メンバーシップ型雇用のメリット・デメリット【歴史・ジョブ型雇用との違いは?】

記事更新日:2020年08月11日 初回公開日:2020年08月02日

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働き方改革施行後も新型コロナウイルス蔓延によりニューノーマルを踏まえた雇用形態への移行が注目を集めています。その中で旧来から多くの企業で用いられてきたメンバーシップ型雇用の見直しが挙げられます。日本の高度経済成長期から共に歩んできたメンバーシップ型雇用の最たるメリットは「安定」でしょう。その見返りとして労働者は転勤を始めとした人事異動などにも原則従うことが求められます。企業としてもゼネラリスト育成を念頭に置く点は多くの企業で共通していると言えるでしょう。そして、役職の上昇とともに様々な部門を経験させ、広く知識を吸収してもらいながら将来会社を背負って立つ人材の育成を目指す制度です。

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メンバーシップ型雇用とは

人を基準に仕事を割り当てる雇用形態

メンバーシップ型雇用とは仕事を基準に人を割り当てる雇用形態とは異なり、人に対して仕事が割り振られるという形態です。よって、一定の得手不得手分野の考慮はあるものの、ベストマッチの仕事が付くとは限らないということです。すなわち、様々な仕事を経験して総合的にスキルを高めていくという考え方とも言えるでしょう。よって、広い部門の知見を有することとなり、深い理解はなくとも、一定水準であれば対応が可能というビジネスパーソンが多く在籍していくと言えます。反対に専門的知見と言えるまで掘り下げて理解していけるだけの時間はない場合が多いのも現状と言えるでしょう。

会社に最適化された人材を育成する

メンバーシップ型雇用は、会社に最適化された人材を育成すると言えるでしょう。特に複数の部門を運営している企業であれば、急な退職が発生することも珍しくありません。そこで、欠員が生じた場合にメンバーシップ型雇用を採用している場合は実務上、転勤や人事異動にて対応することが多いでしょう。よって、会社としては、一定の引継ぎなどはあるものの滞りなく事業を運営していけるということです。しかし、親族の介護中や特別の理由がある場合は、業務命令であったとしても、一定の配慮が必要です。その場合は、他の労働者に打診するなどの対応はあり得るでしょう。

メンバーシップ型雇用が注目される背景

経団連がジョブ型雇用を推進し比較対象になったから

メンバーシップ型雇用が注目される背景として、経団連がジョブ型雇用を推進し比較対象になったからと言えます。メンバーシップ型雇用は日本では馴染みがあるものの、ジョブ型雇用はそうとも言えません。これは、特定の仕事に対して最適な人材を登用するという考え方です。よって、ゼネラリスト育成型とはならず、スペシャリスト型の雇用であるため、必ずしも適任が見つかるとも限りません。そして、日本の企業は中小企業が多くを占めており、慢性的な人手不足に陥っています。そうなると仕事を限定してしまうと企業運営が適正に循環していかなくなる恐れもあります。そこで、メンバーシップ型雇用が注目されているということです。

コロナウイルスの影響でメンバーシップ型雇用の見直しが必要

しかし、コロナウイルスの影響でメンバーシップ型雇用の見直しが必要と叫ばれています。これは、BCP上も特定の場所のみで仕事をすることが望ましくないとの情勢が形成されてきました。そこで、旧来の勤続年数や年齢、時間で評価するメンバーシップ型雇用のままであると、評価が難しいという苦難に直面しました。そこで、仕事の成果で評価するジョブ型雇用の必要性が脚光を浴びている点は否めません。しかし、欧州で採用しているジョブ型雇用に変更することまでは難しいと言えるでしょう。よって、原則はメンバーシップ型雇用であるものの、一部ジョブ型を採用するなどの対応が出てくるものと考えます。

メンバーシップ型雇用のメリット

雇用が安定している

メンバーシップ型雇用のメリットは雇用が安定している点です。前提条件として、日本の労働法制は、ジョブ型雇用を採用していることが多い米国と比べても非常に解雇のハードルが高い点が挙げられるでしょう。メンバーシップ型雇用の場合、その仕事ができなくなったとしても、仕事に対して人をあてるジョブ型雇用と同視すべきはありません。ゆえに他に代替可能な部署への異動や解雇を回避する為の努力が必要ということです。また、人に対して仕事という考え方は、人が異動してもその人に仕事がついていくことも多くあります。そしうなると、企業としてもむしろ退職されてしまうと痛手をおうことがあると言えるでしょう。

長期的に忠誠心の高い人材を育成できる

メンバーシップ型雇用の場合、長期的に忠誠心の高い人材を育成できるという点があります。メンバーシップ型雇用は並行して年功序列賃金、終身雇用が付加されていることが多いと言えるでしょう。これは、企業が不況下においても、壊滅的な打撃を受けた場合を除き、まずは雇用を守ることを事実上約束したものです。ゆえに労働者としてもそれに報いる意味で労務を提供していくということです。よって、メンバーシップ型雇用と(比較的日本人に多いとされる)安定志向は非常に親和性が高いと言えるでしょう。反対にジョブ型雇用が主たる制度である諸外国から来日した労働者は、同制度に対して懐疑的な見方をすることも多いと言えます。

メンバーシップ型雇用のデメリット

生産性が低く利益が出しにくい

メンバーシップ型雇用のデメリットとして、生産性が低く利益が出しにくいという点があります。これは、仕事の成果ではなく時間に対して対価を支払う考え方である為です。例えば、どのような人であっても、労働時間を長くすれば、専門的知識が必要な場合を除いて成果は出てくるものと考えます。しかし、当然労働時間が長くなるとそれに伴って発生する(時間外労働手当など)人件費が肥大化していくでしょう。そうなると、企業としての利益は決して高いものとは言えません。また、安定雇用の見返りとして長時間労働=有能なビジネスパーソンとの風土が形成されている企業の場合は特にその傾向が表れると言えるでしょう。

会社都合の転勤や残業がある

メンバーシップ型雇用は会社都合の転勤や残業がある点も否めません。これは、人事ローテーションの一環として行われるものや繁忙期に会社を回す為に残業が発生する事が多く想定されます。安定的な雇用の見返りであり、事実上、拒むには相当の理由が求められる点は多くの会社で共通しているでしょう。よって、長期雇用が事実上保証されているとは言うものの、身体面で不調になってしまうなどのリスクもあります。また、2020年のコロナ禍により、会社として労働者への安定雇用を保証し続けることは事実上困難ではないかとの意見も出てきました。

ジョブ型雇用よりも人件費がかかる

メンバーシップ型雇用はジョブ型雇用よりも人件費がかかる点が否めません。これは、終身雇用及び年功序列賃金を採用しているためです。まず、終身雇用は雇用の流動性を想定しておらず、かつ年功序列賃金も入社後は原則として毎年昇給していくということです。よって、生産性のいかんに関わらず人件費は年々上昇していくと言えるでしょう。反対にジョブ型雇用は仕事に対して最も相応しい人をあてるために、必ずしも毎年昇給するとは限りません。そして、流動的な雇用形態もジョブ型の一部分であり、かつ終身雇用を想定していません。ゆえにメンバーシップ型雇用はジョブ型雇用よりも人件費が高くなると言えるでしょう。

終身雇用や年功序列が崩壊している

現代のような不確実性の高い社会情勢においては、終身雇用や年功序列が崩壊していると言えるでしょう。そもそも2019年と2020年の1年間を考えてもウイルスにより多くのニューノーマル(新常態)が形成されたことは否定できません。オフィスの賃料や年々上昇するメンバーシップ型雇用の人件費などを考慮しても、現在と同じ状況で終身に渡り同じ賃金形態を保証し続けることは難しいと言えるでしょう。また、一部の業種を除いて必ずしも対面のみでしか仕事ができないとは言えなくなりました。そこで、労働時間のみで人事評価をすることも限界と考えます。

メンバーシップ型雇用とジョブ型雇用の違い

メンバーシップ型雇用は雇用されれば仕事がもらえる

メンバーシップ型雇用とジョブ型雇用の違いとして、メンバーシップ型雇用は雇用されれば仕事がもらえるということです。これは、企業内の様々な仕事を経験し、ゼネラリスト育成に主眼を置いているということです。反対にジョブ型雇用はスタート地点が仕事ありきであるため、スペシャリスト型の雇用形態と言えるでしょう。すなわち、ジョブ型雇用は、そもそもその仕事ができる人材しか採用しないとも言えます。メンバーシップ型雇用の場合、専門家育成が目的ではありません。まずは、一定の考慮はあるものの目の前の与えられた仕事を広く浅く覚えていくという考え方です。

ジョブ型雇用は自分のスキルが仕事になる

ジョブ型雇用は自分のスキルが仕事になると言えるでしょう。ジョブ型雇用は欧州では多く採用されているものの日本では馴染みの薄い制度と言えます。自身でスキルを磨きそれに見合った報酬を得るということです。よって、報酬も二極化すると言えるでしょう。自己の努力により、高スキルを身に着けるビジネスパーソンとそうではないビジネスパーソンの間で差が生じてしまうことが多いでしょう。反対にメンバーシップ型雇用の場合は、年齢や勤続年数によって横並びで昇給していくために、自己の努力が(ジョブ型と比べて)反映しづらいとも言えるでしょう。

メンバーシップ型雇用を導入している企業

日本の企業は基本的にメンバーシップ型雇用

メンバーシップ型雇用を導入している企業は多く存在しますが、日本の企業は基本的にメンバーシップ型雇用を採用していると言えます。これは、日本の労働法制が労働時間により厳格に管理せざるを得ない建てつけになっており、成果によって評価するジョブ型雇用とは親和性が低いと言えるでしょう。そしてメンバーシップ型雇用の場合、勤勉な日本人の気質にも合致しているとの指摘もあります。これは、自分の仕事以外であっても繁忙部署には応援にかけつけるということが求められ、ジョブ型雇用のように明確な仕事の範囲が決められているわけではありません。

ジョブ型雇用が少しずつ増えている

ジョブ型雇用が少しずつ増えている背景として、リモート化への動きがあると言えるでしょう。特に在宅勤務の場合は、勤務態度や労働時間の管理が可視化できず、自己申告に委ねざるを得ません。特に、信頼関係が構築できていない場合、性悪説に基づいた労務管理となり、労使双方が能動的に働ける風土が形成されているとは言えません。そこで、仕事の成果を基準に評価をするジョブ型雇用はリモートワークとの親和性が高く、ジョブ型増の要因となっていると言えるでしょう。ジョブ型雇用は欧州では多くが採用されていますが、日本では、まだメンバーシップ型雇用が多くを占めています。

メンバーシップ型雇用以外にも雇用形態はたくさんあります

定期的な働き方の見直しが必要です

メンバーシップ型雇用以外にも雇用形態はたくさんあります。そして、定期的な働き方の見直しが必要です。2019年から2020年の間は特に労働市場の常識が大きく変動しました。それに伴い、何も手を加えない状態が継続すると労働者から旧態依然の人事施策であると揶揄されることもあるでしょう。そのような状態が続くと、当然離職率の増加にもつながり得ると言えます。働き方は時代背景を映し出す鏡であり、働き方改革施行後は多様な働き方が推進されてきました。ジョブ型雇用などの新たな試みに挑戦しようとする際には、必ず一定の反対勢力が表れます。しかし、重要なことは、時代の流れとともに「最善の形を模索すること」と考えます。

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