記事更新日:2020年11月18日 | 初回公開日:2020年10月28日
人事・労務お役立ち情報 グローバル用語解説 用語集年功序列とは、賃金や役職を決めていく際に、企業や官公庁への勤続年数や年齢を重視する人事システムで、日本の企業や官公庁に特徴的にみられます。日本の企業や官公庁の特色であるため、英語には年功序列という語句がありませんでした。年功序列は、勤続年数が長くなれば仕事に熟練して能力が向上し、組織への貢献も大きくなるという考え方に立っています。そして、大きな責任を持つ役職も務めることができるようになり、企業を発展させることができるとみなすのです。第二次大戦後に完成しましたが、儒教における高齢者を敬う思想が日本で定着していたため、年功序列がうまく定着したと考えることもできるでしょう。
年功序列の導入にともなって、終身雇用も導入されました。終身雇用とは、学校を新規に卒業すると同時に雇用し、定年まで雇い続ける制度です。年功序列が定着すると、日本の企業や官公庁では新卒で採用した従業員の給料や役職を勤続年数に応じて上昇させ、定年まで雇用を続ける形になっていきました。従業員は雇用と年功序列を保証されますが、その代わりに企業や官公庁の要請に応じて、たとえ嫌われるポストであっても就いて、海外を含む各地に転勤していたのです。雇う側と雇われる側の利害も一致し、年功序列はうまく機能していたといえるでしょう。
年功序列の起源は、企業が優秀な社員を引きとめようとしたことにあります。明治から大正にかけての日本では、優秀な社員は給料が高い企業へと移っていくのが一般的でした。社員の流出に悩んだ企業は、勤続年数が増えると昇給させ、福利厚生も充実させることで、社員の囲い込みを図ったのです。このため、1930年代ころまでにホワイトカラーの年功序列化が進みました。しかし、ブルーカラーの年功序列化は遅れていました。第二次大戦後、1950年代以降の高度経済成長期に労働力が不足したため、企業の社員を引きとめたいという姿勢が強まり、ようやく年功序列が完成していったのです。
年功序列には、社員が定着しやすいというメリットがあります。社員にとってみれば、給料が年ごとに上昇し、役職も次第に高くなっていくわけですから、将来にわたって生活は保障され、希望を持った生活設計をおこなうこともできます。そのため、多少の不満があっても転職までは考えず、今の会社で頑張ろうという気持ちになりやすいのです。また、同じ会社で働き続けることで、自然に自分が会社の一員であるという帰属意識が強まるでしょう。更には給料の上昇や昇進によって愛社精神が増し、会社を辞めようという気持ちは起こりにくくなっていきます。
年功序列には、社員相互が持つ連帯感が強くなるという利点もあります。年次に応じて昇給し役職があがっていくわけですから、同期の社員はライバルというよりはむしろ仲間となります。また、年功序列に守られ後輩に出し抜かれる不安がないので、職場の後輩には仕事をきちんと教えていくことができるでしょう。先輩や上司に対しては、年長者に対する敬意を持って接することができ、良好な人間関係を保持できます。また、一つの企業で長期間働けば、一緒に仕事をしたことのある親密な社員が増えていきます。こうしたとから、社員相互の連帯感は強くなり、互いに協力し合って業績を伸ばしていけるようになるでしょう。
長期的観点に立って計画的に人材を育成できるのも年功序列の利点です。離職率が低く抑えられるため、人材育成のための労力が無駄になることが少なくなり、計画的に人材を育成しようという企業の意欲が強まります。育成の中で効果的な方法が蓄積されていくので、より効果的な育成も可能になるでしょう。また、社員が長い年数にわたって勤務を続けることから、社員の適性を詳細に評価し、適性を伸ばすための指導や適性に見合った部署への配属も容易になります。計画的な人材育成や適性に見合った人材配置は、会社の成長に貢献するでしょう。
年功序列においては勤続年数が増えると給料が上昇していくので、社員の高齢化が進んでいけば総人件費は増大していきます。企業が右肩上がりの成長を続けていれば、人員不足の状態が恒常化し、多数の若手社員の採用が続くので、人件費の問題は生じません。しかし、企業の成長や拡大が足踏みするようになると、若手社員の採用は進まなくなってしまうのです。そして、年功序列によって高い給料を得ているベテラン社員の比率が増えていきます。全てのベテラン社員が高い業績をあげるわけではないので、ベテラン層の高賃金が経営の足かせとなっていくのです。
年功序列には、優秀な若手社員が離職しやすいというデメリットもあります。若手社員の給料は低く抑えられており、優秀な若手社員が大きな業績をあげても給料や役職に十分には反映されないので不満が強くなりがちです。そして、よりよい待遇を求めて離職しやすくなるでしょう。また、あまり業績をあげていないベテラン社員が高い給料をもらっていることや、ベテラン社員が占める役職が空かなければ昇進できないのを間近に見ることもあります。そのため、優秀な若手社員のモチベーションが低下し、転職志向を強めることになっていくのです。
年功序列のもとでは、意欲のないベテラン社員が生まれやすくなっています。人間には同じような結果を得られるなら楽にできる方がいいという考え方をしてしまう側面があります。大きな業績なしでも給料が上がる年功序列においては、ミスなく楽に働いて給料をもらえればいいという意欲に欠ける姿勢が身につく場合があるのです。意欲のないベテラン社員を見た若手社員が、新たなことに挑戦しなくともいいだろうと考えるようになることも心配されます。新たなことに挑戦していく意欲が低下する社員が増えていけば、企業の成長が望めないばかりか、企業が衰退していくこともあるでしょう。
年功序列を採用する企業は、近年減少してきています。2018年の日本生産性本部による調査では、年功序列型の賃金を採用している企業は約47%となっており、年々減少する傾向です。年功序列はなぜ減少しているのでしょうか。いくつかの理由がありますので、以下で説明していきます。また、年功序列の減少に伴って増加しているのは成果主義です。成果主義とは、業務における成果を重視して評価し、年齢や勤続年数にかかわりなく給料や役職を決めていく、欧米で主流となっている考え方です。
年功序列減少の理由の一つは、外資系企業の増加です。外資系企業は、新卒を採用してじっくり育てるのではなく、即戦力となる実力を持った人材を採用することが少なくありません。優秀な人材であれば、年齢にとらわれない高い待遇を与えるので、年功序列にとらわれたくない優秀な人は、外資系への転職を考えるようになります。実際に転職が行われ人材の流動化が進むと、日本の企業においても優秀な人材を好待遇で引きとめたいという動きや好待遇で優秀な人材を採用したいという動きが促されます。そして、年功序列にこだわるのではなく、若手や中堅であっても成果に見合った待遇を与える方向になっていくのです。
目を見張るテクノロジーの進化や社会の変化に伴い、企業において事業内容を変化させる速度を加速させる必要が生じていることも、年功序列減少の要因です。以前からの事業では収益を上げにくくなり、新たな事業に進出していく企業も少なくありません。社員が長年の間に蓄積させた経験が役に立つことは以前よりも少なくなり、新たな事業へのノウハウを持った人材や、挑戦していく意欲を持ち実績も生むことができる人材が求められるようになっています。このため、年功序列でベテラン社員に報いるよりは、意欲があり業績を上げられる社員に報いるようになる傾向が出てくるのです。
年功序列が減少している原因として、労働力人口が減少していることも見逃せません。日本社会の少子化により、特に、若年労働者が少なくなっています。優秀な人材は限られますから、企業は、好条件で優秀な人材を確保したいと考えるようになるのです。このため、比較的高い条件での中途採用が増えています。更には、IT関連など特定の分野で能力が高ければ、新卒であっても好待遇で採用する例もみられるようになっています。また、中途採用する人材は多様ですから、年功序列ではなく、業績に見合った待遇とした方が、不公平感を感じさせなくなるでしょう。
日本経済は1980年代の終わりには好況を謳歌していましたが、1990年代の初めにバブル経済が崩壊し、企業の業績は悪化していきました。業績を改善するために、企業は人件費削減を考え、成果主義を導入していったのです。大勢の成果に乏しいベテラン社員の人件費を抑えることができれば、業績に貢献が大きい社員の給料を上げたとしても人件費負担は改善します。また、ベテラン社員の人件費を抑えれば、退職時の給料が反映する退職金の負担も軽くなるわけです。バブル崩壊が一段落した後も、社会の変化への素早い対応がうまくできずに業績が悪化した企業の中には、人件費削減のために成果主義を導入している例もみられます。
日本的経営の特徴といわれた年功序列を重視する企業は減少しつつあります。入社した企業が年功序列を採用していたとしても、人件費削減や社員のモチベーションの向上のために成果主義に変わっていくことは十分あり得ます。逆に、年功序列を採用していない企業であっても、人材の計画的育成や社員の連帯感を高めるために年功序列的要素を取り入れていく可能性もあるでしょう。働く立場からすれば、揺るぎない実力をつけ、年功序列、成果主義いずれにも対応できるようにしておくことが望ましいのではないでしょうか。
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