パーソナルハラスメントとは【起きやすい環境や企業に与える影響などを紹介します】

記事更新日:2023年07月28日 初回公開日:2023年07月10日

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ハラスメントは現在日本の企業が抱える課題の中でも特に深刻化している問題です。2021年、厚生労働省が実施した実態調査の結果では調査対象の約30%が一度はハラスメントを経験したことがあると回答しています。ハラスメントと言うとパワハラやセクハラなどが代表的な例として挙げられます。しかし、中でも個人の特性についての嫌がらせであるパーソナルハラスメントは知らないという方も多いのではないでしょうか。今回はそんなパーソナルハラスメントとは一体どういうものか、対策や周囲に与える影響についてご紹介してきます。

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パーソナルハラスメントとは

個人に対して行われる様々な不適切な行為のこと

パーソナルハラスメントとは通称パーハラと呼ばれるハラスメントの一種で、主に個人に対して行われる様々な不適切行為のことを指します。具体的には見た目や性格など、その人の個人的な特徴に対して否定や中傷を行い、時には恫喝や暴力を加える行為がパーソナルハラスメントに該当します。デブや不細工などの暴言を投げかける行為や、肘で小突く、背中を強く叩くなどの行為も行った本人はスキンシップのつもりだとしてもハラスメントと認識されます。

労働者の意を汲まない一方的な言動などが該当する

パーソナルハラスメントはプライベートへの言及や個人に対する揶揄も該当します。例えば、出身や学歴に対して偏見を押し付ける、行動や喋り方のクセをモノマネする行為などが挙げられます。どんなに些細なことであっても相手がどう感じるかを考えず行う一方的な言動はハラスメントです。また、個人的な特徴には、宗教や人種などその人のルーツに関わる事柄から年齢など、自分で努力しても変えられない部分もあります。そのため、パーソナルハラスメントで受けた精神的なダメージはとても大きいものになります。

パーソナルハラスメントが起きやすい環境

信頼関係が築かれていなくても一緒に行動する必要がある環境

パーソナルハラスメントは当事者間に信頼関係が無い場合に起きやすいと言われています。例えば同僚と上司では同じ言葉をかけられても、多くの人は上司の言葉を重く冗談に聞こえないと感じがちです。また、信頼している相手なら許せる範囲でも、信頼関係の無い相手から同じ事を言われると不快に感じる人も存在します。このように不快に感じる基準は上下関係や両者の立場の違いも関係しています。しかし、共通して言えるのは特段親しみの無い相手からの無礼な言動は、その行為自体がハラスメントになるということです。

パーソナルハラスメントと併せて起こりやすいハラスメント

パワーハラスメント

パワーハラスメントとは上司から部下など、相手よりも優位にある立場を利用して行われる一連のハラスメント行為のことです。パワーハラスメントは自身の優位性から「相手が反撃してこない」ことを自覚して行われる場合が多いので、様々なハラスメントと同時に起こりやすいものでもあります。具体的な例としては上司から部下に対して性格や見た目への中傷があった場合、パーソナルハラスメントとパワーハラスメントが同時に行われていることになります。

セクシャルハラスメント

セクシャルハラスメントは個人に対して行われる性的な嫌がらせのことを指すハラスメント行為です。例えば、異性の身体を触る行為や性的な質問を繰り返し行う行為などが挙げられます。その中でも、相手の異性関係や性生活などプライベートに言及する言動はセクシャルハラスメントであると同時にパーソナルハラスメントとも言えます。また、セクシャルハラスメントは異性に対してだけでなく、同性に対して「男らしさ」や「女らしさ」を押し付ける行為も該当するので注意が必要です。

モラルハラスメント

モラルハラスメントとは、言葉や態度を利用して相手に精神的なダメージを与えるハラスメント行為のことです。具体的な例としては、無視をする、露骨に不機嫌な態度を取るなどの行為が挙げられます。モラルハラスメントの中でも、個人に対して行われる人格攻撃や自分の常識を相手に押し付ける行為はパーソナルハラスメントにも該当すると言えるでしょう。物理的な証拠を残さないため、時と場合によっては周囲に理解が得られず被害者からの訴えが埋もれてしまう危険性もあるハラスメントです。

パーソナルハラスメントが企業に与える影響

ハラスメントを受けた従業員の生産性低下

パーソナルハラスメントが日常的に行われていると、精神的なストレスから従業員はミスが増加し生産性が低下することが予想されます。また、生産性の低下は個人の問題だけでなく、周囲の従業員の業務もストップしてしまう可能性があります。さらに、他の従業員はハラスメントを受けていなくても「次は自分が標的にされるかもしれない」という不安感の中で仕事をしなければなりません。そのため、パーソナルハラスメントを放置していると結果的には職場全体の能率が下がり、全体の業務に支障が出る危険性が高まります。

企業のイメージを傷つける可能性がある

昨今では様々なSNSが普及しているだけでなく、求人サイトでも人材募集をしている企業の口コミを自由に掲載できるようになりました。そのため、パーソナルハラスメントを受けた従業員や周りの従業員が被害を公表する可能性も少なくありません。特にSNSは情報が拡散しやすく、ハラスメント対策を怠っていると多方面へその点が周知されてしまい、企業イメージを傷つける結果に繋がる可能性もあります。最終的には人材獲得や関連会社との取引に影響が出る危険性もあるため、早急かつ迅速な対応が求められます。

パーソナルハラスメントを防止するための対策

就業規則や労働協約などで方針を明確化させる

パーソナルハラスメントを防止するにはまず初めに、就業規則や労働協約などで腫らす面に対する自社の見解や方針を明確化させることが大切です。明確化させるのは会社の方針としてハラスメントは許さないという意思表明だけではありません。実際に行った場合の具体的な処罰や、どのような行為がハラスメントにあたるのか定義や事例も含めて明記しておきましょう。労働者全体と企業側で認識を一致させることがハラスメント防止に繋がります。

研修などによって考えを徹底させる

企業側がハラスメント対策などの研修を定期的に開催し従業員に考えを徹底させるのも、パーソナルハラスメントを防止する有効な手段の一つです。研修はハラスメントへの認識を深めるだけでなく、ハラスメントに該当する言動をしていないか自分を振り返る機会も従業員に与えることができます。また、ハラスメントの防止研修は現在様々な企業が講師の派遣を行っているので、どのような研修を行えば良いかわからない場合は外部に委託することをおすすめします。

苦情処理期間や相談窓口を設置する

パーソナルハラスメントの対策を練る際には被害が起きてしまった場合に備えて苦情処理機関や相談窓口も設置しておきましょう。上記の窓口は企業に対して法律で設置が義務付けられていて、設置されていない場合は違法とみなされます。また、窓口はただ設置するだけでは意味がなく、守秘義務の厳守や徹底した事実調査など適切で迅速な対応が求められます。企業側のハラスメントに対する対応が不適切なものであった場合、訴訟問題に発展する可能性もあるので慎重な対応を心がけましょう。

ハラスメントが発生した場合の対応を定める

パーソナルハラスメント対策ではハラスメントが発生した場合の対応も事前に定めておきましょう。被害者から相談を受けた際の聞き取りの方法から事実確認までの手順を細かく決めておくことで、実際に起きた場合に焦らず対応することができます。さらに、対応の手順を明確化しておくことで、人や状況によって対応に差が出てしまう事態を防止できます。また、ハラスメントへの対応に関しては厚生労働省のHPでガイドラインが発表されているので、自社の対応方法に不安がある場合は参考にしてみましょう。

再発防止措置を講じる

ハラスメントが起きてしまった場合、解決後は必ず事案を振り返り再発防止措置を講じましょう。再発防止案として多く取り入れられているのはハラスメントに関する研修を実施し、ハラスメント加害者に参加してもらい後日レポートも提出してもらうというものです。その際には加害者の立場にも十分配慮する必要があります。また、再発防止措置を講じる際は当事者だけでなく、相談を受けた窓口側も適切な対応ができていたか、改善点は無いかを振り返りましょう。このように全体が当事者意識を持って取り組むことでもハラスメント防止に繋がります。

法的措置をとる

行き過ぎたハラスメントが改善されない場合、被害者側は加害者に対して法的措置を講じることも可能です。この場合は企業側の対策というよりも、被害者側から加害者に対しての対抗措置と言えます。被害者が法的措置を取る場合、具体的な証拠や被害の事実など、ハラスメントがあったかどうか証明できるものが必要になります。また、被害者が法的措置を取った場合企業側も責任を問われる可能性があります。そのため、解決困難な事態に関しては相談を受けた時点であらかじめ顧問弁護士に相談し対応方法などの指示を仰ぐようにしましょう。

パーソナルハラスメントが問われる罪

名誉毀損罪

名誉棄損罪とは、事実の有無に関わらず個人の名誉を傷つける、社会的地位を低下させるなどの言動をした際に成立します。パーソナルハラスメントの中でも、相手の特徴について個人の偏見に基づいた噂を周囲に吹聴することや嫌がらせの為のミスの偽造などが名誉棄損に当たります。名誉棄損罪の事実が立証された場合、加害者は3年以下の懲役もしくは禁錮または50万円以下の罰金の支払い義務が課されます。また、名誉棄損罪はたとえ毀損内容が事実であっても罪に問われる可能性も否定できないため、「本当のことを言っているので問題ない」という認識は通用しません。

侮辱罪

侮辱罪は事実を摘示しなくても公然と他人を侮辱した者に対して課される罪です。例えば、デブや不細工などの具体性を欠いた抽象的な言葉での誹謗中傷行為が該当すると言われています。名誉棄損罪と似ていますが、名誉棄損罪の場合は中傷の内容が具体的であるという点がポイントです。パーソナルハラスメントの中では被害者への抽象的な暴言が侮辱罪に該当する可能性があります。また、侮辱罪が成立した場合、加害者には3年以下の懲役もしくは禁錮または50万円以下の罰金が課されます。

不法行為

名誉棄損罪と侮辱罪はどちらも親告罪なので被害者の訴えが必要かつ人前でハラスメントを行われた事実が無ければ訴えることができません。そのため、個人的なメールや対面など他人が干渉しない場面でパーソナルハラスメントを行われた場合は罪に問えません。ただし、ハラスメント行為自体は、民法710条を根拠に不法行為として損害賠償を請求できます。また、法的措置は賠償だけでなく、加害者に自分の行いの責任を問わせるということに意味があります。そのため、上記2つの罪には問えなくても訴えを起こす行為自体に大きな意義があることを覚えておきましょう。

まとめ

社内のハラスメントに対するリテラシーを高めハラスメントを防止しよう

パーソナルハラスメントは、加害者にとっては何でもない発言や冗談のつもりで放った言葉が該当するという点において線引きが曖昧になりがちです。そのため、自覚が無いだけで多くの人が加害者になりやすいという特徴があります。このような事情から一方的に対策を講じるだけでなく、従業員全体にもハラスメントに対するリテラシーを高める姿勢を求めていかなければなりません。企業や所属している従業員が全体でハラスメントに対する知識を深めることで、働きやすい職場やクリーンな企業イメージの構築にも繋がるので、しっかりと対策を講じていきましょう。

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