記事更新日:2024年04月03日 | 初回公開日:2024年04月03日
用語集 人事・労務お役立ち情報 採用・求人のトレンドシニア雇用とは、従業員に70歳まで就業機会を確保する制度です。少子化が進んでいる日本では、労働力を確保するためにシニア世代を働き手として雇用する企業も以前より増えてきています。2021年に高齢者雇用安定法が改正されたことによって、定年制度廃止か定年の年齢を70歳まで引き上げる事が企業の努力義務とされました。公的年金の受け取りが60歳から65歳に引き上げられたことも、シニア採用が広がっている理由の一つです。
シニア雇用が進んでいる背景には、人口減少に伴う人手不足の慢性化があります。日本では少子高齢化が深刻化しており、労働人口の減少も歯止めがかかりません。パーソル総合研究所の「労働市場の未来推計2030」によると、2030年には644万人の人手不足に陥るとされています。女性の社会進出が広がりつつありますが、それでも正社員として働いている人は多くなく人手不足を解消する方法として働くシニアの増員が手段の一つとして考えられています。
シニア雇用は、高年齢者雇用安定法の改正によって広がりを見せています。2020年の改定により、企業に努力義務として70歳までの継続雇用・定年を70歳に引き上げる・定年制度の廃止などが求められています。慢性的な人手不足により、企業としても長く働いてくれるシニア層の雇用を継続し人材確保を行うところも増えてきています。厚生労働省の調査によると、2017年には65歳を定年とする企業が約16%だったものが、2022年には約21%と少しずつ定年の年齢が上がってきている事が分かります。
シニア雇用が進んでいるのは、働く意欲のあるシニア層が増えているからです。内閣府が現在働いている60歳以上の労働者を対象に行っている高齢社会白書によると、葯9割の人が70歳以上も働きたいと回答しています。70歳以上も働きたいと回答した人の多くが、収入が欲しい・働くことで老化防止になるという回答を行っていました。収入が欲しいと答えた人の多くが60歳~64歳に多く、公的年金の支給年齢が60歳から65歳に引き上げられたことで空白期間をなくしたいと考えている人が多いことが分かります。
シニア雇用を行うメリットは、労働不足の解消が行える点です。少子高齢化や労働人口の減少により、採用市場は新卒・中途共に売り手市場が続いています。そのため、求職者にとってメリットだと感じてもらえる部分が少ないと、中々人材を確保することは簡単な事ではありません。定年年齢の引き上げや年金受給年齢の引き上げによって、定年とされている65歳を超えても働き続けたいと考えているシニア層は一定数存在します。シニア雇用を進める事で、人材不足を補う事が可能です。
シニア雇用を行う事で、経験や人脈の活用を行う事が出来ます。若年層の採用は長く働いてもらうという観点では重要ですが、現代では終身雇用という概念はなくキャリアアップのために転職をする人も少なくありません。また若年層の人は知識や経験が浅い人も多く、教育をするためにコストを掛ける必要があります。若年層と比べ、シニア世代の人たちは社会人経験が豊富であるため様々な知識を持っています。専門的な知識を持っているシニアを採用することが出来れば、即戦力として働いてもらう事も出来ます。
シニア雇用は、職場の多様化の実現に繋がります。昨今ではグローバル化と共に、ダイバーシティが企業に求められています。従来であれば、定年後に再雇用を行う事は殆どなく若年層を採用するという企業ばかりでした。しかし多様性が求められている現代では、バックグラウンドなどを問わずに働きたいと考えている人に労働の機会を与える事が重視されています。そんな中でシニア雇用を進める事で、多様性が実現している企業としてブランドイメージなどにも繋がっていきます。
助成金や税制上の優遇を受けられるのも、シニア雇用のメリットです。国としても日本の労働力を確保するために、シニア採用を推奨しています。65歳以降の定年延長や継続雇用制度の導入を行なう企業に対して、「65歳超雇用推進助成金」を活用することが可能です。雇用推進助成金では、3つのコースに分かれておりどのコースにするかによって支給される助成金は異なりますが要件がそこまで厳しくないため、企業にとってもメリットの多い制度です。またシニア雇用を行っている企業には税制上の優遇も受けられます。
シニア雇用のデメリットは、健康面における様々なリスクへの不安です。シニア世代は若年層や中年層の人たちと比べ、健康上問題を抱えている事も多いため健康状態への配慮が必要になります。健康面に関して大切なのは、健康状態の変化に本人と企業側が気付ける仕組みになっている事です。そのためには、定期的な健康診断の実施や毎日の体調チェックなどを習慣化しておきましょう。企業としても業務負荷が大きくならないように配慮を行う事も大切です。
シニア雇用は、デジタルへの対応が難しい人もいるという点がデメリットです。インターネットなどの普及により、高齢者でもスマートフォンを持ち活用している人は増えています。しかし、全ての高齢者がデジタルに対応できているわけではなくアナログな人も少なくありません。そのため、業務に必ずパソコンを使わないといけない内容のものによっては、スムーズに業務が行えない人も出てきます。デジタルに対応できているかどうかを見極め、適切な配置・業務内容を振り分ける事が重要です。
能力を見極める必要性があるのも、シニア雇用のデメリットといえます。シニア層は社会人経験が豊富な人が殆どであるため、知識や経験は同じ業務をしている人よりもたくさん持っています。しかしその知識や経験を活かすことの出来ない配置を行ってしまうと、働く事へのモチベーションが低下する可能性があります。経歴や能力に見合った仕事を振り分けることで、シニア世代もやりがいを感じ能力を最大限に生かすことが可能です。役職名なども工夫し、モチベーション維持するための対応も必要になります。
シニア雇用を行う際は、シニア人材への配慮を怠らないようにしましょう。シニア雇用はただ雇うだけでなく、経験やスキルを最大限に生かせる配置を行う事が重要です。経歴や経験にあった業務を割り振ることで、シニア社員もやりがいを感じる事が出来ます。経験などに基づいて配置を行っていない場合は、モチベーション維持が出来なくなってしまい周りへの悪影響にも繋がりかねません。業務内容だけでなく、周りに若手社員が多い部署に配属すると空気に馴染めないという事も起こるため、配慮が必要です。
シニア雇用は、中長期的に世代交代を行うようにしましょう。シニア世代を雇用することで、企業として持っていなかった知識や能力を増やすことが出来ます。しかし経験豊富なシニア層から若年層に知識を引き継げるような仕組みを作っていなければ、シニア雇用を十分に生かせているとは言えません。せっかくシニア雇用を行っているのであれば、中長期的な目線で若年層へ知識の引継ぎや人材育成を行っていく事が大切です。そうすることで、若年層にも必要な知識を身に付けてもらう事が出来ます。
シニア層を雇用する際は、若年層の不満感を解消することも必要です。シニア雇用は、企業としてもメリットのある制度ですがしっかりと従業員に説明せずに導入してしまうと不満が出てくる可能性もあります。シニアを若手の下に置いた場合や、専門外の部署に配属した場合にシニア層が十分に能力を発揮できない恐れがあります。そうなった際は業務内容に対しての勤務態度などから、若年層が不満を抱いてしまう可能性があります。ダイバーシティ化を目指すためにも、シニア雇用への不透明感をなくすことが重要です。
給与の扱いについて明確にしておくことも、シニア雇用の注意すべき点です。定年後の賃金は、今まで働いていた時と比べて半分から8割程度に減っていることが殆どです。シニア雇用される本人も、今までと同様の金額はもらえる事はないと思っていてもダメージは少なくありません。シニア雇用をする際は、いきなり減額を行うのではなくシニア層の生活が不安定になってしまわないよう配慮をすることが大切です。更新する年度ごとに少しずつ減額していく・時給換算で給料を支払うようにするなど事前にしっかり決めておきましょう。
シニア雇用を行っているのは、株式会社ノジマです。ノジマでは、定年後の再雇用契約を上限80歳までとする就業規則を導入しています。2020年7月に定年の年齢を80歳まで引き上げ、臨時従業員として働けるように改定を行いました。しかし従業員から80歳を超えても働きたいという声が多く、2021年には10月には80歳の年齢上限を撤廃しています。シニア社員の給与は正社員の時と同一になっています。シニア社員は希望を出すことで勤務日数や時間を調整することが可能となっており、働きやすい環境を提供しています。
ダイキン工業株式会社でも、シニア雇用を行っています。ダイキン工業では、2021年に再雇用を行う年齢を65歳から70歳まで延長を行いました。ダイバーシティマネジメントを経営の柱の一つとして考えているダイキンでは、シニア層が活躍できるような職場環境推進に長年取り組んでいます。更にシニア層が長く活躍できるように従来の報酬や評価設計制度の見直しを測り、シニア人材が活躍しやすい環境整備にも力を入れています。シニア人材が活躍することによって、事業成長を行っていく上で必要な人員確保などを行っています。
シニア雇用が進んでいる背景や、メリット・デメリットについて解説しました。シニア人材を雇用することで、企業は人材不足の解消だけでなく企業としての戦力強化や若手社員の育成など様々なメリットがあります。シニア雇用を企業としていい影響にするためには、健康面への考慮や経歴とのマッチング・モチベーションに対しての考慮などが必要です。シニア雇用を行うには、シニア人材への配慮だけでなく周りの従業員への周知や理解も欠かせません。シニア人材が活躍できる環境づくりを行い、人材不足解消を行っていきましょう。
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