最低賃金引上げとは【メリットや対応方法、政府支援などについて解説します】

記事更新日:2022年10月24日 初回公開日:2022年10月21日

毎年見直しが行われている最低賃金ですが、2022年は昨年より31円引上げの961円となることが中央最低賃金審議会で決まりました。制度が始まって以降の最高額を更新したことになります。労働者にとっては手取りが増えてメリットとなる最低賃金引上げですが、企業にとっては人件費の増加につながり経営に影響を与える大きな問題でもあります。この記事では、最低賃金引上げが社会や企業に与える影響や政府の施策について解説します。最低賃金引上げに対応しながら企業の生産性を上げていくために必要なことを考えていきましょう。

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最低賃金とは

企業が従業員に払う最低時給

最低賃金とは企業が従業員に払う最低時給のことで、各都道府県ごとに金額が定められています。最低賃金は原則として正社員だけでなく、パートタイマーやアルバイトなども含むすべての従業員に適用されます。最低賃金を下回ると、刑事罰として罰金を支払わなければならないこともあります。法律で定められた最低賃金額より低い賃金額は設定できません。従業員と雇用契約を締結したとしてもその賃金設定は無効となり、法律によって最低賃金と同額の賃金を定めたとみなされます。

地域別最低賃金と特定最低賃金の違い

最低賃金には、地域別最低賃金と特定最低賃金の2種類があります。基本は地域別賃金で、都道府県ごとに産業の種類に関わらず定められています。一方で特定最低賃金とは鉄鋼業、出版業などの特定の産業に設定されている最低賃金のことです。特定最低賃金は、業務の性質上地域別最低賃金よりも高い賃金を支払う必要があると判断された賃金額を指すため、地域別最低賃金額を上まわります。地域別最低賃金と特定最低賃金の両方が適用される場合には、企業は高いほうの基準に合わせて最低賃金額以上を支払わなければなりません。

最低賃金引上げの近年の実態

2022年10月から31円引上げられる

近年の実態として、最低賃金が引上げられる傾向が強くなっています。地域別最低賃金は2022年10月以降は31円引き上げられ、全国平均で時給が961円になります。これは厚生労働省の「働き方改革実行計画」において、「年率3%程度を目途として、名目GDP成長率にも配慮しつつ引き上げていく。これにより、全国加重平均が1000円になることを目指す。」としたからです。もし最低賃金額ぎりぎりの給与額を設定している場合には、賃金額を見直す必要があります。

最低賃金引上げのメリット

経済を活性化できる

最低賃金引上げのメリットとしては、経済を活性化できるということがあります。最低賃⾦が上がることで⼀⼈当たりの収⼊が増えていき、消費が増えることが予想されます。そして結果的に景気が回復していくと政府は考えているのです。特に派遣労働者やパート、フリーターといった⾮正規労働者の賃金が上がって今よりも豊かになれば、地域でもお⾦を使う人が増えることが期待できるのです。お⾦が地域で回るようになると、地域の経済が活性化するというメリットが⽣まれるでしょう。

所得格差が縮まる

最低賃金引上げを行うことで、正社員と非正規労働者の所得格差を縮める効果があると考えられます。企業は賃⾦原資によって賃⾦を割り振っています。そのため最低賃⾦が上がると、最低賃金と同等の賃金を受け取っている⾮正規労働者の⼿取りが増えることになります。これによって正社員と⾮正規の⽣涯賃⾦の格差を圧縮できると考えられるのです。年功序列賃⾦制度が敷かれない⾮正規労働者にとっては⼤きなメリットであり、仕事に対するモチベーションの高まりも期待できるでしょう。また、非正規労働者の手取り額がアップする代わりに、正社員の給料が減少することも考えられます。

最低賃金引上げのデメリット

企業の負担する人件費が増える

最低賃金引上げのデメリットのひとつとして、企業が負担する人件費が増えるということがあげられます。飲⾷業やコンビニチェーン店など、最低賃⾦で雇⽤している⾮正規労働者が多い企業では⼈件費が⼤きく増加するのは明らかです。従業員数や雇用時間の見直しなどが必要となる場合もあるでしょう。2021年度の引上げでは影響が少なかったとしても、政府の目標である「全国加重平均1000円」までを考慮して人件費の増加にそなえておくことをおすすめします。

設備投資が抑制される

最低賃金が引上げられると、企業は対応策として設備投資の抑制をする傾向がみられます。最低賃金の大幅な引上げは、設備投資による生産性向上の阻害要因になっているのです。日本商工会議所の調査結果では、今年最低賃金が30円の引上げとなった場合に経営への影響があると回答した企業のうち、42.1%がその対応策として設備投資の抑制等を選択しました。設備投資の抑制が長期化すれば生産性上昇率の低迷などを通じて、供給能力の拡大抑制から日本の潜在成長率を圧迫することが予想されます。

雇用が減少する

最低賃金引上げによって雇用が減少することも考えられます。飲⾷チェーンやコンビニエンスストアなど非正規労働者の雇用が多い業種では、最低賃⾦の上昇で企業が非正規労働者の雇用や⻑時間勤務が不可能になる場合もあります。そのため失業者が増えるという見方もあります。また、新たな従業員採用にコストを割くことが難しくなる可能性も出てくるのです。人件費の底上げが難しい企業にとっては、最低賃金の引上げの影響が正社員の維持や雇用という面にも関わってくるのです。

最低賃金引上げへの対応

社員のスキルを向上させる

最低賃金引上げに対応するには、社員のスキルアップが重要であることに注目しましょう。かかったコスト以上の成果を出す生産性の向上を考える必要があるのです。企業には今まで以上に提供するサービスの価値を増やし、同時に時間や工程を短縮する努力が求められます。生産性を向上させていくための業務フローや人材配置などを見直していきましょう。生産性を向上させることにより売上げもアップすることができ、利益も賃金も確保できる経営を目指すことが可能となるのです。

労働時間を短縮する

最低賃金引上げによる人件費増大への対応策として、労働時間の短縮を考える必要があります。特に従業員に残業代を多く支払っているような企業では効率化を促進させて労働時間の短縮を目指しましょう。管理職に定時退社を促す、従業員に配布しているパソコンのシャットダウン時間を設定する、コンサルティング会社を入れて業務改善を促すなどの方法もあるでしょう。また従来よりも稼働を落として経営規模を縮小し、従業員の労働時間を見直した方が良いという場合もあるかもしれません。

人員整理をする

最低賃金引上げによる人件費増大を回避するために、人員整理が必要となる場合もあります。最低賃金引上げによって賃金を上昇させる必要があるのは、最低賃金ぎりぎりの賃金を受け取っている非正規労働者の割合が高くなります。そのような理由から、非正規労働者を人員整理する割合が大きくなると考えられます。また非正規労働者は新規採用抑制、有期契約の雇止めなど正規社員に比べて雇用抑制、人員整理が行いやすいということもあり、人員整理の対象となる場合が多いと言えます。

設定賃金が最低賃金を下回るか確認する

企業は国が定めた最低賃金額以上の賃金を、すべての従業員に支払わなければなりません。最低賃金額より低い賃金を使用者と従業員の合意により定めたとしても、それは法律によって無効とされ最低賃金額と同様の定めをしたものとされるのです。最低賃金額未満の賃金しか支払わなかった場合には、最低賃金額との差額を支払わなくてはなりません。また、地域別最低賃金額以上の賃金を支払わない場合には、最低賃金法により50万円以下の罰金が科せられ、特定最低賃金額以上の賃金額を支払わない場合には、労働基準法により30万円以下の罰金が科せられる可能性があります。

最低賃金引上げに対する政府支援

業務改善助成金

最低賃金引上げに伴う人件費増大により企業の設備投資が抑制されることで、生産性が下がってしまいます。そこで特に非正規労働者の雇用が多い企業への政府の支援策として、業務改善助成金があるのです。業務改善助成金は、中小企業や小規模事業者の生産性向上を支援し、事業場内で最も低い賃金の引上げを図るための制度となっています。生産性向上のための設備投資等を行って事業場内最低賃金を一定額以上引き上げた場合、その設備投資などにかかった費用の一部が助成されます。

働き方改革推進支援センター

働き方改革推進支援助成金とは長時間労働の是正など働き方改革に取り組む中小企業に対して、その費用の一部を助成するものです。就業規則の作成や変更、労務管理用機器の導入や更新などの労働時間短縮に必要な取り組みを行う事業主に対する経費助成制度となっています。取り組み内容により4つのコースが設けられています。中小企業にとっては働き方改革への取り組みは大きな負担となりがちです。しかし、最低賃金引上げに対応するためには助成金を上手に活用して、働き方改革を進め生産性を上げていきましょう。

働き方改革推進支援助成金

働き方改革推進支援助成金とは長時間労働の是正など働き方改革に取り組む中小企業に対して、その費用の一部を助成するものです。就業規則の作成や変更、労務管理用機器の導入や更新などの労働時間短縮に必要な取り組みを行う事業主に対する経費助成制度となっています。取り組み内容により4つのコースが設けられています。中小企業にとっては働き方改革への取り組みは大きな負担となりがちです。しかし、最低賃金引上げに対応するためには助成金を上手に活用して、働き方改革を進め生産性を上げていきましょう。

キャリアアップ助成金

キャリアアップ助成金は、厚生労働省により非正規労働者の雇用条件改善のために設けられた助成金制度です。非正規労働者を正社員として雇用する場合や、処遇改善を行った事業主に対して支給されます。能動的に賃金を見直すことで、最低賃金引上げに伴う非正規労働者の最低賃金の上昇分をキャリアアップ助成金によってカバーできる可能性があります。非正規労働者の雇用条件改善は、労働者のモチベーションアップやエンゲージメントの向上につながります。非正規労働者を雇用している事業主は、キャリアアップ助成金を活用して処遇見直しを検討してみてはいかがでしょう。

まとめ

最低賃金引上げに上手く対応して社内の生産性を上げよう

企業は2022年10月からの最低賃金を確認し、自社が設定している賃金が最低賃金を下回らないかをチェックする必要があります。賃金や人件費増加の内容を踏まえた上で、今後の会社経営の方針を決定しなければなりません。就業規則、賃金規定、雇用契約などに変更の必要がないかもきちんと確認することが求められます。雇用や労働時間、設備投資などに課題がある場合には、政府の助成金の活用や支援窓口での相談を検討することをおすすめします。最低賃金引上げに上手く対応して社内の生産性を上げていきましょう。

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