記事更新日:2020年05月25日 | 初回公開日:2019年09月13日
採用・求人のトレンド グローバル経済 用語集 人事・労務お役立ち情報ダイバーシティとは多様性。そしてダイバーシティマネジメントとは多様な人材を受け入れる経営上のマネジメント体制の事です。具体的にダイバーシティマネージメントでは組織を構成する人材がもつそれぞれの個性(違い)を受け入れ、一人ひとりがその能力を発揮できる体制と環境を整え、組織の生産性を上げることです。人材それぞれの性質の違いは人種や性別、年齢や国籍、身体的特徴(身体障害者も含む)だけではありません。生活環境、バックグラウンド、宗教、生き方や価値観、性格や嗜好なども多種多様。また、雇用形態、働く時間や場所の違いといった働く条件の違いが存在することも多様性の要素と言えるでしょう。
日本は歴史的に男尊女卑の背景がある国でした。そのような日本で女性に対する差別を是正するために、男女雇用機会均等法などの制度が整備されたのが1980年代。しかし、古くからの意識慣習により、本当の意味での浸透にはかなりの年数を要しています。こうした歴史的背景に根差す、就労上の性差の克服にはどうしても時間がかかったため、現在でも、欧米諸国との比較数値で、女性の社会進出の遅れが指摘されるほど。それで日本企業におけるダイバーシティマネジメントの手始めは、のちに女性の活躍促進と称される女性の社会進出だったのです。
少子化による人口の減少により、日本企業の人材の多様化は避けられません。2019年の統計によれば日本人総人口は、1億2618万1千人で減少の一途。2050年には総人口1億人を割るという推計もあります。このような人口減の中で労働人口を確保しなければなりません。結婚や出産前に戦力だった主婦層の職場への復帰や、ビジネス感覚や経験値の高い定年を迎えたシニア世代、また日本での高収入の就労を求める外国人労働者の活用が喫緊の課題でしょう。しかし、このような労働力として活かしきれていない人材を活かしてもなお足りないほど、日本の人口減少は深刻です。あらゆる人材を活かしていく必要性が高まっています。
日本企業は縮小していく日本市場のマーケットを補うため、海外で事業を展開していかなければ、成長は困難です。ただし日本だけで競争力を高めてきた企業は、海外での事業運営に関するリテラシーが低い事がが現実でしょう。グローバル事業を展開する上で、外国人を含めたグローバル人材の確保が急務です。そこで必然的に日本人と外国人の協働が必要になり、あらゆる人種や国籍の人材と一緒に成果を出す事が必要でしょう。島国風土の濃い日本人は、異なる国の文化や宗教などの違いを受け入れることが苦手です。この弱点克服のためダイバーシティマネジメントが必要なのです。
これまでの日本の経済発展をけん引してきたのは、製造業でありその技術力でした。しかし、世界にさまざまなモノが溢れ、テクノロジーが進歩して、安価で性能がよいモノが手に入るようになりました。世の中のユーザーは新しい価値を求め続けます。社会の変化が一段と激しくなり、日本企業の競争環境は大きく変化をしました。もはやお家芸のモノづくりだけでは顧客に新しい価値を提供することは困難。これからは、あらゆる属性の顧客を理解する力や対応力、さまざまな視点や発想でそこから新しい価値を創造する力を備える必要があるのです。
激化する競争の中で企業が生き残っていくためには、属性にかかわらず、高い成果を出してくれる有能な人材が必要なため、採用の対象層の拡大が不可欠でしょう。多様な社員によって、多様な顧客ニーズや要求に対して、営業、マーケティングや商品開発などで、迅速かつ的確に対応。多様性をもつ組織は、多様な人材のアイデアや発想、もち得るスキルが統合され、組織全体でイノベーションを生み出す力が高まります。多様な人材による発想力、柔軟性、品質、スピードが向上することで、ビジネスチャンスを逃さず、タイミングよく捉えることができるです。
革新性や創造性は、異なる視点、経験やアイデアなどが刺激し合い相乗効果によって生まれることが多く、均一的チームからイノベーションは期待しにくいでしょう。同質性の高い企業では、大多数の人が似たような視点や価値観を持つため、革新的なアイデアや問題解決策は生まれにくく、多様化する顧客のニーズにも適切に応えられないため、組織の競争力を低下させます。これが異質性の高い企業では、多様な人材のさまざまな経歴、個性や能力をフルに発揮させることにより、変化激しく不確実な経済環境に柔軟に対応することが可能になります。
適切なダイバーシティマネジメントは、ひとつの企業に長く勤務することで狭い視野を持ちがちな日本のビジネスパーソンに必要なことといえるでしょう。仕事においても、人としても、多様な人材との接点は自己成長を促進します。「差別をしない」「相手を尊重する」ことにより、違いを受け入れ、協働していくことは、視野を広げてくれるはずです。理解され、受け入れられていることの認識は安心や信頼感を生むもの。働きやすい労働環境をつくり、従業員の満足度が上がります。また外部からもよい評価を受け、企業価値を高めることができるでしょう。
ダイバーシティマネジメントにより企業が個々の個性や長所を理解し、社内全体にもその理解が浸透。そして企業と働く個人としての距離が縮まります。またこれまでの配置や役割分担のくくりを外すことが増えれば、従業員ひとりひとりが活躍できる場が拡大するでしょう。マネジメントによって個人が会社に理解され、受け入れられていることの認識は安心や信頼感を生み出すでしょう。意識されるようになった個人は尊重されていることを感じて働くことができ、従業員に心理的安全性が構築され、能力も向上し、生産性の高い組織作りにつながります。
日本人は互いの違いを深く掘り下げてきませんでした。これは性差のあった歴史的背景、終身雇用制などの日本の社会環境がもたらしている意識の希薄性によるもの。マネジメントによって管理職を積極的に目指す女性、経験豊富なシニア層による問題解決の迅速化、集中力と向上性の高い意欲ある外国人などにより刺激も多様化。職場にさまざまな視点を持つ人がいることで多様なアイデアや気づきが生まれ、仕事においても、人としても、多様な人材との接点は自己成長を促進します。違いを受け入れ協働していくことは視野を広げます。
多様な人材を雇用するとそれだけ組織の中に違いの要素が増えます。価値観の違う者同士の対立や摩擦も起きやすくなることは否めません。正しいマネジメントの効果としてハラスメントの低減が期待できるのですが、無理解や低モラルの環境下では逆にハラスメントを発生させる確率は高まります。また働き方が多様化すると、これまではひとつの場所(オフィス)で一緒に完結してきた仕事も時間や場所がバラバラになることで連携が明らかに変化することも。その変化が混乱を招き、従業員やチームのパフォーマンスが低下することもあります。
従業員がそれぞれの違いに対し、偏見や先入観をもっていることがあります。たとえば、子どもがいるから無理だろう、障害者だからできないだろう、など本人にとっては他者への心遣いであっても決めつけてしまっていることも。決めつけられた人にとっては、本意とのズレや不快になることもあるでしょう。このような誤解が積み重なってくると互いにギクシャクしチームワークが低下しがちになります。さまざまな待遇や条件のもとで働く従業員に対する人事評価は一律では不公平。不公平さを感じれば従業員の不満や離職につながる可能性が出てきます。
ダイバーシティマネジメントは経営側の本気度が成功を左右するといわれます。その強いメッセージを社内に伝え、従業員を巻き込む必要があります。現状をしっかりと把握し、経営者自身が理解することが必要不可欠でしょう。そして、従業員の個性や価値観などを理解しようとする姿勢と実行する姿を「ブレずに」見せていくことが重要です。マネジメントの効果は短期的に得られません。経営陣と現場の意識と実践によって醸成していくものなのです。全従業員がダイバーシティを正しく理解し、適切な行動をとらなければ先に挙げた問題や課題が起こりやすくなります。
あらゆる個性や特質も受け入れ、活かすためのダイバーシティマネジメントですが、一部の女性、障害者、LGBTなどのマイノリティ人材への配慮だけに偏ることが散見されます。これでは、本末転倒。どのようにすれば多様性を活かし、人材を配置し、イノベーションを生み出し、組織の生産性を上げられるかを考えた上で施策を進めることが大切です。その取り組みと自社事業や業務とのつながりについて、従業員がの深い理解が重要。経営者は従業員に「だからこそこの取り組みがある」としっかりと伝えて、納得と理解を促すような働きかけが必要です。
制度を整えても、時短勤務をいい出しにくかったり、オフィス以外の場所で作業できるインフラが整っていなかったりすると、制度は形骸化します。全従業員に、経営者自らがダイバーシティを尊重していることをしっかり共有し、制度の活用が難しければ随時見直す姿勢があることを理解させましょう。組織を形作るのは経営者だけでなく従業員も要素の一つです。ダイバーシティの浸透には全従業員の理解が大切。このような大きな改革に対して、個々の従業員に理解を促すには立場の異なる従業員1人1人に理解してもらうように個人面談をすることが有効です。
職場におけるダイバーシティを浸透させることで、人種や性別、年齢、信仰などにとらわれない多様な人材が活躍できるようになり、その結果企業の生産性や競争力がアップするでしょう。ダイバーシティを推進するにあたり、まずは制度を整え、多様な人材を受け入れる環境を作ることから始めます。個人のニーズに応じた雇用形態や働き方の選択肢を用意し、フルタイムやパートタイム、オフィス勤務、在宅勤務など、柔軟な働き方ができるように制度の整備が必要です。また、オフィス内のバリアフリー化、資料のオンライン化を進めるなども環境作りのひとつと言えるでしょう。
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