ボランティア休暇とは【取り入れるメリットやデメリット、導入企業について紹介します】

記事更新日:2024年04月18日 初回公開日:2024年04月18日

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働き方改革によって、従業員に働きやすい環境を提供するため様々な福利厚生を導入する企業が増えています。福利厚生の制度は様々ありますが、今回はボランティア休暇について解説します。ボランティア休暇は阪神淡路大震災以降、導入の必要性が注目されていました。しかし2021年時点で導入している企業は、全体の1割にも満たしていません。ボランティア休暇を導入した際の企業のメリットや、従業員のメリットなどについて解説していきます。経営者や人事担当の産形は参考にしてみてください。

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ボランティア休暇とは

ボランティア活動参加のための有給を認める制度

ボランティア休暇とは、ボランティア活動参加のための有給を認める制度です。ボランティア休暇は社会貢献活動休暇とも呼ばれており、労働者が無報酬で社会貢献活動を行う場合に企業が奨励・支援することを目的として必要な期間付与える休暇です。但しボランティア活動は無報酬・自発的に行うものであり、企業側が従業員に指示して取得させるものではありません。ボランティア休暇の導入は企業のイメージアップにも繋がる制度ですが、強要にならないよう注意が必要です。

阪神淡路大震災がきっかけで注目された

ボランティア休暇は、阪神淡路大震災がきっかけで注目されるようになりました。阪神淡路大震災が起きた際に、日本各地から一般人のボランティアが集結し活躍したことからボランティア休暇の必要性や重要性が注目されるようになりました。被災地支援のボランティアは長期的になることが殆どです。企業勤めをしている人にとって、長期間休むことは簡単ではなく休めても自己都合で無休のため、参加したくても出来ない人が多くいました。こういった状況を改善すべく、ボランティア休暇が導入されるようになります。

ボランティア休暇の取得日数

1日から2年間など企業によって多様

ボランティア休暇の取得日数は、1日から2年間など企業によって異なります。ボランティア休暇を導入している企業によっては、単発で1日のみ取得できる場合もあれば休職制度などを利用して長期的に2年間取得できる企業もあります。また片方だけでなく従業員が取得しやすいように、短期と長期の両方を導入している企業も少なくありません。ボランティア休暇制度は1回あたり連続で5日の取得となり年間1日以内ですが、ボランティア休職制度では最長1年まで取得することが可能です。

積立年休を利用する方法もある

ボランティア休暇は積み立て年休を利用する方法もあります。積立年休制度とは、通常2年で時効消滅する年次有給休暇を一定期間積み立てておけるようにする制度です。積立年休制度は、法律で定められたものではないため企業毎にストック有給や積立特別休暇など様々な呼び方で呼ばれています。積立年休制度を導入している企業であれば、ボランティア休暇がない場合でも繰り越した有休を利用することで連続して休みを取得することが出来ます。

ボランティア休暇導入の方法

導入の目的と内容を明確にする

ボランティア休暇を導入するには、導入の目的と内容を明確にしておきましょう。ボランティア休暇は利用してくれる従業員がいないと導入しても意味がありません。ボランティア休暇を取りたいと考えている従業員がいるかどうかまず確認することが必要です。利用したいと考えている従業員がいて初めて、制度として成立します。導入を決めた際には、担当者だけで決めるのではなく、従業員が利用しやすいように様々な意見をヒアリングするようにしましょう。

適用条件と申請方法を決定する

ボランティア休暇導入には、適用条件と申請方法を決定する事が大切です。条件の内容としては、適用するボランティアの種類や与えられる休みの日数・有休の適用範囲などです。適用条件が曖昧になっていると、後々利用している従業員から不満が出てくる可能性もあるため、しっかりと適用される条件や範囲を決めておきましょう。また申請方法に関しても煩雑にならないように、簡潔な方法で申請できるようにしておくことで従業員が利用しやすくなります。

就業規定に追加する

ボランティア休暇の導入を決めた際には、就業規則に追加するようにしましょう。新しく制度を導入する場合は必ず就業規則に明記する必要があります。就業規則に明記が必要な項目は、付与する休暇日数・申請方法・期限・有給として扱うかどうかです。就業規則に明記しておくことで、ボランティア休暇を利用したいと考えている従業員が確認することが出来ます。明記が必要な項目は決まっていますが、他にも企業独自で設定している内容があればそれらの記載も忘れないようにしましょう。

社内への周知を行う

ボランティア休暇は導入後、社内への周知を行う事も必要です。就業規則に明記を終えたら、実際に使う従業員への周知を行います。従業員数が少ない場合は朝礼や昼礼などの場で周知するといいでしょう。従業員数が多い場合は、社内HPや掲示板への掲示・メーリングリストへの展開などを行い従業員全員に周知が出来る方法で共有を行いましょう。口頭だけでは聞き洩らしてしまう場合などもあるため、後で確認できる様に文書化しておくこともお勧めです。

労働基準監督へ申請する

労働基準監督署へ申請することも、ボランティア休暇の導入には欠かせません。ボランティア休暇の導入を行い、就業規則に追記を行った場合には労働基準監督署に申請が必要です。申請が必要な書類は、就業規則変更届・変更済みの就業規則・意見書です。記入方法が分からない場合は、労働局のホームページなどに記入例が載っているので、参考にしてみてください。記入漏れや記入ミスをしてしまうと申請に時間が掛かるため注意しましょう。

ボランティア休暇導入のメリット

企業イメージ向上に繋がる

ボランティア休暇を導入するメリットは、企業のイメージ向上に繋がることです。社会貢献活動は必要な活動だと分かっていても、利益が生まれる訳ではないため中々出来る事ではありません。そういった活動を企業として積極的に支援していることを知ってもらうと、多くの人から好印象を持ってもらう事が出来ます。企業イメージが向上することで、結果として売上アップに繋げる事も可能です。ボランティア休暇は導入している企業も少ないため、他者との差別化を図る事も出来ます。

人材育成になる

ボランティア休暇は人材育成に繋がるメリットがあります。ボランティア活動を行う場合は、自ら考えて行動する力や周りの人とコミュニケーションを取った上で助け合いなどが必要になります。ボランティア活動に積極的に参加することで、実務に必要な能力も自然と向上していき優秀な人材へと成長できる可能性があります。ボランティア活動は業務上では出来ない経験を様々経験します。その為、自然と物事に対しての視野も広がっていきます。

従業員のエンゲージメントが上がる

ボランティア休暇を導入することで、従業員のエンゲージメントを高めることが可能です。従業員は会社に所属している状態でボランティア活動を行えるため、会社への帰属意識が高まることが期待できます。ボランティア活動を支援してくれる企業はまだ少ない中で、自分が希望しているボランティアに参加することを支援してもらっているという意識が生まれます。こういった意識は従業員の満足度向上や、休暇後の帰属意識の向上に繋がっていきます。

ボランティア休暇導入のデメリット

休暇中の生産性が低下する

ボランティア休暇は休暇中の生産性が低下するのがデメリットといえます。従業員が積極的にボランティアに参加しやすい環境になると、仕事を休むことが増えその分業務が滞ってしまいます。従業員数の多い大手企業であれば、長い目で見た生産性の向上などを見越した上で対処することが出来ますが少人数で回している企業は同じようにはいきません。残った従業員の負担が大きくなり、体調不良や長時間労働など別の影響が出てくるリスクも考える必要があります。

制度の形骸化にとどまる可能性がある

ボランティア休暇を導入しても、制度の形骸化に留まる可能性があります。ボランティア休暇は活用する従業員がいて初めて導入する意味を持ちます。そのため、ボランティア活動に積極的に参加している従業員がいるかどうかなどのヒアリングをしっかりと行わず、形だけの導入では意味がありません。福利厚生の一つとして導入する企業もありますが、年間の取得が義務となっている有給休暇5日の取得もままなっていないような企業では、導入しても形骸化してしまいます。

怪我などのリスクもある

ケガなどのリスクがあるのもボランティア休暇のデメリットです。被災地などの災害支援でボランティアに行く場合、二次災害などの危険性もあります。そのため、ボランティア活動中に怪我を負ってしまうリスクも少なくありません。最悪の場合、死亡してしまう可能性もゼロではありません。企業が業務命令として行っている訳ではないため、直接保証責任を負う事はありません。しかし危険な場所のボランティアに参加しようとする従業員には、ボランティア保険などに加入してもらうようにしましょう。

ボランティア休暇の事例

富士ゼロックス

ボランティア休暇を導入しているのは、富士ゼロックスです。富士ゼロックスは日本で初めてボランティア休暇を導入したといわれており、1993年に導入を始めました。月間5日まで積立休暇(使用期限が過ぎて失効した有給休暇が最高60日分まで積み立て可能)を利用します。この積立休暇を活用し、短期のボランティア休暇を取得することが出来ます。短期だけでなく長期の取得も可能です。また富士ゼロックスでは社会貢献活動の情報共有も行っており、様々な活動への参加を促しています。

株式会社二嘉組

ボランティア休暇は株式会社二嘉組でも導入されています。株式会社二嘉組では、平成22年からボランティア休暇を導入し年3日間(半日・時間 単位の取得も可能)を運用しています。従業員はこの制度を利用し地域の消防団の防災訓練や、被災地の炊き出しなど後方支援に活用しています。基本的には事前申請という形をとっていますが、緊急の場合は口頭で申し出を行い後日申請書の提出を実施するという形も可能です。年々減少している消防団員の活動を支援する目的でも導入されています。

ライオン株式会社

ライオン株式会社もボランティア休暇を導入している企業です。ライオンでは、従業員が自ら参加したいと考えているボランティアに参加するための制度として「ボランティア一般休暇制度(積立休暇を利用)」を導入しています。これだけでなく、会社指定の活動に参加するための支援として「ボランティア特別休暇制度 (最大年 55日)」もあります。「ライオン山梨の森」で森林整備活動を行い、間伐や植林などに従業員にも参加してもらい、地域住民との交流などを行っています。

まとめ

ボランティア休暇を取り入れて従業員の社会貢献をサポートしよう

ボランティア休暇の導入方法やメリット・デメリットについて解説しました。ボランティア休暇を導入することにより、社会的な意義は大きく積極的にボランティア活動を行っている従業員にとってはメリットの大きい制度です。しかし現実的に運用が可能かどうかや、従業員の多くが取得した場合の通常業務の運用方法など事前に導入の目的などを明確にしておくことが大切です。ボランティア休暇を取り入れて、従業員の社会貢献をサポートしていきましょう。

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