介護ビザ取得の要件とは?【外国人に長い期間働いてもらうために】

記事更新日:2020年10月30日 初回公開日:2020年10月08日

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人手不足が深刻化する介護業界。実際、厚生労働省の調査によると、2025年には介護職に従事する人が34万人も不足するとの統計が出ています。外国人の受け入れを検討している事業所も増加してきました。しかし、外国人材をどのような手順で迎えたらよいのかがわからず、二の足を踏んでしまうという声も耳にします。今回は、特に、介護の現場における即戦力となる外国人が持っている「介護ビザ」にスポットを当てました。介護ビザで外国人を雇用するメリット、デメリットから、外国人材を受け入れたあとに行うべき支援まで、現場の目線でわかりやすく解説します。

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介護ビザとは

介護就労の在留資格

介護ビザとは、介護就労における外国人の在留資格「介護」のことです。出入国管理庁によると、「介護福祉士の資格を有する外国人が介護施設等との契約に基づいて介護(又は介護の指導)の業務に従事するための在留資格」と定められています。日本の介護福祉士養成施設を卒業し、介護福祉士の資格を取得した外国人が対象で、日本語力も現場対応力も高い外国人材が取得できるビザと言えるでしょう。介護ビザ以外には、EPAや技能実習、特定技能といった在留資格によって、外国人が介護の仕事に就くことができます。

介護ビザが制定された背景とは

介護分野の留学生の就職支援

介護ビザは、2017年9月1日に制定されました。それ以前、介護福祉士養成施設に留学していた外国人は、「単純労働」とみなされて就労ビザが取得できませんでした。しかし、例えば工学を学ぶ留学生はエンジニアのビザで就労できるのに、介護が在留資格として認められないのはおかしいという声があがりました。せっかく日本で取得した資格をみすみす無駄にしてしまうのは、日本にとっても大きな損失です。それで、介護分野において、留学生の就職を支援するために、新たに「介護」が就労ビザの分野に加わったのです。

介護現場の圧倒的な人手不足

二つ目の点として、介護現場の圧倒的な人手不足があげられます。厚生労働省の調査によると都道府県が推計した介護人材の需要は、2020年度末には約216人、2025年度末には約245万人が必要とされています。具体的には年間6万人程度の介護人材を確保する必要があるということです。少子高齢化が進む中で、若い世代の労働力が不足する現状にあっては、外国人材の活用が期待されています。介護の現場で即戦力となり、かつ長く働ける外国人介護福祉士が求められるなかで、介護ビザは制定されました。

介護ビザで外国人を雇用するメリットとは

即戦力になる

アルバイトからそのまま正社員へ

介護ビザの取得を前提に、介護職を志す留学生をアルバイトとして雇えるのは、大きなメリットです。留学生が、介護福祉士の資格を取得し、介護福祉士養成施設を卒業した後に、介護ビザで正社員として雇用するという企業も。このステップなら、現場に慣れた「即戦力」として、すぐにフルタイムで働いてもらえます。ただ、留学生の場合は、1週間に28時間までとアルバイトできる時間が法律で定められているので、制限時間を超えないようにご注意ください。

介護福祉士の資格を持っている

介護ビザの要件として、介護福祉士の資格を取得することが求められます。さらに、日本の介護福祉士養成施設で2年間学んでから、介護ビザの取得が認められるため、日本式の介護に慣れているというメリットもあります。つまり、日本の介護現場の経験を積み重ねており、即戦力としての働きが期待できるということです。この点は、介護の資格を持っていない技能実習生や、働きながら資格取得を目指すEPAにはない特徴です。すぐに働ける人材がほしいと思う場合、介護ビザが取得できる外国人を受け入れるのがおすすめです。

日本語力が高い外国人が選抜される

公益財団法人介護労働安定センターの調査によると、外国人労働者を受け入れていない事業所の半数以上が「利用者等との意思疎通において不安がある」「コミュニケーションがとりにくい」といった不安要素を指摘しています。確かに、EPAや技能実習生に求められる日本語力は、あまり高くありません。5段階に分かれている日本語能力試験(JLPT)において、基本的な日本語を理解することができるN5やN4があれば、入国および就労が可能です。その場合、いきなり現場で飛び交う介護の専門用語を聞きとったり、報告書、介護記録をつけたりするときに苦労することもあるようです。しかし、介護ビザを取得した人は、日本の介護福祉士養成施設で、専門用語や声掛けのしかたを学んでいます。そして、求められる日本語レベルは、日常的な場面に加えて、より幅広い場面で使われる日本語を理解することができるN2相当です。介護現場のコミュニケーション、そして日常会話の意思疎通がしやすいという点で、介護ビザの外国人材を受け入れるメリットがあります。

国籍に関係なく就労が認められる

さらに、国籍に関係なく介護分野の就労が認められるというのも、介護ビザのメリットです。EPAは3カ国、技能実習ビザは14カ国、特定技能ビザは12カ国に限られています。介護ビザに関しては、とくに国籍が指定されているわけではないので、介護福祉士の資格を取得し、介護福祉士養成施設で学んだ外国人ならだれでも就労できます。さらに、永続的な就労が可能なので、他の3つのビザよりも、受け入れられる人材の幅が広がるという点で、介護ビザはメリットがあります。

就労可能なサービスに制限がない

そして、就労可能なサービスに制限がないのも、介護ビザのメリットです。技能実習ビザと特定技能ビザ、EPAでは、訪問系サービスにおける外国人の就労はできません。また、夜勤や同一法人内の異動、介護職種での転職にもそれぞれ可と不可の要件が課されています。しかし、介護ビザには、そのような規制はなく、どんなサービスにおいても就労が可能です。条件によって外国人材の受け入れをあきらめていた施設も、介護ビザであれば可能になるかもしれません。

介護ビザで外国人を雇用するデメリットとは

自主的に採用活動する必要がある

1つ目のデメリットは、自主的に採用活動しなければならないという点です。EPAや技能実習など他の在留資格には、外国人の雇用にあたり就職をあっせんし、その調整を行う機関があります。しかし、介護ビザの場合、その役を担う公的機関がありません。事業者が自ら介護福祉士養成校と連携する、ハローワークや求人サイトに情報を掲載するなどの採用活動が必要になり、費用と時間のコストが余計にかかってしまうのです。採用までのプロセスに手間がかかるという点が、介護ビザの取得におけるデメリットです。

介護人材の獲得競争が激化

2つ目のデメリットは、介護人材の獲得競争が激化していることです。先ほど考えたように、介護の分野における人手不足は深刻ではないでしょうか。介護分野での外国人受け入れは、今後5年間で6万人を予定していると言われています。その中で、即戦力になる介護ビザの外国人材は、これからますますニーズが高まるに違いありません。一方で、社会福祉系の専門学校では、提携している事業所に優先的に人材を紹介するところもあります。それで、一般の事業所にとっては、介護ビザの外国人材を雇用するのがそもそも難しいかもしれません。

介護ビザ取得の流れとは

ゼロから介護を学ぶ場合

まず、外国人は留学ビザで2年以上介護を学ぶ必要があります。そして、日本語能力試験2級と介護福祉士の資格を取得することが求められます。一方、受け入れを希望する事業所の方は、求人を出し、面接を行い、採用が決定したら内定を出すという一般的な採用活動を想定したらよいでしょう。ただ、外国人ということで、在留資格を入社日までに「介護」に変更する必要があります。この手続きは、外国人本人が行いますが、手続きは煩雑なので、サポートしたほうがいいかもしれません。また、入社前に給与や労働条件などの確認をしておくことも、のちのちのトラブルをさけるために大切です。

すでに介護福祉士として働いている場合

すでに、在留資格「介護」を取得している人を中途採用する場合、在留資格の変更は必要ありません。しかし、不法就労を避け、在留資格を更新しやすくするためにも、入国管理局で「就労資格証明書」を取得するのがおすすめです。就労資格証明書は、外国人が転職するときにきちんと同じ職種で働いていて、在留資格に問題がないことを証明する書類です。こちらは任意ですが、万が一、在留期間の更新が認められないかもしれないという事態に備えて、取得しておくとよいでしょう。

介護ビザを取得するための支援

奨学金にかかる経費を支給

平成30年から、介護福祉士国家資格の取得を目指す留学生を支援するため、介護施設等による奨学金の支給にかかる経費の一部を「地域医療介護総合確保基金」で各都道府県が負担する制度ができました。それを受けた取り組みが全国で始まっています。例えば神奈川県では、奨学金等の支給にかかる経費の3分の1、年額60万円以内で補助金が受け取れます。留学生を介護の専門職として雇用しようとする介護サービス事業者の負担が軽減されることで、さらに介護ビザの外国人材が増えることでしょう。

マッチング支援事業

介護ビザのデメリットとして、採用活動にコストがかかることを挙げました。その負担を減らすべく、近年では、各都道府県において、外国人介護人材と受入介護施設等とのマッチング支援事業も始まっています。厚生労働省によると、円滑な受け入れには欠かせない情報提供やマッチングにかかる費用も、必要な経費に対する助成金がでるということです。これにより、日本で働きたい外国人と、外国人材を必要とする事業所が出会う確率が上がり、雇用が生まれることが期待されています。

介護ビザで長く働いてもらうために

きめ細かい生活支援が必要

住居や行政手続きなどの支援

東京都国際交流委員会のヒアリング調査によると、医療やお金の手続き、住居の分野で在住外国人の半数以上が困ったと回答しました。銀行口座の開設や税金・年金関連の手続き、住居探しや家の修理など、日本人には当たり前のことでも外国人には難しく感じたことが多くあるようです。それで、受け入れる外国人が日本に住んでいる年月に関わらず、住居や行政、医療やお金などの複雑な手続きは、積極的な支援が必要だといえます。他にも、ゴミの分別や災害情報など、よりミクロレベルでサポートする姿勢も大切になるでしょう。

宗教や文化の違いを受け入れる

日本介護福祉士養成施設協会の調べによると、平成30年度は30カ国から来た留学生が介護福祉士養成施設で学んでいます。長く日本で生活している外国人は、日本の文化や習慣についてよく知っています。しかし、受け入れる側にも、外国人の宗教や文化の違いを知り、受けとめる姿勢が求められるでしょう。例えば、インドネシアやマレーシア出身の外国人は、イスラム教徒が多いですが、礼拝の時間や食事の内容に関して、宗教上の制限が課せられています。その場合、勤務時間や食事の対応について、信仰上の配慮が必要になるでしょう。外国人と共に働くうえで、お互いの文化や宗教の違いを認め合い尊重することが欠かせません。

現場特有の言葉を覚えてもらう

外国人材を受け入れるにあたり、言葉の壁が心配になるかもしれません。介護ビザで働く外国人は、少なくとも2年以上は日本語を学んでおり、要求される日本語のレベルも高いので、日常会話における支障はないでしょう。しかし、現場特有の声掛けや言い方、発する言葉のタイミングによっては、コミュニケーションのすれ違いが発生することが考えられます。また、施設によって、動作や器具の名称が違うこともあるため、外国人の使う日本語に違和感を感じたときには、その都度教えてあげることが必要です。現場特有の言葉遣いや言い回しを共有して覚えてもらうなら、言葉の壁による誤解が生まれにくく、お互いに気持ちよく働く職場環境が構築できることでしょう。

まとめ

介護の現場で外国人を即戦力に

日本介護福祉士養成施設協会の調べによると、平成31年、介護福祉士養成施設で学ぶ留学生の数が入学者全体に占める割合のうち過去最高の29.2%となりました。さらに、養成校に入った理由として、46.8%が「日本で働きたかったから」と回答。卒業後は「日本に永住したい」と答えた人が45.9%を占めています。また、「10年ほど日本で仕事をしたい」と答えた人は3割弱、「5年ほど日本で仕事をしたい」が2割と、介護福祉士として長く働く意欲を持っている外国人が多いことがわかるのではないでしょうか。現場で即戦力になる介護ビザの外国人材。日本人と支えあい、文化や言葉の壁を乗り越えた外国人は、これからの日本の介護の未来を担うことになるでしょう。

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