用することも可能となり、企業の利益アップにも繋がるはずです。
2つ目は従業員の創造性を高めることです。従業員の多様性がない同質的な組織では、価値観や考え方も似通ってしまい、新たなアイデアは生まれにくいでしょう。一方で国籍や性別だけでなくバッググラウンドや経歴といった面も含めた多様性がある組織では、イノベーションが創出されやすくなります。組織内で様々な意見が出されることで、新たな発想が生まれやすくなるようになり、ビジネスチャンスにも繋がるでしょう。従業員は他のメンバーから、刺激を受けることで自らの創造性が高まります。
3つ目のメリットは企業イメージの向上です。ダイバーシティマネジメントは企業の内部、外部それぞれの評価に大きく関係します。ダイバーシティマネジメントによって、働きやすい労働環境を作ることが出来れば、当然従業員の満足度は上がるでしょう。またダイバーシティマネジメントに取り組む企業として情報が拡散されることで、外部からの企業イメージアップにも繋がります。特に近年はダイバーシティに対する関心も高まりつつあるので、取り組みの必要性も増しています。
ダイバーシティマネジメントを行うことはメリットだけではありません。ここでは2つの主な課題を紹介します。1つ目は組織の複雑化です。様々な価値観や考え方を持つ従業員が働くことになるので組織としての統率が難しくなります。その結果、チームマネジメントがしづらくなり、仕事の効率も悪くなってしまうかもしれません。また、個人個人によって働き方も違うので、従業員の評価もしづらくなります。場合によっては従業員が不公平感を持ち、仕事に対するモチベーションが低下してしまいます。
2つ目の課題はコミュニケーション障害が発生しやすいことです。組織内の多様性があるということは、価値観や考え方が大きく異なる従業員同士も一緒に働かなければなりません。そうなると解釈や意見が異なり、人間関係のトラブルが起こりやすくなってしまいます。仕事をする上ではコミュニケーションは欠かせませんが、職場の人と良い関係が築けなければコミュニケーションも取りづらくなり、ミスが起こる可能性も増加します。それだけでなく最悪の場合は職場内でハラスメントが起こる原因にもなってしまいます。
ダイバーシティマネジメントを導入するにはいくつかのポイントを押さえる必要があるでしょう。1つ目は従業員の意識改革です。従業員の中にはダイバーシティマネジメントについて肯定的ではない人もいるかもしれません。しかし、そういった人たちも巻き込んで意識改革をすることが必要です。ダイバーシティを社内に浸透させるためには、従業員の協力が不可欠です。いくら会社がダイバーシティマネジメントを進めても、従業員が納得しなければ意味がありません。定期的なセミナーの実施や社内教育などによって従業員のリテラシーを上げるようにしましょう。
2つ目は社内コミュニケーションの活性化を行うことです。多くの場合、考え方や価値観が合わない人とのコミュニケーションを避けがちです。しかし業務を行う上では、多くの人としっかりと意思疎通をしなければならないでしょう。ダイバーシティが進んでいる企業では、特に様々な考え方を持つ人達が集まっています。そのため企業側は、積極的に従業員同士のコミュニケーションの場を増やすことが必要です。社内イベントの開催などはその一例になるでしょう。
実際にダイバーシティマネジメントを導入している企業は2社ご紹介します。まず一社目はカルビー株式会社です。スナック菓子を中心とした食品メーカーとしてご存知の方も多いのではないでしょうか?カルビー株式会社では2010年にダイバーシティ委員会を設置し、推進体制を整えました。実際に自社サイトでは「多様性なくしてカルビーの成長はありません」と記載しています。特に女性の活躍推進に力を入れ、10年間で女性管理職の割合はおよそ4倍になりました。それ以外にも様々な支援制度を通じて、多様な人材が活躍出来る環境を作り出しています。
続いてご紹介するのはオリックス株式会社です。オリックス株式会社では「Keep Mixed」という考え方のもと、多様な人材を受け入れることで、多様な価値観や専門性による「知の融合」を目指しています。具体的には外国人や障がい者雇用の促進や、仕事と家庭の両立支援などを行っています。また、グローバルに活躍出来る人材育成にも力を入れています。その取り組みが認められ、経済産業省が発表する令和元年度の新・ダイバーシティ経営企業100選のうちの1社に選出されました。
ここまでダイバーシティについて様々な角度から紹介してきました。しかしもっと詳しく知りたいという方もいるかもしれません。そのような方のために、一冊の本をご紹介します。本のタイトルは「成果・イノベーションを創出する ダイバーシティマネジメント大全」です。ダイバーシティマネジメントについて書かれた書籍はいくつかありますが、この本は社員のタイプをカテゴリー化し、大全という形でまとめています。興味を持った方は書店やインターネットなどで確認してみてください。
本記事を読んでダイバーシティマネジメントに関する知識を深めることが出来ましたでしょうか?これからの企業経営ではグローバル化などの影響によってますます多様性が促進されると予測されています。ダイバーシティマネジメントを実践することで企業にとっても多くのメリットを得ることが出来るでしょう。一方で課題が存在することも否めません。ダイバーシティマネジメントを通じて多様な人材を活かすためにも、慎重に取り組みを進めていきましょう。
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