記事更新日:2023年11月20日 | 初回公開日:2023年11月20日
用語集 グローバル用語解説 採用・求人のトレンド 人事・労務お役立ち情報リンゲルマン効果とはドイツの心理学者であったリンゲルマンが実験により明らかにした現象で、共同作業人数が増えるにつれて作業効率が悪くなることを言います。つまり、一つの業務に取り組む人が増えるほど、一人当たりの労働力は低下してしまう怠惰現象です。この現象は意識して行われるものではなく、無意識のうちに個々の作業量が落ちることが特徴であり、人数が増えるほど作業効率は悪化します。共同作業を多数で行う企業にもあてはまることから、注目を集めている理論です。
リンゲルマン効果は人数が増えるほど個々の労力が減ることから、社会的手抜きとも呼ばれています。社会的手抜きは企業の業績などに反映し、業績悪化は企業の存続にも関わるものです。無意識のうちに行われる怠惰であっても見逃すわけにはいきません。共同作業においても、個々が持つ能力を十分に発揮するように、リンゲルマン効果についての研究が続けられています。リンゲルマン効果は単純作業だけでなくデスクワークなどで起きることも大きな課題です。
リンゲルマン効果と傍観者効果との違いは、手抜きが意図的に行われたか無意識で行われたものかで判断できます。傍観者効果とは、誰かがやってくれるだろうという思いから、意図的に手を抜く行為です。リンゲルマン効果においても意識の中に同じ気持ちがあるのかもしれませんが、それを根拠に手を抜くものではなく、意図しないのに手を抜いていることを指します。いつのまにか自然に手を抜いてしまうのが、リンゲルマン効果という現象です。
リンゲルマン効果の具体例で最も分かりやすいのが、綱引きの実験です。個々が持つ能力を100%発揮してくれたなら、個々の能力の合計が綱引きの綱に伝わることになります。しかし実際には綱引きに加わる人数が増えるほど個々が発揮する能力は下がっていくのです。リンゲルマン氏の実験結果によると、一人が最大に発揮できる能力を100%とした場合、二人では93%・三人では85%・四人では77%・五人では70%まで低下していきます。
チアリーダーを対象にした実験は、リンゲルマン効果が無意識の中で行われることを実証したとして有名です。二人のチアリーダーに目隠しとヘッドフォンをしてもらい、お互いの状況が分からないようにして大きな声を出してもらいました。二人とも単独のときには100%の声量を出していましたが、ペアになって声を出してもらうと94%程度にとどまりました。二人は2回とも全力で声を出したと証言しており、リンゲルマン効果が無意識に行われることが証明されたのです。
企業におけるリンゲルマン効果の例として、アメリカ全土における従事者の約9割が仕事中にネットサーフィンをしているという驚きの回答をニューズウイーク誌が得ています。同様に8割以上の従業員が私的なメールを送信していることも分かっており、これらが無意識に行われているのです。もし、この時間にも仕事をしていたならば作業効率は大きく上がり、企業の成果に大きく反映すると考えられます。しかし、悪意の無い無意識での行動であるため、指導者および経営陣も悩み深いところです。
また、人的ミスを無くすために行うダブルチェックでミスを見逃してしまうことも、リンゲルマン効果の具体例の一つです。とくに人数が多い企業やグループで起きやすく、心のどこかに「誰かがやるだろう」「これぐらいは大丈夫」などという意識が無意識に働くために起きると考えられます。このような状態が続くと、ダブルチェックミスも何度かに数回は起きるものと容認されてしまい、もはやダブルチェックの意味は無くなってしまいます。
リンゲルマン効果は、社員のモチベーション低下を招く恐れがあるため、予防策を講じる必要があります。業務に取り組む人数が増えるほど作業効率が悪くなるリンゲルマン効果は、感染症のように広がっていき全力で仕事をしている人までも脅かすものです。周囲の環境が悪い方向に変化していくと、モチベーションを高く持っていた人まで手を抜くことが当たり前だと思うようになってしまいます。モチベーションを高く維持することは生産性に直結するものでもあり、そのためにリンゲルマン効果の拡大を防がなければいけないのです。
リンゲルマン効果が波及すると、前述のように知らないうちに手抜き作業をしてしまうため、作業効率が悪くなり生産性は低下します。また一人の作業量が低下するとともに、チェックミスも増えるため、余分な作業も増えて生産力に大きな打撃を与えるでしょう。リンゲルマン効果を防止することは、通常の生産力を維持しながら不良の少ない商品作りに繋がります。生産性の低下を防ぐとともに消費者から信頼を得られることは、企業にとって貴重な財産になるでしょう。
リンゲルマン効果を防止することにより、フリーライダーの増加を防ぐ効果が期待できます。フリーライダーとは、全く働かずして賃金だけを受けとる「タダ乗り労働者」を指す言葉です。防止策として労働者の勤務管理を徹底することや、労働に対する報酬に格差を設けるなどの策を講じることにより、フリーライダーを減らすことができます。また、労働に見合う報酬を与えることは、フリーライダーの増加を防ぐとともに個々のモチベーションアップも期待できる良策です。
近年において、テレワークやリモートワークを導入する企業が増えていますが、この働き方改革がリンゲルマン効果を助長していると言われています。コロナ対策として普及したテレワークやリモートワークですが、周囲から監視の目が届かない働き方は、最もリンゲルマン効果が発生しやすい環境です。また、多くの人から注目を浴びているときに最も高いパフォーマンスを発揮できることも分かっています。評価が難しく手抜きしやすいテレワークやリモートワークを導入している企業は要注意です。
リンゲルマン効果が発生する原因として第一に挙げられるのが、責任感が欠如していることです。誰かがやるだろう、やってくれるだろう、という他人任せの気持ちが手抜きに繋がります。とくに綱引きのように大勢で取り組むほど一人が感じる責任感は薄れるため、発揮される能力および仕事量が激減するのです。綱引きの例には続きがあり、8人が綱引きに参加した場合には一人当たりに換算して50%の能力も発揮しないことが分かっています。一人で参加した場合には自分のみに責任があるため能力を残さず発揮しますが、人数が増えるほど責任感は欠如する方向に進むのです。
社員同士のコミュニケーションが不足していることも、リンゲルマン効果が発生する一因です。知らない同士で作業をするのと、コミュニケーションのとれたメンバーで同じ仕事をする場合を比較するのでは、作業効率が全く違います。見ず知らずの寄せ集めでは他人任せになりやすく、自分だけ頑張っても仕方ないという気持ちになりがちです。それが意図せずに作業の遅れやミスに繋がっています。同じ社員でもコミュニケーションを良くとることで、お互いに頑張って結果を出そうという気持ちになり、モチベーションアップと作業効率向上に繋がるでしょう。
指導者や上司から部下やチームのメンバーに対し、1on1でミーティングを行うことは、リンゲルマン効果の防止に非常に役立つ対策法です。個々は見られて評価されることを望んでおり、適正な評価を受けることでモチベーション維持やアップに繋げることができます。指導者は個々の評価をフィードバックし、次のステップに進むことを助言して新しい目標を持たせると良いでしょう。また、個人を適正に評価して、褒める部分と修正すべき部分を説明することも大事です。アメとムチを使い分けて、一人一人にあった適切なアドバイスを心がけてください。
リンゲルマン効果は大勢で取り組むほど影響も大きくなるため、少数制のチーム編成で仕事に取り組むこともリンゲルマン効果の防止対策になります。同じ業務であっても、少数のチームを作って仕事に向かわせるだけでも責任を感じるようになり、作業効率も上がるでしょう。チームごとにリーダーを決めて個々の作業を監督することで相乗効果が期待できます。リーダーは統率者としての責任を感じて率先して作業にあたるでしょう。また、メンバーも人数が少ないほどコミュニケーションが取れるようになり、リンゲルマン効果の抑制に有効です。
リンゲルマン効果は人の心の内部に潜む「誰かがやってくれるだろう」と言う気持ちが、意図せずに勝手に出る状態です。これは同一作業に目標を持たず参加することに起因します。そこで有効な対策法とされるのが、個々の役割分担と目標を明確にすることです。しなければいけないことがハッキリすることにより個々の作業は義務化され、人は集中して能力を発揮するようになります。自分が役割をこなさなければ他の人が役割を全うできないことなども考えるようになり、個々が責任を感じるようにも変化するでしょう。
人は褒められることによりモチベーションが上がるため、適切な評価システムを導入することで、リンゲルマン効果を防止できます。ただし新しい評価システムを導入する場合には、事前にシステムを良く理解してもらうことが重要です。納得のいかない評価システムを導入しても効果は期待できません。単純作業や営業などならば、簡単に実績比較ができ評価も簡単です。しかし結果がすぐに出ない部署や、事務作業および製造工程の中間作業や間接作業などは評価が難しくなります。評価基準や評価結果を丁寧に説明しましょう。
リンゲルマン効果は意図せずして他人任せにしてしまう無責任な行為です。意図せずに行ったとしても、手抜き作業は許されるものではなく、働いてもらう企業側も修正に取り組む必要があります。責任感の欠如は、注目されず適正な評価がなされないことが大きな原因です。まず「会社は貴方を見ています」というアクションとして、1on1ミーティングなどで適正な評価と次の目標を伝えましょう。そして個々が責任を重く感じられるような役割分担を与え、自分が会社を支えているという意識を持たせることで、社員に責任感を持たせて大きく成長してもらいましょう。
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