ダイナミックケイパビリティとは【ユニクロなど日本企業の導入事例についてもご紹介します】

記事更新日:2023年11月20日 初回公開日:2023年11月20日

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絶えず変化する市場で競争に勝ち抜くには、企業は単に「変化に適応する」こと以上の能力が必要です。この点で「ダイナミックケイパビリティ」という概念が、経営戦略の分野で注目を集めています。この能力は、企業が外部環境の変化を予測し、それに応じてリソースを再構成する力を意味します。さらに、革新的なアイデアを生み出し、新しいビジネスモデルを開発する柔軟性も含まれます。本記事では、このダイナミックケイパビリティがなぜ今日のビジネスにおいて重要なのか、その理由と具体的な実践方法について詳しく解説します。

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ダイナミックケイパビリティとは

企業変革力のこと

ダイナミックケイパビリティとは、企業が変化する環境に迅速かつ効果的に対応し、継続的に競争優位を築いていくための組織的能力のことです。この概念は、市場の変動が激しい現代において、事業の柔軟性と適応性を高めるための重要な戦略的思考とされています。革新を促進し、資源を効率的に配分し、再構成する能力がダイナミックケイパビリティの核となります。これによって、企業は不確実なビジネス環境の中でも持続可能な成長を追求できるのです。

ダイナミックケイパビリティが生まれる背景となった理論

競争戦略論

ダイナミックケイパビリティが生まれる背景となった理論は、競争戦略論にあります。マイケル・ポーターの競争戦略論は、企業がどのようにして持続可能な競争優位を確立するかに焦点を当てています。競争戦略のフレームワークは、企業が競争環境の中での自身の位置を理解し、それに基づいて戦略を立てるための道筋を提供します。一方でダイナミックケイパビリティの概念は、より変動する環境や不確実性が高い現代市場において、企業がどのようにして柔軟性と適応性を持ち、変化に対応するかを考えるために開発されました。

資源ベース理論

もう一つの背景に資源ベース理論があります。この理論は、企業の競争力はその独自の資源の質によって決まるとし、持続可能な優位性を築くには経営資源のユニークさが重要だと主張しています。しかし、静的な資源だけでなく、変化する市場に対応できる企業の能力が求められるようになりました。この点に着目し、企業が継続的な変革を達成するための能力として理論化されました。変化に適応し、新しいビジネスチャンスを捉え、競争に打ち勝つための戦略的な柔軟性やイノベーションを推進することが重要です。

ダイナミックケイパビリティが注目される理由

急激なデジタル技術の革新

ダイナミックケイパビリティが注目される理由は、急激なデジタル技術の革新にあります。デジタル技術の革新は、顧客の期待値を変え、市場のルールを再定義しています。こうした変化の波に乗り遅れると、たとえ長年の実績があっても市場から取り残されるリスクが高まります。ダイナミックケイパビリティに注目が集まるのは、このようなビジネス環境で、持続的な成長と進化を遂げるためには、柔軟かつ迅速に戦略を調整し、イノベーションを継続して実現する力が不可欠だからです。

新型コロナウイルスの流行

新型コロナウイルスの流行は、世界中の企業に前例のない課題をもたらしました。このような状況の中で、生き残りをかけた企業間の競争が激化しています。そのため、柔軟に状況に適応し、変化をチャンスに変えられるダイナミックケイパビリティが強く求められています。企業は迅速にビジネスモデルを見直し、リモートワークの導入、デジタルトランスフォーメーションの加速、新しい顧客ニーズへの対応といった環境変化に応じた戦略的な動きを展開することが可能になります。

働き方改革の推進

働き方改革が推進される中、企業は生産性の向上や労働時間の最適化、そして従業員のワークライフバランスの実現を目指しています。これに伴い、ダイナミックケイパビリティはより一層重要性を増しています。なぜなら、改革を成功させるためには、組織が持続的に学習し、変化を内面化し、新しい働き方に迅速に適応する能力が必要だからです。組織としての学習や革新を促進し、従業員のエンゲージメントを維持しつつ、事業の目標達成を図るには、変化に強い組織文化と戦略的思考が不可欠となります。

グローバル化の促進

グローバル化が進む現代において、企業は国境を超えた多様な価値観やビジネス慣習に対応する必要に迫られています。こうした状況の中で、ダイナミックケイパビリティは企業がグローバル市場で生き残り、成長するための核となる能力として注目されます。変動する市場環境や文化の違いを素早くキャッチし、それに応じた製品開発やマーケティング戦略を策定する柔軟性が求められるのです。ダイナミックケイパビリティは、組織が持続的な競争優位を確立し、多様性を強みに変えるために欠かせない力と言えるでしょう。

ダイナミックケイパビリティ自体が発展中の理論

ダイナミックケイパビリティは現代ビジネス環境の不確実性に適応し、変化する市場要因を利益に結びつけるために発展中の理論です。この理論は、企業がどのようにして内部の能力やプロセスを再構築し、外部環境の変化に柔軟に対応できるかを説明します。テクノロジーの急速な発展や、市場のグローバル化、さらには環境問題などの社会的課題への対応を迫られる中、ダイナミックケイパビリティは企業の長期的な成功を支えるために不可欠です。

ダイナミックケイパビリティを構成する能力

感知能力

ダイナミックケイパビリティは主に3つのコア能力に分けられ、その1つ目が感知能力(Sensing)です。感知能力とは、組織が外部環境の変化を敏感に察知し、それに対する機会や脅威を識別する力を指します。この能力には市場のトレンド、技術革新、競合他社の動向、顧客のニーズの変化など、組織の外部に存在する様々なシグナルを理解し、それらを基に戦略を練る洞察力が含まれます。感知能力の高い企業は、将来に起こりうる変化を予測し、その変化にいち早く対応するための新しい製品やサービスを開発し、市場に投入することができます。

捕捉能力

2つ目が捕捉能力(Seizing)です。市場の機会を識別した後、それを掴み取るための戦略的決断を迅速に下し、必要なリソースを動員して新たな価値を創造する能力を指します。これは感知した機会を実際のビジネス成果に結びつけるプロセスに他なりません。捕捉能力には、適切なビジネスモデルの選択、リソースの再配置や統合、新たな組織構造やプロセスの設計が含まれます、そして時には大胆な戦略的シフトの決断も必要です。これには、組織が内部の変革を進めるためのリーダーシップと変革管理のスキルが必要です。

変容能力

3つ目が変容能力(Transforming)です。変容能力は、ダイナミックケイパビリティの中で、既存のビジネスを変革し、継続的な革新を可能にする能力です。これには組織の構造、文化、ルーチンを変えることで、新しい市場環境に適応することが出来るでしょう。変容能力は、内外の変化に対して組織がいかに柔軟に対応し、自己改革を遂げるかという点を強調します。これは従業員のスキルアップデートや新技術の導入、新たな組織構造への移行、プロセスや業務手順の見直し、そして組織文化の変革を伴います。

ダイナミックケイパビリティとDXの関連性

DXとは

デジタル技術でビジネスモデルを変革すること

ダイナミックケイパビリティとDXは強い関連性があります。DXとはデジタル技術でビジネスモデルを変革することです。経済のデジタル化が急速に進展する中で、企業が競争力を保持し、成長を続けるためには、ビジネスモデルの変革が不可欠です。ダイナミックケイパビリティは、市場や技術トレンドを敏感に感じ取り、新しいリソースを迅速に取り込み、柔軟にビジネスプロセスを変化させる能力を指します。DXはこの能力を基盤に、デジタル技術を駆使して全体的なビジネス変革を実施します。

関連性

3つの要素はDXの活用で最大限に効果が発揮される

ダイナミックケイパビリティの核となる三つの能力の感知能力・捕捉能力・変容能力は、DXを通じてその真価を発揮します。感知能力により、絶えず変わりゆく市場のニーズや技術的進化を素早く認識し、捕捉能力でこれらの変化を企業の新たなリソースとして取り入れます。さらに変容能力によって、これらのリソースを活用し、組織全体の構造やプロセスを柔軟に再構築することが可能となります。DXは、これらのプロセスをデジタル技術により加速させ、企業が持続的に革新し続けるための鍵となるのです。

ダイナミックケイパビリティの成功事例

IKEA

IKEAの成功は、市場の変化に対応し、自社のリソースを巧みに配置し直すことにありました。具体的には、自社生産へのシフトが仕入れ不足の問題を解消し、郊外に大型店舗を設けることで、より大量の在庫を持つことが可能になりました。また、製造プロセスの効率化により人件費を削減し、それを価格低減と品質向上に反映させることに成功しています。さらに、輸送コストの削減は、経済性と環境への配慮という、現代ビジネスにおける二つの重要な要素を兼ね備えたものでした。

富士フィルム

富士フイルムは、デジタル化の波に直面しました。一時は業界からの退場を余儀なくされた写真フィルム市場において、彼らは自身の持つコア技術を活かした多角化戦略で生き残りを図りました。例えば、フィルム製造で培った精密化学技術を基に、事業を医療や化粧品業界に拡張しています。特に、フィルムのコーティング技術が応用された化粧品は大きな成功を収め、ブランドの多角化を実現しました。この事例は、技術やノウハウが、予期せぬ市場の需要にどのように応え得るか、その可能性を広げる参考事例となるでしょう。

DeNA

DeNAは、オークションプラットフォームの運営から得たAI技術を、新たなビジネス領域に応用し、継続的な事業拡大を達成している点が特筆に値します。ゲーム事業においてAIの強化学習を利用して作業効率を高め、ユーザーのニーズに敏速に応えるシステムを構築しました。これは、市場の変動に迅速かつ適切に対応するための感知能力と捕捉能力を高める取り組みであると言えます。また、これらの技術革新を支えるために組織文化やマインドセットの変革を行うことで、変容能力を高め、業界内での競争優位を保持し続けています。

ユニメイト

ユニメイトの戦略は、単にユニフォームをレンタルするだけでなく、顧客体験を向上させることに重点を置いたことにあります。ユニメイトは、Webアプリ「エアーテイラー」の開発により、従業員が正確な体の寸法を測ることが可能になりました。これによりAIでの画像解析で最適なサイズの申告が行われるようになったのです。このプロセス改善によってサイズ交換の手間とコストを大幅に削減し、ユニメイトは業界内での競争力を高めると同時に、顧客満足度を向上させることができました。

カインズ

カインズは、自社アプリ「Cainz PickUp」を導入することで、顧客はオンラインで商品を選び、店頭での受け取りをスムーズに行えるようになりました。これにより、店舗を訪れる顧客の利便性が向上し、結果的に販売機会が増加したのです。さらに、カインズは「となりのカインズさん」というオウンドメディアを立ち上げ、たった1年で400万PVを達成。情報提供と顧客エンゲージメントを深める施策として大きな成功を収めています。

まとめ

ダイナミックケイパビリティを高めて競争優位性を見つけよう

絶えず変化するビジネス環境の中で、企業が競争で優位に立つためには、ダイナミックケイパビリティが不可欠です。この概念は、市場の動向を敏感に感知し、その変動に応じて自社の資源を柔軟に再配置、再組織化する能力を指します。感知能力により市場の変化をいち早く察知し、捕捉能力で新たな機会を掴み取る。そして、変容能力で組織内の資源を効果的に動員して新しいビジネスモデルやプロセスを生み出します。ダイナミックケイパビリティを高めて競争優位性を見つけましょう。

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