多国籍企業とは?【意味や出現した背景など】

記事更新日:2020年11月18日 初回公開日:2020年11月11日

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企業が海外に進出し、世界の国々で生産や販売の拠点を広げていくと、国際間で広いネットワークを持つ多国籍企業と呼ばれるようになります。この多国籍企業が経済的、社会的に発展していくと、その事業活動を行っている国に恩恵をもたらします。一方で、非倫理的な可能性も秘めており、それはそれらの国々に対する支配や、開発途上国の貧困に付け込んだ搾取など。多国籍企業は、拡大事業を営む現地国と本拠地の双方にとり、どのような効果、影響をもたらすのでしょうか。そのメリットとデメリットを確認したいと思います。

多国籍企業とは

複数の国にわたって世界的に活動している大規模な企業のこと

多国籍企業とは、複数の国にわたって世界的に活動している大規模な企業のことです。世界的な大企業の中で、有名なものでいえば、Microsoft、コカ・コーラ、マクドナルド、トヨタなどが挙げられるでしょう。多国籍企業は、超国境企業や世界企業などとも呼ばれます。定義としては、本拠のある国以外で生産やサービスを行う企業となります。また2か国以上に拠点を有する企業や、海外直接投資をする企業のことを指すことも。

多国籍企業の現状

グローバル化の進む日系企業

高度経済成長期に日本企業も多くの多国籍企業を輩出してきました。日本企業が海外進出する理由は数多くあり、海外市場の大きさ、人件費の安さ、取引先の海外進出などが代表的な理由でしょう。一方で国内市場の縮小という理由もあります。日本は少子高齢化に伴い人口は減少の一途。日本の人口、約1億3000万人に対し、世界全体でみれば人口は約75億人。労働人口の観点からも日本企業は必然的に海外に目を向けざるを得ません。

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多国籍企業の現状

グローバル化の進む日系企業

発展途上国は先進諸国に比べて人件費や材料費が安い。発展途上国に海外進出すれば、人件費は日本国内の20%程度に抑制可能。先述の少子高齢化により、日本は労働力確保が難しく人件費が高くなるといわれています。またコストを下げるため、海外の安い材料は魅力的。必然的に日本企業は海外進出が進んだといえるでしょう。また取引先も顧客要請もしくは自主的に大企業の動きに合わせて動くことも、大企業の多国籍企業化が進行する背景です。

多国籍企業が出現した背景・理由

より安く効率の良い企業活動が展開できる

大企業が発展途上国へ進出すると、受け入れた側の国では、その企業の技術、仕組み、経営体系をできれば吸収したい。吸収や模倣ができないとしても、関係会社、つまりサプライヤーや生産のアウトソースとして密着性を持とうとします。多国籍企業側でも安い資材や労働力は魅力。そこで相互依存が成立します。また、多国籍企業の持つ技術力は、既にその企業では過去のものでも、地場産業の企業には魅力。そこで技術移転が成立するのです。

関係国の相互依存と技術移転

輸入品が国産品と競合すると、貿易摩擦が発生します。他国の安価な競合品が入ってくると、国内の生産者がダメージを受けます。この事態を回避するための代表的な対策が、関税をかけること。しかし関税には対抗策があり、たとえば製造業ではこの問題を解決すべく、他国で生産をすることで対策します。多国籍企業であれば、貿易相手国に生産拠点を持つことが可能。直接的な関税を回避でき、相手国側の雇用の促進にもつながる活動となります。

多国籍企業の形態

貿易摩擦回避の製造業

物流は、指定された場所・時間に注文通りのものをダメージなく届けることが目標。企業活動や国民生活を支える重要な役割を担っており、経済社会にとって必要不可欠な構成要素といえるでしょう。輸送コストの削減や輸送日数の短縮などの面で国際物流サービスが発展することが、企業活動のグローバル化を加速させることになります。代表的な多国籍企業であるAMAZONなどは、この実現にむけてロジスティクスもとりこんだ活動をしています。

ロジスティクスの国際化

多国籍企業は、その運営規模が大きいことから、スケールメリット面で有利といえます。大規模生産は、平均原価と消費者価格を下げることが可能。これは固定費が非常に高い製造業では重要な要素です。とくに自動車や航空機メーカーにとって、多国籍企業化はとても有利になるといえるでしょう。多国籍企業が活動することで、現地の人々は、提供される商品や製品を比較的安価で購入が可能。そうなれば家計に恩恵をもたらすことになります。

多国籍企業のメリット

巨大な規模が消費者にとって利便性が良い

多国籍企業は、事業活動を行う国だけでなく、いくつもの国をまたいで経済活動を行うことで、国内と海外双方の市場を拡大させていくことになります。グローバルな多国籍企業は人材が必要であり、関わる国の求人市場を作り出し、雇用を創出。これは発展途上国への大きなメリットになっています。一方、現地の国へ投資する対内投資により、発展途上の経済において必要とされる外貨をもたらし、その国の富を生み出すメリットもあります。

雇用と富を生む

国内でもよく知られた例として、大型スーパー進出の影響が分かり易いでしょう。価格優位な大型スーパーの進出で、その地域の昔ながらの商店街の商店の経営が難しくなり、潰れる事態を引き起こすことがあります。消費者側でも商品の選択肢が狭まってしまう。必要なコストが低くなり、価格で競争優位に立つ多国籍企業は、この大型スーパーの例に酷似しており、もっと大規模な影響をもたらします。市場の独占という弊害を生みだしかねません。

多国籍企業のデメリット

市場の独占につながる

新興諸国における例として海外の多国籍企業が進出すると、自然にその業界の覇者となり、独占する方向に進んでいきます。同し業界の中小規模の会社は、不可能ではないにしろ、競争は非常に困難に。その結果、新しい企業が生まれにくくなりイノベーションの停滞につながってしまうことも。また、政治家や権力者は多国籍企業から献金を受け取ることで、彼らに優位に働くルールを定めがち。それ以外の企業には不利な状況が生まれることもありえます。

覇者となり新興勢力の芽を摘む

多国籍企業は、安い労働力を求めます。発展途上国の労働者は、安定収入を得るため、職種を選ばず仕事に就きたがり、安い賃金でも大手企業に働こうとするでしょう。結果、そのような労働者は、劣悪な環境で、安い賃金で長時間労働を強いられることもありえます。またサプライヤーにとって、多国籍企業の安定した購買力は大きな魅力。その市場で大きな影響力を持った多国籍企業は、最低価格を提示する業者が優先することも。結果として、その価格協力した業者を苦しめる事もありえます。

多国籍企業が警戒すべき点

労働力の搾取

多国籍企業は、たとえば製造業の場合、巨大な製造設備を必要とします。その結果、大量の排気ガスや廃棄物を生み出します。それらの生み出された排出物が、環境に大きな影響を与える事も少なくありません。利益追求の中で、甘い環境基準での生産活動は、環境汚染につながる再生不可能な資源利用に関わる危険性を持っています。環境面での基準の低い国に多国籍企業が進出した場合、その企業が環境への配慮が薄いとしたら、大きな環境破壊を引き起こす可能性をはらんでいます。

環境へのダメージ

企業は、税を抑えることで、最終的に利益を高めようとします。多国籍企業となると、この節税活動は大規模に。複数の国で事業展開している場合、法人税を抑える税逃れ、つまり合法的な節税対策は困難ではありません。国としては、本来計画していた税収が減ることに。しかも、税額は大きい為、政府は多国籍企業に対して、便宜を図ることもあり得ます。この租税回避に対して、経済協力機構(OECD)も問題視しており、多国籍企業への新しい課税の仕組み検討しているのです。

多国籍企業の租税回避の対応策

税負担を軽減する租税回避は深刻な問題

これほど世界中どこでも飲まれている飲み物はないといえるでしょう。それはコカ・コーラ。多国籍企業の代表格であるコカ・コーラ社は、独自の経営システムで最新のIT環境と顧客管理システム、流通ネットワークを活用して経営の合理化を図る一方、地域に密着した販売の強さを誇っています。「ファンタ」や「スプライト」も売れ筋商品。得にファンタのテイストのバリエーションには新規性や工夫が見られます。また、非炭酸飲料であるコーヒーやスムージーなども加えています。

多国籍企業の代表例

コカ・コーラ

マクドナルド社はどこの国でも独立開業させるフランチャイズで成功した多国籍企業といえます。マクドナルドの収益のおよそ7割にあたる年間200億ドルは、オーストラリア、カナダ、中国、フランス、ドイツ、日本、イギリス、そしてもちろんアメリカの店舗から上がっています。しかし、残りの「たった3割」しか占めない国々に注意を向けている事も事実。「パテ」は牛肉だけにこだわらず、国によっては宗教的な補正による羊肉も採用。現地の人々が親しめるようなアレンジ例です。

マクドナルド

もとより、製造業で自動車のジャンルは、貿易摩擦回避策で、他国の現地生産化によって、多国籍企業化がすすめられてきました。トヨタ自動車は独自の品質管理を確立し、米国でのバッシングも克服。トヨタ自動車は、28ヶ国/地域に53の海外の製造事業体があります。また、トヨタ車自体は海外の170ヶ国/地域以上で販売されています。そのうち日本、アメリカ、ヨーロッパ、オーストラリア、中国などに研究開発拠点を設けており、日本の多国籍企業の先駆け的存在といえるでしょう。

トヨタ

今まで見てきたように、企業の多国籍企業化への流れは、大手製造業などの生産拡大に伴う輸出入の現地拠点化から始まりました。その結果、必然的に発展途上国を巻き込むことになり、非欧米的な倫理観、価値観をも取り込むことになったのです。異なる文化のパターンへの正しい理解と、多国籍企業の構造に大きな影響を与えたといえるでしょう。この変化のプロセスは、インターネット革命によって促進され、多国籍企業は取引コストの低下によって効率的な組織構築ももたらしました。

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多国籍企業化を進める流れ

輸出入の現地拠点化へ

売上拡大を目指す企業は、利益追求の結果として、海外に進出。製造業に代表される貿易摩擦回避策も、多国籍企業化に拍車をかけました。はじめは、自国の利益につながる活動が、副次的に海外拠点の国々の経済に影響を与える結果となっています。雇用促進というポジティブな要素も、ともすると労働力の搾取的活動との指摘を受けかねません。生産拡大は、広域的な環境汚染にも繋がってしまうことも。多国籍企業は自国だけでなく他国の経済や環境に対する責任を果たすべきなのです。

まとめ

多国籍企業は自国だけでなく他国の経済や環境に対する責任を果たすべき

売上拡大を目指す企業は、利益追求の結果として、海外に進出。製造業に代表される貿易摩擦回避策も、多国籍企業化に拍車をかけました。はじめは、自国の利益につながる活動が、副次的に海外拠点の国々の経済に影響を与える結果となっています。雇用促進というポジティブな要素も、ともすると労働力の搾取的活動との指摘を受けかねません。生産拡大は、広域的な環境汚染にも繋がってしまうことも。多国籍企業は自国だけでなく他国の経済や環境に対する責任を果たすべきなのです。

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