記事更新日:2020年05月01日 | 初回公開日:2019年12月18日
採用・求人のトレンド グローバル経済 人事・労務お役立ち情報「働き方改革」というフレーズを聞く際に、ある程度の固定概念で出来上がっていることが多いでしょう。それは、会社側、労働者側どちらの視点で見るかにもよりますが、共通している部分として、マイナスの部分とプラスの部分が混在しているという事実です。2018年にいわゆる労働施策総合推進法の改正を皮切りに次々と法改正が発出されていきました。罰則が付されているももの、努力義務に留まるもの、どちらの視点で見るかによって、メリットを享受するのか、デメリットを甘受せざるを得ないのかに分かれます。
日本の生産年齢人口(15-64歳)は1997年を境に減少に転じており、この減少傾向は先進国の中でも顕著です。また、日本の総人口は平成20年の約1億2,800万人を筆頭に減少に転じており、労働生産性も先進国に大きく水をあけられている現状です。そして、2019年には初の出生数90万人割れが決定しました。これは以前から予見できていた為に、その打開策として議論されていました。働き方改革とは「一億総活躍社会」の実現に向けた取り組みと銘打ち、国民全員に活躍してもらう土壌の形成と言えるでしょう。
働き方改革は労働力不足を補うべく、一億総活躍社会を掲げ、多様な働き方の推進、不合理な待遇差の改善、長時間労働の上限規制等が挙げられます。一つ一つ目標を達成していくためには、正確な情報発信から始まり義務の履行が必須です。まずは、少子化による労働力人口の減少への対応として、特に顕著な傾向が表れている女性、高齢者の「労働市場への参加」が喫緊の課題と言えるでしょう。
働き方改革関聯法については労働基準法を始めとして、労働安全衛生法、労働施策総合推進法、パートタイム・有期雇用労働法等、複数の法律を複数年かけて順次施行していきます。労働生産性の向上と賃金向上の実現として非正規労働者の賃金向上が避けて通れません。職務内容、配置の変更の範囲、その他の事情を勘案して正規職員と比較して同じ場合は賃金も同じにすること。また、違いがあればその違いに応じた支給額とすることが明記されました。
なぜ働き方改革が必要か?について、結論としては、国民全員に活躍してもらわなければならないからです。それには現状の把握から始めなければなりません。各種労働統計を勘案し、特に女性の就業率が低い傾向が顕在化しました。女性については、家事分担の偏在化が否めません。また、某有名企業での労働者の残業や過労死自殺問題も女性労働者だけでなく、その他の労働者にも労働に対するマイナスイメージを押し上げる要因となったことは想像に難しくないでしょう。
働き方改革を進めるための課題や目的として、正規社員・非正規社員の格差解消が挙げられます。同一労働同一賃金については、典型的なミスリードとして、罰則はなくとも「提訴される可能性」は孕んでいるということです。このような取り決めとなったことを推察すると賃金については、企業の裁量の範囲という不文律がありました。しかし、現状では労働力が枯渇することが目に見えており、法律で前述の不文律は維持しつつも啓蒙を図った意図が感じられます。
働き方改革を進める目的として長時間労働の是正は避けて通れません。実際に長時間労働が慢性化すると自社内でその異変に気付くことが困難となります。定時を過ぎてから仕事を割り振る、持ち帰り残業、睡眠時間が短くなる等、生活に占める仕事の割合が偏重し、身体を蝕んでしまいます。当然健康な体でなければ長期的に結果を残すことは困難でしょう。罰則付き時間外労働上限規制を掲げたことにより、ある意味「力技」で推し進める形となりました。
テレワークの導入など柔軟な働き方の実現は多様な事情を抱えた労働者にとっても前向きな改正と言えるでしょう。働き方改革の法律には子育てと並行してキャリアパスを描きたい女性労働者に配慮した規定もあります。テレワーク導入に当たっては、就業規則改正等の一定の手続きは必要であるものの、「痛勤電車」の回避やそれに伴う人件費の削減、仕事に対する成果が露骨に可視化されます。よって、労働者自身が生産性を上げざるを得ません。
働き方改革の目的の一つ「同一労働同一賃金」とは正規、非正規社員の不合理な待遇差の禁止と銘打ち、事業主へ是正を促しています。まずは、事業主としては、待遇差があればその違いを説明しなければなりません。非正規労働者から待遇差等の説明を求められた場合、会社はそれに答える義務が明記されました。手当の目的、差を設けるのであればその理由等は非正規労働者にとっても重要です。働き方改革は残業に対する規制だけではないことを再確認しましょう。
同一労働同一賃金導入にあたっては、度々「日本版」同一労働同一賃金と言われています。海外における同一労働同一賃金は、「産業別」の同一労働同一賃金にて核鎖是正を図っていると言えるでしょう。日本の場合は、働き方改革施行後は本業であっても副業であっても「企業別」の同一労働同一賃金となっております。これは、会社が変われば当然手当の考え方や待遇差も変わり得るということです。
働き方改革で副業は可能になるか?また、働き方改革ではなぜそのような方向に導くのかについては、まずは、可能になる可能性が極めて高いと言えます。そして、副業解禁の企業側のメリットが高いと言えるからです。厚生労働省のモデル就業規則でも副業を前提とした規定が整備されたことは記憶に新しいでしょう。また、副業を解禁することにより、企業側メリットとして、自社で提供できないようなスキルを積ませることが出来る点です。
働き方関連法案には労働施策総合推進法の中に「多様な働き方」の普及を明記しています。健康確保の問題を切り離すわけにはいきませんが、雇用によらない働き方もその1選択肢になり得ます。副業解禁の労働者側のメリットとして、副業であれば、自身で経営者を体験することができ、副次的に本業でもその高めたスキルを発揮することができるでしょう。また、得た収入で更なるスキルアップの為の投資(リカレント教育等)も可能となるのです。
働き方改革関連法の内容について、働き方改革関連法とは労働基準法を始めとして、複数の法律を総称して呼ばれています。その中には罰則が明記された法律、罰則のない法律があります。誤ってはならないのは罰則が明記されていなくとも、訴訟される可能性があると言えるでしょう。一例として労働契約法には、罰則が明記されていませんが、労使間での主張の食い違いを発端に訴訟まで発展するリスクを視野に入れておくべきです。
働き方改革関連法の適用時期については、大企業と中小企業で適用時期に相違を設けている規定が複数あります。最も関心が高い分野では時間外労働の上限規制でしょう。本件については、大企業が2019年4月1日以降であり、中小企業が2020年4月1日と設定されています。しかし、年次有給休暇5日の時期指定義務については、一斉に2019年4月1日にスタートしました。双方罰則が規定されていることから今一度確認しましょう。
働き方改革への企業の対応は、一部の法律には中小企業に対し、施行時期に猶予期間があるものの企業規模に関わらず必ず対応することとされています。今、注目を集めている「長時間労働の是正」は、義務を履行することにより、潜在労働力と化していた女性及び高齢者活躍の土壤が整備され、人材流動化の促進が始まります。生産年齢人口が減少の一途をたどる中、誰もが参画しやすい労働市場を掘り起こすことで、国難に立ち向かうべきと言えるでしょう。
働き方改革関連法において大企業が対応すべきこととして、いわゆる「下請けいじめ」の是正です。大企業だけが働き方改革の順守をできていても、そのしわ寄せが下請けに集中していては、本末転倒と言わざるを得ません。余裕をもった納期設定や最低賃金法の履行など、下請先の企業体力を鑑みた対応が求められます。その為には、適切な話し合いの場を設け、また、働き方改革の趣旨に立ち返り、この国難に対し、国を挙げて乗り越えるべきことを再確認しましょう。
働き方改革関連法において、中小企業が対応するべきことは、各種法改正の施行日の確認といえるでしょう。時間外労働上限規制は2020年4月1日以降が対象となり、当然、36協定の様式も新様式となっています。今後は法定内残業の記載は任意となり、法定外残業が必須記載へと変更されます。つまり、法定外残業での取り締まりがより一層強化されたと言えるでしょう。もし、不安な場合は、行政や専門家を活用することも適切な選択肢です。
働き方改革に対応するにあたり、補助金や助成金があります。その中に、「キャリアアップ助成金」があり、これはいわゆる非正規労働者の処遇改善やスキルアップを行った企業に対しての助成金です。助成内容については助成額が大企業より中小企業の方が多い点が注目と言えるでしょう。有期雇用労働者を正社員に転換した場合、中小企業であれば1人あたり57万円又は72万円が支給されます。これに対して大企業は1人あたり42万7,500円となります。(金額は変動する場合有)
働き方改革により変更された法律は複数あり、助成金を受けるには法令順守を避けて通ることは出来ません。例えば助成金の一つである時間外労働等改善助成金(勤務間インターバルコース)の助成内容を確認しましょう。中小企業のうち勤務終了後、次の始業までに一定時間の「休憩時間」を設けることで労働者の生活時間の確保をした場合に時間に応じて助成額が決まります。9時間以上11時間未満で80万円。11時間以上で100万円となります。
働き方改革では「モデル就業規則」の発出を皮切りに副業解禁の動きが活発化していると言えるでしょう。IT導入補助金は、自社のニーズに合ったIT機器を導入した場合、助成対象となり得ます。助成内容は費用の2分の1で、最大450万円の補助です。また、副業解禁はすなわち労働時間管理も煩雑にならざるを得ません。原則は後から契約した事業所が割増賃金の支払い義務を負いますが、健康管理の為に、本業先も副業先の労働時間を把握する必要があります。
働き方改革をなぜこのタイミングで行うのか。この問題は働き方改革の実現で多様な社会問題を解決し企業価値を高めることに帰結します。国難と言える高齢化社会に突入し、いわゆる現役世代の働き手は減少傾向に歯止めはかかっていません。しかし、少ない労働力であっても生産性を高めていくことで、適正な企業間の競争を生み、活力ある社会が形成されていくと言えるでしょう。2022年、2025年問題に突入前の今、働き方改革が必要なのです。
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