記事更新日:2022年07月24日 | 初回公開日:2022年07月04日
用語集 グローバル用語解説 採用・求人のトレンド 人事・労務お役立ち情報セルフスクリーニングとは、詳細な企業の情報を開示することによって応募数を抑制する事です。企業側が求人募集をする際に自社の情報を詳細に開示することで、応募者がその企業に自分が適しているのかを判断することが出来ます。業務内容だけではなく組織の文化や風潮などを記載するため、その雰囲気に自分が合わないと考えた求人者の応募を抑制し、採用活動をより効率化することが出来ます。その結果として企業への志望度が高い人材が選考に残るため、効率の良い採用活動を行えます。
セルフスクリーニングは、企業にとってネガティブな情報も開示します。早期退職などを引き起こす原因として、自分の能力と仕事の難易度から生じるギャップや社風が合わないというようなフィーリングのミスマッチなどが考えられます。多くの母集団を集めることを優先的に考えている企業では求人を出すときにポジティブな情報に焦点を当てて採用活動を行いますが、そうするとによりギャップが生じやすくなるのです。ギャップやミスマッチを防ぐためには、ネガティブな情報も開示してリスクを減らしていきましょう。
セルフスクリーニングはRJP理論に基づいています。RJP理論とは「Realistic Jpb Preview」の略称で、「現実的な仕事情報の事前開示」という意味です。RJP理論は採用活動を行う企業側が求人票に仕事内容だけではなく雇用条件や有給休暇制度・残業などといった情報を正確に面接者に対して開示します。入社してからでなければ知ることが出来なかった情報などを事前に応募者に開示することによって、入社してからのギャップを減らすことが可能です。
セルフスクリーニングを行う目的は、入社後のミスマッチを防ぐことです。ポジティブな情報ばかりを求人票に記載してしまうと、応募者は見えていないマイナスな部分を考えずに期待を高く持ったまま入社してきます。現実と理想のギャップが大きければ大きいほど、入社後にミスマッチが発生して最終的には離職してしまうかもしれません。企業の情報をしっかりと求人に記載することで理解を深めることにつながり、自分に合った求人に応募ができるため入社後のミスマッチを防ぐことが出来ます。
セルフスクリーニングの効果として、効率的な採用活動が行えることが挙げられます。セルフスクリーニングでは仕事内容や職場環境・残業時間等を明確に記載します。その為「とりあえず応募してみよう」「志望度は高くはないけれど受けてみよう」というような考えを持っている応募者からの応募を減らすことができます。それだけではなく、本当に入社したいと考えている志望度の高い人達から応募が増える可能性もあります。企業への志望度が高い人たちが集まるため、無駄が少なくなって効率的な採用活動を行うことが出来ます。
セルフスクリーニングを行うことで、早期退職を防止する効果があります。早期退職の原因として、入社前の理想や想像と入社後の現実に大きなギャップが生じるということが挙げられます。求人票にポジティブな情報ばかりを載せていると、応募者の中で入社してから自分が活躍している未来が想像しやすくなります。実際に業務を行っていく中で考えていた理想と自分の実力にギャップを感じ、退職という選択になってしまうのです。ネガティブな内容も記載するセルフスクリーニングは、それを防ぐことが出来ます。
セルフスクリーニングでは、採用にかかる費用の無駄を減らすことが可能です。ポジティブな情報を沢山載せている求人票には多くの応募者が集まります。応募者が多いという事は一見すると採用活動の初動としては成功しているようにみえます。ただ応募の数が多くても、志望度が低い人が集まっているだけでは書類選考や面接会場などにかかる費用が増えてしまうだけです。そのような状況では、効率的な採用活動が行えているとは言えません。現実的な仕事情報を開示することによって、志望度の高い応募者のみが集まりやすくなり、採用コストの無駄を減らすことが出来ます。
セルフスクリーニングによって、採用にかかる工数が減るということも効果のひとつです。セルフスクリーニングを行わずポジティブな情報だけを載せている求人には沢山の応募があります。応募者の数が多ければ多いほど、面接会場の費用や面接にかかる時間費用など採用にかかる工数は増加する傾向にあります。多くの人を採用したい企業にとっては、ポジティブな情報を載せて応募者を増やした方が効率的に採用を行えるかもしれませんが、工数に限りがある企業の方はセルフスクリーニングを行うことで工数を削減できます。
セルフスクリーニングを行うことで、企業の印象を良くすることにもつながります。求人票に応募者にとって良い情報や条件しか載っておらず、マイナスな情報が全く記載されていないものでは求職者が不信感を抱いてしまう可能性があります。応募者の数を増やすために、ポジティブな情報だけを載せたくなってしまうかもしれません。しかし応募者にとってプラスの情報だけではなく、マイナスの情報も書くことによって応募者からの心象がよくなり、載せづらい情報も載せている企業として良い印象を持たれます。
入社後の生産性が高まるということも、セルフスクリーニングによる効果です。従業員の生産性は携わっている業務の有意性や目標・心理的安定などで変化します。入社前に自分の能力や関わる業務に対して過度な期待を膨らませていると、実際に携わる業務が自分の能力に見合っていない場合モチベーションを維持することが難しくなります。更にそこから生産性を上げることは非常に難しいでしょう。入社前に入社してからの状況がしっかりと想像できていると、入社後の能力発揮に繋がって生産性も高めることが可能です。
セルフスクリーニングを成功させるためには、ポジティブな内容とネガティブな内容のバランスをきちんと考えなければなりません。応募者にとってポジティブな情報といえる業務内容や給与面など、良い情報ばかりを求人票に記載するとギャップが生じるためその後に離職率などの問題に繋がっていきます。だからといって「残業時間が多い」「休日出勤がある」等という応募者にとってネガティブな内容ばかりを載せてしまうと応募自体を躊躇ってしまいます。セルフスクリーニングを上手く行う為には、これらのバランスが大切です。
セルフスクリーニングを行う上で客観的な意見を取り入れることは、とても大切です。求人に企業の強みや特徴・マイナスなポイントを載せる際に担当部門のみの検討では先入観に囚われてしまい、応募者に寄り添っていない企業情報の開示になる恐れがあります。そのような状況に陥らないためにも、第三者のアドバイスや目線が重要です。客観的な意見を取り入れるためには「数年のうちに退職した社員の退職理由」や「在籍社員にヒアリングを行う」などといった方法が有効的といえます。
適切なタイミングで行うことも、セルフスクリーニングを成功させるポイントです。セルフスクリーニングは大企業だけではなく中小企業においても実行することが可能です。しかし認知度があまり高くない中小企業等がマイナスな情報ばかりを求人票に載せてしまうと、そもそも応募者を集めることが出来ないという事態に陥りかねません。そのため応募者に伝える情報の種類や内容の詳細などは、どの採用ステップの段階で伝えるのかを事前に社内できちんと決めておくことが大切です。
セルフスクリーニングを行うときの注意点として、応募の母集団は減少するということを認識しておかなければいけません。元々企業への志望度が高い人にとっては、セルフスクリーニングされている求人はより企業のことを知ることが出来るためメリットとなります。反対に志望度が低く「とりあえず受けてみよう」と考えている人たちからの応募は減少します。応募者にとってマイナスな情報ばかりが多くなってしまうと応募自体を取りやめることもあるため、どこまで記載するのかなどの見極めが大切です。
セルフスクリーニングの事例として、入社前のインターンシップがあります。実際に入社する前に最短で1日、長い場合には数か月に及ぶ就業体験を行って選考に臨んでもらうという方法です。入社する前に就業予定の会社環境に実際に入って体験してもらうことで、求人票では分からない現場を見てもらうことが出来ます。実際に応募者に見てもらうことで、自分に合っているかどうかという判断をしてもらうことが可能な上、より入社したいと考える人にはそのまま面接などの選考に進んでもらうことが可能です。
自社サイトで情報を発信することによって、セルフスクリーニングを行うことができます。求人票ではなく、自社のHPやSNSを用いて詳細な情報を発信する方法もあります。今ではSNSを用いて就職活動を行う人も多く、求人媒体としてSNSに注力している企業も少なくありません。求職者が応募しようと考えている求人があった場合には、殆どの人がその企業のHPやSNSを訪問します。自社サイトを訪れてくれた人を選考に繋げるためには、サイト上に応募者が求めている情報を載せている必要があります。応募者がどのような情報を求めているのかを考えながら、自社サイトでの情報発信をしなければいけません。
セルフスクリーニングの効果や成功させるためのポイント、実施する場合の注意点について解説しました。入社後にミスマッチを起こさせないようにすることは、企業にとっても応募者にとっても重要な課題です。せっかく入社してくれた社員をミスマッチが原因で離職させない為にも、セルフスクリーニングを上手く活用して企業のことを良くも悪くも知ってもらう必要があります。その為には、応募者の視点に立った求人票の作成や情報の開示が大切です。セルフスクリーニングを活かして、効率的な採用活動を行いましょう。
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