レイシャルハラスメントとは【事例や対策方法を交えてお伝えします】

記事更新日:2023年06月20日 初回公開日:2023年06月20日

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日本では戦後から外資系企業の参入が始まり、近年もあらゆる企業で「グローバル化」を目指した取り組みが行われています。外国人労働者と雇用関係を結んでいる企業も珍しくなくなりました。しかし、日本人と外国人の従業員がチームワークを発揮して業務を遂行するためには、多くの課題が残されています。中でも、人種や国籍をもとに嫌がらせをするレイシャルハラスメントは、外国人が安心して働けなくなる深刻な問題です。この記事では、レイシャルハラスメントが発生する理由や防止策などを紹介します。外国人労働者の採用や接し方に迷う方は、参考にしてみてください。

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レイシャルハラスメントとは

人種に関連する差別や嫌がらせのこと

レイシャルハラスメントとは、人種や国籍、民族的な事情に関連する差別や嫌がらせ行為のことです。「外国人だから」という理由での差別的な発言や、そのようなニュアンスを含む何気ない言葉が行為として挙げられるでしょう。また、外国人だからという理由で、日本人と分けて働かせることや違った評価制度をとることもレイシャルハラスメントに該当します。日本人に比べて不利な扱いを感じている外国人労働者が多く、セクハラやパワハラと同じように問題視されています。

レイハラとジェンダーハラスメントの違い

差別を受ける理由が人種か性別かの違い

ジェンダーハラスメントは、差別する理由が性別という点でレイハラとは異なります。しかし、本質的に同じ課題を抱えていると言えるでしょう。例えば、ジェンダーハラスメントは「男だから力仕事をするべき」「女だからサポート業務がふさわしい」と性別に対する偏見からくる差別的な発言が該当します。悪気の有無は関係なく、相手を一人の人間として能力や人柄に目を向けることをせず、相手に不快な思いをさせることがハラスメントにつながります。

レイハラとパーソナルハラスメントの違い

差別を受ける理由が人種に限定するか否かの違い

レイハラは人種や国籍を取り上げることに対し、パーソナルハラスメントは身体的特徴や印象など個人の特徴に対するハラスメント行為です。例えば、「太っているから仕事も適当」という発言や、しぐさや口癖をまねるなど嘲笑の対象にする行為が該当します。パーソナルハラスメントも、人の印象からくる偏見で発生する嫌がらせ行為という点でレイハラと似ています。また、「外国人は太ってるから」といった表現では、レイハラとパーソナルハラスメントの両方の要素があると言えるでしょう。

レイシャルハラスメントが発生する背景

日本における外国人労働者が増えている

日本での外国人労働者が年々増え続けていることが、レイシャルハラスメントが発生する大きな要因です。戦後から外資企業も出現を始めた日本ですが、人種の多様化が進む中で外国人との関わりが増えるほど差別的発言や表現がされる環境が増えるでしょう。そんな中で、ハラスメント行為が蔓延することになります。日本の国土や民族的な特徴から、外国人に対する偏見は根強く、悪気がなくてもハラスメント行為に発展するという問題点があります。

コミュニケーションの壁がある

コミュニケーションに壁を感じることで、レイハラにつながることがあります。言語の違いから発生する誤解によるトラブルや面倒ごとを避けるため、無意識的にコミュニケーションを減らしているということです。例えば、外国人の同僚と業務上必要なやり取りがあっても、相手があまり理解できないと諦めて他の従業員に頼むといったことが挙げられます。そんな時、外国人の従業員は、自分が同じ言語を話せないから差別を受けていると感じるでしょう。

ハラスメントとして浸透していない

ハラスメント行為として浸透していないと、レイハラは発生しやすいと言えます。どんな発言がレイハラに該当するのか認識している従業員が少ないと、無意識な差別的表現を続けることになるでしょう。セクハラやパワハラに比べ、2020年に対策が講じられたレイハラの浸透率は、未だに低いと言えます。従業員同士や会社とのトラブルを避け、外国人労働者が働きやすい環境を構築するために、従業員の意識を変えることが求められます。

レイシャルハラスメントの事例

出身国を侮辱する

出身国の侮辱は、レイシャルハラスメントに該当します。例えば「インド人はカレーばかり食べている」「アメリカ人は気性が荒い」など、国民を全体的に侮辱するような発言です。自国の文化や国民性を嘲笑されて、良い思いをする人はいないでしょう。ましてや、自国に誇りを持ち、自国の文化を生きがいとしている人もいます。そんな中で出身国を侮辱されると、自分自身を否定されていることと同じで、立派なハラスメント行為になります。

日本人と外国人の仕事上の待遇を変える

外国人であるからという理由で日本人と異なる待遇にした場合は、レイシャルハラスメントにあたります。平成28年度に行われた外国人住民調査で法務省が出した報告書では、約半数の外国人労働者が日本人とは違う待遇や評価を受けていると回答しています。労働基準法第3条に明示されているように、国籍や信条、社会的身分から労働条件を差別的に扱うことは許されません。外国人の従業員に対する配慮が不十分の場合、就業規則を見直す必要があります。

外見をからかう

国籍をもとに外見をからかうことは、立派なハラスメント行為です。出身国によって顔立ちや肌の色、体格などで日本人にとっては珍しく映ることもあります。日本人と違う身体的特徴を嘲笑されることで、尊厳が傷つけられるでしょう。国籍が日本だとしても、ハーフの顔立ちの人に対して「その顔なのに英語話せないんだね」といった発言もハラスメント行為です。自分が褒めているつもりでも、相手が不快に感じればハラスメント行為となります。

思い込みで相手を決めつける

「外国人だから」という思い込みで相手の人柄を決めつけて接すると、レイシャルハラスメントになります。例えば、「ヨーロッパの人は仕事が適当だけど、この仕事は大丈夫?」といった発言が該当します。一人の人間として能力や人柄を見ようとせず、その国出身だからという基準で見ることは、相手の尊厳を傷つけるでしょう。仕事上ミスを避けるために人員配置は慎重に行う必要がありますが、それに国籍は関係しません。外国人であることに注目して個人の能力に焦点を当てなければ、ハラスメントになります。

英語を話すように強要する

外国人だからといって英語を話すことを強要することは、レイシャルハラスメントです。本来の業務に集中するべきところを、外国人だからという理由で英語を話す場に無理やり駆り出されるのは、不当な扱いを受けていると感じるでしょう。中には、英語を母国語としない外国人労働者も存在します。「その外見でなんで英語が話せないの?」と聞かれても、返答に困る一方です。「外国人はみな英語を話せる」という固定観念があると、無意識に外国人労働者に対するハラスメント行為につながります。

レイシャルハラスメントへの対策

社内教育や研修を実施する

レイシャルハラスメントを防止するためには、社内教育や研修が非常に効果的です。ハラスメントのつもりがなくても、無意識的に差別的な発言をして相手を不快にさせることもあります。研修やeラーニングを通して、従業員に具体的なイメージを沸かせることが大切です。従業員一人ひとりがレイシャルハラスメントを認識することで、外国人の同僚と良好な関係を築きやすくなります。また、自分以外の従業員がハラスメントにあたる行動をしているのを見かければ、注意喚起ができます。

相手の文化や宗教に対して踏み込みすぎない

文化や宗教は、その人にとっての生きがいや誇りということもあります。そのため、踏み込んだ話は不快に思われ、ハラスメントにつながることがあるでしょう。特に宗教はデリケートな話題になりますが、日本の宗教スタイルの特性上価値観が異なるため、発言には注意が必要です。一緒に働く上で、文化や宗教にある程度の配慮する必要はありますが、あくまで業務を円滑にするためのものです。深く追求する、笑いのネタにするなど、相手が嫌な気持ちになるであろう言動は控えなければなりません。

プライベートなことを聞かない

海外では、仕事とプライベートをきっちりと分けて、職場の人のプライベートには踏み込まないという文化を持つ国もあります。そのため、プライベートな事情を聞かれること自体にプライバシーを侵害されたと感じ、ハラスメント行為につながることもあります。日本では、雑談やアイスブレイクが大切とされるため、同じように質問を続けると相手によっては不快に思われることもあるでしょう。相手が自己開示してくれた場合を除き、むやみにプライベートの話題を振るのは控えるべきです。

ハラスメントの相談窓口を設ける

レイシャルハラスメントを防止するためには、ハラスメントの相談窓口を設けることも効果的です。窓口を通し、従業員が嫌な思いをしている、不当な扱いを受けているなどの実態を把握できます。中には、周りの従業員に理解が得られず一人で悩みを抱えているパターンもあります。従業員の相談内容を理解し対応するためには、窓口の相談員もレイハラについて正しい認識を持ち、寄り添う必要があるでしょう。従業員が気軽に相談できる窓口があることで、レイハラによるトラブルの発生や離職を防止できます。

多種多様な人々と働いていることを理解する

レイシャルハラスメントを防止するためには、従業員一人ひとりが多種多様な人々と働いていることを認識しなければなりません。日本では当たり前とされていることでも、外国では許されないこともあります。従業員は関わる人の価値観や文化、ルールやマナーを尊重し、国籍関わらず安心して働ける環境の構築が必要です。そのためには従業員がお互いを理解し、尊重する気持ちを持つことが求められます。その意識が醸成されることで、組織のチームワークや生産性の向上につながるでしょう。

社内アンケートを定期的に行う

社内で定期的なアンケートを実施し、レイハラが横行していないか実態を把握しましょう。レイハラに悩む従業員がいても、誰かに相談しづらいと感じていることがあります。アンケートを実施することで、現場の状況や外国人の従業員の感じていることなど、意見を集めることが可能です。収集した内容をデータ化すれば、自社の抱える課題や、今後のハラスメント対策の参考にできるでしょう。また、定期的にアンケート結果を確認することで、社内での改善状況もわかります。社内の実態調査や意見収集のためには、アンケートが効果的です。

まとめ

レイハラを防止し働きやすい職場を作ろう

レイハラの概要や該当行為、対応策について解説しました。人種差別に対する意識に課題が残る日本では、無意識に相手を傷つける発言や外国人と日本人で違う扱いをするなどの行為が問題となります。企業はレイハラへの問題意識を持ち、社員教育やレイハラに対する認識の醸成を試みる必要があるでしょう。相手を尊重して文化や価値観の違いを乗り越えた先には、信頼関係が出来上がり組織力の向上につながります。レイハラを防止して従業員それぞれが働きやすい環境を作りましょう。

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