インフレ手当とは【支給するメリットや支給方法について解説します】

記事更新日:2024年05月02日 初回公開日:2024年05月02日

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現在では新型コロナウイルスの流行やロシアによるウクライナ侵攻などにより、様々な物が値上がりしているにも関わらず賃金は上がらないといったインフレ状態に陥っています。食品や光熱費などの物価上昇に合わせた賃金の上昇が無ければ、実質賃金が減少してしまうため生活の質を維持することが出来なくなります。こういった事態は社員のモチベーション低下にも繋がるため、対策としてインフレ手当を支給する企業も増えています。今回はインフレ手当について解説していきます。検討している企業の方は参考にしてみてください。

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インフレ手当とは

物価高に応じて企業が支給する特別手当

インフレ手当とは、物価高に応じて企業が支給する特別手当の事です。そもそもインフレとは、継続的に物価上昇が起こりお金の価値が下がっていく状態を指します。インフレの反対は、デフレと言われ物価が下がりお金の価値が上がっている状態です。昔は1個100円で変えたものが、今は200円出さないと買えないようになっている事がインフレ状態になっています。インフレが続くと、物価や光熱費などの上昇により生活が苦しくなるためそれを防ぐための手当がインフレ手当です。

インフレ手当が注目される背景

物価が高騰している

インフレ手当が注目されている背景には、物価が高騰していることが挙げられます。インフレが起こる原因は時代により様々ですが、近年世界規模で起こっているインフレには新型コロナウイルスの流行やロシアのウクライナ侵攻が原因とされています。コロナウイルスによって需要と共有に大きなショックが生じ、収束し経済が再開した今でも供給の不安定によりインフレを引き起こしています。ウクライナ侵攻により小麦や原油が高騰しました。結果、様々な分野の物価高に影響しています。

インフレ手当の平均支給額

5万3700円

インフレ手当の平均支給額は5万3700円です。帝国データバンクが企業向けにインフレ手当に関する調査を行ったところ、支給したと回答した企業は全体の約7%となっており支給する予定・検討中と答えた企業は全体の約20%でした。全体の25%がインフレ手当に取り組んでいることが分かります。また支給は一時金として支給を検討している企業では、「1~3万円未満」が最も多くなっており平均支給額は5万3700円です。月額で支給検討している企業では、平均6000円となっています。

インフレ手当を支給するメリット

従業員のエンゲージメントが向上する

インフレ手当を支給するメリットは、従業員のエンゲージメントが向上する点です。企業の労働生産性を上げるための施策として、従業員満足度を重視している企業が増えています。従業員満足度や従業員のエンゲージメントを高めるためには、従業員の不安や不満に寄り添う事が大切です。インフレという従業員では対策しようのない状況に対して、企業が従業員のサポートを行っているという姿勢を見せる事のできるインフレ手当の支給は、エンゲージメント向上に繋がります。

離職率が下がる

インフレ手当を支給することで、離職率を下げられるメリットがあります。インフレにより物価高になっても、先述した通りインフレ手当を支給している・支給を考えている企業はまだ多くありません。インフレは従業員にとって生活が苦しくなるのは勿論ですが企業にとっても原油・原材料の高騰は大きな痛手となります。そういった状況であるにもかかわらず、従業員に対して支援を行っている企業は従業員が安心して働くことができるため、離職率低下に繋がります。

企業のブランド力が上がる

企業のブランド力が上がるのも、インフレ手当を支給するメリットです。最近では消費者が商品やサービスを選ぶ際の基準として、機能や性能だけでなく企業の信頼性を重視する人も増えてきています。そのため、企業のブランド戦略に力を入れている企業も少なくありません。そういった状況で、従業員の生活に対する不安に寄り添う施策であるインフレ手当の支給が消費者の目に留まることで、企業全体としてのイメージアップを行う事が出来ます。

インフレ手当の支給方法

一時金として支給する

インフレ手当の支給方法は、一時金として支給する場合があります。実際にインフレ手当を導入し支給している企業の多くが、一時金として従業員に付与しています。一時金として支給する場合は、月額手当と違い継続して支払う必要がありません。月額手当としてインフレ手当の支給を行った場合、もし手当の額を下げた際の従業員からの反応が大きくなってしまいます。これが不利益変更に該当する可能性があるという理由から、一時金として支給している所が多くあります。

月額手当として支給する

インフレ手当の支給は、月額手当として支給を行っている企業もあります。月額手当として支給する場合は、一時金で支給する特別手当で短期的な支給ではなく長期的に物価高に対応する方法です。インフレ手当を月額支給している企業では、通勤手当の2割分を期間を限定して支給している場合やインフレ率を2%と仮定し給与に応じた相当額を上乗せしています。月額として支給する場合には、就業規則を見直す必要があるため注意が必要です。

賞与として支給する

賞与としてインフレ手当を支給する方法もあります。賞与として支給する場合でも一時金と変わりませんが、支給する時期を年末やボーナス時期に合わせて支給する方法です。通常の賞与やボーナスは、人事評価・人事考課の内容により算出される・月額3か月分など企業によって定められているはずです。この金額に物価上昇の影響を加味してインフレ手当を上乗せします。賞与やボーナスと合わせて支給することで、事務手続きの手間を減らすことも出来ます。

インフレ手当を支給する際の注意点

現金支給の場合は税や保険の対象になる

インフレ手当を支給する際の注意点として、現金支給の場合は税や保険の対象になることを気を付けておきましょう。原則として従業員に支払う手当は給与所得として扱われます。インフレ手当も従業員の所得になるため、所得税の対象となります。現金だけでなく、補助として食事券などを配布した際にも課税対象となる場合があります。また社会保障は標準報酬月額・標準賞与額を元に保険料の算出を行います。インフレ手当を支給することで、従業員の保険料負担額に影響を及ぼしてしまうかもしれません。

経済的コストを考慮する必要がある

経済的コストを考慮する必要があるのも、インフレ手当を支給する際の注意点です。インフレ手当を支給することで、離職率の低下や企業イメージアップを目的にしている企業も少なくありません。社員だけに限定して支給すると不公平感が出てしまうため、全員を対象とすることが望ましいといえます。インフレ手当を支給することで、従業員や社外的なメリットは多くありますが企業体力を考慮せずに実施すると経済的負担になります。企業の負担にならない程度で、支給を行う事が大切です。

インフレ手当支給の企業事例

すかいらーくホールディングス

すかいらーくホールディングスでは、インフレ手当の支給を行っています。すかいらーくホールディングスでは、社員だけでなく社会保険に加入済のパート・アルバイトへインフレ手当を支給しており、子育て世帯には子供の数に応じた支援をしています。賞与と合わせてインフレ手当を支給し、正社員と嘱託社員には5~12万円の手当支給を行いパートアルバイトには一律で1万円の支給を行いました。子育て世帯には、これだけではなく人数に合わせた支援を追加で実施しています。

三菱自動車

インフレ手当を支給しているのは、三菱自動車です。三菱自動車は2022年12月に特別支援金として1人当たり最大10万円の支給を行いました。管理職を除く社員全てを対象とし、再雇用社員・期間工・非正規雇用など雇用形態を問わず約1万4000人に支給しています。正社員に対しては10万円を支給し、期間工やアルバイトには7万円を支給しました。アルバイトにも他の企業と比べて高い額の手当支給を行っています。支給総額は13億円に上っていますが、働く従業員のために支援の実施を決めています。

ケンミン食品

ケンミン食品でも、インフレ手当を支給しています。ケンミン食品では食品やガソリンなどが急激に値上がりしていることを受け、2022年7月に正社員・契約社員を対象にインフレ手当を支給しました。支給の対象となったのは、勤続一年以上の正社員と契約社員です。対象者に一律で5万円の支給を行っています。ケンミン食品では雇用形態で金額に差をつけることなく、一律で支給額を決定しました。その理由として社員全員が同じように影響を受けており、一律支給の方が公平性を保てると考えたからです。

インフレ手当に関するよくある疑問

就業規則の改定は必要か

インフレ手当に関するよくある疑問は、就業規則の改定が必要かという点です。インフレ手当を月額手当として支給する場合は勿論ですが、賞与とは別の一時金として支払う場合にも改定が必要な場合があります。一時金として払う場合でも特別措置に該当する際は、就業規則の改定は必要ありません。しかし月額手当など当面の措置として実施する場合には、就業規則を改定しなければなりません。賃金に関する規定は就業規則の中で「絶対的記載事項」に該当するため、金額や付与基準などの明記が必要です。

正社員のみに支給しても良いか

インフレ手当を実施する場合に、正社員のみに支給してもいいのかという疑問を抱く企業も少なくありません。インフレ手当の支給することを決めたとしても、全社員を対象にしてしまうと金額が大きくなり企業の運営に支障をきたす可能性があります。そのため正社員に限定支給したいと考える企業も少なくないはずです。インフレ手当は社員の生活を支援するための施策であり、どの範囲に支給するかはあくまでも企業の判断に委ねられています。但し支給対象を限定すると、対象外となった人たちからの不満は避けられません。

継続は義務か

インフレ手当は継続が義務かどうかを確認したいと考えている方が多くいます。先述したようにインフレ手当の支給対象やどの程度の期間支給するかなどは、企業が決定する事です。そのため、インフレ手当を一時金として支給しその後継続しなければならない義務はありません。しかしウクライナ侵攻が終われば、インフレが終息するというような兆しがあるわけではなく商品やサービスへの価格転嫁も増えてきています。インフレ手当の継続は義務ではありませんが、従業員が生活の質を落とさなくて済むようなサポートは必要です。

まとめ

インフレ手当を理解し導入を検討しよう

インフレ手当を支給するメリットや支給する方法などについて解説しました。インフレ手当は社員にとっては支援を受けられているという点からメリットの多い手当ですが、企業にとっても離職率低下や企業イメージアップなど様々なメリットがあります。但しインフレはすぐに打開されることは無いため、一時的な支援ではなく継続的な支援が必要です。また支給対象や金額などは企業の経済状況などによっても異なる為、支給する場合は事前に検討することが重要です。インフレ手当を理解し導入を検討しましょう。

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