記事更新日:2020年04月25日 | 初回公開日:2020年04月19日
用語集 採用・求人のトレンド 人事・労務お役立ち情報雇用調整助成金とは、経済上の理由により事業活動の縮小を余儀なくされた事業主が、雇用調整(休業・教育訓練・出向など)することにより、事業主が支払った休業補償などの費用の一部を助成する制度です。つまり、労働者の失業の予防や雇用の安定を図ることを目的とした助成金なのです。今までも台風や地震などの災害時には特例措置が設けれらました。新型コロナウイルス感染症の全国的な影響をふまえ、休業する事業主も増えることから、特例措置が講じられたのです。
欧米諸国では、景気の後退や企業の業績悪化を理由に、経費削減の一つとして、人件費の削減を割と簡単に行われます。しかし、日本では、労働者を簡単に解雇したりはしません。雇用調整助成金は、事業主に支払われるもので、労働者が直接受け取ることはできませんが、雇用を維持させることで、労働者の生活を安定させることができます。新型コロナウイルス感染症の影響による経済的ダメージは相当なものと予想できます。特に緊急事態宣言を受けて、飲食店、観光業への影響ははかりしれません。
雇用調整助成金の対象となる事業者は、新型コロナウイルス感染症の影響を受ける事業主で、全業種の事業主が対象です。特例では、事業所設置後1年以上を必要とする要件を緩和され、事業所設置後1年未満の事業主も助成対象となりました。また、対象外とされていた風俗営業等関係事業主への支給も可能となりました。事業縮小の「経済上の理由」としては、厚生労働省のHPで、以下の例があげられています。
・観光客のキャンセルが相次ぎ、これに伴い客数が減り売上げが減少した
・市民活動が自粛されたことにより、客数が減り売上げが減少した
・行政からの営業自粛要請を受け、自主的に休業を行い、売上げが減少した
今回の特例では対象者が拡大されました。加入期間が6ヶ月未満や被保険者でない人であっても適用となりました。春からの新規学卒採用者などは、雇用保険被保険者として継続して雇用された期間が6か月未満の労働者ですが、特例では助成対象としています。また、雇用保険被保険者でない労働者も休業の対象になっています。事業主と雇用関係にあるパート、アルバイト(学生も含む)等の労働者で、週20時間未満の労働者も対象となりました。
助成率は、通常の助成率から、大幅に引き上げられました。中小企業が4/5に、大企業が2/3になりました。さらに、事業主が解雇を行わない場合には、助成率は中小企業で9/10、大企業で3/4となります。また、雇用保険被保険者のみが対象ではありますが、教育訓練を実施した場合は、中小企業に2,400円、大企業に1,800円に助成金の加算が増額になりました。教育訓練では、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、自宅でインターネット等を用いた教育訓練を含むものです。
生産指標が要件として定められています。生産指標とは、販売量、売上高等の事業活動を示す指標のことです。特例では直近1ヶ月の売上高などが同5%以上減と定めらました。雇用量についても、雇用保険被保険者数及び受け入れている派遣労働者数が、最近3か月の雇用量が対前年比で増加していても助成対象となりました。過去に雇用調整助成金を受給していた事業主に対する受給制限を廃止になりました。制度の連続使用を禁止するため、1年間のクーリング期間を設けていましたが、特例では申請が可能となっています。休業規模については、休業等の延べ日数が対象労働者に係る所定労働日数の1/20(中小企業)、1/15(大企業)以上としていましたが、これを1/40(中小企業)、1/30(大企業)以上に緩和されてます。
特例措置の緊急対応期間は、2020年4月1日から6月30日までとなっています。新型コロナウイルス感染症の影響により、全国的に事業活動の自粛が求められているため、一定の地域の特例措置ではなく、全国一律に特例措置を講じることとしたものです。特例措置に関する申請書類等については、大幅に簡素化され、事業主の申請手続きの負担軽減と支給事務の迅速化が図られました。また、特例措置の緊急対応期間については、この6月末の期限が近付いてきた段階で、感染状況等を見極め、必要な対応を検討するとされています。
新型コロナウイルス感染症特例措置の適用日は、2020年1月24日まで遡ることができます。通常であれば、休業計画の届出を行ってから、休業を実施するという流れでしたが、2020年6月30日までは、休業計画の届出は事後提出が可能となりました。ただし、生産指標の要件緩和等については、緊急対応期間である2020年4月1日から2020年6月30日までの休業等に適用になります。2020年3月31日までの休業については、適用されませんので注意しましょう。
雇用調整助成金の対象となる事業者は、雇用保険の適用事業主であることが要件です。生産指標において、前年同月を基準としていることから、設置後1年以上経過している事業者でなければなりません。また、過去に雇用調整助成金の支給を受けたことがある事業主が新たに対象期間を設定する場合、直前の対象期間の満了の日の翌日から起算して一年を超えていなくてはなりません。風俗関連事業者については、雇用調整助成金の対象外とされています。
雇用調整助成金の対象となる従業員は、雇用保険被保険者である必要があります。ただし、同一の事業主に引き続き被保険者として雇用された期間が6か月未満の労働者等は対象になりません。つまり、特例では対象としていた新規学卒採用者など、雇用保険被保険者として継続して雇用された期間が6か月未満の労働者については対象にならないのです。そして、パートやアルバイトで雇用保険被保険者でない労働者も対象となりません。
雇用調整助成金の助成率は、中小企業が2/3、大企業が1/2になります。ただし、雇用保険基本手当日額の最高額(8,330円)が日額上限となっています。教育訓練を実施した場合は、1人1日当たり1,200円が助成金に加算されます。特例では、助成率をアップさせただけでなく、解雇等を行わない場合、最高で9/10の助成率になることから、事業主には大変魅力的な制度といえるでしょう。教育訓練の加算も特例では大幅にアップされています。
売上高や生産高などの生産指標は、3か月間の月平均値が前年同期に比べて、10%以上減少していなくてはなりません。雇用量については、雇用保険被保険者数及び受け入れている派遣労働者数が、最近3か月間の月平均値が前年同期に比べて、中小企業の場合は10%を超えてかつ4人以上、中小企業以外の場合は5%を超えてかつ6人以上増加していないことが要件です。休業規模については、休業等の延べ日数が対象労働者に係る所定労働日数の1/20(中小企業)、1/15(大企業)以上でなければなりません。特例では生産指標は、直近1ヶ月を5%以上低下、雇用量要件は撤廃となっています。
雇用調整助成金は、実施した休業等の日数に応じて助成金が支給されるわけではありません。支給限度日数が設けられていて、雇用調整助成金の支給限度日数は、通常時は1年間で100日(3年間で150日)となっています。通常時は予め計画の届出が必要ですので、オーバーする心配ありません。雇用調整助成金の計算方法は、対象者人数×1日あたりの手当等の費用×支給日数=雇用調整助成金、です。ですので、支給限度日数は多ければ、多いに越したことはありません。
特例措置では、支給限度日数に上乗せできるので、1年間であれば、100日+4/1~6/30の緊急対応期間に実施した日数、3年間であれば、150日+4/1~6/30の緊急対応期間に実施した日数という計算になります。緊急対応期間は、休業等を実施した日数がそのまま支給の対象となります。政府としては、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、できるだけ外出を控え、行動を自粛することを要請しているわけですから、限度は設けずに、実施した日数を支給するのは当然といえるでしょう。
雇用調整助成金には教育訓練加算があります。教育訓練加算の金額は、通常時は、1人1日当たり1,200円が支給されます。特例措置では、中小企業が2,400円、大企業が1,800円となりました。今回の特例では、休業等を余儀なくされる企業が多いなか、今後の事業活動の回復拡大に向けて、この時期を従業員のスキルアップの好機ととらえ、積極的に従業員の教育訓練を行うよう企業の取り組みを促進する狙いといえるでしょう。
教育訓練とひと言で言われても、うまく理解できないかもしれません。実務研修、実技研修はもちろん、マナー研修、ハラスメント研修、メンタルヘルス研修など、ビジネス一般に関する研修も対象となります。また、今回の特例では、感染防止拡大の観点から、自宅でのインターネット等を用いた教育訓練も対象となりました。通常時は訓練日に就労することができませんでしたが、特例では、加算額が半額になりますが、半日訓練後、半日就労することを可能となっています。
雇用調整助成金の申請は、通常時は、計画届を提出したのち、休業等の実施、判定基礎期間終了後2か月以内に申請する、というフローになります。雇用調整助成金が支払われるのは、支給申請からおおよそ2か月後といわれています。特例では、休業等の実施したのちに、6月30日までは、計画届を事後提出することが認められました。計画届を事後提出した場合には、事後提出の翌日から2か月以内に申請しなければなりません。支給申請後、原則1ヶ月以内に支給決定される予定です。
雇用調整助成金は、休業等実施計画の届出と、支給申請が必要になります。事業所の所在地を管轄する都道府県労働局またはハローワークで申請します。申請は、窓口だけでなく郵送でも受付が可能ですの。支店ごとに雇用保険の適用事業所番号がある場合には、支店ごとに申請が可能ですが、その場合は、生産要件などの要件をそれぞれの支店ごとにクリアしている必要がありますので、注意しなければなりません。
特例措置に関する申請書類等については、大幅に簡素化し、事業主の申請手続きの負担軽減と支給事務の迅速化を図られています。記載事項を約5割削減73事項→38事項に削減されました。記載事項が大幅に簡略化されています。添付書類は削減され、既存書類で可になりました。6月30日までは、計画届は事後提出可能です。様式は厚生労働省のホームページからダウンロードできます。
雇用調整助成金について、ニュースになっていますが、もともとあった制度なのです。地震、台風などの自然災害で特例措置が実施されることはありましたが、一部の地域での限定的なものでした。今回の新型コロナウイルス感染症は全国的に影響を及ぼすことが考えられることから、全国一律の大規模に拡充されたものです。もはや、影響のない事業主はいないといえるでしょう。雇用調整助成金を知って、事業活動に役立ててください。
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