360度評価とは【目的やメリット、デメリットなどについて解説します】

記事更新日:2023年07月28日 初回公開日:2023年07月07日

人事・労務お役立ち情報 外国人採用・雇用 グローバル用語解説 用語集
日本特有の終身雇用制度も終焉を告げ年功序列型から成果主義の報酬形態に移行しつつある中で、個人評価の方法も変わりつつあります。日本においては従来の上司が部下を評価する制度から、多様な角度から複数の視点で総合的に評価する360度評価が注目され導入する企業も増加傾向です。ここでは、360度評価が注目されるようになった背景から、360度評価の目的やメリットおよびデメリット、運用の際のポイントや注意点などを詳しく説明致します。新しい評価制度の導入を考えられている方々のご参考になれば幸いです。

360度評価とは

複数の様々な立場の関係者が1人の従業員の評価を行うもの

360度評価とは一人の従業員を評価することを、複数の様々な立場を持つ複数の関係者によって多角的に行うものです。社内の人事評価は評価される者の上司によって行われることが一般的ですが、360度評価では、被評価者の同僚や部下および後輩などからも評価されると言う大きな特徴があります。また会社内部の人間だけでなく出入り業者などからも聞き取りを行うなどして、多方面から評価をすることで公平な評価を促すものです。

360度評価の目的

上司だけでは気付けない点を他の人たちの評価で補完する

360度評価の目的は、上司では気付くことができない部分を、他の人たちの視点で評価することにより全体の評価を補完することが大きな目的です。前述のように年功序列型の企業が多かった時代では部下の評価を上司によって行うのが一般的でした。しかし上司は多くの部下を抱えていることなどから、気付けないことも多くあります。また上司と雖も人間ですから、個人的な気持ちを排除することも絶対とは言えず、評価を補完すると共に適正な評価であると本人を納得させる意味もある評価制度です。

就労ビザ取得のためのチェックリストをダウンロードする

360度評価が普及した背景

人事評価制度の見直しを行う企業が増加した

360度評価が普及したのは、日本で定着していた年功序列型の企業形態から実力主義で人事評価が行われる企業が増加したという背景があります。欧米諸国ではいち早く実力主義の人事評価制度に取り組み、既に浸透されているのが現状です。しかし日本では人事評価の見直しは後れており、実力があれば評価される海外に魅力を感じて、有能な若者が海外の企業へ引き抜かれるなどの実態が明らかになったことで日本でも人事制度の見直しが急速に進んでいます。

人員不足によって現場と部下の管理を兼任する管理職が増加したため

日本では人口減少および少子高齢化に歯止めがかからず、前述のように有能な人材が流出する事態となっており、人員不足は企業の喫緊の課題となっています。人員不足を補うために、現場の仕事をこなしながら部下の管理も任される管理職が増えていることからも、360度評価の普及に拍車をかけることになりました。現場の仕事と部下の管理をする管理職の評価を誰がするかも難しいことであり、多方面より評価を得ることで総合評価とすることができます。また、適正な評価を行うことにより、離職者を減らすなど人員不足の削減も目的とするものです。

360度評価のメリット

客観的な評価を受けることができる

評価される側としては360度評価により多くの人の意見が評価に反映されていると考えることができるので、客観的な評価として受け止められるメリットがあります。決められた上司や少数の人から評価を受けるよりも、多くの人が加わり同じ評価をしているならば納得せざるを得ません。嫌な評価であっても素直に受け入れることができ、前向きな姿勢で自分を変化させるきっかけになります。従来の方法では受け入れ難かった悪い評価なども客観的な意見として聞けるようになることは大きなメリットです。

公平に評価されていることを実感できる

360度評価の大きな目的でありメリットと言えるのが、公平な評価です。皆で評価する事により、多角的な視点から多数の評価が得られ、個人的な私感は少数意見になるでしょう。それまでの少数の上司による人事評価では、公平に評価されていたとしても納得できないこともあったに違いありません。評価する側と評価される側の人間関係は、お互いの気持ちに大きな影響を与えることもあります。そういう意味でも360度評価はお互いが公平だと納得できる評価方法です。

主体的に改善点に向き合える

公平に多数の人が同じ評価をしていることにより、自分の評価を素直に受け止めることができ、主体的に課題の改善に向き合えることも360度評価のメリットの一つです。他人に押しつけられて改善に向かうよりも、自ら改善しようとすることで改善までの道のりと時間を短縮できます。多数の人が指摘した改善事項は自分の弱点であり、皆が共通に感じているとすれば気付かなった自分を恥じて、進んで改善点に向き合って打開策を考えることができるでしょう。

自分の特性を客観視できる

評価と言えば弱点の指摘ばかりに目が行きがちですが、多数の人が自分の長所を言ってくれたならば自分の強みにできます。今までも多少は感じていたかもしれない自分の長所である特性を確信でき、これからの自信にもなるでしょう。客観視された自分の特性は、多数の異なる評価者から褒められたという意味を持ち、長所を更なる強みに伸ばすことができます。評価とは弱みだけでなく、強みを自覚することでも成長できることを忘れてはいけません。

360度評価のデメリット

最終的な評価に至るまでにコストがかかる

360度評価の大きなデメリットは、評価に到るまでコストがかかってしまう事です。多数の評価者から意見を取りまとめるには相当な時間と労力が必要になります。それを全社員に対して行うならば、かなりのコスト(時間もコストの一つ)がかかるでしょう。また、複数の評価を同時に併行して行うことも難しく、評価をしてもらう人だけでなく評価の聞き取りなどを行う人の労力も大きなものになります。360度評価では全ての人に評価してもらうことが基準になるため、いかに効率良くコストを削減できるかが大きなポイントです。

お互いに不信感が生まれる可能性がある

360度評価では誰がどのような評価をしたかは伏せることが絶対条件になりますが、部署の人員が少ない場所や特定の評価によっては評価相手を特定できることがあります。評価者が悪い評価をしたと知れば、自ずとお互いの関係は冷えていくでしょう。業務での態度にも現れ、お互いの不信感は強くなっていくばかりとなります。特定した評価者が間違っていたとしても、誰がどんな評価をしたのかは教えられないため、不信感が生まれてしまえばそれを払拭するのは至難の業です。

評価を気にした指導や育成に陥りやすい

360度評価では、自分が評価される相手は自分も評価することになります。他人がする自分の評価が気になり、自分が他者を正当に評価できなくなることにもなり兼ねません。つまり、自分が相手を悪く評価すれば、相手も自分を悪く評価するのではないかと思い正しい評価ができなくなるのです。上司は部下からの評価も気になり、評価を気にした指導などに陥りやすくなります。これではお互いの評価や指導が甘くなりやすく、適正な評価ができないばかりかスキルアップにまでにも影響を与えてしまう大きな問題です。

評価に馴れ合いが生まれる

360度評価では全員の評価を原則としますが、あまり関連の無い部署の人なども評価することになります。そうした関係の人たちに厳しい評価はできないため、無難な評価をするという馴れ合いが生まれます。こうした風潮が広がってしまえば、もはや360度評価の意味は殆ど無いと言ってよいでしょう。決められた項目をシートなどにまとめ、5段階評価などで記入してもらうようにすることがおすすめです。また、良く知らない事項については無理に回答せず空欄で提出してもらった方が、正しい評価に繋がります。

360度評価を効果的に運用するためのポイント

基準やルールを明確にする

360度評価方法を導入するには、基準やルールを明確にすることが重要です。慣れるまでは評価基準が分からず、中間である「普通」の評価をしがちになります。そこで評価基準として、誰から見てこう見えるなど、具体的な事案を書き出して評価してもらいましょう。自分の評価だけでなく、自分から見えたり聞こえたりする、部下から被評価者への評判などを聞いてみてもいいでしょう。ただし、根拠のない噂などではなく、事実に基づいたものだけを評価として捉えるようにして下さい。

研修を実施する

360度評価を効果的に運用するには、研修などを実施するのがおすすめです。前述のようにベテランの方々は年功序列の評価から、会社が実直主義に方向転換するために評価方法を変更することを伝えなければいけません。また、若い社員の方々は評価されることには慣れていますが、仕事で他人を評価することは初めてという人も多いでしょう。360度評価をする目的や、メリットとデメリットについても理解してもらい、本来の360度評価を正しく行うことで会社や個人に良い影響を与えるようにすることがポイントです。

フォローを丁寧に行う

360度評価が軌道に乗るまでは丁寧なフォローが必要です。また、ある程度軌道に乗ったとしても360度評価にはデメリットにあげたような危険が伴うため、定期的に調査やフォローを行う必要があります。個人の将来にも関わる大事な評価ですので、やらせっぱなしではなくフォーローを入れて様子を窺いながら部署ごとに差が出る事などがないように配慮しましょう。360度評価だからといって、誰もが納得するとは限りません。逆に若い人よりも、今までのやり方に慣れてきたベテランの方々の方が抵抗を感じるかもしれませんので、アフターケアは十分に行ってください。

360度評価の運用時の注意点

報酬決定に直接反映させない

評価は基本的に報酬に反映されるために行うものですが、360度評価を導入した際には報酬に直接反映させないことが賢明です。かなり関係の浅い人や、あまり良く知らない出入り業者さんの評価が報酬に反映されるとすれば納得しない人も多く出てきます。八方美人で誰にでも当たりの良い人が高く評価され、給与が高くなるという仕組みは360度評価を行う本来の目的ではありません。いろんな角度からの意見を聞き、公平かつ客観的な評価を伝えることで個人の成長を促す事が真の目的です。

人材マネジメント認識を持つ

360度評価では、評価されるとともに他の多数の人たちを評価することになります。私情をはさまず客観的に見て同僚や先輩を評価することで、マネジメント力を身に付けるという認識を持たせましょう。いずれ時期がくればマネジメントに関わることになりますが、明日からやって下さいと言っても簡単にできるものではありません。普段から人材マネジメントをする正しい心構えを考えることで、優秀な人材を失うことのない正しいマネジメントができる責任者として育ってくれます。

まとめ

360度評価を実施して公正な視点で評価を行うようにしよう

"

360度評価は成果主義を基本に考える評価方法であり、年齢や経験よりも実力を客観的に評価する合理的な評価制度です。年功序列や終身雇用の企業形態から脱却する評価制度であり、ベテラン社員の方々からは受け入れがたい評価方法でもあります。しかし、360度評価は労使ともに公正な評価と納得できるものであり、導入する企業も増えているようです。変化する時代に対応し、優秀な人材が流出することがないように、公正な視点で適切な360度評価を行うようにしましょう。

"

【無料】就労ビザ取得のためのチェックリストがダウンロードできます!

就労ビザ取得のためのチェックリストダウンロードバナー

グローバル採用ナビ編集部では外国人の採用や今後雇い入れをご検討されている皆様にとって便利な「就労ビザ取得のためのチェックリスト」をご用意いたしました。また、在留資格認定申請書のファイル(EXCEL形式)もこちらよりダウンロード可能です。

こちらのチェックリストはこのような方におススメです!


  1. 外国人採用を考えているがビザの申請が心配。
  2. 高卒の外国人は就労ビザの申請できるの?
  3. どのような外国人を採用すれば就労ビザが下りるの?
  4. ビザ申請のために何を気を付ければいいの?
  5. 過去に外国人のビザ申請をしたが不受理になってしまった…
  6. 外国人材を活用して企業の業績アップを図りたい方。
  7. 一目で分かるこんな就労ビザ取得のチェックリストが欲しかった!


他社での事例やビザ申請の際に不受理にならないようにまずは押さえておきたい就労ビザ取得のためのポイントを5つにまとめた解説付きの資料です。

就労ビザ取得のためのチェックリスト(無料)のダウンロードはこちらから!

ページトップへ戻る
ダウンロードはこちら
ダウンロードはこちら