静かな退職とは【その原因や増加する背景について解説します】

記事更新日:2024年07月03日 初回公開日:2024年07月01日

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グローバル化や働き方改革によって、多様な働き方を選べる現代では入社した会社で長く働くのではなく自分のキャリアを広げるために転職する人も増えています。従来と比べて年功序列制ではなく、成果主義を導入する企業も増えています。しかしそういった人たちとは異なり、仕事や社内での存在意義を見出すことが出来ず受動的な働き方をする人もいます。そういった人たちの中には、静かな退職という方法を取っている人もいます。今回は静かな退職について解説していきますので、人事担当者の方は参考にしてみてください。

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静かな退職とは

労働者が最低限の仕事をすること

静かな退職とは、労働者が最低限の仕事をすることです。企業に所属していながら最低限の業務を行い退職しているかのような余裕を持って業務に取り組む事を指しています。そのため、実際に退職している訳ではありません。静かな退職は「Quiet Quitting」であるため、日本では頑張らない働き方と訳されていることもあります。アメリカ中心に注目を集めており、仕事とプライベートの線引をしっかりと行い割り切って仕事を行う働き方です。

ハッスルカルチャーとの違い

静かな退職と対義的な意味として使われるのが、ハッスルカルチャーという概念です。ハッスルカルチャーは、一生懸命働くことやハッスルを理想化し尊重する仕事の文化を指しています。ハッスル文化は起業家やテック企業で多く用いられており、長時間労働や休暇を取らないことを美徳としています。昼夜を問わず働き、その労働の結果として成果を追求することを勧めている考え方です。ハッスルカルチャーは従来の日本企業で多く見られた文化です。

単なる怠惰な姿勢ではない

静かな退職は、単なる怠惰な姿勢ではありません。静かな退職という言葉を聞くと、やる気がなく怠慢な態度を取っている人を想像するかもしれませんが、必ずしもそういった態度を取っているわけではありません。静かな退職を行っている人の特徴は、求められている以上のことをせず定時退社し、飲み会などにも全く参加しないといった人です。しかし会社に対して不満などを言わず、遅刻や欠席などがなく求められているものはしっかりとこなすため、一概に害があるとは言えません。

静かな退職が増加している背景

長時間労働を改める動きが進んでいる

静かな退職が増加している背景には、長時間労働を改める動きが進んでいる事が影響しています。従来までの日本企業であれば、長く働いている人ほど出世しやすく評価されやすい傾向にありました。しかしグローバル化や働き方改革が進んだことにより、長時間労働を行うよりも効率を重視する思考に変わってきています。そのため、モーレツ社員といった人たちが減り決められた時間内で業務をこなすことを好む静かな退職を行う人が増えています。

働き方が多様化しエンゲージメントが低下している

静かな退職は、働き方が多様化しエンゲージメントが低下していることで増えてきています。働き方改革によって、労働者はフルタイムという雇用形態だけでなくパートやフリーランスなど様々な働き方を選べるようになってきました。長期的なキャリアプランを描きにくくなったのも、要因の一つと言えます。また長期的に働かないことから会社への愛着心が生まれずエンゲージメントが低下するため、眼の前の業務をこなす静かな退職状態になる人も増えています。

仕事のストレスが増加している

仕事のストレスが増加しているため、静かな退職が増えています。厚生労働省の調べによると、現在の仕事や職業生活に対して強い不安やストレスを抱えていると回答した人が労働者の約8割に上る事がわかっています。強いストレスを感じていると回答した人の中で、仕事量が負担であると回答した人が約4割でした。多くの労働者が業務量に対して不満を抱えているため、自分が余裕を持って処理することが出来る仕事量に止められる静かな退職が増えています。

静かな退職が起こる原因

責任の所在が不明確なため

静かな退職が起こるのは、責任の所在が不明確なことが原因です。日本では明確な業務の範囲を決めている企業は多くありません。業務範囲が決まっていない場合、責任の所在も不明瞭になっている事が多く最終的な責任は上長や管理者が負うようになっています。そういった状況が慢性化していると、若手社員が昇進することを拒みキャリアアップを避けたくなる可能性があります。責任を押し付けられる可能性のある環境では、静かな退職を望む人もいます。

適切な評価制度がないため

静かな退職の原因は、適切な評価制度がないことも影響しています。上司によって評価が異なる場合や、どのように評価されているのかが不明確になっている場合は、従業員が評価に対して不公平感や不満を抱きやすくなります。そういった評価制度が慢性化している場合は、業務に対してのモチベーションや愛社精神が生まれないため従業員は最低限の業務をこなそうとします。頑張る気持ちが起きない・頑張らなくても評価される環境において静かな退職が増えます。

描きたいキャリアパスがないため

描きたいキャリアパスがない場合も、静かな退職が発生します。出世欲の強い人や、高い給料をもらいたいと考えている人はキャリアアップやキャリアパスを思い描いているため積極的に業務に取り組んでいます。しかし理想像の上司や先輩がいない場合はモチベーション高く業務に取り組むことは簡単ではありません。先輩や上司が忙しくして大変そうな場面をよく見ていると、出世したいと思えず眼の前の仕事をただこなしていく静かな退職に繋がりやすくなります。

静かな退職が企業に与える影響

生産性が下がる

静かな退職が企業に与える影響は、生産性の低下です。静かな退職を選択した従業員は、会社に対して帰属意識が生まれず業務を積極的に行わなくなります。従業員の士気が下がるとチームや組織全体の士気にも影響を及ぼしかねません。そうなってしまうと企業全体としてモチベーションの低下が起こり、生産性の低下に繋がります。また士気が下がることによって、従業員同士のコミュニケーションも希薄になっていくため、新しいイノベーションなども生まれにくくなります。

リスクマネジメントが下がる

静かな退職によって、リスクマネジメントが下がる可能性もあります。静かな退職を従業員が取っている場合は、たとえ社内に問題があるとわかっていたとしても何かアクションを起こすということはしません。改善して環境をよくしていこうという動機を持ちづらくなっているため、問題をそのまま見て見ぬふりしてしまうようになります。改善しなければいけない問題が長期的に放置されることによって、企業リスクに繋がる恐れが出てくるだけでなく後々大きな問題に発生してしまうことも考えられます。

他の社員の業務量が増える

他の従業員の業務量が増えるのも、静かな退職が企業に与える影響です。静かな退職を選択した従業員は、自分の担当外の業務は行いません。そのため、本来であればその従業員に割り振られるべき業務が他の従業員に割り当てられるようになります。結果として、イレギュラー対応などが発生した場合には、従業員で割り振られるのではなく特定の従業員に業務が集中してしまう可能性もあります。過重労働はストレスの原因になり、その労働者も静かな退職を選択するという負の連鎖に陥る可能性もあります。

静かな退職への対処方法

職場の満足度を調査し改善する

静かな退職への対処方法は、職場の満足度を調査し改善する方法があります。従業員の中で静かな退職を行っている兆候が見られる場合は、従業員が今の職場にどういった考えや感情を持っているのかを調査する必要があります。職場の満足度や従業員のエンゲージメントを測るには、個人面談やサーベイなどがあります。職場に対しての満足度が低いという結果に至った場合には、どこに不満を抱えているのかを調査し早急な対処が必要です。満足度が低いままにしておくと、生産性の低下などを引き起こします。

多様な働き方を認める

静かな退職への対処として、多様な働き方を認める事が挙げられます。ワークライフバランスを好む人が増えている中で、ワークライフバランスを実現することが難しい職場環境では従業員が静かな退職を選ぶ可能性があります。企業は時代の変化に合わせて、テレワークや育児・介護休暇の充足など従業員が私生活とのバランスを取りやすい環境を提供する必要があります。ライフステージ似合った働き方を提供することによって、静かな退職を選択した従業員が意欲的に働けるようになるかもしれません。

公平かつ適切な人事制度を設ける

静かな退職を防ぐには、公平かつ適切な人事制度を設けましょう。評価制度に不公平感が高まると静かな退職が増えていってしまうことから、責任の明確化や年功序列制の撤廃・成果に見合った評価基準などの見直しを行うことが必要です。業務目標や従業員に対しての期待値などを明確にしておくことで、取組状況や成果に合わせた公平な評価を行うことが出来ます。公平に評価されていると従業員が感じることができれば、業務に対してのモチベーション向上にも繋がり静かな退職が起こりにくくなります。

コミュニケーションを強化する

コミュニケーションを強化するのも、静かな退職への対処法です。職場内やチーム内で上手くコミュニケーションが取れていないと不満や不安を周りに伝えることが出来ず、静かな退職に繋がる可能性があります。定期的に1on1などの面談を行い、従業員の意見や考えに耳を傾けるようにしましょう。困っていることのヒヤリングや、従業員に期待している姿勢などをしっかりと伝えることが大切です。これにより社内のコミュニケーションが活発になり、従業員が社内での存在意義を見つけることに繋がります。

キャリアパスを明確にする

キャリアパスを明確にして、静かな退職への対策を行いましょう。従業員のエンゲージメントを高めていくためには、従業員のキャリアパスを明確にし、そのキャリアを実現するためのサポートがある事を明確にしておく必要があります。企業に所属していても、やりたいことが見つからない場合や自分のキャリアが描けず曖昧になってしまっている場合はエンゲージメントが低くなってしまいます。出世のキャリアパスだけでなく、従業員に合わせて様々なキャリアパスを用意することで静かな退職を防げます。

まとめ

静かな退職を防いで生産性を高めよう

静かな退職が増えている原因や、企業に与える影響について解説しました。静かな退職とは、実際に会社を退職するのではなく仕事に対してやりがいを求めず限られた範囲の業務を淡々とこなす働き方です。静かな退職を選択する従業員が増えることによって、組織の生産性低下だけでなく職場の環境悪化や優秀な人材の流出などに繋がります。静かな退職は従業員本人の問題だけでなく、企業が提供している環境に問題がある場合もあります。人事評価制度の見直しや労働環境の是正などを行って触媒環境改善を行い、静かな退職を防ぎましょう。

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