一時帰休とは【解雇との違いや休業手当などについても解説します】

記事更新日:2022年07月26日 初回公開日:2022年06月20日

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新型コロナウイルスの影響により、思ったように業績が伸びていない企業が増加している傾向にあります。そんな中でリストラや賃金カットを行わないようにする手段として、一時帰休を選択する企業も増えています。一般的に、一時帰休を行うという事は経営状態が悪化しているという事を指すため、あまり良いイメージのある施策ではありません。しかし所属している優秀な人材の流出を防ぐことが出来るだけではなく、事態が収束した後は今まで通り業務を行うことが出来ます。この記事では一時帰休について解説しますので、従業員の休業について考えている経営者の方は参考にしてみてください。

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一時帰休とは

会社の事情で従業員を一時休業させること

一時帰休とは、会社の事情で従業員を一時的に休業させることです。業績悪化により経営難に陥った企業が人件費削減のために、従業員を一時的に休業させる雇用調整のひとつとされています。売上が減るとそれに伴って仕事量も減るため、必要になる人員も限られて作業人員が余ってしまいます。そこで余剰になっている人を休業にすることによって、人件費を削減することが可能です。解雇とは違うため雇用を維持しながら業績回復するまでの期間を凌ぐことが出来ます。

一時解雇や整理解雇との違い

一時帰休は休業のため社員との雇用契約は継続していますが、一時解雇や整理解雇は従業員との雇用契約は一旦解消されるため雇用状況が異なります。一時解雇は将来的に再雇用を前提にしている制度です。将来的には再雇用を前提としていますが、雇用契約は解消されるため解雇している間の給料は発生しません。一時帰休を行うにあたり細かな要件はありませんが、整理解雇を行うためには人員削減の必要性や解雇回避努力等の要件を満たす必要があります。30日以上前の解雇予告等も必要となります。

一時帰休に対する支援

雇用調整助成金が支援される

一時帰休に対して雇用調整助成金を受け取ることが可能です。一時帰休は業績の回復を図るためだけではなく、雇用維持を目的にしているため一時帰休を行う事業者に対して休業手当の負担軽減支援として雇用調整助成金を給付するという制度です。ただし雇用調整助成金を受給するためには指標や雇用調整の内容などいくつかの要件をクリアしている必要があり、受給条件は社会状況に応じて定期的に改定が行われています。要件を満たすことで、休業手当の一部もしくは全部が助成金として支援されます。

休業手当を支払わなければいけない

一時帰休を行う支援として、休業手当を支払わなければいけません。使用者の都合で従業員を休業させた場合、休業させた日数に応じて最低でも平均賃金の60%以上を休業手当として支払う必要があります。一時帰休は人件費削減を目的とした制度です。使用者都合により行われるもののため、すべての事業者が負うべき責任です。そのため従業員から何か手続きや申請を行う必要はありません。しかし天災等の不可抗力な理由による休業は事業者都合ではないため、休業手当を支払う必要はありません。

一時帰休のメリット

人材流失の危険が少ない

一時帰休は人材流失の危険が少ないという点がメリットです。一時帰休は、雇用契約が継続したままであるという特徴を持っています。一時帰休と似ている一時解雇(レイオフ)は一時的に解雇を行い、将来的に再雇用が前提となっていますが再雇用までの時期が長引いたりすると従業員の不安が高まり別の会社に転職してしまう恐れもあります。しかし一時帰休は雇用が継続しているため、人材が他社に流出してしまうという心配をする必要がありません。業績が回復したときにすぐに一時帰休前の状態に戻すことが出来ます。

一時帰休のデメリット

休業手当を支払わなければいけない

一時帰休のデメリットは、休業手当を支払わなければならないという点です。使用者都合で従業員を一時帰休させる場合、当該従業員には最低でも平均賃金の60%以上を休業手当として支払う必要があります。平均賃金の計算は「原則」と「最低保証」の2つがあり、どちらか高い方を平均賃金として採用します。平均賃金は「自由の発生した日以前の3か月の賃金総額÷その歴日数」もしくは「事由発生日以前の3カ月間の賃金総額÷その間の実労働日数×60%」で計算します。

従業員の雇用への不安をあおる

一時帰休は従業員の雇用への不安をあおる原因にもなります。一時的だけとはいえ休業しなければならない状況に陥っていると会社の業績が悪化していることが分かるため、従業員はとても不安に感じます。休業という言葉にはマイナスイメージを抱く人が多いので、一時帰休の仕組みをしっかりと説明する必要があります。従業員がきちんと理解し納得できていない状態で一時帰休を行ってしまうと、人材流失にもつながりかねません。双方がしっかりと理解したうえで、一時帰休を行いましょう。

一時帰休の実施手順

条件の確認

一時帰休の実施手順として、条件の確認があります。一時帰休を行うことで「本当に一時帰休を行う事によって業績を回復させられるのか」という点がとても大切です。あくまで一時帰休は一時的な対応であり、従業員を無制限で休業させられるものではありません。一時帰休中の条件は「平均賃金の60%以上の賃金」であり、範囲内であれば自由に決定することが出来ます。しかし給与が4割もカットされれば生活に支障をきたします。その為実施する場合は従業員の状況にあわせた条件の確認を行うことが重要です。見通しが曖昧なまま実施すると対象社員から不信感を抱かれるため、条件の確認は欠かせません。

対象者や期間の決定

一時帰休は対象者や期間の決定を行うことも手順の一つです。一時帰休を行うことを社内に展開したのち、内容に基づき対象者と実施期間を決定していきます。一時帰休には従業員個人に命じるものと部署全体に命じるものがあり、どちらを実行するにしても合理的な理由がなくてはなりません。対象者を選定する場合は休業しない従業員の負担もしっかりと考えておく必要があります。実施期間は助成金受給の条件に影響するため、実態に合った期間を設定しましょう。

期間中の条件の決定

期間中の条件の決定を行うのも一時帰休の実施手順です。休業手当の最低水準は決まっているものの、上限に定めはありません。そのため条件を満たしていれば事業主が支給金額を決定することが出来ます。一時帰休は人件費削減の目的がありますが、最終的には対象になった従業員にまた戻ってきてもらうことを前提としています。休業手当によって生活を左右されるので定められた金額をただ満たせばいいという事ではありません。従業員の状況に合わせることによって、人材流出を防ぐことが出来ます。

実施にあたっての協議と説明

一時帰休では、実施にあたって協議と説明を実施手順として行う必要があります。実施する内容をまとめる時には、自社と労働組合の間で一時帰休について取り決めを行っているかどうかも確認しておくことが大切です。もし取り決めをしている場合には、その内容に従って協議や説明を行いましょう。それだけではなく、取締役が設けられている企業では法律で取締役会において決議が必要であると定められています。不安を取り除くために対象者にはしっかりとした説明が必要となります。

一時帰休の注意点

期間中の社会保険料

一時帰休の注意すべき点は、期間中の社会保険料です。一時帰休中に支払われる休業手当は従業員に支払う賃金と同等の扱いをします。そのため通常の給与と同様に社会保険料は差し引かれ、社会保険料だけでなく雇用保険や労災保険等も控除の対象です。休業手当は平均賃金の60%以上という条件の元支給されるため、通常の支給額より下回ることが殆どです。しかし支給額が下がったとしても社会保険の等級が連動して下がるわけではありません。但し一時帰休の期間によって等級が変動することもあるため、実施機関に注意しましょう。

非正規労働者の対応

非正規労働者の対応も、一時帰休において注意すべき点です。休業手当を定めている労働基準法では、支払いの対象を正社員に限定していません。そのためアルバイトやパートなどといった非正規雇用の人たちも対象となり、非正規雇用の人たちに一時帰休を命じる場合にも休業手当は支払わなければなりません。ただし派遣社員を一時帰休の対象とする場合、休業手当の支払いは派遣先ではなく派遣元が支払うこととなります。助成金の受給にも雇用形態の縛りはなく、雇用保険加入が6か月以上の条件を満たしていれば申請が可能です。

従業員からの年次有給休暇の申請

一時帰休において従業員から年次有給休暇の申請があった場合には、注意しなければなりません。年次有給休暇は原則として労働義務のある日に取得できる休暇です。そのため、労働義務の発生していない一時帰休中は有給休暇を取得する必要がありません。仮に従業員から一時帰休中に有給休暇を使い休業手当ではなく、通常の給与を受け取りたいという申し出があったとしても事業主が許可する義務はありません。しかし一時帰休は会社側都合の対応のため、希望者には有給休暇の取得を認めるなど柔軟な対応を心がけるようにしましょう。

従業員の視点に立った配慮

一時帰休では従業員の視点に立った配慮に注意する必要があります。一時帰休は事業主にとって難しい選択ですが、従業員にも苦しい選択です。一時的な措置とはいえ休業を命じられた従業員は、収入の不安や職場復帰を本当に行えるのか等様々な心配を抱えながら休業期間を過ごします。そのため一時帰休を選択した事業主は「従業員の不安に最大限に寄り添う」努力を第一に行う必要があります。不満や不信感を抱かせないために、対象者に合わせて一人一人に適切なサポートを行っていかなければなりません。

副業の許可

一時帰休は副業の許可を行う場合も注意点があります。一時帰休中には通常の給与より収入が減少するため、従業員から副業を行う許可を求められるかもしれません。通常より収入も少ないので従業員の生活不安が深刻化しかねません。そのため通常は副業を禁止している企業も、一時帰休中は必要に応じて副業を認めるべきでしょう。一時帰休を行い、副業も禁止してしまうと従業員からの反発も考えられます。副業を認めることにより従業員は暮らしの安定を図れるため、一時帰休に対して反発が起こることを防止できます。一時帰休中にのみ限定して副業を認めるなど従業員に寄り添う対応が必要です。

随時改定の確認

随時改定についても一時帰休を行っている間注意しなければいけません。毎年1回被保険者の報酬月額を届けて被保険者の標準報酬月額を決定することを定時改定と言います。提示改定とは異なり随時改定は月ごとに変動します。就労していた場合に受け取れる給与よりも低い金額を休業手当で支払われることになった際には固定賃金の変動とみなし、随時改定を判断することとなります。「3か月以上継続して」ということが要件のため、休業手当を2か月支払いよく月は通常給与を支払う場合は随時改定の対象とはなりません。

まとめ

一時帰休をする際には従業員への配慮を行いましょう

一時帰休を行う時の支援策や手順・実施の際の注意点について解説しました。一時帰休を選択することは、事業主にとっても悩みぬいた末の苦渋の決断であるはずです。それは従業員にとっても同じで、一時帰休を伝えられた従業員は今後の生活や収入面において心配や不安を抱えた状態で休業することとなります。一時帰休を行う時点で経営は芳しくない状態かと思いますが、休業する従業員にしっかりとした説明や配慮を行うことで事業を再開するときに従業員が気持ちよく戻ってこられるような対応を心がけましょう。

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