難民ビザとは?【申請・更新・仕事・就労ビザへの切り替え方法は?】

記事更新日:2020年08月17日 初回公開日:2020年08月11日

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外国人雇用をする際に「難民ビザ」という言葉を耳にしたことはないでしょうか。日本にいると「難民」問題は他国の話、と思ってしまいがちですが、意外にも「難民ビザ」を主張する外国人は多く存在します。日本は1981年に難民条約に加盟し、2010年に第三国定住難民受け入れを開始しました。本記事では、難民ビザの仕組みやその取り扱いについて、雇用者側の観点より知っておくべき概要をまとめています。理解が不十分な場合は不法滞在の斡旋とみなされてしまいますので、確実に理解をしておきたいですね。

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難民ビザとは

「難民ビザ」という在留資格は存在しない

そもそも「難民ビザ」は実は正式な在留資格ではありません。難民とは、「人種、宗教、国籍、特定の社会的集団の構成員であること又は政治的意見を理由として迫害を受けるおそれがあるという十分に理由のある恐怖を有するために国籍国の外にいる者であって、その国籍国の保護を受けることができないか又はそれを望まない者」。日本の難民制度は、外国人が入国管理局に「難民認定申請」を行い法務大臣より認定を受けることができれば、規定により保護を受けることができるというものです。難民認定されると、在留資格「定住者」と同等の在留資格が与えられますが、これはいわゆる「難民ビザ」ではありません。

入国管理局に難民認定申請中の外国人の事を示す

難民申請すると、審査結果が出るまでかなりの時間がかかるため、結果を待つ間、生活のために働くことが認められます。申請内容を受けて難民である可能性が高い外国人には「特定活動・6月(就労可)」という在留資格が付与され、6ヶ月の就労が可能となります。いわゆる「難民ビザ」とは、この難民申請における一時的な運用部分を逆手に取って得られる就労資格のこと。これは特に、留学・技能実習など短期ビザで日本に滞在中の外国人が、継続して就労資格を得たいがために「難民」として申請するケースが多いといいます。

日本で働くための資格ではない

そもそも、難民認定は日本国への保護を求める制度であり、日本で就労を希望する人のための制度ではありません。また前節で述べた通り、難民申請に伴って許可される就労資格、いわゆる「難民ビザ」はあくまでも認定が降りるまでの一時的な運用です。かつてこの難民ビザは難民申請をした全ての外国人に申請6ヶ月後より一律で許可されていたため、難民認定申請者は増加の一途をたどっていました。2018年1月、法務省はこの運用を改正し、現在はこの一時的就労を難民認定の可能性が高い一部の外国人のみに限定し許可しています。

難民認定されるとできる事

永住許可要件の一部緩和

難民申請の結果、日本政府によって難民認定を受けた場合、更新可能な1〜3年の定住者としての在留資格が付与されます。さらに永住許可要件の一部緩和も受けることができます。一般に外国人が日本で永住許可を受けるために必要な要件は、素行が善良であること・独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること、の2点。しかし、難民認定を受けて在留する外国人の場合には、法務大臣の裁量によって後者の要件を満たさずとも永住許可を受けることができるのです。その他にも国民健康保険加入の申請ができる等、将来的な定住支援のプログラムが多数用意されています。

難民旅行証明書の交付

さらに、難民認定を受けた外国人が外国に旅行しようとする時は「難民旅行証明書」の交付を受けることができます。これを所持する外国人はその証明書に記載されている有効期間内であれば、何度でも日本から出入国できるというもの。もともと難民はその本国や居住国から旅行文書の発行を受けることができない状況にありますが、難民にも海外旅行の道を開こうという観点から、難民旅行証明書は旅行文書(パスポート)と同じ扱いになります。通常、この証明書の有効期限は1年で、発行には所定の手数料(5,000円)がかかります。

難民条約に定める各種の権利

加えて、難民認定を受けると条約に従い日本人同等の権利を与えられます。国民健康保険を初めとした社会的権利を得ることができますが、それを享受するにあたり日本語の教育や行政サービスの利用に関する情報提供・手続き支援などは自治体ごとに実施がされています。病気・子どもの教育・発達、生活上の問題など、難民それぞれの状況に応じた支援が計画されており、例えば医療サービス利用に課題を抱えている難民は病院の受診調整・同行サービスも受けられます。国・自治体として人間らしい生活を送る権利を保障しているというわけですね。

難民認定の申請方法

基本的には本人が申請する

申請に必要な書類

難民認定を申請したい際、基本的には申請者本人が最寄りの地方出入国在留管理局へ出頭のうえ行います。申請者が16歳未満の場合、または病気などの事情があれば親族などが代理申請人になることができます。申請には申請者が難民であることを証明する陳述書、前3ヶ月前以内に撮影された縦4cm×横3cmの写真2葉の提出に加え、パスポートまたは在留資格証明書、在留カードの提示が必要です。仮上陸の許可、乗員上陸の許可、緊急上陸の許可、遭難による上陸又は一時庇護のための上陸許可を受けている外国人はその許可書も持参しましょう。

申請書類だけで判断できない場合は調査される

一般に、難民として認められるかどうかは提出資料に基づいて判断をされます。申請者の申し立てる事実の有無に関して十分な立証が得られない場合、難民調査官が法務省等に照会するなどして調査が行われます。また、認定が降りなかった場合や難民認定を取り消されてしまった場合、申請外国人は法務大臣に対して審査請求を行うことも可能。この審査請求期間は難民不認定または認定取消通知を受けた日から7日以内です。難民認定申請と同様、最寄りの地方出入国在留管理局で行うことができ、代理人による審査請求も認められています。

難民ビザ(難民認定申請者)の就労について

在留資格がもらえるわけではないので就労はできない

難民認定申請者が日本で就労する場合のルールについて、再度確認をしましょう。そもそも難民認定を申請した外国人は、すぐに在留資格・就労資格を得られるわけではなく、就労はできません。先述の通り、2018年1月より運用が厳しくなり、難民認定申請者は、その状況によりABCDに振り分けをされるようになりました。難民条約上の難民である可能性が高いと思われる案件、又は、本国情勢等により人道上の配慮を要する可能性が高いと思われる案件はA案件として「特定活動6月、就労可」の資格が付与されます。このABCD要件への振り分けは申請後2ヶ月以内に判断されます。

特定活動に切り替えると範囲内の就労が可能になる

上記の振り分けでA案件に該当した難民申請者は「特定活動」ビザとして6ヶ月間の就労が可能になります。またこの期間は難民認定可否の通知があるまで、認定が下りなかった場合は審査請求中も含めて継続が可能。もちろん、難民認定が降りた場合は定住者の在留資格または1年・3年の期限付きの特定活動に切り替えられます。ただ、現行の制度ではそもそもこのA案件に認定されるのは全体の1%以下で、多くは「難民条約上の迫害自由に明らかに該当しない事情を主張している」B案件として処理されています。

難民ビザ(難民認定申請者)の雇用について

基本的には雇用してはいけない

難民申請中の外国人の雇用については、法的には在留資格および就労資格を得ていない訳ですから、認められてはいません。繰り返しますが、難民認定申請をしているという主張があったとしても、実際に認定が下りるのはごくわずかです。雇用を検討する前に必ず該当の外国人の在留カードおよびパスポートを確認しましょう。在留カードには「特定活動」としか記載がない場合も、パスポートにホチキスで添付されている「指定書」に日本での活動内容が明記してあります。必ずパスポート実物を確認することが必要です。

「特定活動・6月」を付与されていると雇用できる

すでに述べた通り、難民認定申請中でA案件として特定活動の資格を得ている外国人であれば、就労すること自体は可能となります。一般に難民認定申請の期間は平均10ヶ月ほどですので、少なくとも10ヶ月程度は雇用ができるでしょう。もちろん難民認定が下り定住者の資格を得られた場合にはその後も働き続けてもらうことが可能です。ただ、現実的に難民ビザで雇用するような業務は単純労働系の職種が多く、定住者が持つ就労ビザでは許可されない場合も多くあります。雇用職種によりどのパターンとなるかは予め確認をしておきましょう。

難民ビザ(難民認定申請者)の結婚について

難民認定から配偶者ビザに変更しなければならない

難民認定申請中で特定活動ビザを保有している場合も、日本人と結婚するなど配偶者ビザの申請要件を満たす場合は配偶者ビザへの在留資格変更申請をする必要があります。在留資格「日本人の配偶者等」、いわゆる配偶者ビザが認められれば、最低6ヶ月、長ければ5年の在留が認められ就労も可能になります。配偶者ビザへ在留資格変更申請を行う場合、難民申請をしている経緯も含めて審査対象となるため、通常の配偶者ビザ申請と比べ審査が厳しくなります。しかし、難民認定自体かなり認定率の少ない制度であることから、それと比較すると配偶者ビザの方が承認されやすい傾向もあるようです。

自分で行うのは難しいのでサポートを受けるのが一般的

国際結婚&配偶者ビザサポートセンター

上記の通り配偶者ビザへの変更申請はかなりハードルが高いため、行政書士に代行を行うのが一般的です。「国際結婚&配偶者ビザサポートセンター」はゆだ行政書士事務所が運営しており、国際結婚に特化してサービスを提供しています。年間相談件数700件以上、難民認定制度の運用変更後の現在も、難民申請中から日本人の配偶者等の変更申請の許可の実績があると謳っており、難易度の高い申請にも自信が伺えます。無料カウンセリングにも対応しており、完全成功報酬制のサービスとなっているのでまずは相談から進めてみるのはいかがでしょうか。

下川原行政書士事務所

下川原行政書士事務所は東京・神奈川を中心に活動している行政書士事務所で、外国人の在留資格・永住・帰化に関する手続、技能実習・特定技能まで幅広く許認可申請の相談・書類作成を承っています。配偶者ビザ取得に関わる在留資格変更申請だけでなく、もちろん難民認定申請のサポートも行っています。一人ひとりにあったサービスを心掛け実践しており、複雑な案件や不許可案件も相談の価値ありといえるでしょう。内容に応じて各種報酬額表が提示されており明朗会計な点もお勧めできるポイントの一つです。

外国人採用の際に耳にする言葉なので頭に入れておきましょう

本記事では「難民ビザ」についてその法的状況と取り扱い方を解説しました。2018年の法改正以降、難民申請者への就労許可は下りにくくなりましたが、それには多くの外国人が「難民申請中」を隠れ蓑にして日本での就労を続けていた背景があります。人材不足で外国人が即戦力として見なされている現在、雇用主としては日本における外国人の在留資格・就労資格については知っておいて損はないでしょう。難民認定者や難民申請者を雇用する場合においても、正しい理解のうえで適切な雇用契約ができるよう意識したいですね。

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