記事更新日:2022年03月16日 | 初回公開日:2022年03月10日
外国人採用・雇用 人事・労務お役立ち情報 採用成功事例初めに老人ホームが人手不足になる背景を紹介します。1つ目は、少子高齢化です。日本では女性の社会進出やライフスタイルの変化などの影響により、日本全体の出生数は減少傾向にあります。さらに内閣府が公表している高齢社会白書によると、令和元年の時点は日本の全人口に対する65歳以上の高齢者の割合は28.4%となっています。今後は少子高齢化の傾向がさらに加速すると予想されています。その結果、生産年齢人口の割合が減少し、多くの業界で人手不足が深刻化することが懸念されています。
2つ目は、介護業界全体の人材不足です。数ある業界の中でも、介護業界は特に人材不足の問題が深刻化しているといわれています。2018年のメディアの報道によると、介護人材の不足は、2015年の時点でおよそ4万人であったのに対して、2035年には79万人が不足するといわれています。また、2019年の介護労働安定センターの調査でも、55.7%の介護労働者が人手が足りないと感じていることが明らかとなりました。
3つ目は介護スタイルの変化です。数十年前までは、子供が高齢者の親を介護するという考え方が当たり前となっていました。しかし、近年は少子高齢化や女性の社会進出などの影響によって、自分の親と同居をする人が減っています。その結果、民間の介護サービスを利用する高齢者も多くなり、利用者の需要が高まっています。しかし、需要の高まりに反して介護人材が足りず、介護施設も不足しているのが現状です。今後もこの傾向が加速することが予測されています。
次に老人ホームが人手不足になる主な原因を4点紹介します。1点目は採用が困難であることです。現在の介護業界は人材獲得の競争が激しく、採用が困難な状況に陥っています。実際に介護労働安定センターの調査では約9割の介護事業所が「採用が困難である」とアンケートで回答しています。そのため介護事業者は、競合他社との競争に勝てる人材獲得戦略を立てるだけでなく、介護業界以外を志望している人材へのアプローチも検討する必要があるでしょう。
2点目は離職率が高いことです。介護労働安定センターの調査では、人材不足の理由として、18.4%の事業所が離職率が高いからであると答えています。介護業界の離職率は減少傾向にありますが、他の業界と比べるとまだまだ高いのが現状です。離職の理由としては、「結婚や育児のため。」や「理念や運営の在り方に不満があるから。」などの声が挙がっています。そのため、老人ホームの運営側は離職率を下げるための取り組みを積極的にすることが大切です。
3点目は人間関係が悪化することです。人間関係の悪化による退職は他の業界でも珍しくないでしょう。しかし、介護の現場は介護者やその家族、スタッフなど様々な人とコミュニケーションを取る必要があるため、他の業界と比べて人間関係のトラブルが多くなりがちです。人間関係がうまくいかないと仕事に対するモチベーションも低くなり、最終的には退職してしまうというケースも考えられます。
4点目は給与が低いことです。老人ホームを含む介護業界は他業界と比べて給与が低いと言われています。実際に介護業界の月給は20万円程度で推移しており、全産業の平均値である約30万円と比べてかなり低い給与水準であることが分かります。こうした理由から老人ホームに中々人材が定着せず、人材不足に陥っています。ですので、多くの人材を獲得するためには、給与面でのアピールも必要になるでしょう。
最後の5点目はネガティブイメージを持たれやすいことです。介護業界への転職を促すにあたって、大きなハードルとなるのが、ネガティブイメージです。老人ホームを含む介護業界に対してはきつい・汚い・危険の「3K」のイメージを持っている人は一定数存在します。実際に長崎県が行なった調査によると、8割以上の人が「介護の仕事を行なってみたいと思わない」と回答しています。こうしたイメージを変えるためには、情報を発信して介護業界全体のイメージを向上させる取り組みが必要となるでしょう。
続いて、老人ホームの人手不足を防ぐための対策をいくつか紹介します。1つ目は、労働環境を整えることです。働きやすい労働環境を整えることは離職率の低下に直結します。例として。職場のIT化があげられます。具体的には、日々の日報や管理書類の作成をペーパーレス化することで、時間短縮や工数削減をすることが出来ます。他にもユニットケアと呼ばれる介護手法は、多くの老人ホームで導入されています。
2つ目の対策は、外国人人材を採用することです。先程もお伝えしたように、少子高齢化の影響によって日本の労働人口は今後も少なくなることが予想されています。そこで、外国人人材を介護人材として採用する流れが高まっています。特にベトナムやインドネシア、フィリピンといったアジア諸国から多くの人材が日本に働きに来ています。ただし、外国人人材の受け入れには就労ビザの問題などもあるので、事前準備が必須となります。
3つ目の対策は、採用の手法を工夫することです。先程もお伝えした通り、多くの介護事業所では採用が困難な状況にあります。そこで、採用手法を工夫して人材を多く集める必要があります。具体的な採用手法としては求人広告で募集をする、ハローワークに求人を掲載する、人材派遣会社を利用するといったものがあげられます。こういった手法の中から自社に合ったものを選ぶようにしましょう。
4つ目の対策は介護業界全体のイメージアップを図ることです。介護業界のイメージアップに向けて、日本政府も施策を打っています。例えば、2019年に勤続10年以上の介護福祉士に対して月額8万円相当の処遇改善を行なうと発表をしています。しかし、介護福祉士の平均勤続年数は6年なので、条件に合う人材はあまりいないのが現状です。そのため、介護業界にも広報やPRなどの視点を取り入れることが求められています。
5つ目の対策は資格取得の支援をすることです。介護業界では、実務者研修、介護福祉士、介護支援専門員など、所有する資格によって業務の幅や待遇が大きく変わります。しかし、シフトや費用の面から中々資格を取得できずにいる人材も多くいます。そこで、そういった人材に対して資金援助などを行なう老人ホームも増えてきています。資格を取得することで報酬の増加も期待できるので、モチベーションアップにも繋がるでしょう。老人ホームに在籍する介護士のキャリアプランによって、資格取得を支援する体制を作ることで人手不足の解消にも繋がるはずです。
6つ目の対策は、教育制度を整備することです。多様化している介護のニーズに対応するためにはスキルを持った介護人材の育成が不可欠です。そして、優秀な介護人材に育てるためには教育制度を整える必要があります。具体例としては、介護職員初任者研修や実務研修などの研修制度があげられるでしょう。長期的な目線で教育制度を整え、介護人材を育成することで定着率アップや離職率低下にもつながるでしょう。
最後に人手不足を解消した老人ホームの事例を2つご紹介します。1つ目は社会福祉法人甲山福祉センターが運営する特別養護老人ホームの甲寿園です。甲寿園では30年以上前から女性が働きやすい職場の整備をしています。例えば産前産後休暇や生理休暇、子供が病気になった際に休める制度などが導入されています。こうした制度が充実しているため、産休や育休後の復帰率はほぼ100%となっています。甲寿園の例のように、採用だけでなく、離職率を下げるための取り組みも人手不足を解消するために重要となってきます。
2つ目に紹介するのが社会福祉法人あかねです。社会福祉法人あかねでも、様々な取り組みがなされています。例えばケアマイスター制度と呼ばれる独自の試験に合格することで、従業員はキャリアアップや活躍の場を広げることが出来ます。他にも5年目までの従業員に実施するルーキーSEE研修や若手管理職向けの次世代リーダー研修なども実施されています。こうした取り組みの結果、離職率は大幅に減少しました。
今回は、老人ホームの人手不足の問題について解説をしました。老人ホームの人手不足は対策を打たなければ、今後はさらに深刻化することが予想されます。ですので、まずは人手不足となる原因をしっかり理解することが大切です。その上で今回紹介した外国人人材を採用する、労働環境を整えるといった具体的な対策に取り組むと良いでしょう。それぞれの施設が対策をして、老人ホームの人手不足を解消しましょう。
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