記事更新日:2022年07月24日 | 初回公開日:2022年06月30日
用語集 人事・労務お役立ち情報 グローバル用語解説 採用・求人のトレンド権限委譲とは、上司の持つ権限の一部をその部下に委ねることを指します。先述の通り、権限委譲が注目される背景には、労働力の不足が考えられるでしょう。充分な数の人材を確保することが難しくなってきている中で、特に若手社員の育成は重要視されています。教育や研修制度などの見直しも効果的ですが、実際の業務において任せる範囲を広げるということも非常に大切です。権限委譲によって従来よりもさらに幅広い業務に対して責任を持って取り組むことができるため、能力の向上などが見込めるでしょう。
権限委譲はエンパワーメントとも呼ばれています。エンパワーメントは直訳すると「力や権限を与えること」という意味ですので、まさに権限委譲と同じ意味を表しています。さらに広い意味においては、社会的に不利な立場である集団などに力を与えることによってより個性が発揮できるような社会にしていくという意味もあります。ビジネスシーンにおいてもエンパワーメントという表現が使用されることもありますが、権限委譲とほぼ同じ意味と捉えて問題ないでしょう。
権限委譲を行う目的には、生産性を向上させるということが挙げられます。特に近年ではさまざまな働き方が受け入れられており、生産性の向上が課題となっています。権限委譲を行うことによって、上司の許可を得てから実行に移すという従来のスタイルに比べてスピーディな意思決定を行うことができます。上司への確認作業にかかる時間を削減することができることから、生産性の向上につながるでしょう。長時間労働や業務プロセスの効率化を課題としている企業は、権限委譲によって解消することができるかもしれません。
組織における人手不足を解消するということも、権限委譲を行う目的のひとつです。労働力を確保することが難しくなってきている中で、既存の人材の成長を促すことは重要とされています。特に若手人材の数は減少傾向にあり、これからの企業を担っていく人材という意味でもその育成はかなり重要だと言えるでしょう。将来の管理職人材の不足という懸念に対して、早い段階から対策を打っておく必要があります。新たな人材の獲得だけではなく、既存の人材の能力を伸ばすことのできる権限委譲というアプローチが効果的です。
権限委譲と権限移譲は非常に似ている言葉ですが、厳密には異なる意味を持っています。権限委譲は上司から部下へ自身の権限を受け渡すという意味であるのに対して、権限移譲は対等な立場における権限の受け渡しを指しています。したがって、権限委譲において部下が遂行する業務に関しては上司が責任を負うというのが一般的です。一方で権限移譲においては対等な立場の社員が権限を移すことになるため、責任の所在もそのまま移動するのが一般的です。権限委譲を行う際には責任の所在を正しく理解しておくことが重要ですので、権限委譲と権限移譲の違いについても正しく把握しておきましょう。
権限委譲を行うことによって、社員がより責任感を持って業務に取り組むことが期待できます。社員が伸び悩んでしまう原因のひとつとして、業務における決定権が無いということが考えられます。上司からの指示をただ待つだけの状態になってしまい、業務に対するモチベーションも低下してしまうでしょう。権限委譲で部下にもある程度の決定権を与えることによって、これまでよりも責任感が芽生えることが期待できます。強い責任感を持って業務に取り組むようになることで、課題解決などに対する能力が伸びるでしょう。社員の能力を伸ばすという観点においても、権限委譲は効果的な方法と言えるでしょう。
社員の学習機会が増えるということも、権限委譲を行うことによるメリットとして考えられるでしょう。社員が自分の力で状況判断をして意思決定する機会が増えることによって、スピード感のある業務に慣れることができます。上司に相談をしてから意思決定を行う場合と比べると、単純にかかる時間が短くなるため、意思決定の回数そのものが増えるでしょう。ケーススタディや研修などによる指導ももちろん効果がありますが、やはり実践的な場面での問題解決が最も学習に役立ちます。質の高い学習機会を増やすためにも、権限委譲を行うと良いでしょう。
権限委譲におけるデメリットとして、委譲した権限の内容に関して認識が異なってしまう可能性があげられます。これまで権限を持っていた上司と、受け渡し相手であるその部下の間で認識の相違が生じてしまうと業務に滞りが生じてしまうでしょう。権限の責任はおもに上司にあるとはいえ、その境界が曖昧になってしまっているとトラブルが生じてしまう可能性もあります。それによって部下の積極性を損なってしまっては、権限委譲の効果が充分に得られないでしょう。権限委譲を行う際には、その内容について認識のずれが生じないようになるべく詳細部分まで情報共有や引き継ぎを行うようにしましょう。
部下にストレスがかかってしまうということも、権限委譲におけるデメリットとして考えられるでしょう。権限委譲を実施することによって、従来と比較すると部下が意思決定をする機会が増えます。責任感や決断力を伸ばすといった意味では、これはメリットとしても捉えられます。しかしその一方で、重要な意思決定におけるミスなどを恐れるあまり、必要以上にストレスを感じてしまうケースもあります。それが原因となって悩んでしまう場合や、自信を喪失してしまう可能性もあるでしょう。部下が過剰なプレッシャーを感じてしまわないように、適切なフォローを行う必要があります。
権限委譲を実施する際には、方向性や目標に関する情報共有をしておく必要があります。ここでの情報共有は、権限委譲を行う上司と部下の間だけではなく、社内全体での情報共有のことを指しています。権限委譲を行うことによって、権限を受け渡された社員はこれまでよりも業務量が増えることなどが予測されます。それに対する周囲の理解が充分に得られていないと、適切な協力などを得ることが難しくなるでしょう。周囲の社員にも協力をしてもらうことが、権限委譲の成功につながります。
権限委譲を効果的に行うためには、それぞれの責任の所在をはっきりさせておくことも重要となります。先述の通り、権限委譲における詳細の受け渡し内容について上司と部下の間でギャップが生じてしまうと、業務に悪影響を及ぼしてしまいます。したがって、権限委譲を行う際の業務の分担などは、権限を与える側である上司が積極的に行う必要があるでしょう。権限を受け渡される部下が慣れない業務に戸惑わないようにするためにも、どこまで裁量を与えるのかをできるだけ明確にしておきましょう。
進捗確認と評価をこまめに行うことによって、権限委譲をよりスムーズに行うことができるでしょう。権限の受け渡しを行った後のチェックを怠ってしまうと、単純に業務を上司から部下に投げ出したのと同じです。部下から上司に対して定期的な報告を行うだけではなく、上司の方からもこまめに現場の確認などを行いましょう。そうしたコミュニケーションによって双方の信頼関係も構築されていくため、より良い組織が作り上げられるでしょう。
星野リゾートでは権限委譲に関する取り組みとして、「ユニットディレクター制度」という制度を設けています。星野リゾートでは経営者直下に31のユニットが形成されており、それぞれのトップにあたるのがユニットディレクターです。ユニットディレクターは社員からの立候補によって選出しており、経営に関する意思決定に参加することができます。権限委譲を行う際には社員の積極性も尊重する必要があるため、このように立候補制度を取るということもひとつの手段でしょう。
スターバックスコーヒーでは、各店舗などの現場に対して権限委譲がされている例と言えるでしょう。スターバックスにおける顧客へのサービスに関するマニュアルのようなものは、他の飲食店に比べて自由度が高いのが特徴です。ドリンクのレシピなど品質に関するマニュアルは細かく設定されていますが、接客に関する部分は店舗に権限が委譲されています。アルバイトを含む現場のメンバーの主体性を伸ばすことにもつながっているでしょう。
ザ・リッツカールトンでは、顧客が満足することを第一に考えた権限委譲が行われています。その中でも従業員全員に対して、1日2000ドルの決済権が与えられているというのが特徴的です。実際に毎日これだけの予算を使うということはありませんが、各従業員に裁量が与えられていることでより責任感を持って業務に取り組めるでしょう。宿泊業という業界だけではなく、権限委譲によってこのように大きな裁量権を与えることは社員の主体性や責任感を強めるうえで非常に効果的と言えるでしょう。
権限委譲の実施におけるポイントなどについて、お分かりいただけたでしょうか。特に若手育成などの観点においては、権限委譲によって重要度の高い業務に取り組んでもらうことが重要となります。そのほかにも業務における無駄な時間の削減などをはじめとした、生産性の向上なども見込めるでしょう。社員の能力の開発や、業務効率の改善に対するアプローチのひとつとして権限委譲は非常に効果的な方法の一つです。権限委譲を効果的に実施することによって、会社全体で目標を達成しましょう。
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