記事更新日:2019年12月11日 | 初回公開日:2019年12月11日
人事・労務お役立ち情報 採用・求人のトレンド戦後以来の日本では、終身雇用制が社会のスタンダードに位置付けられており、一つの会社で長年勤めることが一般的と考えられてきました。しかし、二十一世紀に入るとITツールの目覚ましい進化を背景に、クラウドソーシングサービスを利用して副業を始める個人も増えています。また、長時間拘束される会社で働くよりも、独立して自分で時間を管理するライフスタイルを選択する個人も今後増えてくることでしょう。新しいライフスタイルが広がりを見せる中、企業の存続には従業員の離職率を下げるための取り組みが求められます。ここでは、離職率が高い企業に見られる共通点や、離職率を下げるための有効な手法を見ていきましょう。
新卒で採用した人材は徐々に辞めていき、三年も経過すればその三割が辞めてしまうということはよく知られています。厚生労働省の「新規学卒就職者の離職状況」によると、直近二十年間の大卒新入社員は、ほぼ全ての年度卒で三年以内に三割以上が離職したという結果になっているのです。また、高卒新入社員を見ると、平成元年以降は例年四割以上が三年以内に離職しているという結果に。新卒の学生には、業務上のストレスへの耐性が不足していたり、社会人としての自覚が欠けていたりすることが少なくありません。そのため、採用した学生のうちのある程度は早期離職すると考えておくのが一般的です。しかし、同業他社に比べて新卒の離職者が高い場合は、採用・教育コストの増加だったり、後継者の育成が困難になったりと、企業の存続に関わる問題となります。
離職率の高さは、どの企業にとっても頭が痛い問題です。離職率が低ければ、同業他社に比べて就労環境が良いこともアピールできます。そのため、離職率を低く見せるために巧妙にごまかしている企業も少なくありません。そもそも「離職率」とは、ある時点での社員の在籍人数に対し、一定期間(一年や三年)のうちにどれくらいの人が退職したのかを示すパーセンテージです。ところが、離職率の定義は明確に定められておらず、「勤続十年以上の社員の一年以内の離職率」など自社に都合良くカムフラージュしている場合もあるのです。
エン・ジャパンが行った8600名から集計したアンケート結果によると、退職を決めた理由として最も多かったのが「給与が低いこと」でした。競争の激しい現代では、多くの企業が従業員の給与を抑えて利益を確保するなど、余裕を持った経営が出来ていないケースが増えています。同業他社と比較してあまりにも給与が低い場合は、従業員の離職がますます増加することも考えられるでしょう。また、給与以外では「人間関係が悪かった」という回答も多く寄せられました。離職率の高さは、従業員の雇用環境に問題があるサインでもあるため、決して軽視してはならない指標なのです。
かつての日本社会では、世界からも高い評価を受ける「日本的経営」が当たり前でした。日本的経営とは、「終身雇用」「年功序列」「労働組合」の三本柱で成り立っており、戦後日本の経済成長の礎となったスタイルです。しかし、日本経済が成熟を迎えた現代になると人々は自由を求め、日本的経営は完全に力を失ったのが現状だと言えるでしょう。また、労働者からブラック企業と称される企業も増え、SNSによって瞬時に不利な情報を拡散されるリスクも高くなっています。離職率の高さは自社のイメージダウンを招いて存続の危機にも繋がるため、多くの企業が離職率の高さを常に気にしているのです。
離職率の高さは、応募を検討している求職者に大きな不安を与える要素です。また、社員がよく退職する事実であったり、退職理由が職場環境によるものだったりといった情報は、求人広告を打つ際にタブーとして扱われるケースがあります。離職率が高い企業ほど、仕事のやりがいや情熱といったポイントを強調し、離職率の高さが目立たないようにするのが一般的だと言えるでしょう。ですが、入社後になって求職者が事前に知っていた情報と齟齬があるとなれば、口コミで自社の社会的信用がさらに低下するリスクも考えられます。最近では、SNSによって離職率の高い企業のランキングを作成されるケースもあり、企業はちょっとしたミスでもすぐに信用を低下させられる場合があるのです。
規模の小さい中小企業ほど、社員一人にかかる責任も大きくなり、自らの業務の後継者を育てなくては事業の存続が危うくなります。せっかく新しい社員が入社しても、短期間で離職してしまったり、より規模の大きい同業他社へ逃げられてしまったりすれば、後継者を育成することはできません。また、離職率が高いということは普段から社員とのコミュニケーションが十分ではなかったとも言い換えられます。社員とコミュニケーションが取れる風通しの良い職場環境を構築しなければ、後継者育成が進まず事業存続の危機に立たされる可能性も高まると言えるでしょう。
新しく採用した社員がすぐに離職してしまった場合、再度求人広告を掲載する必要が出てきます。人材紹介などのダイレクトリクルーティングを利用する場合は、さらにコストも大きくなるでしょう。また、新規社員を獲得しても戦力にするための研修コストが必要になります。教育期間に発生する新入社員の人件費であったり、研修に参加する既存社員が自身の業務に集中できなくなったりと、余計な時間と費用を消費してしまうのです。離職率の高さは、社会的信用の低下や後継者育成に留まらず、時間と費用という重大なリソースの喪失にも影響すると言えるでしょう。
離職率の高い企業は、自社のイメージを良くするために、求人広告にはプラスの印象に繋がることを書きたくなるものです。ですが、実際に雇用者に渡す労働条件通知書が求人広告の内容と異なっているケースも少なくありません。求職者は、労働条件通知書よりも求人広告を見て応募してくるケースがほとんどですから、応募する企業に対して期待値も高くなっています。しかし、実際の労働条件がイメージよりも悪ければ「裏切られた」と感じて早期離職に繋がる可能性が高まってしまうのです。
企業を存続させる上で、他社よりも多くの仕事を受注しようと考えることはごく自然なことです。しかし、事業が増え過ぎると現場の最前線で働く社員へかかる負担はますます増加していきます。残業代を抑えるため、「自社のために」「愛社精神」といったスローガンを掲げてサービス残業を善しとする社風を持つ企業も少なくありません。働き方改革を経てさまざまなライフスタイルが選択できる現代では、より条件の良い企業を求めて転職を繰り返す個人が増えてきています。サービス残業が常態化している企業は、社員に見限られて離職率が高まる可能性があると言えるでしょう。
かつては年齢や勤続年数で昇進が決定される企業も多く見られました。しかし終身雇用制が難しくなってきている現代では、社員の出した成果に対して報酬が支払われることが重要視されています。明確な評価制度が整っていなければ、社員が何を努力すれば良いのか分からなくなったり、適切な評価を受けていないと感じたりして、離職に繋がりかねません。「会社に評価してもらえなかった」「不要な人材として扱われた」と感じた社員が口コミで自社の印象を悪くする噂を広めるリスクも考えられます。
離職率を下げるためには、社員が抱えている雇用条件面の不満を和らげる対策を取ることが重要です。安価で利用できる社員食堂であったり、自社製品を低価格で購入できる社員割引を導入したりと、家計のサポートになる分かりやすい取り組みは歓迎されるでしょう。また、将来の見通しが立たない事業から撤退したり、作業を効率化して労働時間を短縮したりすることで、時給や単価を上げる取り組みも重要です。給与形態やプライベート時間の確保を保障することで自社への満足度が高まり、離職率を低下させることに繋がるでしょう。
社員にとって、仕事で成果を上げて上司や同僚から認められることは、時に昇給以上のやりがいとなります。「やりがいや達成感を感じることができなかった」という退職理由が多い場合は、社内表彰制度を導入して社員の成果を称賛する機会を設けることも有効です。急に社内表彰制度を導入することが困難な場合には、ミーティングで社員の小さな行いを褒める時間を設けるのも良いでしょう。社員の張り切りを無駄にしないコミュニケーションの機会を増やすことで、やりがいを感じやすくなって離職率の低下にも繋がります。
退職したいと考えている社員は、周囲に相談せず一人で決断するケースが多いです。周囲から見れば退職したいと考えているようには見えないため、突然退職届を提出されたら上司や人事部は驚くことでしょう。退職届を出されてしまう前に、社員が悩みを抱えていないか、ストレスチェックを行うことで事前に把握することも可能です。2015年12月より、従業員が50人以上いる企業は、年に一回ストレスチェックを行うことが義務付けられました。従業員が50人未満の企業でもストレスチェックを導入することで、社員が一人で抱え込んでいる悩みを事前に把握することができるでしょう。
社員が退職する理由の一つとして「上司とのソリが合わない」ということが挙げられます。社員の個性を顧みずに十把一絡げでマネジメントを行ったり、鉄拳制裁も辞さないというような強い男タイプの上司だったりすると、部下の離職率が高まりかねません。適切なマネジメントスキルを身に付けていない上司のもとでは、部下は必要以上に多くのストレスを抱え込む可能性が出てきます。管理者教育研修を実施するなど、上司のマネジメントスキルの向上は離職率の低下にも大きく影響します。上司と部下との双方のコミュニケーションが改善することで、社員の定着率も高まっていくでしょう。
社員が採用面接で聞いていた条件と現場の業務内容に大きな隔たりがある場合は、裏切られたような気持ちになって退職を検討する可能性が高いです。面接で仕事内容について話すときは、応募者に気に入られようとは考えずに、事実だけを話すようにするのが良いでしょう。実際の職務内容のリストを見せたり、一緒に働くことになる先輩社員を面接に同席させたりすることで、入社後のミスマッチを予防して離職率の低下が期待できます。また、既に現場で働いており仕事内容を把握しているパートタイマーや契約社員を正社員に昇格させるのも、人材定着率アップにプラスになるでしょう。
新しく入社した社員が、短期間で先輩社員と同じレベルの成果を出すことは至難の業です。上司や取引先から叱責を受けるうちに「自分はこの仕事に向いていないのではないか」といった無能感を持つ社員も出てくることでしょう。新人が一日でも早く仕事を覚えて成果を出せるようにするために、OJT体制を整えておくことも重要になってきます。近年では、メンター制として新入社員一人ずつに先輩社員が付いて指導する仕組みを導入している企業も増えてきました。メンター制であれば、新入社員を教育しつつ先輩社員に上司としての意識付けを促す効果も期待できるでしょう。
離職を決断する最後の引き金となるのは、業務に対するモチベーションを失くしてしまうことだと言えるでしょう。日本では古くから「上司は厳しく、鬼であるべし」といったモチベーション理論を信奉する人が少なくありません。しかし、現代では心理学の発展によってモチベーション理論がしっかりと確立されています。社員が正しいモチベーション理論を身に付け、意識改革を促していくことで自社全体の活性化につながるでしょう。上司や若手社員に限らず一人ひとりがモチベーションを高く保てるようになれば、自社の業務にやりがいを見出して離職率の低下も期待できます。
せっかく新人を採用してもすぐに離職してしまうケースが相次ぐ場合は、自社の雇用環境や社風に改善点がないかどうかを見直す良い機会とも捉えられます。社員が定着する上で障害になりやすいのは、入社前に聞いていた職務内容と差があるなど、コミュニケーションが不足していることです。また、自社の業務にやりがいをもって働けるかどうかは、時に給与以上のモチベーション材料となり得るでしょう。福利厚生を充実させたり、成果が正当に評価される表彰制度を導入したりと、モチベーションアップのための取り組みが離職率の低下に効果を発揮するのです。
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