記事更新日:2020年06月12日 | 初回公開日:2020年06月05日
人事・労務お役立ち情報 外国人採用・雇用 ビザ(在留資格)について 用語集技能実習生のトラブルの現状をご存じでしょうか。実は技能実習生のトラブルは年々増加しているのです。主な原因は、技能実習生の受け入れ先である企業による法令違反です。平成24年時点での違反事業者の件数は2196件であったのに対し、平成27年には3695件。平成28年には2倍の4004件にまで増えました。残業代の未払いや長時間労働などの法令違反により、失踪を図る技能実習生も増えています。トラブルを減らすためには、法令で定められた賃金の支払いや労働環境の提供が必要不可欠です。
単純労働が目的になってしまうとトラブルに繋がりやすいです。技能実習生に対し、低賃金で単純労働をしてもらえると誤解している企業も意外と多いのが現実。しかし本来の目的は、技能実習生に日本の技術や知識を習得させることです。そのため、技能実習生を受け入れる際は技能実習計画の提出が必要であり、提出した計画に沿って実習を行う必要があります。あくまで国際協力の一環であることを忘れてはいけません。人手不足を補う安い労働力と認識してしまうと、トラブルになりかねないので注意が必要です。
続いて、技能実習生のトラブルの実例と解決方法をご紹介します。最近は、技能実習生が失踪してしまうトラブルが増えています。平成30年では9052人と過去最多を記録。50人に1人は失踪しています。失踪した9割の技能実習生は、月額の給料が15万円以下でした。多くの技能実習生は、母国の家族への仕送りに加え借金の返済も抱えています。余裕のない生活ゆえ、失踪してしまうのも無理はありません。失踪してしまった場合、直ちに監理団体に連絡しましょう。また、警察署へ行方不明届出書を提出することで早急に対応することができます。
技能実習生も時には病気にかかってしまうもの。もし、病気にかかってしまった場合は、技能実習生と一緒に病院へ行ってあげるのが良いでしょう。そもそも、技能実習生は適切な受診科や病院のルールが分かりません。同行してあげることで、不安を和らげることができるでしょう。病気によっては実習生保険が適用される場合もあります。保険が適応された場合、技能実習生本人の3割負担となります。しかし、持病や歯痛は保険適応外となるため注意が必要でしょう。初めてで勝手が分からない場合は、監理団体の助言指導を受けると良いでしょう。
技能実習生が一般の方と喧嘩をしてしまうケースも多いのが現状です。特に近隣住民とのトラブルが多発しています。日本に来て間もない技能実習生は、日本の生活に不慣れです。ゴミ出しなどの基本的なルールも分からず、近所の住民とトラブルになることも。一般の方とのトラブルを避けるために、企業側のサポートが必要です。日本の生活に慣れるまでは気を配ってあげましょう。また、マンションやアパートに技能実習生が入居する前に、企業や監理団体が近隣住民に挨拶をして回ることで、近隣住民と良好な関係を築くことができますよ。
技能実習生が事故に遭ってしまうこともよくあります。主に、労災事故と労働時間外に事故に巻き込まれるケースの2つが考えられます。平成30年の労災事故による死亡者数は909人でした。企業がコストカットを重視するあまり、実習生の安全管理を怠っていたことが原因とされています。実習生も大切な労働者です。責任をもって安全管理をしましょう。また、交通ルールを理解していなかったことが原因で交通事故に巻き込まれるケースも増えています。日本の交通ルールを教えるとともに、会社に近い寮を選ぶなどの工夫が必要です。
技能実習生が金銭トラブルに巻き込まれるケースも少なくありません。ある企業では、家賃の支払い管理を技能実習生のリーダーに任せていました。しかし、ここでトラブルが発生。管理していた技能実習生は着服を疑われてしまったのです。技能実習生は働きづらくなり、わずか1年で帰国してしまいました。後に着服はしていなかったと判明したそう。金銭管理を技能実習生に任せることはトラブルの原因になります。金銭管理は企業の人事や労務担当が行うことで、このようなトラブルを未然に防ぐことができます。金銭管理は慎重に行いましょう。
技能実習生がセクハラをされることも問題になっています。2018年には、水戸地裁で技能実習生がセクハラを訴え大きな話題になりました。パワハラやセクハラが横行している職場も多いのが現実です。しかし、これは明らかな人権侵害です。技能実習生は人手不足を補うためのものではありません。企業には技能実習生に専門技術を伝える義務があります。また、技能実習法46条では、脅迫や暴行など精神や身体の自由を拘束した場合、1年以上10年以下の懲役か20万以上300万以下の罰金が科されます。これは監理団体だけではなく、実習生を受け入れた企業も対象になるので注意が必要です。
技能実習生への低賃金労働によるトラブルも多発しています。実は、技能実習生が実習を始めるまで、1人当たり70万近くのコストが掛かっています。実習生の賃金を低くすることでコストを抑えようとする企業も多いのでしょう。しかし、技能実習生の賃金を安く抑えることは、労働基準法第3条に違反の余地があります。労働基準法第3条では、労働者の国籍や社会的身分を理由とし、賃金や労働時間などで差別してはいけないとされています。最低賃金を大きく下回る雇用は法律違反となる可能性があるので注意しましょう。
技能実習生が借りている寮を汚損させてしまうことも少なくありません。火災で寮が全焼してしまった場合や水漏れをしてしまった場合の対処法として、外国人技能実習生総合保険に加入しておくことをオススメします。会社が寮やアパートなどを借り上げている場合は、この保険に加入しておくことで、被害額に応じた金額が支払われます。しかし、会社所有の建物である場合は、保険適応外となってしまうため注意しましょう。この保険は、寮などの汚損トラブルに加え、技能実習生がケガや病気をした場合にも適応されます。様々なトラブルを解決するうえで非常に充実した保険と言えるでしょう。
技能実習生のトラブルが起こる原因の1つとして技能実習制度への理解不足が挙げられます。技能実習制度とは外国人を技能実習生として雇用することで、様々な技能を取得してもらうことが目的の制度です。しかし、人口減少に伴う人手不足により、低賃金で単純労働をしてくれるものと誤解している企業も多いのが現状。トラブル回避のため、今一度技能実習制度への理解を深める必要があるでしょう。また、企業が不正行為を行った場合、3年間技能実習生の受け入れが不可能となり、改善処置の提出が必要となります。技能実習生を受け入れる際は、ルールの確認をしておく必要があるでしょう。
日本の文化や風習の違いにストレスが溜まることもトラブルが起きる原因の1つです。技能実習生は家族を母国に残し、日本で働いています。慣れない環境に1人で飛び込むため、ストレスが溜まるのも当然です。来日後2~3か月はホームシックになる可能性があるので、企業側がしっかりとサポートしましょう。イスラム教徒の場合、礼拝や断食などへの配慮をするなど、宗教への理解も必要です。事前に宗教に関することをヒヤリングしておくことで、文化違いによるトラブルを未然に防ぐことができます。
技能実習生のトラブル防止のために、企業と技能実習生が技能実習制度について理解しておく必要があるでしょう。厚生労働省は、技能実習制度とは国際社会の発展のために、技術や知識を発展途上国へ移転するための制度としています。しかし、その目的を理解している企業はごくわずか。安いコストで単純労働をさせるため、最低賃金以下で雇用するケースが増えてきているのが現状です。技能実習生はコストダウンのためのものではありません。技能実習制度の目的をきちんと理解した上で、正しく雇用しましょう。
技能実習生のトラブルを防止するためには、技能実習生が相談できる環境を整えることも大切です。徳島県では実習生に対する労働基準違反が社会問題となっていました。そこで、四国4県の労働組合で協力し外国人労働相談所を開設しました。実習生からの相談は、賃金やパワハラに関するものが多いそう。今まで一人で抱え込んできた技能実習生にとって、相談できる場所があることは大きなことだと言えるでしょう。地域の労働組合に頼らず、企業でも相談できる環境を整えることはとても大切です。技能実習生の不安が少しでも和らぐような環境作りを心がけましょう。
雇用主が実習生の文化を理解することで、トラブルを防止することができます。技能実習生の多くはアジア圏出身ですが、国によって考え方や性格も様々です。例えば、インドネシア人は企業に対する不満を口に出さず、ため込んでしまう傾向があります。何も不満がないと安心するのではなく、こまめにヒヤリングしてあげると良いでしょう。一方でフィリピン人はプライドが高いと言われています。大勢の前で注意するとトラブルに繋がる可能性があるため、出来るだけ2人きりの時に注意しましょう。国ごとの文化の違いを理解しておくことで、トラブルを未然に防ぐことができますよ。
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