70歳の定年が義務化する?【改正高年齢者雇用安定法とは?70歳まで雇用するために求められることについて解説します】

記事更新日:2024年07月17日 初回公開日:2024年07月17日

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日本では長年にわたり少子高齢化や労働人口の現象が社会問題となっています。労働人口の減少により、企業は若年層の人材を確保することが難しくなっているため、シニア層や主婦層などに雇用の範囲を広げて人材の確保を行っている企業も増えています。人生100年時代と呼ばれる中で、定年を過ぎても継続して働きたいと考えているシニア世代も増えています。シニア層は企業としても豊富な経験や知識を活かしてもらえる貴重な人材です。今回は70歳定年について解説していきます。経営層の方は、参考にしてみてください。

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70歳が定年と言われはじめた理由

改正高年齢者雇用安定法

70歳が定年と言われ始めた理由は、改正高年齢者雇用安定法が施工されたからです。改正高年齢者雇用安定法とは、70歳定年法とも呼ばれており2021年4月に施行されました。改正高年齢者雇用安定法では、企業に65歳までの雇用確保を義務付けるだけでなく65歳から70歳までの働きたいと考えている労働者に対して就労機会を確保する機会を講じることを努力義務としています。定年の下限年齢は60歳ですが、65歳に延長する企業が増えています。

改正高年齢者雇用安定法の背景

少子高齢化と人口減少が加速している

改正高年齢者雇用安定法が制定されたのは、少子高齢化と人口減少が加速していることが原因です。日本では年々少子高齢化が進み、大きな社会課題となっています。少子高齢化が進むと、労働人口の現象も問題となります。売り手市場が続いている採用市場において、若年層の労働者を確保することが難しくなっています。若年層の労働者確保が難しいため、企業としては経験豊富なミドル層やシニア層の雇用に力を入れているところも増えています。

労働意欲のある高齢者が増えている

改正高年齢者雇用安定法は、労働意欲のある高齢者が増えていることも理由の一つです。少子高齢化が進んでいる日本ですが、高齢化が進むとともに健康寿命も延びており定年を過ぎても健康に働きたいと考えている人は少なくありません。またシニア層と呼ばれる人たちは、経験豊富な人も多いため自分の持っている技術や知識を活かしたいと考えている人も増えています。こういった高齢者が増えていることから、改正高年齢者雇用安定法が定められています。

改正高年齢者雇用安定法の概要

2013年の法改正

改正高年齢者雇用安定法は、2013年に法改正がされています。2013年の法改正では、事業主に65歳までの雇用継続措置が義務付けられました。また2013年の改正により、事業主は「65歳まで定年を引き上げ」「65歳までの継続雇用制度の導入」「定年制度の廃止」の3つから、必ず一つを選び実施することが求められました。更に、45歳以上65歳未満の中高年齢層に対して解雇や退職勧告を行った場合は、再就職支援や求職活動支援書の交付などを行わなければなりません。

2020年の法改正

2020年にも、改正高年齢者雇用安定法が改正されました。2020年の改正による大きなポイントは、70歳までの就業機会確保が努力義務化された点と、65歳を超えた労働者に対しての対応が雇用確保ではなく就業機会確保になった点です。雇用機会確保から就業機会確保に変わったため、企業が直接雇用する必要はなくなりました。その代わりに、雇用している高年齢者が希望する場合は70歳まで就労が出来る機会を設けなければなりません。

70歳の定年に対して企業に求められること

多様な個性や能力を認める職場環境を用意すること

70歳の定年に対して企業に求められることは、多様な個性や能力を認める職場環境を用意することです。シニア層と呼ばれる人たちは、社会人としての経験や知識が豊富な点が魅力と言えます。しかし他の従業員と同じ長時間労働や就業形態では勤務が難しい人もいます。そのため、65歳以上の人を雇用継続する場合にはシニア層の人たちが働きやすい環境を整えることも企業として必要です。また職場環境だけでなく周りの従業員の理解も欠かせません。

雇用契約を見直す

70歳の定年に対して企業は、雇用契約を見直す必要があります。70歳を定年の年齢に引き上げる場合に、定年到達前と給与や働き方など雇用契約に変更がない場合は見直す必要はありません。しかし再雇用となる場合は、殆どの企業で定年到達前と比べ労働時間や給料などが変わっています。その場合は、新しい雇用契約を締結する必要があります。その際に労働条件通知書も忘れずに更新を行い。再契約する従業員に確認してもらうようにしましょう。

就業規則を見直す

70年の定年に対して企業に求められるのは、就業規則を見直すことです。定年制度を導入していた企業が定年制度を廃止する場合や、定年を引き上げる場合・新しい再雇用制度を導入した場合などは、就業規則の改定を行わなければなりません。退職や定年に関する項目は就業規則上で必ず記載しなければならない事項です。そのため変更が合った場合には必ず内容の改定を行い、管轄の労働基準監督署に届け出を出し従業員への周知が必要です。

賃金制度を見直す

賃金制度の見直しも、70歳の定年に対して企業に求められています。雇用確保措置や就業確保措置の導入や変更を行うことにより、賃金制度の見直しが必要です。また再雇用制度を導入する場合は、再雇用制度における給与体系を検討しなければなりません。再雇用後の賃金を定年前までの給与と大きな乖離が出来てしまうと従業員のモチベーションが低下する恐れもあるため、不合理な賃金低下にならないような賃金制度の見直しを行う必要があります。

退職金制度を見直す

退職金制度を見直すことも、70歳の定年に対して企業として対応が必要です。退職金制度を導入している企業で定年の年齢を延長した場合は、退職金制度についても見直す必要があります。退職金の支払いを旧定年の年齢にするのか、延長後の定年の年齢にするのか決めなければなりません。また延長後の定年年齢にした場合、延長後の年齢までの期間を退職金に上乗せするのかなど十分な話し合いが必要です。更新した内容は従業員にしっかり周知しましょう。

70歳までの雇用の促進に向けて企業に必要な施策

経営層が積極的に関与する

70歳までの雇用の促進に向けて企業で必要な事は、経営層が積極的に関与することです。経営層が高齢者雇用に積極的ではない場合や、興味関心を持っていない場合は高齢者雇用を行っても上手くいかない事例が多くあります。高齢者雇用に成功している企業は、経営層がトップダウンの決定を行い定年廃止や定年延長といった施策を推進しています。時代の流れに合わせた採用手法や採用施策を実行するためには、人事部に任せきりにするのではなく経営層などのトップが決断することが重要です。

高齢者を知る

70歳までの雇用促進に対して企業は高齢者についてしっかり知ることが大切です。シニア層の人たちは今まで通り同じように働けると思っていても、加齢により心身に影響を受ける人もいます。高齢者雇用を促進していくためには、高齢者の多様性をしっかりと理解し体力や集中力・新しいことの挑戦意欲などを把握しておく必要があります。また対象年齢になったから自動的に更新するのではなく、延長となる従業員が延長して就業することにどういった考えを持っているのかを把握することも大切です。

高齢者の働きやすい職場をつくる

高齢者の働きやすい職場を作ることも、70歳までの雇用促進に向けて企業で必要な対応です。雇用延長を行った場合に、今までの経験や知識が活かせない職場に配置してしまうとモチベーションが低下します。定年延長後もやりがいを持って働いてもらうためには、負担が大きくなりすぎず多様性に応じたメニューを準備しておきましょう。再雇用後でも貢献度を見える化して評価することも重要です。周りの従業員の理解が得られるような公平性を保った評価制度を設定するようにしましょう。

従業員全体に意識啓発を実施する

従業員全体に意識啓発を実施することも、70歳まで雇用促進を実施する企業で必要です。高齢者雇用では、今までと異なり体力や健康などが変化しやすくなるため雇用される高齢者自身が意識を変えることも求められます。会社から求められる役割を果たせるために、再雇用を行う時期ではなくミドル層を対象に70歳までの雇用を見据えた研修などを行うことがオススメです。また若年層の従業員と働く際に心理的距離が生まれてしまわないように、高齢者が受け入れられやすい職場環境整備が重要です。

70歳までの定年に引き延ばした場合に支給される助成金

65歳超雇用推進助成金

65歳超継続雇用促進コース

定年を70歳まで引き延ばした場合、65歳超継続雇用促進コースの助成金を受けることが出来ます。このコースは、定年を65歳以上に引き上げるなどの取り組みを行っている事業主が支給対象です。高齢者の就労確保や雇用基盤の整備を目的としています。定年年齢の引き上げや定年の定めの廃止・希望する従業員全員を対象に66歳以上の年齢までの継続雇用制度の導入など、いずれかの要件を満たしている必要があります。支給額は実施している制度や高齢労働者の人数によっても異なります。

高年齢者評価制度等雇用管理改善コース

70歳まで再雇用を実施した場合は、高年齢者評価制度等雇用管理改善コースの助成金が給付対象となります。高年齢者の雇用管理制度等に係る措置を実施している場合に、助成金の支給対象となるコースです。支給要件は、「雇用管理整備計画の作成と認定」「高年齢者の雇用環境整備の措置の実施」を満たしていなければなりません。雇用制度の導入や見直しを行う際に掛かった専門家への相談費用や設備経費の60%が対象となっており、中小企業以外の場合は45%と決められています。

高年齢者無期雇用転換コース

高年齢者無期雇用転換コースも、70歳まで定年を引き延ばすと支給の対象となる助成金です。無期雇用転換コースは、有期雇用から無期雇用に転換を実施した企業が対象です。他のコースの要件より優しくなっており、無期雇用転換期間内に50歳以上・定年齢未満の有期契約労働者を、無期雇用労働者に転換した場合に支給されます。無期雇用へ転換した高齢労働者の人数によって給付される助成金が異なりますが、最大で10人までと上限が決まっており企業規模によっても金額が異なります。

まとめ

70歳への定年引上げに対し企業は柔軟に対応しよう

定年を70歳にする場合に企業に求められることや、70歳の雇用促進に向けて必要な施策などについて解説しました。高年齢者雇用安定法の制定により、企業は65歳までの雇用確保措置を講じる必要があります。しかし65歳と言わず、70歳まで働きたいと考えているシニア層も多く貴重な労働力として継続雇用を行っている企業も増えています。シニア層の人たちを継続的に雇用するためには、やりがいを維持出来る制度や環境整備が必要です。70歳への定年引き上げを行う場合は、企業としても柔軟な対応を心がけましょう。

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