KFS(重要成功要因)とは何か？【分析方法や注意点について解説します】

記事更新日：2024年01月15日｜初回公開日：2024年01月14日

FS（キーサクセスファクター）という言葉をビジネスシーンで多く聞くようになりました。もともとは経済用語であったものですが、企業を成功へ導く要因として広く使われるようになり、ビジネスシーンにも定着しています。企業の事業戦略に欠かせないものとなったKFSは、規模に関わらず多くの企業が重用しているようです。ここでは、KFSの意味や注目されるようになった背景から、KFSの導入の仕方や導入に役立つ手法を詳しく解説いたします。KFS導入を検討されている方や、KFSについて良く知りたい方々のお役に立てれば幸いです。

KFSとは

重要成功要因と訳される、事業を成功に導くための要因

KFSとは、重要成功要因と訳される言葉で、事業を成功に導くための要因を指します。変化する時代において、競争を勝ち抜いて生き残っていくためにも、事業戦略として欠かせないものです。KFSでは市場や顧客ニーズの分析から、自社を客観的に見た強味や弱みの分析を通じて、ビジネスで成功するための最良の道を示します。KFSは、自社の実力と求める理想のギャップを知ることで現実的かつ効果的な戦略が策定できるとして注目されている、成功のための業務プロセスです。

Key Factor for successの略

KFSは「Key Factor for success」の略であり、日本語では前述のように「重要成功要因」と訳されます。どのような業界にも勝ち組と負け組が存在し、成功している企業には相応の理由があるものです。それが成功要因であり、それを知ることによって自社を成功に導けるというのがKFSの考え方になります。他社を分析するときには、成功要因も複数あることが多く、その中から重要と思われるものを選ばなければいけません。自社に適合するかも見極める必要があり、重要な事業戦略として位置づけられています。

KPI(Key Performance Indicators)の概念が広まったことで定着した

KFSは、KPI(Key Performance Indicators)の概念が広まったことによって定着したと言われています。KPIは日本語では「重要業績評価指標」と訳され、部門や部署ごとに打ち立てた成功のために必要なことを数値にした指標です。KFSは行動指標と呼ばれ、KPIは数値的な指標と呼ばれる所以になります。KFSは経営用語として使われてきた言葉ですが、KPIの概念が広く浸透したことによって、規模や範囲などに関わらず、広い範囲で使用されるようになりました。

KFSを見極めるメリット

的確なKFS分析を行うことで事業の成功につながる

的確なKFS分析を行うことで事業の成功につながることは、企業にとって大きなメリットであることは間違いありません。ただし、繰り返すようですが、KFSを正確に見極めることが重要です。企業の成功という大きな目標を掲げ、その下にいくつかの重要成功要因であるKFSを連携させます。そして目標に向かって実行できるように、数値化したKPIを落としこんでいくことで、ピラミッド型の事業戦略ができあがるという仕組みです。

効果的な事業戦略立案につながる

KFSを見極めるメリットに、効果的な事業戦略立案につながることが挙げられます。しかしKFSを見誤った場合には、その下に組んだ指標をクリアしても成功に繋がらないことや、大きな効果が期待できないこともあります。重要成功要因であるKFSとは、成功のために最も重要であるとともに、最も効果的な要因を意味するものです。とくに自社の現状から大きくかけ離れたKFSを掲げては、ギャップが大きすぎるため大きな効果が期待できません。数値化した指標であるKPIも連結できるような現実的かつ効果的なKFSを抽出しましょう。

KFSを見つける手順

市場構造を分析し把握する

KFSを見つける手順として最初に行いたいのが、市場構造を分析して状況などを把握することです。市場は常に動いているため、どのような動きをしているかを捉える必要があります。自社が直接的に関わる市場だけでなく、関連する市場にも広く目を向けていると、思わぬ副産物と言える発見もあるので視野を広げて分析すると良いでしょう。市場の分析も数値化して記録することが望ましいことです。記録を比較することにより、変化を鮮明に把握することができます。

顧客のニーズを理解する

市場構造を分析するとともに、顧客のニーズも理解するようにしましょう。市場の変化と同様に顧客のニーズも日々変化しています。いまの状況と、これから向かうであろうと思われる顧客ニーズを予測することが大事です。良く分かりやすい顧客ニーズとして、価格帯と商品バージョンなどが挙げられます。どんな価格帯が売れ筋なのか、どのようなスペックの商品に需要があるのかなどを記録して、まずは現在の顧客ニーズを理解しておきましょう。そして他社との差別化を図るために、自社ができることを考えてみてください。

独自の価値を抽出する

市場や顧客ニーズの現状を分析できたら、独自の価値を抽出しましょう。前述のように競合他社よりも優位に立てる自社の価値を考えます。一つではなく複数あった方が良いでしょう。また現状ではないものでも、改良や改善によって近い将来にできることは、独自の価値として盛り込んでも問題ありません。現状で他社よりも優位であると考えられることや、得意とする分野、他にできると考えられることなどをいくつも考えて書き出してみましょう。

KFSを設定する

独自の価値を抽出する段階で挙げられた複数の項目がKFSの候補になります。その中から最も重要で効果的だと思われるKFSを設定してください。とくに自社が得意とする分野は取り上げるべきです。従業員のモチベーションも自然に上がり、予想以上の効果が期待できることもあります。KFSは3～5の間で設定するのが良いでしょう。予想外の大きな変化があったときに、対応しきれないことも考えられます。またKFSが多すぎると、注力する力が分散してしまうので注意してください。

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KFS抽出に効果的な分析方法

SWOT分析

KFS抽出に効果的な自社分析方法として、SWOT分析があります。SWOTは「Strengths・強味」「Weaknesses・弱み」「Opportunities・機会」「Threats・脅威」の頭文字を取ったものです。SWOT分析は、自社の内部環境と言える「強味」と「弱み」、外部環境と言える「機会」と「脅威」の2方向から分析します。SWOT分析の4要素は対立することや重複する要素であるため、弱みを強味に変えるなど、転換してマイナス要因をプラスに変換できる分析方法です。

バリューチェーン分析

バリューチェーン分析も、KFS抽出に効果的な分析方法の一つです。バリューチェーン分析は、原材料の調達からユーザーの手に渡るまでを企業活動の連鎖と捉えて分析します。とくに「価値の連鎖」に注目しているのが特徴です。付加価値が連鎖のどの段階において発生しているか、自社のどの部門が付加価値を生み出しているかを知り、自社の強味や弱みを把握できます。また、他社の連鎖と比較することにより、自社の特徴や評価を客観的に知ることができるため非常に便利な分析方法です。

PEST分析

PEST分析とは「Politics・政治」「Economy・経済」「Society・社会」「Technology・技術」の外部環境4要素で分析する手法です。市場や顧客ニーズが変化する中で、「時代のトレンド」などと言う言葉も生まれました。4つの要素が複雑に絡み合って、流行や新商品が生まれているのは事実です。ただし、これを先読みするのは非常に難しいものとされますが、PEST分析を行うことでいち早くトレンドを捉えることができます。良い商品であっても必ず売れるわけではなく、売れる状況の変化を見極めるための有効な手段です。

５F分析

5F分析は、企業戦略や国際競争の第一人者と言われる、アメリカのマイケル・ポーターが提唱した競争戦略のための分析方法です。5F（5フォース）とは5つの力の意味で、以下の5要素を言います。「業界内の競合」「代替品の脅威」「新規参入者の脅威」「買い手の交渉力」「売り手の交渉力」の5つです。5F分析とは、これらの5つの要素が業界全体の収益性を決定するという考え方で、5F分析を行うことにより業界全体の状況を把握し冷静に戦略を立てられるというものです。

３C分析

3C分析は、外部環境である「Customer・顧客」「Competitor・競合」「Company・自社」の3つの観点から分析する方法です。自社ばかりに目を向けるのではなく、最も重要と言える買い手である顧客や、競合する他社も含めて分析します。そのため、重要となる要素を見逃しにくいのが特徴であり、成功への要因を導き出すために有効とされている分析方法です。自社と他社を比較することは、自社の強みと弱みを知ることができ、戦略を立てるために効果的と言えるでしょう。

KFS注意点

成功要因を絞り込み、多数設定しないようにする

KFSの注意点として、成功要因を絞り込むことが重要であり、多数設定しないようにすることが挙げられます。最初は思いつくものを多数挙げても良いですが、最終的には価値がより高く効果も大きいと考えられるものに絞っていきましょう。多数のKFSを設定することは、それに使われる力を分散させてしまうことは前述の通りです。KFSは行動指標であり、1つのKFSに対し複数の数値的な指標であるKPIが繋がるのが一般的ですので、多くても5つまでに絞り込むようにしてください。

KFSの変化に対応する

市場や顧客ニーズは常に変化していますので、KFSも変化に対応するようにしましょう。そして、KFSが変わったならば、社員全員も対応しなければいけません。過去のことに引きずられないように、上手く切り替えていくことが大事です。それができない企業は時代に取り残されることになり、変化に対応できる企業のみが生き残ることになるでしょう。素早く適応する柔軟な対応力と、即座に動ける行動力が、変化する現代において強く求められます。そして変化に対応することで、成功への道が見えてくるはずです。

定期的な見直しを行う

KFSは社会情勢や顧客のニーズにより変化することは前述の通りであり、定期的な見直しを行うことが必要になります。変化に気付いていたつもりでも、遅きに失することもあるでしょう。そのようにならないためにも、定期的な見直しを行うべきです。企業のマンネリ化を防ぐためにもKFSを変えていくことは効果的だと言えます。またKFS作成のプロジェクトチームも、新しい風を送り込むために若手を投入するなどして刺激しあいましょう。新しい意見もどんどん聞いて変化に対応する姿勢を身に着けてください。

まとめ

KFSを意識して事業の展開に繋げよう

重要成功要因と呼ばれるKFSを打ち立てたからには、成功へとひたすら邁進するしかありません。自らで分析し、立てた目標を達成して成功を収めることで、このうえない喜びを味わえることでしょう。ただし、素晴らしいKFSを設定しても、それを素早く実行に移さないと成功には結びつかないはずです。KFSの策定と同時に、KFSを実践する効果的な手段を講じる必要があります。そしてKFSを成功させるには企業全体がKFSを意識し、事業の展開に繋げようという思いが重要であることを全員で確認しあいましょう。