年功賃金とは【日本の伝統・メリットは?】

記事更新日:2020年08月11日 初回公開日:2020年08月03日

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日本特有の雇用制度ともいわれる年功序列を組み込んだ年功賃金制度。成果主義が目立ってきている現代においても、年功賃金を導入している企業はまだまだ多くあります。成果主義と比べられ、古い考え方と囚われがちな年功賃金ですが、本当に時代遅れなのでしょうか?一度は成果主義を取り入れたものの失敗に終わり、もとの年功賃金制度へと戻る企業もあります。今回は、年功賃金制度のメリット、デメリットに加え、成果主義との比較など企業成長に欠かせない賃金評価についてお伝えします。

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年功賃金とは

年齢と学歴に応じて賃金が上昇する賃金形態

年功序列型の人事評価制度とは、勤続年数が長いほど賃金水準(基本給)が高くなる至ってシンプルな制度です。高度経済成長期以降、終身雇用制度と並行して日本の経済を支えてきた伝統的な賃金形態のひとつ。年功序列は、年齢や勤続年数が高くなるほどノウハウやスキルといった経験が蓄積され、企業において職務上の責任や重要度が高まることが前提です。1つの会社に長く勤務すればするほど、自動的に一定の賃金や役職を得ることができるため、安心して働けるのが大きな特徴。この安定的な雇用形態が、戦後の日本経済の発展を支えてきたと言えるでしょう。

勤続日数によっても賃金が上昇する

従業員の給与を決定する際には、年齢や勤続日数などの属人的要素である「年齢給」、能力で決める「職能給」などがあります。そこに従事している業務内容で決める「職務給」、仕事の成果や業績で決める「業績給」が加わります。年功賃金の制度は、この中でいう「年齢給」を重視した賃金形態のこと。スキルや実績などの「能力」とは違う、年齢や勤続年数といった個人の要素によって給与が決定される仕組みなので、もちろん勤続日数が増えるほど上昇することが前提です。高度経済成長期以降に導入された日本型経営の特徴とも言えるでしょう。

年功賃金のメリット

毎年給与が上がる安心感を得られる

年功賃金制度の大きなメリットは、毎年少しづつでも給与が上がるという安心感でしょう。一般的には、結婚や子育てによる養育費など人は年を取るほどお金が必要になってきます。昨今では、介護など子育てが落ち着いたタイミングでの出費も増え、それぞれのライフステージにおいてお金を発生することが考えられます。常にお金の不安が取り巻く環境において、業績が大幅悪化しない限り、能力があまり向上なくとも確実に手取り額が増えていくのが年功賃金です。持続的な昇給を見込むことができるので、安定的な将来設計を描くことができるでしょう。

従業員が定着しやすい

能力や結果を重視する成果主義と比べ、定期的な昇給が望める年功賃金制度は、従業員が定着しやすい傾向にあります。これは、詰まるところの会社への帰属意識の向上にもつながるでしょう。新卒一括採用が主流の日本企業において、入社当初から給与に差をつけると、初期の段階で優劣の差が見えてしまい、モチベーション低下にもつながるので望ましくありません。同等の給与や昇給幅にしておくことで「皆同じ」という同調意識を共有させることにもなり、働くモチベーションを維持させ、社員の離職率の低下にもつながります。

人材育成の計画が立てやすい

入社後3年以内で退職する若者の増加が社会問題となるなど、若者の人材育成に頭を悩ませる人事担当者も少なくありません。その点、年功序列制度では若者を含めた離職率が低下するので人材育成の計画が立てやすくなります。そうすることで、採用費用や人材育成にかけたコストを無駄にすることもありません。従業員同士も過度なライバル関係になることも少なく、先輩から後輩へとスキルの伝承がスムーズに行われます。会社全体で長期的な人材育成を可能とする文化が形成され、和気あいあいとした空気感を持って仕事に取り組めるのも魅力のひとつでしょう。

年功賃金のデメリット

人件費が年々増加していく

年齢が増すごとに給与が上昇していく年功賃金制度において、年々総人件費が上昇していきます。とくに、若手の早期離職が進めば、社員の高年齢化による人件費の高騰は拍車をかけることになるでしょう。将来の賃金推移の目安が分かる賃金カーブでも2017年以降ではほとんど伸びが見られず、高度成長期や1995年頃と比較しても伸び率は極めて低いといえる状態です。高度成長期のように収益を出しやすい時代とは違い、低成長時代においては人件費の圧迫は喫緊の課題です。このような状況下では、年功賃金を取り入れる続けることは難しい企業も出てくるでしょう。

成果が給与に関係ないのでモチベーションが低下する

年功序列制度の評価では、若くて非常に優秀な社員がいたとしても、勤続年数の長い従業員よりも高い賃金にはなりません。右肩上がりの成長を続けていた頃は、「長く勤めれば出世して賃金も上がる」という希望を持てました。しかし、低成長、終身雇用制度が崩壊している現状では、賃金の上昇どころか、賃金が下がったり、会社そのものの存続さえも危ぶまれます。結果的に、自分よりも仕事のできない年長者が、自分より高い賃金をもらっている状況に不満を感じ、チャレンジ精神やモチベーションが低下してしまうのです。

有能な人ほど退職しやすい

新しい知識やスキルに加え、確実な成果を出さなければいけない、といったプレッシャーが少ないのが年功賃金の良さでしょう。社員間の過度な競争や派閥も生まれにくく、目の前の仕事に安心してしっかりと集中することが可能になり、安心感を持って仕事に取り組めます。しかし、有能な人材ほど若くして頭角を現し、早くから成果を出します。そのような人材にとっては、若手社員が大きな仕事を任されない、上位のポジションにつけるチャンスが少ないというのはモチベーションの低下にもつながります。結果として、有能な人材ほど離職してしまうケースも少なくありません。

年功賃金を維持ずるための条件は

会社の成績を伸ばし続ける

年功序列を成立・維持させるには、業績の継続的な向上、すなわち企業の成長が大前提となります。年功賃金カーブの伸び率が低い昨今において、雇用年数の経年に伴い、賃金が上昇していく年功序列制度は経営の圧迫にもつながりかねません。企業が歴史を積み重ねるほど、上位層に位置する古参社員が多く存在し、人件費の総負担は想像以上のスピードで増加します。年功賃金制度を続けるためには、企業が業績を伸ばし続けるしかありません。逆を言えば、業績アップが見込めない企業は、年功序列の存続自体が困難となるのです。

新卒採用かつ終身雇用を基本にする

年功賃金制度を維持するためには、日本が今まで取り入れてきた新卒採用、終身雇用をベースに人材育成をすることが大切です。新卒採用を取り入れることで、同じように昇給・昇進することが何となく従業員の頭の中に刷り込まれていきます。そうすることで日本独自の人事評価を良しとし、その評価のもとで業務に最善を尽くそうというマインドが形成されるでしょう。中小企業の場合、積極的な中途採用を実施する人件費や人材の確保は難しいケースも多く、終身雇用を基本とすることは企業の中長期的な成長にもつながります。

年功賃金の注意点

会社の成長が停止し年齢と給料が一致しなくなる

前述でもお伝えしたように、年功賃金制度は経済がぐんぐんと成長している時代の高度成長期に成立した制度です。会社が成長していることが大前提のため、会社の成長が停滞したり、落ちるようなことがあれば年齢と給与の相対図が崩れ、給与が一致しなくなります。年功序列制度では、勤務年数が増えるだけで給与が上がっていきますが、それが個人の能力に見合っているかどうかはわかりません。つまり、能力の低い従業員にある一定の給与を払い続けることにもなるため、頭を抱える人事担当者も少なくありません。

能力の差が開きすぎる事が起きる

勤続年数が長くなればなるほど、社員間に能力の差が出てくるのは仕方のないことでしょう。成果や能力によって評価されない年功賃金において、若手より能力のない社員が高い給与を得ていることも少なくありません。長く務めるほどに慣れや甘えが出てきてしまい、中には手を抜いたり、今の業務に甘んじで成長が見込めない従業員もいます。そういった先輩や上司を目にすることで、若手社員のモチベーションを下げてしまうことも。社員間に能力の差が開きすぎないよう、役職ごとに語学や資格のミッションを与えるなど、人材育成をしていくことも企業として大切な要素です。

注目が高まる成果主義について

成果に見合った報酬を与える考え方

成果主義とは、年齢や勤続年数で換算する年功賃金とは違い、業務の過程や結果をベースとして評価を行うという考え方です。欧米式とも言われ、仕事での結果が評価に反映され、報酬や昇進などが可能になるため実績主義とも言われます。昨今、若手の企業家やベンチャー企業が増えたり、若くても優秀な人材は多く、そのような人材は年功賃金の考え方に物足りなさを感じる人も少なくありません。頑張って成果を上げれば認められ収入アップも望める成果主義は、若手の優秀な社員のモチベーションアップにも繋がります。

労働者不足の中で即戦力が集まりやすい

成果主義では、個人や所属するチームが出した成果に対して給与が支払われます。つまり、成果を上げられない社員に対して、社歴や年齢に関係なく高い給与を支払う必要がありません。労働者不足が叫ばれる中、期待する成果にコミットできる即戦力型の人材だけを集めることで短期的な成果も期待できます。優秀な人材に支払う一人当たりの賃金は上がるかもしれません。しかし、成果主義を導入することで結果を上げていない社員に支払う無駄な給与を抑えることができ、費用対効果の良い組織形成が可能になります。

チームワークが取りにくいという点もある

成果が評価基準になることでモチベーションアップになるものの、自分の成果を上げるためにライバル意識が色濃く出て、個人主義に走ってしまう懸念もあります。チームワークを必要とする業務の場合、弊害が出たり顧客の奪いになるなど、必ずしも業績アップにつながるとは限りません。そのため、成果主義は向いている業種と不向きな業種が出てくるもの事実です。研究職などの中長期的な職種、工場労働者などの個人のパフォーマンスが数値で見えにくい業種には、成果主義を取り入れるのは難しいのが現状です。

年功賃金も成果報酬も賛否が分かれます

必要な人材像によって賃金制度の見直しをしてみては?

日本の伝統的な評価制度でもある、年功賃金についてお伝えしてきました。年功賃金、成果主義ともにメリット・デメリットはあり、業種や職種によっても良し悪しはあります。また、年功序列制度を維持していくには、企業業績の向上や継続的な人材採用が欠かせません。時代の変化に伴い、私たちの取り巻く環境や仕事に対する考え方も変化してきました。今までの評価制度が必ずしも従業員や企業の成長に繋がるとは限りません。必要な人材像や目指すべき企業のあり方に合わせ、賃金制度の見直しをしてみてはいかがでしょうか。

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